――せんせいがわたしをおいていく
――せんせいがとおくへいってしまう
――せんせい、まって、まってください。
――せんせい、待って、先生――
「……せ……せ……」
微かな声にはっとして振り返るが、ベッドの上の少女が目覚めた様子はない。
寝言だろうか。僅かに肩を落とす。うっすらと薬品の匂いがする保健室の中は静か過ぎて、どこか落ち着かなかった。
それとも、落ち着かないのはこうなったのが全て自分のせいだと分かっているからだろうか。
ぼんやりと考えながら、立ったまま窓の外を眺める。試験なんて馬鹿らしくなってしまうほどの青空。
(……貴女の未来は、この空と同じくらいにどこまでも広がっているはずなんですよ)
思いついた言葉に自嘲する。なんてありふれた安っぽい言葉だろうか。3年B組じゃあるまいし。
可能性が無限だなどと言うつもりは毛頭ない。
将来に夢を持ち、希望を持っていいのは中学生までだ。
だが、それにしたって――こんな絶望的な道一本だけに将来を限定してしまうには、彼女はあまりにも若過ぎる。
幼過ぎる、と言ってもいい。
きっと彼女には、今自分の目の前にある数多くの交差路が見えていないのだ。
獣道のほんの少し先に咲いている路傍の花の珍しさに惹かれて、その更に先が断崖絶壁になっていることに気付いていないのだ。
ならばその道を封鎖してやるのが、教師たる自分の役割ではないか。
その道を敷いてしまったのが自分であることを考えれば、尚更――そんなことは、分かっている。
「……せん……せい」
再び聞こえた掠れた声、うっすらと目を開いてまといがこちらを見ていた。
「常月さん、大丈夫ですか?」
「……はぃ……」
ぼんやりとした様子で答えながら、ゆっくりと上体を起こすまとい。眩しそうに目を細める彼女を見て
ベッド周りのカーテンを閉めてやりながら声をかける。
「覚えてますか?昼休みに職員室で倒れたんですよ。私と甚六先生で貴女を運んだんです」
「……はい」
その前後のことを思い出したのか、にわかにまといの表情が強張った。望はゆっくりとベッド脇の椅子に腰を下ろしながら
視線は自分の手元に落としたまま話し続ける。
「今、ちょうど5時限目が始まったころですね。ああ、私のことは気にしないで下さい。試験官なら
智恵先生が変わってくれましたし……今回はさすがに智恵先生にも何も言われずに済みましたしね、
サボっているわけじゃなくて、常月さんの付き添いっていうちゃんとした理由があるわけですから……」
それ以上何を言えばいいのか分からなくなって、口をつぐむ。
いや、何を言えばいいのか分からないわけではない。そんなことは、分かっている。
「常月さん」
分かっている、けれども。
「私から甚六先生にお話してみますから、後日テストを受けなおさせてもらいましょう。社会はまだ
問題も見ていないわけですから、せめてそれだけでも――」
「嫌です」
きっぱりとした声に顔を上げた望の目を、まといの潤んだ目が射抜く。
「常月さん――」
「私、テストなんか受けたくありません。先生が何とおっしゃろうと、私、先生と一緒にいられないな、らっ……」
まといの声が大きく震えた。ほんの少しだけつり目気味な瞳からぽろりと零れ落ちる涙をぬぐおうともせず
望を見つめたまま言葉を続ける。
「私、ダメなんです、先生と一緒にいられないと、もうダメなんです、先生の、ことがっ、好きだから、
先生の、こと、私はこんなに、愛しているのに……」
声を震わせ、肩を震わせ、それでも視線は望を真っ直ぐに捉えて離さない。その強さとは対照的な
弱々しい声が、唇から漏れた。
「先生は私のこと、そんなに、嫌いなんですか……?」
ええ、そうです。
だから卒業しても私につきまとうだなんて、そんな愚かな考えはもうお捨てなさい。
自分がただそう言うだけで、その道は閉ざされる。それが彼女のためなのだ、そんなことは、分かっている。
分かっている、けれども。
分かっている、のに――
「そんなわけ、ないじゃないですか」
小さな、本当に小さな声で返された答えに、まといの目が見開かれる。
