「私、糸色君のこと、嫌いじゃないな」  
 千里の三分の一告白が決まった。  
 その場に居合わせた皆は、あまりのあざとさに言葉もない。  
あざとすぎて、あたりに花吹雪まで舞い散る始末だ。  
ところが、花吹雪に交じって妙に質感のある小さなものが望の背後を飛んでいる。  
――蛾だ。  
 その場にいる一同の中で、倫だけが、望の背後を舞っている小指の先ほどの淡い色をした蛾を発見した。  
見るうちに、その小さな生き物は望の背中に停まった。  
もちろん、望本人も絶望ガールズも気付いていない。  
 
――これはマズいぞ……  
 
 彼女達に知れたら一大事だ。それでなくとも「ブームにのってガとか入ってたら嫌だし」などと言っていた連中である。  
とりあえず、望を女生徒達から隔離せねばならない。倫の思考はフル回転した。  
 
「そ、それでは、お待ちかねの試食コーナーじゃ」  
「わーい」  
「そうこなくっちゃ」  
 幸い、絶望ガールズは試食に飛びついてくれた。  
――助かった。やれやれ……  
 倫は心中で冷や汗を流しながら兄の教え子たちを試食へ案内しようとした。  
 
「では、私も」  
 
 ところが、まさにその望が当然のようについて来ようとした。これには倫は慌てた。  
来られては意味がない。ぴしゃりと断った。  
 
「お兄様はダメ」  
「えー!?」  
 
望は素っ頓狂な調子で不満を表した。いかにも心外という調子である。  
 
「試食室は絶対に男子禁制ですの」  
「そ、そんなぁ」  
 
 望は歳に似合わない情けない声を張り上げた。  
 
「あーあ。私も食べたかったな。せっかくの愛しい妹のチョコを食べたかったな」  
 
 傍目に分かるほどがっくりと肩を落としている。  
壁に頭を押しつけてくりんくりんさせながら、眼前の宙に指で「の」の字をいくつも書いている。  
高校教師の威厳など、どこを探してもない。  
 
「昼間もダメで、今もダメ、か。あーぁ……」  
 
     ☆  
 
 すっかり落ち込んでいる望の様子を見て、奈美・晴美・あびるがひそひそと囁き合った。  
 
「先生ったら、また拗ねてるわよ」  
「いつもの『絶望した!』って決めゼリフも出ないわねぇ」  
「絶望先生、本当に甘い物が好きなのね」  
 
 ここで、倫が口を開いた。  
 
「どうしても欲しいのですか?」  
 
どうやら、「愛しい妹」という部分に反応したらしい。  
 
「ええ。欲しいです! お願いしますよ倫さん」  
 
 望は、飼い主にすがりつく子犬のような目つきになって実の妹の膝に取りすがった。  
目を潤ませてさえいて、いじましいことこの上ない。  
 
「では、その服をお着替えになって。衣服を女子のものにすれば問題ありませんわ」  
「へ?」  
「まあ、悪いようにはしませんわ。――ちょっと」  
 奥に向かって手をポンポンポンと叩いた。  
 程なく黒スーツ黒サングラスの屈強な男たちが望を取り囲んだ。  
「お兄様をここのコスチュームに着替えさせよ。例のアレでな」  
「ははっ」  
「ちょっと……倫さん!?」  
「お兄様、では後ほど」  
 
 望はアッという間に麻袋に詰めこまれ、別室へ連行されていった。  
 
――やれやれ。手を三度打ったら……などという、しょーもない約束事でも作っておくものじゃな。助かったわ。  
 
「あれ? 先生は?」奈美が尋ねた。  
「お兄様とは、後で合流する手筈にした。さあ、皆さんはこちらへどうぞ」  
倫は先に立って工場の奥の扉を開けた。  
 
      ☆  
 
 試食室はこぎれいな和室であった。  
 奥の窓からは見事な枯山水がその渋い姿を見せている。  
 
「わぁ、素敵。」  
「なかなかのモノじゃん」  
「さすが糸色家ね」  
 
 面々は口々に感心した様子で褒め言葉を口にした。  
 
「お待たせ」  
 
 倫が入ってきた。庭園を眺めていたあびるが、さっそく倫に訊ねた。  
 
「なぜチョコレート工場に日本庭園が?」  
「糸色家の接待用じゃ」倫は即答した。  
「なるほどね」  
 
 絶望ガールズもすぐ納得した。  
確かに、どことなく頼りない兄たちよりは倫の方が糸色家の雑事をこなすのにはるかに適任である。  
 倫が言葉を継いだ。  
 
「あれはな、ぜんぶ甘いもので出来ておるのじゃ。  
敷き詰めてあるのは、砂ではなくて、極小の金平糖、ホワイトチョコフレークじゃな。  
その上からパウダーシュガーなどをまぶしてある」  
「へえぇ」  
 
