ドアを開け、微かに消毒薬の匂いが混じった空気の中へと足を踏み入れた。  
冷房の効きは控えめだったが、外に比べればとても快適に感じられる。  
ドアを閉めると、どこかで鳴いている蝉の声が遠ざかるようにして消えていった。  
少し湿ったように重い質感で、しかし清潔に保たれている事が分かる待合室のベンチとカウンターが目  
に入ってくる。  
子供の頃から馴れ親しんで来た者にとっては、懐かしさを憶える空間かもしれない。  
それとも、注射針の記憶を思い出すなどして、寒気を感じてしまう人の方が多いのだろうか。  
 
外に比べて少し薄暗い受付の前では、カウンター越しに看護士の女性と小学生くらいの子が何やらやり  
取りをしていた。  
「……そうね。うん。動物病院に連れて行ったほうがいいと思うよ。──ゴメンね、ここ、人間のお医者さ  
んだから…」  
まだ、ようやく背がカウンターに届くかどうかの小さな子は、短くお礼を言うと、回れ右をしてバタバタと足  
音を立てて外へと出て行った。  
よく見ると、両腕で小さめの犬を一匹抱えている。  
……すぐに尻尾に目が行ってしまうのは、しっぽ好きの習性とも言える所以だろう。  
どんな時でも趣味を優先する─── こんな自分が割と好きだった。  
 
──ただ、今の犬には尻尾が二本生えていたように見えたのがとても気になる。  
少し硬そうな尻尾がもう一本あったような……  
 
「…あの? 初診の方でしょうか?」  
受付の女性に声をかけられ、いつの間にか玄関を向いた姿勢のまま、受付の前まで進んでいたことに気  
がつく。  
全身包帯だらけで初来院した患者に、彼女は少なからず戸惑っているようだった。  
カウンターの上にあった受付用紙を手に取り、ペンを走らせる。  
……やはり利き手じゃないと書きづらい。  
それに気がついた彼女が手を伸ばし、押さえてくれた用紙に名前を書き込んだ。  
『小節 あびる』  
 
 
「小節さん、お入りください。」  
ベンチに腰を下ろして数分と経たないうちに、あびるは診察室へと呼ばれた。  
さすがに流行っていない事に定評のある病院だな。と、松葉杖の固い音を響かせながら部屋へ入って行く。  
差し向かいで会う事は初めてだったが、何故か何度も会った気がするのは、やはりこの二人の顔立ちが  
似ているからだろう。  
兄弟そろって細面で端正な顔の造りをしているが、命の方にはやや険があって固い印象をうける。  
すすめられた丸イスに腰掛けながら、あびるは相手の顔を見つめてそんな事を考えていた。  
「──小節さん。…望の所の生徒さんでしたね? 今日はどうされました?」  
確かに学校の制服を着ているのだが、一目で自分の弟の教え子だと気が付いた命に、少し驚く。  
しかしよく考えてみれば、話した事は無くても、包帯とギプスで体のあちこちを固めた生徒がいれば印象  
に残るのは当然かもしれない。  
医師である彼にとっては、特にそうだろう。  
「どうしました…?」  
「あ……」  
考え込んでいて反応しなかったあびるに、命はカルテを持ったまま小首をかしげて再び尋ねる。  
あびるは少し姿勢を正すと、ぽつりと口を開いた。  
「…なんとなく傷跡が痛くて。」  
「なんとなく? ちょっと曖昧ですね… 今、怪我をされた訳ではないのですね?」  
うなずいて見せるあびるに、命はカルテを机の上に置いて眉を寄せる。  
「もしかしたら古傷が開いたのかもしれませんね。とくに痛む場所は?」  
「…よく分かりません。あちこちが痛んで。」  
首を振ったあびるに命は軽くうなずいてみせる。  
 
「わかりました。ちょっと診てみましょう。では、包帯を解きましょうか。」  
「はい。」  
ゆっくりと立ち上がると、自由な方の手を使い、おもむろにスカートのジッパーを下ろす。  
「……君、ちょっと? 何をしているのかな?」  
眉をひそめて制止の声をかける命に、あびるは全く表情を変えずに答える。  
「…脱がないと包帯が解けないから。」  
事も無げにそう言い捨て、するっとスカートを下ろし、包帯だらけの下半身と下着を露出させる。  
顔色こそ変わらないが、命が視線をそらしている事がわかった。  
「……しかし、この包帯はどうやって巻いたんだい?」  
「包帯が伸びて。」  
「え……?」  
「いえ…… 普段は家の人に手伝ってもらってるから。」  
命は少し首を傾げたが、あまり突っ込んで聞かない方がいいと判断したのか、それ以上は尋ねない。  
ふと、あびるがセーラー服の上着の裾を片手で掴んで命を見ている。  
「脱ぐの……。手伝ってもらっていいですか?」  
「あ……? ああ……」  
何かが間違っているような不信感を覚えながらも、命は上着を脱ぐ事に手を貸す。  
片手のギプスと三角巾が邪魔をし、腕がほとんど上がらない状態に苦心しながら何とか袖から腕を抜いてゆく。  
 