「私が、貴女を嫌いだなんて……そんなわけ、ないじゃないですか……」
――いたんですか。
そう問い掛ければ間をおかずに
――ええ、ずっと。
そう返ってくるのが当たり前になっていたのは、何時からだったか。
冬が終われば春が来るのが当たり前のように、その変化はとてもゆるやかなもので、でも確実なもので。
その変化が、嬉しかった。
大騒ぎしては絶望することを何度も何度も繰り返し、情けなくみっともない姿を数え切れないほど見せても
決して自分を見捨てず、ただひたすらに自分についてくる少女の存在が、何時からか愛しかった。
だが春になれば、彼女は進級し、3年生になって――その次の冬が終われば、卒業する。
ゆるやかに、しかし確実に訪れるはずだったその変化が、悲しかった。だから
『ただ、先生のお傍にいたいだけなんです』
まといの面談での言葉に、自分は確かに頭が真っ白になるほどの幸福を感じて
――それと同時に、今まで味わったどれよりも深い絶望を、はっきりと感じたのだ。
「私は最低の人間です。貴女が自分の進路を捨てて私の傍にいるとおっしゃった時、私ははっきりと
嬉しいと思ってしまいました――どこまでも自分本位で自己中心的な、駄目人間です……」
がっくりと頭を落とし、大きく息をついてうめくように続ける。
「絶望した……自分さえよければ教え子の将来なんてどうでもいい自分自身に絶望しました……
教師失格どころか、人間失格……私なんかに、貴女が傍にいて下さる価値なんて無いと、そう思ったんです……」
まといの白い指が、そっと望の手に触れる。
「先生……それじゃあ、先生は……」
のろのろと顔を上げれば、まといが半ば呆然としながらこちらを見詰めていた。
「先生は……先生も、私のことを、慕って下さるんですか?」
ここで肯定してしまえばもう引き返せない。そんなことは、泣きたくなるほど、分かっているのに。
――結局のところ、自分も彼女と同じくらいに幼過ぎるのだ、きっと――
「……貴女のことが、好きでした……好きです、常月さん……」
「先生っ!!」
はらはらと涙を零しながら、まといが望の胸に飛び込んだ。少女がベッドから落ちてしまわないよう
反射的にその体を受け止めて――手の置き場に困りながらも泣きじゃくるまといを突き放すこともできず
僅かに迷った後、そっと彼女の両肩に手を置く。
「わ、私……先生に、嫌われたと、拒絶されたと思って……」
「常月さん……」
ショックで倒れるほど、こんな自分のことを想ってくれる。その事実に望の胸の奥がじんわりと暖かくなった。
「申し訳ありません、貴女のことを苦しめてしまって……」
「先生……」
まといが胸にすがりつく。未だその瞳からは涙が溢れているが、それが先程までの涙とは全く
異なる意味のものだと、少女の言葉に込められた幸せそうな響きが教えていた。
「先生……先生、お慕いしています、愛しています……」
少女の囁く声を聞きながら、そっと両腕を背に回して壊れ物を扱うように抱き締める。
「常月さん、私も――」
貴女が好きです。
そう続けようとして、ふと胸元に違和感。と言うか、開放感。
ぱっと視線を落とせば、白い指がぷちぷちと望のシャツのボタンを外していた。
「ちょ常月さん、ちょっと何ををおぉお!?」
「先生」
すっとこちらを見上げたまといは――今までに見たことのない、艶っぽい表情をしていた。
「先生、私本当に怖かったんですよ。先生に拒絶されたって思った瞬間、目の前が真っ暗になって、本当に苦しくなって……」
まといの台詞に、ぐっと言葉に詰まる。
「先生の口癖ではないですけど、本当に、絶望したんですから……」
どこか悲しそうに囁きながらも、ほっそりとした指の動きは止まらない。着物の前を引っ張るようにして
はだけさせ、シャツのボタンを次々外してしまう。
「だから、証を下さい……先生が、本当に私のことをお慕い下さるという証を……安心させて下さい、先生……」
ヤバイ。この状況ヤバイ。まじでヤバイよ。マジヤバイ。
そんなヤバイ状況で誘惑してくる常月さんとか超偉い。もっとがんばれ。超がんばれ。いや頑張ったら駄目でしょーが!!
