――今日はアイツがいない。
「……よし」
盗聴器に繋がっているヘッドフォンを耳から外し、まといが何かを決意したかのように呟いた。
日頃から恋心が募って望の部屋や付近の様子を盗聴していたまといが、いつものように今日も自室でイヤホンを耳にあてていた。
すると、いつも望の傍にいて自分の恋路の邪魔をする霧が、今日はまだ宿直室には顔を見せていないことを察知したのだった。
――決行するのは今だ。
まといは宿直室を急襲した。
冷え込みの厳しい冬の夜のことだった。
晴れ渡った夜空に寂しく輝く月の傍に、星が一つ、寄り添うように瞬いていた。
☆
浴室の前まで来た。中から水音がする。
そっと戸を開き、脱衣場に滑り込む。
――ザバァ……シャァ――――……
中の人物が浴槽から上がったようだ。続けてシャワーの水音がし始めた。
これまで盗聴した経験からすると、望が髪でも洗い始めたのだろう。
脱衣場には望の服が畳んで置いてあった。他には服は見当たらない。
私の先生は一人で風呂に入っている。
――よしっ!
まといは素早く衣服を脱ぎ捨て、一気に風呂場に侵入した。
そして望の後ろから抱きついた。
「ひあああ!」
望は物音がするやいやないきなり後ろから抱きつかれ、心底吃驚した。
そして、闖入者がまといであることに気付き二度驚いた。
「つ、つ、常月さん!?」
「お背中流しますね」
まといは素知らぬ風に受け流した。
当初は単に愛する望と一緒に入浴することしか考えていなかった。
が、望の情けなくもカワイイ声を耳にして、ちょっとした悪戯心がムクムクと頭をもたげた。
「……失礼」
手早く湯桶で湯を浴びると、石鹸をたっぷり泡立て、自分の胸や腹に塗った。
そして望の後ろから首に手を回し抱きついた。
「ち、ちょっと!」
望の狼狽した様子に満足感を覚えながら、まといは自分の胸を望の背中に押し当て、揺さぶり始めた。背を洗い始めたのだった。
望は、なにか柔らかい物が二つ自分の背で動いているのを感じた。
若い頃のやんちゃな経験から、背中で何が起こってるかは朧気ながら分かる。
だが、今、後ろで動いているのは自分の教え子なのだ。
「な、何してるんですか? 普通に洗って下さい」
「これが普通ですよ」
まといは、そのまま担任の肩に手をかけ、上下に乳房をむにゅっ、むにゅっと擦り付けていく。
いつの間にか乳首が尖ってきていて、それが背中と擦れる感触が無性に気持ち良い。
胸の先からわき出る快感が全身に広がっていくのを自覚した。
☆
「ああ……ああ」
妖しい感触に、望は思わず喘いでしまった。
すると、肩に掛かっていた手が静かに胸に回ってきた。
そうして細い指先が望の胸板を這い回り、こちらからも淫靡な触感をもたらしてくる。
時折指先が乳首を掠めると、男なのについ声が漏れてしまう。
「ひぅ……」
まといの指の動きはこれに留まらない。
そればかりか、時折明らかに胸を揉んでくる。
そうしながら、ますます自分の乳房を望の背に強く押しつけ、情熱的に動かしていく。
「あ、あなた、男の胸を揉まないでください!」
思わず抗議するが、まといはどこ吹く風である。
そのうち、望の腹に手を回してきた。
「じゃあ、下の方も洗いますね」
やや掠れた声で告げると、まといは再度石鹸を手に取り泡立てた。
そして、しばらく腹をゆるゆると撫で、指先で臍をくりくりと穿っていたかと思うと、固くなりかけていた絶棒を無造作に掴んできた。
「ひあああ!」
「しーっ! 声を出すと聞かれちゃいますよ。それとも見せつけちゃいますか?」
まといの艶っぽい声に、望の声は小さくなった。
こんなところを霧に見られたら一大事である。
「そ、そんな……止めなさい、常月さん。……お願いですから、あぅ」
だが、まといはわざと派手な音を出しながら茎を握り、絶棒を優しく、だが情熱的に扱き始めた。
――くちゅくちゅくちゅ……
「くっ……ん……やめて下さい……」
たまらない摩擦快感が絶棒を襲った。
男として枯れ始めていた筈の器官がたちまち熱を帯び、硬度を増す。
まといの指が触れ、往復する箇所から気の遠くなるような快感が生まれてくる。
そして、その快感が、背中に押し付けられ、自由に形を変えている若い乳房の感触により増幅される。
いや、まといに抱きつかれていること自体によって増幅されてしまう。
――こ、このままでは……くぁあ!