一同は感心することしきりである。  
千里が花瓶に活けてある花を指さした。  
 
「じゃあ、ひょっとして、あれも?」  
「うむ。花から花瓶まで、全部、細工菓子じゃ。出入りの和菓子職人に作らせた、伝統の技じゃな」  
「凄いなあ」  
「本物にしか見えないわねえ」  
 
 ここで、千里が倫とこそこそ相談を始めた。どうやら、次の茶会用に和菓子の花を使いたくなったらしい。  
 ちょうど話が纏まったところで、扉の方からノックの音がした。  
一旦、倫が扉の外に消えた。  
 
     ☆  
 
 一呼吸して、ドアが静かに開いた。  
 入ってきたのは、銀色に輝く大ぶりのトレイに色とりどりのチョコレートを山盛りにして持ってきたメイドさん……の姿をした望と、  
兄に腰縄を打ってその端を持っている倫である。  
――ひゃああああ!…………  
――なあに、アレ!?…………  
 望の女装姿は時々目にしていた絶望ガールズも、今日の本格的なメイド姿には度肝を抜かれた。  
メイド服はコスプレ用の安手の物ではなく、本物の黒のウェールズメイド服だ。  
足が細いので白のレースリボン付きニーハイソックスがよく似合うし、男の癖に絶対領域が眩しい。  
おまけに、マスカラはもちろん、薄化粧まで施され、控えめではあるが真っ赤なルージュまでひいてあるのである。  
それに、よく見ると、可愛いカチューシャやエプロンには所々に小さなダイヤが縫い込まれていて、時折キラキラとまばゆい光を発している。  
 
「よくお似合いだこと」  
「先生、職業変えたらどうですか」  
 
あまりに似合いすぎているので、一同は担任にからかいの言葉をかけつつも、嫉妬心を隠しきることができなかった。  
そんな心中を知ってか知らずか、倫は兄にてきぱきと命令を下す。  
 
「さ、早うメイドはお客様におもてなしをするように。  
 ほらほら、さっさとお飲物をお出しして。あちらに一式揃っているから。  
 コーヒーや紅茶は豆や茶葉の種類まできちんとお客様の好みを伺うこと。よいな」  
「ううう……」  
「ちゃんとし終わったら後でたくさんチョコレートを差し上げますわよ」  
「ううう……」  
 
 ここで、奈美・千里・あびるが顔を見合わせていたが、奈美が側にいたペンギンを指して言った。  
 
「ねえねえ、倫ちゃん」  
「何じゃ?」  
「この子にでも食べられるチョコってあるかしら?」  
「うむ。動物用の菓子は以前から研究しておったのでな」  
 
倫がトレイの隅にある細長いパッケージをつまみ上げ、ひらひらっと見せびらかすようにすると望に手渡した。  
 
「ペンギンには、鮎の形をした若鮎チョコがよかろう。  
 鮎の香味エキスを乳酸菌飲料に溶かし込んでチョコにしたものじゃ」  
「……それ、おいしいの?」  
「まあ、やってみるがよい。ささ、メイド」  
「……」  
 
 望が試しにペンギンにやってみると、皆の驚いたことに、つるつるっと平らげたではないか。  
おまけにフリッパーをパタパタさせ、望の足を突っついてお代わりまで催促している。  
 
「痛っ、分かったから、あげますから、あ痛っ、ちょっと待って」  
――ペンギンに毒味させてみたけど、大丈夫みたいね。  
――人間が食べてもオーケーみたい。  
 
 望の泣き言をよそに、皆が安心してトレイに載ったチョコに手を伸ばし始めた。  
 純銀製の大きなトレイの上には、紅、白、緑のパッケージに包まれたごく普通のチョコやら、  
「ぬまんちゅをのまんちゅ」と題したチョコレートドリンクやらが所狭しと乗っている。  
もちろん、職人が丹精込めて製作した粒よりの高級チョコも盛り沢山。  
チョコそのものは一級品であるので、味にうるさい絶望ガールズたちにも好評だった。  
 