冗談はともかく、脳内で軽く現実逃避してみたくもなるほどにヤバイのだ、今の状況は。
時は5時限目、全校生徒は実力テストの真っ最中。場所は校内の保健室。
ベッド周りのカーテンが閉めてあるのが不幸中の幸いか、いやいや全く幸いではない、
余計誤解を招きかねないだろうがこのカーテン、誰かが保健室に入って来てこの状況を目の当たりにすれば
まず間違いなく自分は襲われている方ではなく、襲った方だろう。
だからって襲われていると認識されても全くありがたくもないし救われるわけでもないが。
白昼堂々学校の保健室で女生徒に襲われるなど、洒落にならない――
「――っ!」
とめどない望の思考を遮ったのは、素肌に直接感じた生暖かい感触だった。
「先生……」
まといの赤い唇が、すーっと望の胸元を辿る。時折舌を少しだけ覗かせてぺろりと肌を舐めたり、強めに吸い上げたりしながら
何時の間にか全てボタンを外してしまったシャツの中へと手を差し入れ、直接望の体を抱き締める。
幼子をあやすように優しく、けれどもどこか妖しく背中を撫でる手の動きに心臓が跳ね上がった。
「先生、暖かいですね……」
「そ、れは、生きてますから……」
甘さを帯びた言葉にだいぶピントの外れた返事をしながら、少女の体を引き剥がそうと小さな両肩に手をかける。
が、それに抗うように背に回した腕に力を込めながらまといがそっと囁いた。
「先生、お嫌ですか……?やっぱり私なんか、先生にとってどうでも宜しいんですか?」
まといが寂しそうに話すたび、胸に熱い吐息がかかる。彼女がすり寄せてくる頬にはまだ少しだけ
涙の跡が残っていて、それらが望の腕から力を失わせた。
「い、いえ、嫌では……ただ、場所とかですね、授業中ですし、その」
「嫌では、ないんですね?」
心底嬉しそうに言いながら、触れるか触れないかという強さでつーっと腰から背中にかけてを撫で上げる。
ちゅ、と乳首を吸い上げられ、望はぞくりとした快感に体を震わせた。
「は……っ」
「先生、先生……」
熱っぽく繰り返しながら、まといの唇が、舌が、指が、自分の素肌をなぞっていく。
セーラー服の肩に置いたままの自分の手に汗が滲み、呼吸がどんどん荒くなっていくのを自覚しながら
下半身に集まっていく熱の未だかつてない熱さに息を漏らす。
「っく……っ、常つ……」
まといが唐突にベッドの上で膝立ちになり、伸び上がるようにしてこちらに口付けてきた。
ついばむようなキス、次に押し付けるような力強いキス。口内に入り込んできた少女の舌が誘うように望の舌を絡めとる。
ぴちゃぴちゃと水音が上がるほど激しいその動きに、頭の中に霞がかかるように思考が鈍って行く――。
「――っふ……」
何時の間にか彼女を求めて自ら動き始めていた望の舌に、まといが嬉しそうに微笑んだ。
その動きに応えながら、ゆっくりと白い手が望の袴紐へと伸ばされる。
「――っつ、常月さんっ!」
寸でのところで僅かに残った理性でその手を押さえつけるこちらの顔を、間近で見上げてくる愛しい少女。
「先生」
お願い。
声にならない訴えをいっぱいに湛えた瞳に、ぐらりと気持ちが揺らぐ。
思えば、常に自分についてまわっている彼女がこんな強硬手段に出るのは初めてで。
彼女のためを思っての言動だったとは言え、そこまで不安にさせてしまったということ、か。
望の両手が三度まといの肩に置かれ、そのままゆっくりと力を込めて――少女の体をベッドへと優しく押し倒した。
「先生……」
「……知りませんからね、どうなっても……」
自分もベッドに上がりながら拗ねたように呟く望を見て、まといがくすくすと笑い出す。
「大丈夫です、どうなっても……私は、先生のお傍を離れませんから」
ああ、どうしてこの少女はこんなに迷いなく自分などを選んでくれるのだろう。
どうしてこの少女の言葉を――こんなにも、信じたくなるのだろう。
彼女なら本当に、自分がどんな道を歩もうとも、傍にいてくれそうな気がする。
今までと同じようにただひたすらに、今までよりもずっと幸福そうに。
「……常月さん」
華奢な体に覆い被さりながら柔らかく呼びかけると、まといが何か答えようとするより早く、今度は自分から口付けた。