☆
まといは、自分の腕の中にいる望が時折身を捩らせるのが愛おしかった。
自分の胸や腹が密着している望の背から、愛する人の体温が直に伝わってくるのがこの上なく幸せなことに思えた。
そして、望の分身が自分の愛撫によって元気になり、時折ひくつくのがたまらなく嬉しかった。
まといは今やすっかり猛々しくなっている絶棒をますます情熱的に扱きたてた。
そんな教え子の想いの篭った愛撫は確実に絶棒を捉えていた。
腰の奥で生まれた射精感が全身に広がっていく。
太腿の筋がぴくっ、ぴくっとひくつく。
足の爪先をきゅうっと丸める。
望は根本でたぎっている発射欲を懸命に堪えていたが、ついに音を上げた。
「もう、もう……勘弁して下さい」
――くちゅっ、くちゅ。
「先生、いいんですよ。どうかそのまま」
「ああ……風呂場が汚れちゃいます。堪忍してぇ……あぁ」
――くちょ、ちゅぷっ。
望の背筋をぞくぞくとした射精感が駆け上り、発射を覚悟した瞬間、まといは不意に手を離した。
望の快感に喘ぐ姿を正面から見たくなったのと、自分も胸から発する快感に我を忘れそうになったのだ。
まといは手を離すと望に声を掛けた。
「前も洗いますね」
「……!?」
望はまといの真意を図りかねたが、白い涙を一滴垂らしただけで、何とか発射を堪えることができた。
一瞬物足りなさも覚えたが、とにかく教え子によって射精に導かれるという屈辱は避けることができ、安堵した。
☆
まといは望に向き合って膝に跨った。
自分の乳房を望の胸に重ね、ゆっくり擦り合わせ始めた。
「ちょ、ちょっと!」
望は思わず自分の目の前で動いているまといを見つめた。
――うっとりとした表情だ。
そのうっとりとした表情の中心にある燃えるような瞳が自分を見上げている。
そのまま近づいてくる。
しなやかな腕が背に回される。
――接吻されてしまう。
唇が触れ合っているだけなのに無性に気持ちいい。
やや下を向きかけていた絶棒が角度を取り戻した。
先や茎がまといの尻や陰部にぽくぽくと当たる。
やがてまといの舌先が侵入してくる。情熱的な動きだ。
望の口内を彷徨い、愛する人のの舌先を探り当てるとひしと絡みつく。
舌を絡め取られた望は観念したようにまといの肩を抱きしめる。
そこで初めて彼女の肩が冷えていることに気付いた。
――これはいけません。風邪を引いてしまいますね。
望は洗面器で湯をまといの背中にかけた。
「せっかくですから、私も背中を流しますよ」
望はタオルに石鹸を含ませるとまといの背中を擦り始めた。
☆
「とにかく湯船に浸かりましょう。それでは風邪を引いてしまいますから。さあ」
どうせ逃げられないと観念したのか、望は自らまといを誘った。
向かい合って入るには狭すぎる湯船である。
まず二人で湯船に立った後、望が肩までつかり、あぐらをかいた。
そして、その上にまといに座るよう促した。
まといはしずしずと体を沈めてくる。
座ってしまうと、背中をぴったり望につけ、安心しきったように頭を担任教師の肩に載せる。
――ほうっ……
まといが安堵のため息を漏らす。
望の手がまといの前に回り、白い腹の前で組まれた。
しばしの間、静寂が二人を包んだ。
まといは愛する人との二人きりで密着した入浴、という雰囲気に酔いしれ、目をつぶった。
できれば、いつまでもこうしていたいと思った。
☆
「温まりましたか」
望がまといの耳元で静かに訊ねた。
「はい」
まといが目を閉じたまま呟く。
「そうですか、それはよかった」
望の手がさわさわと移動し始めた。
かすかな水音がし、湯の表面が波打った。
「じゃあ、もう少し温まってもらいましょう」
望の手がまといの胸を軽くやわやわと揉み始めた。
「……ん」
まといは望の手が与えてくれる心地よさに陶然とした。
むにむに、と全体を穏やかに揉み込んでくれる。
指の腹で乳首を撫でてくれる。
――ああ、いつもの先生だ。決して女体を荒く扱わない。
どこまでも優しく柔らかな愛撫であった。
やがて、片手が下に移動していき、まとい自身を上から優しくなぞり始めた。
「あ」
敏感な部分が隠れている所を上からぐりっ、ぐりっと控えめに押さえていく。
「あん……」
まといは喘いだ。
そのまま円を描くように刺激を続けている。
胸も相変わらず適度な具合に揉んでいる。
まといは愛する人に抱かれたまま、愛する人の手で絶頂に達する幸せを噛みしめていた。
☆
「あ……あぅ……っく……」
まといはもうすぐ達しそうになり身を捩じらせた。
だが望ががっちり抱え込み、逃がさない。
「うぁぅ……ああ、先生、せんせい、……もう、もう……」
「いいんですよ。そのまま、ね」
「あああ……せ、せんせ……はあああんっ!」
まとい、ついに望に膝に抱かれたまま極みに達した。
体を一瞬強張らせた後、ぐったりと望にもたれかかった。
☆