     ☆  
 
 倫がメイドの望に別のトレイを取ってこさせた。  
 
「こちらは試作品なのだが、効果はあるぞ」  
 
 トレイには、ピンク、赤、紫などのチョコがそれぞれ小さな山を作っている。  
千里が何気なくピンクのチョコを手に取り、裏返してみた。  
見ると、「バストを整えるチョコ」と小さく記されている。  
 
「効くの?」  
「うむ。サイズだけでなく、形も良くする効能があるのだな。さよなら胸も矯正されるぞ」  
 
 この淡々とした説明にかえって魅力を感じたのか、千里、芽留に加えて、  
巨乳で定評のあるカエレやあびるまでもが手を伸ばした。  
もちろん奈美も抜かりなく2個食べた。  
 その他、スリーサイズ調整チョコ、産毛を薄くするチョコ、ニキビの発生を抑えるチョコ、お通じを整えるチョコなど、  
主に女性用のチョコが次々と提供された。  
もちろん、チョコだけではない。  
チョコを乗せるための薄手のスポンジケーキ、極上のサワークリーム、  
そして甘みに鈍感になった舌を矯正するための塩昆布まで置いてある抜かりなさである。  
各種の一級品のコーヒーに紅茶が始終望の手により提供されているのは言うまでもない。  
 
「ここからは研究段階の試作品なのだが」  
 
さて、トレイには新たに真っ赤なパッケージのX2、X3、X10とだけ書いてあるチョコと、  
パッケージに次の判じ物のような模様が印刷されているだけのもの  
↑→○/○→↑  
○→+/+→○  
この2種のチョコに加え、その他の簡素でいて何やら怪しげな風体の物が出された。  
ここで倫の袂が震えた。  
 
「む……ちと失礼。しばし席を外します。お兄さま、後はよろしく。皆様、どうぞごゆるりと」  
 
何か外部から連絡があったのか、倫が皆を残して奥に消えた。  
 
     ☆  
 
 ところで、ここまで、望は誠心誠意メイドとして教え子たちに奉仕してきたつもりである。  
それなのに、いくら待ってもチョコの一欠片さえ食べさせてもらえない。  
我慢しきれなくなった望は、倫がいない隙にとばかり、目の前の試作品をわし掴みにした。  
そこへちょうど倫が奥から戻ってきた。  
 
「あらあら、お兄様ったら……」  
 
仕方がないな、という調子で望の方に目を遣った倫は、兄が食べようとしているチョコのパッケージを見て顔色を変えた。  
 
「だめ、お兄様! そのチョコは」  
 
だが、望は聞く耳を持たない。  
 
「ふ、ふん。今更遅いですよ。我慢しすぎてもうくたくたですからっ」  
 
あたふたと包みを破ると、中身をぽいっと口の中に放り込んだ。  
 
「ああ……何と言うことを」  
「ムグムグ……身内を褒める訳じゃないですが、けっこう美味しいじゃありませんか。  
 最初から大人しく出してくれれば……」  
 
続けて別のチョコをむしゃむしゃ頬張った。  
 
「そ、それも……もう、どうなっても知りませんわよ」  
 
倫の思わせぶりなセリフにも望は無頓着である。  
 
「モガモガ……たかがチョコで何を大げさな」  
 
自分がたかがチョコで大人げない振る舞いに及んだことはすっかり忘れているらしい。  
 だが、すぐに天罰覿面!  
 
──ズクッ!  
「はうぁっ!」  
 
 下腹部に鈍い一撃が来た。  
いったい今のは何だと思っていると、続けてきつい第二波がやってきた。  
──ズクッ! ズクン、ズクッズクッ、ズックッズックッズクズクズクズク……  
 ジョーズのテーマが下半身の中で響いているかのようだ。  
恥ずかしい部分がみるみるうちに疼き始め、どうにも止まらない。  
おまけに絶棒が痛いほど屹立してきた。  
妹や女生徒の前だというのに、望はそそり立つ股間を押さえてとうとうその場にうずくまってしまった。  
 望の変調に、さすがの絶望ガールズも気付いたようだ。チョコを手にしたままの者もいるが、皆が担任を心配そうに見つめた。  
「先生!?」  
「いったいどうしたの?」  
「……盗み食いなんかするから、罰が当たったのじゃ」  
倫がやれやれといった風に言った。  
「罰〜!?」  
「こうなっては仕方ない。お兄様の行く末を見守るしかない」  
「どういうこと?」  
奈美の問いかけに、倫は答えをはぐらかした。  
「まあ、しばらく見物しようではないか」  
「?」  
 