舌を差し入れて歯列をなぞり、少女のそれと絡めて吸い上げる。
セーラー服の裾からするりと右手を滑り込ませると、ぴくんと腰が跳ねた。
そのまますべすべした腹部を焦らすように数度撫でてから、下着の上から包み込むように胸を揉む。
「ふ……ぅう――」
塞いだままの唇からくぐもった喘ぎ声。抱きついてくる細い腕が少しこそばゆい。
こちらも抱き締め返すように腕を背中に回し、邪魔な下着のホックを取り外してしまう。
顔を離し眼鏡を取り払うと、まといの耳元に口を近付けそっと耳打ちした。
「声、あんまり出さないで下さいね」
少女がこくりと頷くのを確認し、下着をずらして直接膨らみに触れる。掌に吸い付いてくるような感触に
頭がくらくらするような興奮を覚えながら胸を優しく揉んでいくと、すがりついてくる腕の力が少しずつ強くなる。
「……ぅ……っくん――」
唇を噛み締めるようにして必死で声を押し殺すまといの表情。その艶やかさにこちらの呼吸も荒くなる。
掌の中で硬く尖り始めた突起を指でこすると、あっ――と掠れた声が僅かに上がった。
「我慢して、下さい……」
少し意地悪く囁きながら、指先でくりくりと乳首をこね回し、時に押し潰すように強く愛撫する。
固く目をつむっていやいやをするように首を振り、少しでも快感を逃そうとするまとい。震える白い足を
そっと撫で上げながら、スカートの中に手をしのばせる。びくりと一際大きく跳ねる華奢な体。まといが慌てて手で口を覆う。
「――っ!」
下着の上から触れたそこはしっとりと濡れていて、彼女がどれだけ望を求めているかを伝えてくるようだった。
そっと布地をずらして秘所に直接触れる。
「ん――っ!」
少女が大きくかぶりを振る。短い黒髪が乱れる様子に言いようのない興奮を覚えながら、全体をさするように手を動かすと
くちゅくちゅと粘着質な水音が立った。淫靡な音に、望の自身も昂ぶっていく。
溢れ出す蜜を指で掬い上げ、塗りたくるようにしてぷっくりと膨らんだ秘豆を刺激する。声にならない嬌声が
まといの指の隙間から漏れた。2人の荒い息遣いと水音がカーテンの中に響く。
「っふ……ぅ――ぅあ?」
口を押さえる手を引き剥がし、代わりに己の唇を押し付ける。混ざり合う吐息。
たっぷりと蜜を絡ませた指をゆっくり秘所へと沈めると、一瞬まといが呼吸を止めた。
「……苦しいですか?」
掠れた声で尋ねるが、少女はゆるゆると首を振ってそれを否定する。
「――気持ち、良いです……先生……」
快楽に潤んだ瞳で見つめられ、ぞくぞくとした欲望が全身を駆け巡る。
袴の中で自身が痛みを覚えるほど熱くなっているのを感じながら指を動かす。熱くぬかるんだそこをかき回すように
ゆっくりと動かし、まといの表情に苦痛がないのを確かめながら抜き差しするように擦りあげる。
「あ……ぁあ……ん――」
頬を真っ赤に染め上げ、再度口元に手を当てるまとい。自分の愛撫でこんなにも彼女が感じてくれることが、ただ嬉しい。
もっともっと感じて欲しい。沈める指を一本増やし、同時に秘豆への刺激も再開する。
「ふ――ぅうん――っ!」
ほっそりとした足がもがくように震えた。指を動かすたび、自分の体の下で細い体が跳ね上がる。
元から白かった手がさらに真っ白になってしまうほど強くシーツを握り締め、襲い来る快感の波に耐える少女。
その髪を愛しげに撫でながら、蜜にまみれた秘豆をぐり――と押し潰すように強く擦った。
「う――ぅう―――――っ!!」
押し殺した叫び声を上げながら大きく背を反らせてまといが達した。指を締め付ける秘所の動きに思わず熱い吐息を漏らす望。
少女の細い体が数回痙攣するように震え、だらりと弛緩する。そうっと指を引き抜くと
掌までとろりと暖かい蜜が滴った。
焦点の定まらない目でぼうっと天井を見上げ、胸を大きく上下させて荒い息を繰り返すまといの顔を覗き込み
そっと汗ばんだ頬にキスを落とす。
「大丈夫ですか?常月さん……」
自分に従って健気にも声を抑え続ける彼女の姿に嗜虐心をくすぐられ、調子に乗って攻めすぎたような気がする。
ゆっくりとこちらを見たまといの目はまだ絶頂の余韻にぼんやりとしていたが、小さくこくりと頷いて