ほとんど命に任せたままで、彼の動きを見ていたあびるがぽつりとつぶやいた。  
「…先生。質問していい?」  
「……ん? 何を、かな?」  
手を止めずに答えた命に、あびるは言葉を続ける。  
「両手骨折で入院してる時に女の人が見舞いに来るのって……男の人は嬉しい?」  
命の動きが一瞬止まる。  
微かに眉間に皺を寄せ、脱がせた上着をあびるに手渡した。  
「いや、解らないよ。そんな経験は無いしね。……唐突に何を?」  
すました顔で、手渡された上着を器用に片手で畳むと、あびるは包帯の巻かれた自分の両腕を見せる。  
「両腕骨折した女の子が自分を訪ねてくるのって、どうなのかなあと思って。」  
「なぜ、そんな事を私に?」  
やや機嫌を損ねたようで、命はぶっきらぼうな口調で答える。  
腕の包帯を解きながら、そんな命の顔を覗き込むようにあびるは口を開いた。  
「先生、前にうちのクラスのセカンドオピニオンになりたがっていなかった? だから聞いてもいいかなって。」  
命の表情が気まずそうな物に変わり、少しズレた眼鏡を指で直した。  
「……いやまあ、あれは、付けられるよりは自分がなりたいと言うだけで。」  
「じゃ、セカンドオピニオンしてもいいですよね?」  
「あ……まあ……」  
如何ともしがたいといった曖昧な笑みを浮かべ、命が頷いた。  
肩の包帯に手を伸ばし、あびるは少し曇った表情になる。  
「…先生が、他の女の子と仲良くしているんです。」  
「──え?」  
 
唐突な内容に、ガーゼと消毒薬を取り出した命の手が硬直した。  
「…私が良いと言ってくれたのに。いつも素っ気無いし。」  
「あ── 君たち、そういう仲なのか?」  
「うん。」  
迷い無くうなずいて見せたあびるから戸惑いがちに目をそらし、あごに手を添えて短く唸ってみせた。  
「……あいつめ。教え子に手を出すとは…… 自分から誘って突き放すとは何を考えている…」  
少し鋭い目つきになって呟く命に、あびるは小首をかしげてみせた。  
「やっぱり似てますね。考え込んだ時の顔とか…」  
「ん? そうかな…… って、何をしている?」  
視線を戻してちょっと微笑もうとした命の顔が、またすぐに強張った。  
話している間に上半身の包帯を殆ど解き終えて、残るはサラシ代わりに胸に巻きつけた部分のみになっ  
ている。  
その部分にあびるが手を掛けると、包帯が緩んだ拍子に押さえつけられていた大きな膨らみが柔らかそ  
うにゆさりと揺れた。  
 
「何をしているのかね!? 全部脱いで、とは言っていないだろう?」  
少々怒りの色を滲ませた命の声に動じる事なく、あびるは大きな目を一度まばたいた。  
「半裸の方が好きなんですか?」  
「好き嫌いじゃなくて! 怪我している所だけでいい!」  
「はあ。」  
気の無い返事をしてみせ、あびるは一度緩んだ包帯を巻きなおした。  
 
引っ掻き傷にしてはやや大きすぎる切り傷や、同じ場所に必ず二・三本ある傷跡を見、不審そうに眉をし  
かめる命だったが、早々に詮索する事を止めたようだった。  
手早く傷口を消毒し、軟膏の様な物を塗ってガーゼで包み、真新しい包帯を巻いてゆく。  
「すまないね。いつもは女性の助手がやるんだが、今日は──」  
「…平気ですよ。触られるくらい。」  
抑揚の無い声で返されて、命は苦笑を浮かべる。  
「先生は触れたことないな── 私に。」  
再び硬直する命。  
首を振って気を取り直すと、黙々と作業的に手当てを続ける。  
「…どう思います?」  
「いや…… 単純にチキンなだけだろう。」  
「そう……」  
ぽつりとしたあびるの返事に、命は気になったのか包帯をテープで止めながらチラリとその瞳をのぞく。  
澄んだ大きなあびるの瞳からは何の感情の揺れも感じ取れない。  
「………」  
気がついたあびるに見つめ返され、命は多少引きつり気味の笑いを返した。  
背中に冷たい汗が流れ落ちた事がわかる。  
 