      ☆  
 
 うずくまっていても、股間の疼きが収まることはなかった。  
それどころか、胸までもがジンジンと音を立てるかのように痺れ始めた。  
そして動悸に合わせ甘美な電流が生じては脳に強い快感をこれでもか、これでもか、と訴えかけた。  
――な、なんでこんな時に!  
 望は歯噛みする思いだった。  
だが、意に反して下腹部と胸の妖しい疼きは激しさを増すばかり。  
おまけに全身がカアッと熱くなってきた。  
しかもその火照りが妙に心地よい。  
「ああぁ……いったいこれは、倫さ……くあぁっ」  
 とうとう望は両腕を太腿で挟んでその場で転げ回った。  
人の目がなければ自分で自分を激しく慰めたに違いないほどの耐え難さであった。  
「うううう……あうぅん……はあぁぁッ」  
 メイド服のまま、スカートがめくれるのにも頓着せず、畳の上を悩ましい声をあげて転げ回る担任教師。  
その姿はあっけにとられて見つめる教え子達に不思議な嗜虐心を呼び起こした。  
      ☆  
「はァ、はァ……」  
 望はまだ荒い息をついているが、発作は収まったようだ。  
それを見て取った倫が兄に声をかけた。  
「お兄様。お立ちになってみて」  
 望はおずおずと立った。  
その立ち姿に、絶望ガールズはざわついた。  
 ブラウスの上からはっきりと分かるほど胸が膨らんでいる。  
いや、ブラウスがはち切れんばかりになっている。  
ボディラインもくびれるべきところはくびれ、円みを帯びるべきところは帯び、まるでストラディバリウスを思い起こさせる流麗さである。  
それに絶対領域の眩しさと言ったら!  
どこからどう見ても超一流の女になっているではないか。  
「まさか……先生が食べたチョコって」  
「そう。性別転換チョコじゃ」  
奈美がおずおずと口にした疑問を、倫があっさり肯定した。  
「性別転換チョコ〜!?」皆が一斉に叫んだ。  
「そんなもの開発してたの?」カエレが呆れたように吐き捨てた。  
「うむ。この部屋は接待用と言うただろう。  
 接待と言っても、いろいろあるからの」  
倫がいたずらっぽくウインクをしてみせると、皆は声を失った。  
もちろん、望もまさかの事態に対応しきれず、倫の言葉にショックを受けている。  
そこへさらに倫の残酷な宣告が続いた。  
「ちゃんとパッケージに♂→♀/♀→♂と記号が書いてあるのを見落としたのじゃな、我がお兄さまながら情けない。それに」  
倫まますます楽しそうに言葉を継いでいく。  
「もう一つお兄さまがむさぼったのは、『増感チョコ』じゃ。  
 二人の秘め事を行う際に、感度を増感させるチョコ……工場で「カカオの%で好き度を知らせるチョコ」について申しただろう? その裏バージョンじゃ。  
 だから、いろいろな感度用のがあるのだが……」  
ここで倫が、兄が残した包み紙を点検して言った。  
「あらあら……X10だとは。よりによって一番強力なものを食べてしまわれたのね、お兄さまったら。おほほほ」  
倫はさも楽しそうに笑った。  
「今、お兄さまは平常時の10倍まで感度がアップしておる。たぶん少し触られただけでもう……」  
ここで、倫はいきなり望の背後から胸をむんずと掴み、無造作に揉み立てた。  
「あっ、いやぁ! 止め、止めなさい、倫! あうぅ……あぁん!」  
望は止めたが、甘い声を漏らした。おまけにもう腰がガクガク震えている。  
「おほほほ……妹に胸を揉まれて感じるなんて、お兄さまったら恥ずかしい」  
「ああ、言わないで……」  
「その分ではきっと」  
ここで倫は望のスカートをめくり上げ、下着をずり下げた。  
躊躇わずに指を兄の秘部に這わせ蠢かせると、たちまちぴちゅぴちゃという音が聞こえてきた。  
「くあぁ!」  
「あらあらやっぱり、びちょびちょだこと。だらしないですわ、お兄さま」  
「ひん。ひゃん。ひゃうぅん!」  
 