「……だぃ、じょうぶです……」
と呼吸の合間に応えた。力の入らない手を何とか持ち上げるようにして、望の体に腕を回す。
「大丈夫、ですから、先生……」
弱々しい声を聞き取ろうとその口元に耳を近付けると、少女はわざと望の耳に熱っぽい息を吹きかけるようにして囁いた。
「……下さい……先生の……欲しいです……」
「―――――」
断れるはずもない。ないのだが。
「本当の本当に……いいんですか?」
乾いた喉から搾り出すようにして発した言葉にまといが一瞬きょとんとした表情を見せ、ぷっと吹き出す。
「もう、何なんですか先生、今更……」
「た、確かに今更かも知れませんが、貴女が後悔するようなことがないように聞いておかないといけないんですっ」
「私、後悔なんてしませんよ」
そう言ってこちらを見上げてくる目は、とても穏やかで。
「私は糸色先生が大好きですから、いいんです。絶対に後悔しません、賭けてもいいです。
だって私、先生のお傍にいられて――」
――こんなに、しあわせなんです。そう動いた唇に噛み付くように口付けた。
角度を変えて何度も何度も夢中で愛しい少女を味わいながら自ら袴の紐を解き
乱雑に押し下げたそれを蹴り放つようにして脱ぎ捨てる。
自分も貴女が傍にいてくれてこんなにも幸せなのだと、そう伝えたかった。
けれど口に出せば、それは男女の情事の合間によく囁かれる睦言のような薄っぺらなものにしか聞こえなさそうで
結局言葉よりももっと本能に近い部分でまといを――彼女の心と身体を求める。
着物の前をはだけて下着を下ろし、今までにないほど熱く滾った分身をとろんとした目で
見てくるまといのスカートを捲り上げて彼女の下着も脱がせてしまうと、大きく開かせた少女の足の間に割って入った。
秘所は先程絶頂を迎えたばかりでまだ十分潤っている。ひくつくそこにゆっくりと先端を押し当てると、ん、と
押し殺した喘ぎ声とともに僅かに体を震わせるまとい。頬をそっと撫でてやりながら、掠れた声で
「……いいですか?」
と尋ねると、小さく頷いた。
「はい……先生、いらして下さい……」
こちらも頷き返してまといの細い腰を両手で押さえると、ぐっ――と腰を押し出した。
そこは何のためらいもなく望を呑み込んでいく。まるで、ずっとずっと長いことその瞬間を待ち侘びていたかのように。
「んっ――あぁあっ!」
深くまで繋がりあったまといの口から抑え切れなかった悦びの声が上がった。
愛しい男から与えられる快楽に震える体を、望が抱き締める。
「……っ、はぁっ」
息を荒げ、少女の髪に顔を埋める望。熱く絡み付いてくる頭の芯が痺れそうな快感に
夢中になって突き上げる。2人の結合部から上がる、ぐちゅぐちゅと湿った音。
「ぁ、んぁっ、あっ――やっ!?やぁんっ!」
唇で髪をかき分け探り当てた耳にしゃぶりつくと、まといが悲鳴じみた嬌声を上げた。同時に
きゅんと分身を締め付けられ、その動きに奥歯を噛み締めて耐える。
「っ……常月さん、耳、弱点ですか?」
さっきのお返しとばかりにわざと息を吹きかけながら耳元で囁いてやると、首を反らせて少女が反論した。
「やぁっ、くす、くすぐったいだけっ……ひゃっ!やぁ!だめ、駄目ですっ!」
小刻みに突きながら耳を舐め上げ、甘噛みしてやる。涙目で喘ぎながら頭を振って逃れようとするまとい。
代わりに首筋に舌を這わせながらセーラー服をまくりあげ、自分の動きに合わせて揺れる膨らみを揉みしだいた。
硬く尖った先端の突起を押し潰すようにこね回し、擦り上げると、まといの中がそれらの愛撫一つ一つに
細かく反応した。震えるように広がったかと思えばうねるようにまとわりつき、望のものに吸い付いてくる。
制服姿のまま乱れる少女の姿に、肉感的な興奮だけではなく精神的なそれすら覚えて、頭の中が沸々と煮立つようだった。
「ふぁっ、あ、あぁっ、せんせい、せんせ――」
抱きついてくる少女の自分を呼ぶ口を、己のそれで塞いだ。自分はここにいると教えるように。
自分が振り向けば、いつでも彼女がそこに立っていたように。
彼女が顔を上げれば、いつでも自分がそこに立っていられればいい。
