「ふぅ・・・」  
 
 
露天風呂の中に入り、落ち着いて辺りを見回す。よし。安全。  
まったく、気を抜いたら狙撃される世の中なんて、いやな時代になったものだ。  
今日は生徒たちの修学旅行引率で来たのだが、ここには毎回宿泊するらしく、  
女将達の対応もやけに手馴れた感があった。  
それにしてもせっかくの休日なのになんで引率なんてしなければならないのだろうか  
せっかく智恵先生も着てくれてるんだから全部やってくれればいいのに  
ああもうまた絶望してきたぞ絶望した!やらなくていい職務を押し付ける社会に絶望した!  
もうだめだもうこれは死ぬしかない早くロープを探さなくては。  
でもまてよよく考えたら教師って生徒の保護も役割のひとつだし  
第一何も死ぬことはないぞ、ていうかよく考えたらそこまで絶望することでも  
 
「・・・おっと! 危ない危ない、危うくデトックスされてしまうところでした」  
 
そういいながら望は傍らに用意済みの添加物を口にし、肩までどっぷりと湯に浸かるのだった  
去年来た旅館のため、少しは対策もしてきているのである。  
周りは静かで、虫の音さえもしない。真っ暗闇。  
そうした中、望が眠気というまどろみの中うとうとしてしまったのは仕方のないことであっただろう  
 
 
・・・どれくらい時間がたっただろう。  
どこからか視線を感じた望はぱっと顔を上げるとすぐに辺りを見回した。もはや習慣となってしまったこの行為、悲しいことである。  
何もない。しかし声はする。  
 
「・・・さい! ・・・めんなさい! わたしごとき・・・」  
 
「愛チャン、早く入ろうヨ」  
 
「はっ! ごめんなさいごめんなさい! 気を使わせてしまいすいません! わたしなんかより三珠さんどうぞお先に!」  
 
 ・・・これまた珍しい組み合わせである。  
そしてすぐにザッパーン!と大きな音が。 大方、マリアが飛び込んだのだろう。もっと落ち着けばいいものを。  
つづいてチャプ・・・と静かに入る音。控えめな愛そのものわ表しているようだ。  
音がしないことを考えると真夜ももう入ったのだろう。  
 
「(いや、問題はそこじゃないです。 なぜ彼女たちがいるんですか・・・。今は教師の入浴時間のはず・・・。)」  
 
実際にはそんな時間などとっくにすぎており、午後八時になっている。だが、当然望はそのことを知らない。  
望の記憶が途切れる前が五時だったことを考えると三時間ほど湯に浸かっていたことになる。  
あわてて添加物を口にしようとするが見当たらない。猿でも出たのだろうか。  
とりあえずこんな時間に温泉にいたらたとえ男湯といえ変質者扱いされてしまう。  
ただでさえここは竹壁一枚のみで仕切られているというのに・・・。  
 
「(早く・・・、早く出なくては・・・)」  
 
しかし焦って音を立ててしまっては本末転倒だ。急いで、かつ慎重に温泉から抜けなければ。  
そーっと、あくまで静かに抜け出すのだ。そう、あくまでそーっと・・・  
 
「あれ?今男湯から変な音がしたような・・・」  
 
「ソウカ?マリア、別ニ聞コエナカッタケド」  
 
「ど、どうしましょう、変態とかだったりしたら・・」  
 
「ヨシ、マリアチョイトミテクルヨ!」  
 
まずい、とてもまずい。ああどうすべきかもういっそ正直に謝ってしまおうかいやしかし  
いくらなんでもそんなことをすれば実家が黙っちゃいないし無職になるのも嫌だかといって  
どうやってこの状況を  
 
「! ダレカイル!」  
 
 考えるより先に体が動いた。とっさに息を大きく吸い潜ったのだ。  
上半身を上にして水面と平行になるようにして潜ったのである。温泉が濁っている事も幸いした。  
 
「アレ? ダレモイナイ」  
 
 予想通りうまく隠れれたようだ。後は早く戻って欲しいのだが・・・  
それでもあと1、2分はいけるだろう。マリアもさすがにあきらめるはずだ。  
こちらからも外は見えないが、声ぐらいなら多少聞き取れるし大丈夫だろう。  
そう考えた望は、聴覚を研ぎ澄ますことに専念した。  
どうやらマリアは誰もいなかったことに疑問を抱いているらしく、ンー、とうなっているようだ。  
しかしやがて諦めたのか、そのうなり声も聞こえなくなった。やっと助かった、と望が安堵した次の瞬間、  
 
「チエ先生 ソッチ男湯ダヨ!」  
 
「(ぶふぉっ! ぶふっ、ぶふぇっ!)」  
 
 思わず吹きだししそうになるのを必死で抑える。ち、智恵先生、なぜ男湯に!? それにしても、なぜこんなときに来るんだ。  
望の不満をよそに、マリアはしゃべっていく。  
 