ところが、望はまといが達した後もさらに愛撫を続行した。
「ひぁ!? 先生、ちょっと待って」
「だめです」
望はまといの耳に吹き込むように囁くと、可愛い耳をぺろっと舐めた。
「ひぅん!」
「男子の入浴している所に女子が一人で侵入するなどという振る舞いは、ものすごく危険なことなんですよ。
二度とそんなことをしないよう、身に沁みて分からせてあげます」
こう言って望は指先をスリットの中に潜り込ませ、既に熱を帯びて赤く腫れている箇所を直にぐりぐりと刺激し始めた。
「はぅ! ああん」
まといはたまらず身を激しく捩らせた。
だが、望は膝で彼女の体を挟んで固定し、退路を断った。
そうしておいて、すでに固くなっている乳首をきゅんっと軽く摘んだ。
「ひいっ!」
まといは背を反らせた。
「ああ、先生、もう堪忍して」
「もっとです。もっと分からせてあげます」
――ぐりぐり。ぐりぐり。
「はああん……」
一度達して敏感になっているところを続けて刺激され、まといはしきりに身をくねらせ、のたうつ。
膝を閉じ、望の愛撫から逃れようとする。
だが、望はその度にまといをしっかり抱きかかえ、逃がさないようにしておいてさらにぐりぐりと押し潰し、まといの性感を追い詰めていく。
まといはまたも昇りつめようとしていた。
「か、堪忍して……せんせい、かんに……あああああっ」
まといは全身を震わせながら再度目くるめく絶頂へ達した。
☆
だが、望はなおも甘い刑罰を続行した。
「まだです。ほらほら」
――ぐりぐり。ぐりぐりっ。ぐりぐり……
「いやぁ……あっ、あん……はぐぅ」
「どうです。キツイでしょう。苦しいでしょう。
もう二度と男子の風呂に忍び込んではいけませんよ。
でないとこんな目に遭うんですから」
望としては珍しく、下の尖りをじかに摘んで捻った。
「ひゃああああうん!」
体を電撃が走り抜けた。目の前に火花が飛び散った。
そこをさらに指で大きく転がされる。
受ける快感が大きすぎて一息つきたいと思うのに、望はそれを許さないでさらに快楽を与えてくる。
まといは望の指技に翻弄された。
ふいに体を裏返しにされ、望と向き合う形にされた。
「最後に串刺しの刑です」
望はそう宣言すると、まといの腰を掴み、絶棒をまとい自身にあてがった。
そうして、先端を徐々にめり込ませてきた。
「くぁあっ!」
まといはついに侵入してきた絶棒の感触に背を弓なりにのけぞらせた。
――お、奥まで来てるぅ……
奥の奥までずぶずぶっと挿入され、尻を下から支えられゆさゆさと揺さぶられる。
時折「の」の字を書くように捻られる。
そのたびに中を絶棒が擦り上げる。
擦れたところから痺れるような快感が渦のように生じ、全身を巻き込んでいく。
度重なる絶頂感で、意識が飛びそうになる。目の前が時々白くなる。
「ああ、あぅ、ん……か、かんに……せ、せんせえ、かんにん……」
「駄目です。男の怖さをもっと知りなさい。……ほらほら」
「あああああん」
こうして、まといはさらに望に責められ、湯船の中の熱気でのぼせているのか、望に与えられている気の遠くなるような快感で目が眩んでいるのか分からなくなった。
全身を熱気と快感に包まれ、脳内が陶然としたころ、下半身に望の放射をおぼろげに感じた。
「いやあああ……ああん……」
ついに、まといは浴槽の中でその日最大の絶頂に達した。
そして望に抱きかかえられたまま気を失った。
☆ ☆
翌日の夜、望はやはり入浴していた。もちろん一人である。
浴室に鍵などかけない。
昨日の今日だから、まさか風呂に鍵なんてかけなくていいだろう、と思っていたのだった。
ところが、湯船に浸かってのんびりしていると、外で浴室の戸が開く音がした。
続いてかすかな衣擦れの音がした。
何より、すりガラス越しのシルエットには見覚えがある。
――ま、まさか……
「先生〜」
喜色満面でまといが浴室に入ってきた。
「つ、常月さん。あなた……」
手早く湯を浴びると、望の浸かっている浴槽に自分から入ってきた。
「失礼します」
そうして、昨日とは違い、望の膝に向かい合わせに跨った。
驚愕している望の顔をひたと見つめた。
「先生……私、今日も罪を犯してしまいました。ですから、どうか刑罰を与えてください」
「そ、そんなぁ〜」
まといが両腕を首背中に回し抱きついた。そして接吻をせがんできた。
「ん――」
「ちょ、ちょっと! 常つ……わむぅ」
ついに唇を奪われた望は、まといの柔らかな肌の感触と十代の少女の体温を全身に感じながら、ぼんやりこう考えていた。
――明日からは小森さんと一緒に入っていた方がいいんでしょうか……って、それは違うし! とほほほ……
まといの舌先が、予想外の事態に戸惑っている望の舌先を絡め取った。
そして、自分の乳房を望の胸板に押し付けてきた。
ひょっとすると、今晩は望が甘い罰を受ける番なのかもしれない。
──[完]──