それだけで彼女がどんな獣道でも歩いていけると言うならば、それがきっと自分の役割なのだ。
「――まとい……」
唇を貪りながらうわ言のように漏らした言葉に、少女の目が大きく見開かれた。ぽろり、と涙が落ちる。
「せん……せ」
「――くっ」
「――んぁっ!ふぁ!ゃぁ、ああっ!」
震える細い腰を抱え上げ、そのまま激しく最奥を突き上げる。つぅ、っと汗が一筋頬を流れ落ち
顎で雫となってぽたり、とまといの首筋に落ちた。濡れた肉が擦れ合う淫らな音がどんどん大きくなっていく。
激しい動きに泡立った蜜が結合部から溢れ出てはシーツを濡らす。
痙攣するように蠢きだした下半身の感覚と、がくがくと震えだした白い太股に、少女の限界が近いことを悟った。
「っ、せ、せんせ、も、だめえ――っ!」
切羽詰った声。腰を抱えた望の腕を白い手が掴み、着物の上からがり、と爪を立てた。だが、それが決して静止ではないことを
望は知っている。だから、彼女を労わるようにそっと腰を撫でるだけで動きを止めようとはしなかった。
飢えた獣のようにひたすらにまといを求め、上り詰めていく。
「――ぁ、あ、ぅぁ、ああぁあぁああ――っ!」
ぽろぽろと涙を零しながらまといの全身ががくがくと震える。望を包み込む秘所がぎゅぅっと収縮し、射精を促すように絡み付く。
「――っ!」
最後の理性を振り絞るようにして自身を引き抜くと、ぐったりと脱力したまといの白い下腹部目掛けて
己の欲望を放った。びゅく、びゅくと数度に渡って勢い良く吐き出される白濁が横たわったまといの素肌を汚していく。
「……あ……」
大きく胸を上下させながら、自分のセーラー服やスカートまでも汚したその白い液をほっそりとした指でのろのろと掬い取って
「……せんせい、あたたかい……」
そう呟いて潤んだ目で幸せそうに笑う少女に、肩で息をしながら口付ける。
――5時限目の終了を告げるチャイムが、どこか遠くの音のように聞こえた。
「よし、と」
放課後の保健室。きゅ、と袴の紐を結び終えて、満足そうにまといが微笑む。
着物と袴、いつもの彼女のスタイルを見ながら、望は疲れたようにため息をついた。
いや、実際疲れたのだが。
「どうなさったんですか?先生。元気がないですね」
「……あんなことした後で堂々と教室に行くはめになった私の身にもなって下さい」
まあ、まといに愚痴っても仕方のないことだとは分かっている。担任として受け持ちのクラスのHRを行うのは
至極当然のこと、その上まといの制服を汚したのは他ならぬ自分だ。彼女がテストが終わったら着替えようと
あらかじめ教室に置いていた和服を持ってくる役目も――誰かに頼んで『まといちゃんのセーラー服、汚れたんですか?』と
尋ねられた時、まともな受け答えができる自信がない以上――自分がやるしかない。
だが、校内で、教え子と、結構というかかなりというか100%本気であんなことやそんなことをした直後に
他の教え子達の前に何食わぬ顔で出て行くのは――想像以上に、疲れた。と言うか、無理だった。
「……死にたい……」
声は上擦るわチョークは折るわ、挙句の果てに生徒の名前を間違えて呼ぶわ、明らかに挙動不審だった
HRでの自分を思い出し、ぐりぐりと窓に頭を打ちつけながら呻く望の後ろにそっと寄り添うまとい。
「死ぬときは、ご一緒させていただきます」
「……そんな風に言われたら、死ねないじゃないですか」
「死ねなくならないと、お困りでしょう?先生」
図星を突かれて沈黙する望の後ろでくすりと笑うまといが窓に映った。着物の袖を口元に当てて笑うその仕草に
一瞬、目を奪われる。
「……どうなさったんですか?」
「いえ……」
くるりと振り向けば、きょとんと自分を見上げてくる愛しい少女。
爽やかな黄色の着物に深緑の袴、時節柄卒業式か一歩間違ったコスプレかという服装を見ながら、ふわりとした笑みが浮かんだ。
「ああ……やっぱり常月さんは、制服よりもそちらの華やかな装いの方が似合います」
望の言葉に、かぁっとまといの頬に赤みが差した。恥ずかしそうに俯いて片手を頬に当てる。
「そんな先生……次は和服で乱れて欲しいだなんて、先生がお望みなら私は何時でも」
「言ってません!そんなこと誰も言ってませんから!!
