割烹着をかけたお掃除スタイルで千里が向かう先は、彼女の担任教師、糸色望の暮らす宿直室だ。
この時期になると千里は親しい間柄の知人の家を回り、大掃除を強行している。
それが年末恒例行事、きっちりさんの大掃除。
本日向かう所は、千里が自分の家以上に力を入れて掃除をする所だ。
なにせ愛する男の住む部屋なのだから。
新築時以上に綺麗にしてしまおうと意気込んで千里は宿直室の扉を開けた。
「おはようございます。さあ、きっちりキレイ…に…」
「…んぅ?…おはようございます…」
望はコタツに入って寝転びながら、寝ぼけ眼で酒を飲んでいた。
「何してるんですか先生…」
「らにってお酒を…いいららいですか、冬休みなんれすから。」
ちびちびと飲みながら言う。
「もう…弱いくせに昼間から…」
「かたいこと言ららいでくださいよー………ぐう。」
寝てしまった。
千里はふぅとため息をついて、仕方ないなと呟いた。
暇があれば、たいてい2のへの生徒は望の下に集まる。または望が来てしまう。
だが大掃除なんてことをわざわざ人の家にまでしに来るのは千里くらいなものだ。
だから今日は掃除とはいえ望と二人っきりで過ごせる、なんて思っていたのだが。
「寝ちゃったかぁ…」
とりあえずコタツに入ったままの望は邪魔だったので、布団で巻いて隅に置いておく事にした。
千里がぱたぱたと動き回り、部屋を片付けていく。
クリスマスパーティーのゴミが少々残っていたが、宿直室にはこれといって大きな汚れはなかった。
少し前に千里の手によって全焼してしまったのだから。
「本の帯…要らない。捨てっ。」
「ビンの蓋…捨てっ。」
「くつひも…なんでひもだけ?捨てっ。」
てきぱきと掃除を続けていくと、また今年もポロポロと出てくる要るのか要らないのか微妙なものたち。
それらが千里のジャッジによって続々と捨てられていく。
「女子大生の写真………捨てっ。」
「ストーカー…」
「!?」
「座敷童…」
「ひっ!?」
私怨でジャッジに偏りが出る事があったが、千里の大掃除は順調に進んでいった。
だがそんな彼女でも捨てるべきか迷うものがいくつかあった。
本来ならそういうものも全て捨てたいものだが、後で望に泣きつかれても困る。
というわけでその判断は望本人にしてもらうことにした。
望の審査を待つちょろちょろとした小物のなかに混じって霧とまといの姿もあった。
二人は仲良く一つのゴミ袋から顔だけ出して気を失っている。
千里は望を具にした巻き寿司のような布団をころころと転がすように広げ、望を出した。
「先生、先生。ちょっとだけ起きてください。」
「…ふぁい?」
千里に揺さぶられて目を開き、望は上半身を起こして布団の上であぐらをかいた。
「これ。この中で残すもの教えてください。」
「…残すもの?」
かく、と望は首を右に傾けた。
「ええ、大事なものです。残りは捨てちゃいますよ。」
「…大事なもの…?」
右側に徐々に傾いていき、そのまま倒れた望は再び寝転んでしまった。
「……っ…」
「え?何て言いました?」
聞き取れないほど小さな声で囁いた望に千里が顔を近づけた。
「…これ。」
「え?」
千里の背中に手を回して引き寄せ、千里の首筋に望の唇が触れる。
「っ…んっ…」
「だからこれです…らいじなの…」
そのまま引き倒した千里の上から胸に顔を埋めて、その小さな胸を横からむにむにと揉んだ。
「せ、せんせっ…こんな昼間っからぁ…」
「んー…そうですかぁ?」
望が顔を上げて、目の前で顔を真っ赤にしている千里に微笑みかけた。
「…」
無言で千里の瞳を覗き込む望の顔が、息がかかるほどに千里の近くにあった。
じっと見つめる望を前に、千里もまた言葉を失い硬直してしまった。
そのまま望の手がゆっくりと千里のスカートに侵入し、下着越しに彼女の秘部を擦りあげた。
「やぁっ…せんっ…せい…」
望の瞳に自分の本心も見透かされているような気がして、形ばかりの抵抗すら出来ない。
千里は目を瞑り、シーツを掴んで望にされるがままにその身を任せた。
「っ………………あれ、先生?」
だが、そこで望の動きは止まっていた。再び眠りについてしまったようだ。
「…バカ。」
ポク、と千里が望の頭を叩いた。
「はぁ…まったくもう…」
自分に覆いかぶさる望をどかして布団を掛けなおした。
ぎろりと望の顔を睨んだが、望の寝顔に千里の顔が思わずほころぶ。
「…ふぅ…疲れちゃった…私も寝よ。」
割烹着を脱いで、もそもそと望の胸元に入りこみ、千里もまた眠りについた。