「じゃ…… 次は足の怪我の様子を見せて下さい。」  
あびるは一つ頷くと、真横にあるベッドの上に手を付き、体を支えながら移動して上に転がる。  
横たわったあびるの、長い足に巻かれた包帯を解きにかかった時、自分の下着に指をかけたあびるを  
目ざとく見つけて素早く手首を掴む。  
「だから脱がなくてもいいと……!」  
「でも、ここの包帯が解けませんよ。」  
あびるの示す通り、地肌に直接巻かれた包帯は一旦下着を取り払わないと外す事は難しそうだ。  
そして、包帯の白色に微かに滲んでみえる赤色は、この下に怪我の部位があると教えている。  
「…お医者さんでも気になるんですか?」  
「あ……いや。」  
命は言葉に詰まり、あびるから視線をそらしてしまう。  
「──ハサミで切ろうか。どの道、新しい包帯に変えるからね。」  
すぐに冷静さを取り戻したようで、デスクの上からハサミを取り出し、あびるに向き直る。  
あびるは体を横たえ、相変わらずその表情は変えぬまま、唇が少し動いた。  
「──もしかして、先生も……チキン…」  
その言葉に命はやや鼻白んだ様子を見せ、コトリと音を立ててデスクにハサミを置くと、あびるの横に立  
ち無造作に下着の両端に手をかける。  
「………」  
全く動じる様子も無く、無言のあびるにやや気圧され気味だったが、手を止める事なく両足を通して下着  
を脱がしてゆく。  
引っ込みがつかなくなったとは言え、何だかとんでもない事をしているような意識を覚える。  
部屋の冷房はそれなりに効いているはずだが、命のひたいには嫌な汗が浮き出ていた。  
 
「……ちょっと傷口が化膿しかけているかな。まあ、まだ暑いし。なるべく汗をかいたら包帯を取りかえて  
、蒸れたままにしないようにして──」  
わざとだろう。淡々とした口調で、こちらに背を向けて横になっているあびるに説明してゆく。  
あびるは、スポーツでもしているような引き締まった背中と、くびれたウエストを惜しげも無くさらしていた。  
足を閉じて向こうを向いているので、大事な箇所は見えない状態だが、形のよいヒップは丸見えの状態  
だと言うのに、当のあびるはそれを気にする様子ない。  
 
あまりに堂々としていると言うか、無頓着と言うのか。  
その姿には、むしろ、清清しさすら覚える。  
はずみで見てしまわないように視点をぼやかしながら、あびるの脚を取って包帯を巻き付けてゆく。  
 
壁に顔を向けたままのあびるが、目だけを動かし、視界の隅にうつる命に話し掛ける。  
「…先生。」  
「ん?」  
「このまま、ごろんと転がったら、慌てる?」  
そう言いつつ、体を動かしかけたあびるに、本気でやりかねない事を悟った命は反射的にその体を押さ  
えつけた。  
「あ………?」  
「あ! いや失礼!」  
押さえようと伸ばした手で掴んだ場所は、あびるのヒップだった。  
すぐに手を退け、謝る命をじっと見つめる。  
「先生。」  
「あ、ああ… はい?」  
「……手、汗ばんでる。暖かいね。」  
一瞬、立ち眩みでもおこしたように眩暈を覚えた命だったが、すぐにあびるに背を向けるとデスクに座り  
カルテにペンを走らせ始める。  
「──じゃ、もう、服を着ていいから。」  
ワンテンポ置いて、背後であびるが起き上がる音を聞きながら、怪我のあった箇所と状態を書き込んでゆく。  
あびるが自分の真横の丸椅子まで来て、そこに座ったのがわかった。  
さりげなく顔をそらす。耳には、下着を履き、服を身につけていく布磨れの音がしていた。  
 
「……さっきより痛みがマシになりました。それに、ちょっと、快適な感じがする。」  
「それは何よりです。……じゃ、お大事にして。」  
軽く命に頭を下げて、立ちあがりながら松葉杖に手を伸ばす。  
──が、そこでバランスを崩して命の方へと倒れこんでしまった。  
「きゃっ……!?」  
「おっ……!? と!」  
とっさに命が受け止めたおかげで、あびるは床に突っ込まずに、その腕に抱えられた。  
「ごめんなさい…… 転ぶつもりは無かったんだけど…… 私、運動神経なくて。」  
命に抱えられて立ち上がりながら、あびるはちょっと照れたような微笑を浮かべた。  
「…いや。大丈夫?」  
初めて表情らしい表情を見た気がして、命は少し戸惑いながらも笑い返す。  
そんな命をじっと見つめ、あびるは軽く首を振ってみせた。  
「ええと…… 何かな?」  
間近で顔を見つめられ、やや気まずさを感じながらも、命は静かな口調で尋ねる。  
「……じゃ、私、帰りますね。」  
「あ… そうだね。お大事に……」  
立ちあがり何事も無かったように背を向けるあびるに困惑しつつ、命はいつも患者を送り出すように声をかけた。  
 