絶望した!ささやかな褒め言葉すら捏造フラグになる男女関係に絶望した!!」
そもそも別に次回も着衣じゃないといけないとかそういうことはないわけでいや待て何を彼女のペースにはまって
次回とか考えてるんですかそれは確かに和服も悪くはないですけどだから待てその方向性は極めて危険です
今ならまだ間に合いますから戻ってきなさい落ち着くんです糸色望素数を数えなさい――
「先生」
固まってぐるぐると思考を巡らせる望の胸にとん、と軽い感触。まといが頭をもたせかけ、目を閉じる。
当たり前のようにその体を抱き締める自分に驚き――ああ、これでは彼女の言う次も遠くなさそうだ、と勝手に赤面した。
「私、浪人します」
「は?」
思わず素っ頓狂な声を上げ――すぐに彼女が進路のことを話しているのだと気付いて、慌てて首を振る。
「い、いえ、いきなり浪人なんて言い出さないで下さいよ。とりあえず今からでも進学を希望するのは遅くないですし」
「進学なんてしませんよ」
まといの返答に心中で首をひねる。てっきりテストの件があったから進学を諦めた結果の浪人と思ったのだが。
「就職浪人することに決めました。卒業してすぐにでも就職したいんですけど、それは私だけでは決められませんから」
「はあ?」
ますます訳が分からない。眼鏡の奥で目を瞬かせる望の顔を見上げて、幸せそうに笑う少女。
「先生、永久就職ってご存知ですか?」
一瞬ぽかんと口を開け、見る見る耳まで真っ赤に染まる顔を片手で押さえて
「……本当に、貴女の愛は重いですねえ……」
言った男は、呻くような口調と裏腹にどこからどう見ても彼女と同じくらい幸せそうで。
「あんなに熱っぽく『――まとい』なんて囁いてしまわれる先生に言われたくないです」
「んなっ!?い、言ってませんよ私!言ってませんよね!?」
「いいえ、確かにおっしゃいました。まさか覚えていらっしゃらないんですか?
でもそれだけ夢中になって下さったっていうことですね、うふふ、嬉しいです」
「夢中とか言わないで下さーい!!
って言いますか優位に立ち過ぎです!何で貴女そんなに余裕しゃくしゃくなんですか!?」
「だって、先生のお気持ちをちゃんと知ることができましたもの」
惚れたら負け、そんな名言を思い出して思わず苦笑する。この場合彼女も自分に惚れているのだから
自分1人が負けっぱなしというのは割に合わない気もするが、考えても仕方がない。
つい昨日までは自分の後ろにあった少女の体を抱き締める腕に少しだけ力を込める。いずれ手を取り合って
同じ道を進んで行ける――かも知れない少女。
「お傍にいますよ、ずっと」
誰にともなく呟いたまといの声は、きっと一緒に進んで行けると、そう望に応えているようだった。
数時間後。
こそこそ保健室のベッドシーツを洗濯していた望が交に見つかり、その挙動不審っぷりに交は呆れるのを通り越して
かなり本気で望を命の病院に連れて行こうとしたりするのだが、まあ、オンエアされない話の1つ。