はぁー、と深く長く息を吐いた。  
じんわりと全身に広がっていく痺れ。  
指一本動かすことすら煩わしくて、私は心地よい泥の中に沈んでいく。  
ぼーっと天井を見上げながら余韻に浸る私の髪が先生に撫でつけられた。  
とても優しい目が私に向けられている。  
その視線の主である先生が、にこりと微笑んで、私の頬に手を当ててキスをしてくれた。  
 
この人は、エッチした後が一番優しいかもしれない。  
そう思うのは、単にそのときの私がこの上なく幸福だからかな。  
ただ頬に触れられているだけだというのに、すごく気持ちがよくて、  
顔が緩むのを抑えることは出来そうにない。  
 
「拭きますね」  
ティッシュを数枚、重ねて手にした先生が言った。  
私は膝を立てて脚を開き、行為でべとべとになっているあそこを先生に拭いてもらう。  
とんでもなく恥ずかしいけど、先生にこうされてるときが、困ったことに結構好きだったりする。  
 
「よし…と。さ、お風呂入ってきなさい」  
「うん」  
体を起こし、立ち上がろうとした…が。  
「……先生、いっしょに入ろ?」  
思い直し、先生の手を取って言った。  
お風呂の間だけだというのに、私は先生と離れたくなかった。  
 
シャワーで、私の中をすすぎながら、先生が言う。  
「まさか、あなたから誘ってくるなんてね」  
「んっ……すいません…」  
「いえいえ、素直で…」  
ちゅっと軽く、先生におでこにキスをされる。  
「かわいいですよ。でも、私以外にそんな所見せないでくださいね」  
「あたりまえです」  
ぎゅっと抱きつくと、先生は優しく抱き返してくれた。  
 
先生と向かい合って湯船に浸かる。  
その間になぜか、黄色いアヒルのおもちゃが浮かんでいた。  
これを交くんが喜びそうには見えない。  
ということは、先生用?  
まさかね、と思っている私の目の前で先生が指でアヒルをつついて遊び出した。  
どうやら本当に先生用だったようだ…  
 
子供っぽい所があるとは思っていたけど、これほどとは。  
でも、そういうところも好きなんだよね、と心中で呟きながら  
流れてきたアヒルを指でちょん、と先生の方に返すと先生もまた押し返してきた。  
そのまま二人でアヒルをつつきあう。  
まったく、何をやっているんだろう私達は。  
端から見れば確実にバカ二人だというのに、なんだか楽しくてやめられない。  
 
湯船から出て、椅子に腰掛ける先生の正面に立ち、先生の頭をわしゃわしゃと泡を立てて洗う。  
先生の髪は、私のよりずっと滑らかで、ちょっと羨ましい。  
「んー…上手ですねぇ、木津さん。こういうのもいいもんですね」  
「ええ」  
「これからは一緒に入ることにしましょうか」  
「うん…」  
代わって、先生に頭を洗ってもらう。  
長い髪に少し手間取ったようだけど、先生が大事に扱ってくれたのが嬉しかった。  
 
お風呂から上がった私達は、お互いの体をバスタオルで拭きあい、寝巻きに着替えた。  
そして、お布団の上にあぐらをかいた先生と向きあって座って、ドライヤーをあててもらう。  
「熱くないですか?」  
「きもちいい…です」  
「よしよし」  
と、先生が私の頭を撫でた。  
 
先生は、二人っきりのときには、どうも私を子供扱いしたがる傾向にあるらしい。  
今、私が着ているパジャマだって、上下共に先生に着せられたものだ。  
そう、文字通り着せられた。  
でも、そんな風に扱われるのが…お風呂上りに体や頭を拭かれるのも…  
パジャマを着せられて、ボタンを一つ一つ止められたりするのも…嫌いじゃない。  
もしかして、先生はそんな私の気持ちをわかって、こういう事をしているのかもしれない。  
「……先生って…結構大人なんですね」  
「なんですか結構って……でも、あなたこそ意外とあまえんぼですよね」  
「いいじゃないですか、こんなときくらい…」  
ぎゅっと先生の服を掴むと、先生はふふ、と笑った。  
 
「で、前髪どうします?」  
「前髪?」  
「ええ、やっぱりきっちり真ん中分けにします?」  
「真ん中分け………いえ、先生の好きなようにしてくれていいですよ…」  
「……ん、わかりました」  
 
 
「電気、消しますよ」  
「はい。おやすみなさい」  
「おやすみなさい、っと」  
パチっと先生が電気を消した。  
 
 
おやすみなさい、先生。  
大好きです。  
 

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