 倫がスカートをめくり上げたままなので、絶望ガールズもついその部分に目がいった。  
自分達が望を相手にしたときに見たあるべきものがなく、自分たちと同じモノが息づき、ヌラヌラとして時折ひくついている。  
だが、それは、しっとり濡れているくせに、成熟した女性のものではなく、まるでまったく使ったことがないかのような可憐さも秘めているように見える。  
「はあぁっ」  
 ようやく倫が指を離した。兄の垂らした汁に塗れた指を一舐めしながら、望に残酷な宣告をした。  
「お兄さまがお食べになった性転換チョコは、男性には完璧に、そして不可逆的に作用しますの。  
もし食後3時間以内に体内に男の精を注いでもらわなければ、一生そのままですわ。  
お兄さま、カッコ悪い! おほほほほほほほほほほほほ」  
倫の高笑いが響きわたった。  
「いやあああああ!」  
「どうせ男として末期だったことですし、いいじゃありませんか、お兄さま。  
 いや、もうお姉さまとお呼びした方がいいかしら?  
 女の嗜みを一から仕込んで差し上げますわ」  
「いやああ! 誰か……誰か助けて下さいぃ! すんすん……」  
望はへちゃっと女の子座りをすると、とうとう両手で顔を覆い泣き出してしまった。  
     ☆  
「すんすん……すんすん……」  
肩を震わせてすすり泣いている望を前にし、絶望ガールズが額を寄せ合って相談を始めた。  
「どうする?」  
「やっぱり男に戻した方がいいかしら」  
「じゃあ誰が先生に精を注ぐの?」  
「久藤くん?」  
奈美が名前を出した。  
「それはそれでいいような……」  
晴美が同意しかけたが、千里がぴしゃりと否定した。  
「それはだめ。」  
「そう? じゃあ、絶命先生はど」  
「晴美っ!」  
ここで、  
「じゃあ臼井は」  
と誰かが言いかけたが、、  
「もっとダメ!」  
と全員一致で言下に否定された。  
「それに、今から男子を呼んだんでは間に合いそうにないし」  
あびるが冷静に言った。  
「うーん……」  
一同は考え込んだ。  
「ねえ、倫ちゃん」  
「どうにかならないかなあ。さすがにこれじゃあ可哀想だし」  
「そうよ。実の兄だしさぁ」  
「一応、私たちの先生だから」  
「そうか? むぅ……」  
 口々に言われ、倫が渋々助け船を出した。  
「実はの、性転換チョコは女にも部分的に効果があるのじゃ。  
 まあ、いわゆる竿が生じて、擬似的な精を体内で生じだけだがな。  
 他の女性的な部分はそのままじゃな。」  
「じゃあ話が早いじゃない。誰かがそのチョコを食べて……」  
カエレが言いかけたところを、倫が制した。  
「それがの」  
 
ここで倫がしばらく言いよどんだ。  
「……それがの、部分的にしか効かぬと言ったろう。  
 実は、その擬似的な精は、男の10分の1の濃度しかない。  
 そして、一度精を漏らせば効果はおしまい。女子に戻ってしまう。  
 まあ、その分手軽に男性化を楽しめるとも言えるのじゃが……」  
 ここで倫はトレイの上をチョコを数えた。  
「まだ性転換チョコは10個余っている。  
 つまり、お前たちが男になって代わる代わるお兄さまに精を注げばよい。  
 先に言うたように、注ぎさえすればお前たちは元の女の姿に戻るからの。  
 精は体内に入りさえすればよいから、どこから注いでもよいぞ」  
「どこから注いでもいい」  
「晴美。なに目を輝かせてるのよ。」  
「でも忘れるな。3時間以内だぞ。もう少し経ったがな。  
 
「でも私たちは9人しかいないわ。足りないから絶望先生元に戻らないのでは」  
「心配ない。10人目は確保してある」  
「まさか、倫ちゃん、自分のこと?」  
「いや、……連れて参れ」  
ここで倫が奥に向かって手を打った。  
 

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