「ン、マア今ならソッチでも大丈夫カ。  
 それにしてもチエ先生のムネ、オッキイナ。アイダにバナナとか挟めるンジャナイカ?」  
 
 この言葉に、健全な成人男性である望は、正確には望自身が反応しないわけがなかった。  
だがもしフル勃ちすれば姿勢から考えても確実に見つかってしまう。  
望はがんばって精一杯萎える物を思い浮かべていった。複雑な数式、海亀の産卵シーン、ことのんのSS・・・  
しかしマリアは追い討ちをかけるように智恵先生と会話していく。  
 
「脚もキレイダナ。スラッとシテルシ」  
「お尻もデカイシ、ボンキュッボンテヤツダナ」  
 
 望はだんだんと理性が本能に負けていくのを悟っていた。しかし、  
負けるわけにはいかない。負けてしまえばそれこそ人生の終わりである。  
だが、  
 
「先生、毛もシッカリ刈リソロエテルンダナ」  
 
 この一言はきつい。智恵先生のソコが見えるという事はすなわちバスタオルをはおってないということになる。  
望は思わず智恵先生の裸体を思い浮かべてしまった。そしてそこから性交にいたる自分の姿・・・。  
もちろん望は本能と必死で戦った、しかし相手が強すぎたのだ。  
望むのそれは立派な自己主張をし、そこだけにひんやりとした空気があたる。  
 
「(終わった・・・。へへ・・・燃え尽きたぜ・・・真っ白にな・・・)」  
 
そう望が考えて少しの間、何も音はしなかった。もしや、智恵先生が状況から察してくれたのでは、という  
淡い期待も抱いたりしたが、  
 
「びばっ!(痛ッ!)」  
 
急激な痛み。そこへの。何かぶつけられたようだ。と同時に気付く。自分が温泉から顔を出してしまったことに。  
 
「す、すいませんっ!  
 ち、智恵先生こ、これはですね決して覗きなどというは、破廉恥な行為ではなく・・・  
 な、なんというかそのですね・・・・・・ご、ごめんなさい!・・・あ、あれ?」  
 
 望が命乞いをやめ恐る恐る頭を上げた先、そこに智恵先生はいなかった。それどころか誰もいなかったのである。  
いまいち状況が理解できない望は竹壁のほうを向く、壁の上からマリアがこちらをみていた。  
そして、満面の笑みで  
 
「センセー、ソコデナニヤッテルカ?」  
 
と、問いかけてきた。  
簡単に言えば、釣られたのである。  
こんな少女に・・・しかも自分のを見られてしまった。また憂鬱になってきた。  
しかしまずはこれをどうにかせねばならない。隠すものがないのでしょうがなく全裸で立ち上がる。  
 
その瞬間  
 
「ウオット!」  
 
マリアがバランスを失い、竹壁ごと倒れてきた。しかし、すんでのところでマリアはジャンプし見事な着地をした、  
そこまではよかったのだが、着地の反動でそのまま滑ってしまい、やっと止まったと思ったらそれは  
偶然置いてあった作業用スリッパがマリアの足にはまってしまったからであった。  
 
「キモイキモイ! ダレカタスケテ!」  
 
大声で何度もそう叫びながら脱衣所に出て行ったマリア。まあ、大事にはならないだろう。  
それよりも今気がかりなのは、  
 
「せ、先生・・・」  
 
 この二人、加賀愛と三珠真夜である。そして問題点とは今フル勃ちしていてさらにそれを見られているということだ。  
ふたりは露天風呂から出ようとしていたようであり、温泉に浸かっているのは膝から下くらいである。  
そのため、女子高生の豊満な胸や恥部が丸見えなわけである。この場合は、愛はうまく両手を使って隠しているが。  
ちなみに三珠はというと、愛の後ろに隠れてしまっている。  
それにしてもそこまで貧相な胸ではない。C、いや、Bぐらいか・・・  
 
「何見てるんですか・・・訴えますよ」  
 
思考停止した。絶対に言うはずのない相手に、絶対に言われてはならないことを言われてしまった。  
しまった、忘れていた。デトックス効果・・・恐ろしい子・・・。  
と、とりあえず落ち着いて状況を整理しよう。  
女生徒二人、その担任教師(フル)、薄い壁一枚の露天風呂・・・  
まずい、証拠が多すぎる。かといって証拠過多にはならないだろう、なにしろ真夜までデトックスされているのだ。  
望がどうやってこの状況を抜け出せば言いのか必死で考えていると、もう一言  
 
「じろじろ見ないでください。覗きなんてして・・・」  
 
なんという強気。いつもの加害妄想はどこへやら、である。  
それにしてもこれはまずい。下手すれば一生変質者の汚名を背負わなくてはならない。  
外に出るたびにそんな目で見られたら自殺するしかない・・・ そうだ自殺し  
 
「それから」  
 
思考をいつの間にか近くに来ていた愛に遮られる。このとき望が本当にパニックになったのはしょうがないことだろう。  
何しろ普段の加害妄想がすさまじいものだ、そしてそれがすべて抜け出たとすればどれだけ毒舌になることやら。  
そんなことを考えていると、愛がすぐそばで、はっきりとした口調で言った。  
 
「ちゃんと責任・・・とってくださいね!」  
 
 

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