「先生大変です!千里がぁ!」  
宿直室の扉が勢いよく開かれて、そこに現れたのは藤吉さんだった。  
「…なんですか今回は?」  
「千里が先生に気に入られようとして、胸を大きくしようとして…」  
「私、巨乳好きなんて言いましたっけ…?」  
「とにかく!あーもう、来てください!」  
ぐいと手を引かれ、現場へと連れて行かれる。  
貧相な胸は木津さんのコンプレックスの一つだ、充分に暴走の要因になりうるだろう。  
以前、見栄でBカップのブラを付けていることを指摘したときは、頭蓋に穴を開けられそうになった。  
さあ今回はどうなるやら、バストアップ体操とか健康的なものならいいのだが…  
例えば、他の生徒の胸を小さくすれば相対的に千里の胸は大きいことになる。  
…なんて血の臭いのする結論はご勘弁願いたい。  
さて、そうこう考えているうちにどうやら目的地に着いたようだ。  
そこには藤吉さんの他に、風浦さんも居た。  
二人がじっと見つめる先に今回の騒動の元凶、木津さんの姿があった。  
 
「…なんですかあれは?パースが盛大に狂ったんですか?」  
「違います、見たまんまです。ああなっちゃったんです。」  
巫女装束のような服装の彼女が、長く艶やかな髪をなびかせながら夕焼けに赤く照らされている。  
幻想的な光景だった、ビルより大きい彼女の身長も含めて実に幻想的だった。  
「あの格好からもわかるように、千里は豊胸を願って祈りを捧げていたんです。ですが…」  
「努力の方向性が間違ってますよ…んまあ…巨乳は巨乳ですね…」  
「先生、千里ちゃんを助けてあげてください。」  
「いやそう言われても私にあんなのどうしようも…時間が経てば治るんじゃないですかね?」  
「ダメですよ、あんまり対応が遅れると自衛隊が動き出してしまいます。」  
「…でも、あんなのどうするんですか。」  
「大丈夫、先生なら出来ます。ほら聞いてください。」  
『うなぁぁぁぁ…』  
「あの寂しそうな鳴き声、千里ちゃんは愛を求めています!そうつまり先生を…」  
「お願いします!先生ならきっと。」  
「…」  
彼女たちのクラスを受け持って2年余り、これほど頼られる事があっただろうか。  
自分の内から燃え上がるような使命感が溢れてきた。  
 
「わかりました、先生に任せなさい!」  
ぬあーと雄たけびを上げ、気だるげに手ごろなビルにもたれかかる木津さんの足元へと駆け寄った。  
それに気づいた彼女の双眸が私をとらえる、結構見慣れたものだがこのサイズの魚目は怖すぎる。  
「木津さん!元に戻ってください、そんな風に無理にバストを大きくなんかしなくてもあなた…」  
「せんせーい、言い忘れましたけど千里ちゃんちょっと理性失ってるみたいなんで気をつけてくださーい。」  
「んな!?そういうことは早く言っにゃあぁー!」  
「ああ、先生がさらわれた。」  
「さすが総受け。」  
ぬがしと大きな手に掴まれた私は高く高く、木津さんの顔と同じ高さまで持ち上げられた。  
「いやぁー!」  
「大丈夫ですよせんせーい、心なしか千里ちゃんの目が穏やかになりましたー。」  
「え、本当で…か、片方だけ魚目で余計怖いんですがぁ!」  
「その調子、その調子ですよー。」  
「あきらめるなー。」  
「勝手な事を!ていうかこの後どうすれば良いんですかー!?」  
 
「やだなあ、キスに決まってるじゃないですか、愛の証の定番ですよ。」  
「がんばれー。」  
「ええい、やってやります!」  
木津さんが、鼻先に持ち上げた私をまじまじと不思議そうに見ていた。  
腕も足もその大きな指に塞がれ身動きが取れなかったが、首と体を伸ばして距離を縮めていく。  
「失礼します…」  
そして、ちゅっと鼻の頭に軽くキスをした。  
『うな…』  
すぅと彼女の瞳が穏やかなものになっていく。  
「すごい、効いてる!」  
「さすが私たちの先生です!」  
『せん…せ…い?』  
「千里が喋った!」  
「木津さん…」  
掴んだ手が離され、代わりに水をすくうような形にした両手のひらに乗せられた。  
「素敵…」  
「意外と良いかも…」  
しばし見つめあう、そうしていると何故かありえないサイズの彼女に対し愛しさがこみ上げてきた。  
もし…もしこのまま戻らないとしても私は…  
「よし、これなら。」  
「あ、千里ちゃんの様子が…」  
 
『うっなっ♪』  
「っいやぁぁー!?」  
突如びりびりびりと服を引き裂かれた。  
「大変、先生の貞操が!」  
「さすが総受け。」  
ひん剥いた私を木津さんは愛しそうに見つめ、その大きな口で私自身を、私全体を咥え込んだ。  
「摂食交配だ。」  
「食われてたまるかぁ!」  
なんとか唇を割り、顔だけは出す事が出来た。  
「先生大丈夫ですよー、それはただのディープキスですよー。」  
「あ、愛が深すぎまふぅぅ…ひゃぁ!」  
木津さんの口の中で、私以上に大きな舌がにゅるにゅると体全体に絡み付いてくる。  
まさに全身を溶かすような愛撫に絶棒も大きく膨れ上がり、今にも爆発しそうだ。  
「晴美ちゃん、これってえっちシーンなのかな?」  
「ピーキー過ぎて私もわかんない…」  
「ああ…き、もちいいけど…ありえないサイズの巨女に犯されるのは嫌だぁー!」  
だが抵抗むなしく木津さんの口内に精を吐き出してしまう。  
そして訪れた強烈な虚脱感にがくりと頭を垂れ、眼鏡が外れた。  
ビル以上の高さから落下した眼鏡は、地面に激突し粉々に砕け散った。  
 
「先生!先生!」  
「…んん…木津さん?」  
「ごめんなさい、ごめんなさい先生。」  
「…良かった、元に戻れたんですね。」  
涙を流す彼女をぎゅっと抱きしめた。  
「愛の力ですねえ。」  
「お疲れ様でした先生。」  
藤吉さんが私の着替えを差し出した、取って来てくれたようだ。  
服を失った自分にかけられた2つのコートは彼女たちの物だろう。  
「よいしょっ…とと。」  
ふらつく私を木津さんが支えてくれた。  
申し訳なさそうにする彼女の肩に手を回し、言う。  
「木津さん、送ってもらえませんか?」  
 
辺りはすっかり暗くなっていた。その中を支えられてよたよたと歩く。  
「今日はさすがに疲れましたよ。」  
「ごめんなさい、私のせいで…」  
「ふふ…ちょっとこっち向いてください。」  
「はい。っん…」  
「…まともなキスが出来ませんでしたからね。」  
そう言って微笑みかけた。  
 

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