ドアを開けた所で、ふと、あびるが立ち止まり、首だけで振り向いた。  
「……また…… お願いします。」  
ちょっと笑ってそう言い残し、あびるは診察室を出てドアを閉めた。  
松葉杖の固い音が、受け付けの方へと遠ざかってゆく。  
 
急に全身に疲労感が広がり、命はデスクに寄りかかるようにして力を抜いた。  
手を伸ばして戸棚から鎮痛剤を取り出すと、コップの水で飲み下し、溜め息をつく。  
「……望よ。頼むから、私にツケを回すなよ。」  
痛むこめかみを押さえながら、目を閉じる。  
「まあ…… お前も大変なのは少し分かった…」  
眼鏡を外し瞼を指で押さえながら、命は誰に言うとでもなく、溜め息と共に呟いた。  
 
 
 
「暑……」  
夕方近くになっても気温はさほど変わらず、蒸し暑い空気が溢れ、真っ直ぐな日差しが肌を射る。  
蝉の大合唱も相変わらずに、衰える事ない声を響かせていた。  
 
病院を出たあびるはすぐ横手の路地へと入り、建物の裏手の方へと回りこむ。  
すでに自分を待っていた様子で、日傘をさした着物姿が目に入る。  
「…あ、倫ちゃん。こんな感じでよかった?」  
「うむ、上出来でしたね。…そうそう、約束のものじゃ。」  
片耳に付けていたイヤホンを外すと、持っていたポーチから布で包まれた物を取りだし、あびるに見せる。  
あびるは自分のお下げ髪の編み目の中から、ボタン電池のような物を取りだし、包みと交換するように手渡した。  
包みの端を少し開けて中を確認すると、あびるは嬉しそうに笑顔をつくり、包みを大事そうに抱えなおす。  
「…誰にも見つからぬようにな。見つかっても責任は負わぬぞ?」  
「わかってる。」  
うなずいたあびるを一瞥し、倫はイヤホンに繋がっていた携帯電話程のサイズの機械をポーチへとしまった。  
「むう…… 命お兄様はあまり、からかい甲斐がなさそうじゃの…。もっと面白い事になるかと思いましたのに。」  
「…色気で釣るのは無理だと思うけど。職業柄、慣れてるんじゃない?」  
「慣れている……とは、どんな事じゃ?」  
訝しげに尋ねる倫に、あびるはちょっと考えてから答える。  
「……つまり、もう、色んな女の人が何人も、絶命先生の前でハダカを見せているからだろうね。」  
あびるの言葉に、倫の顔色が一瞬真っ赤に染まり、険しい表情を見せた。  
それを悟られないためか、慌てて横を向いて不機嫌な口調で言い返す。  
「…お兄様は、そのようなふしだらな事はせぬ。」  
「まあ、見なれている感じはしたな。…知り合いだからの照れはあるかもしれないけど。」  
倫はますます不機嫌な顔になり、口を尖らせて黙りこむ。  
「他に、からかいポイントを探したほうが早いかもしれないわ。」  
「…うむ。あ! ──それはそうとして、最後のあれは何じゃ!? 予定にはなかったぞ!」  
「あれはただの事故だけど……」  
説明するあびるに倫はまだ不満げな様子で眉を寄せている。  
「まあ今回だけは大目にみよう……! まさか、どさくさ紛れに命兄様に鞍替えなど考えておらぬな?」  
「ちょっといいかなって思った。」  
さらりと言われた倫は真っ赤な顔で絶句しているようだった。  
 
「……あ、うそだから。」  
「お主が言うと嘘には聞えないのじゃ! それに、私は望お兄様との仲も認めた訳ではないぞ。…このま  
までは、うやむやにされそうなのでハッキリ申しておくが。」  
あびるは少し困ったように口をつぐんで倫の言葉を聞いていたが、やがてポツリと呟く。  
「倫ちゃんも大変だよね。」  
「? 何がじゃ?」  
「…あんな格好いいお兄さんばかりだと。」  
「──っ!?」  
倫は耳まで真っ赤の染め、あびるに背を向けるとさっさと歩き出して行く。  
「…ええい! こんな場所で立ち話などしていては、日に焼けてしまうわ!」  
文句を口にしながら去って行く背中を見て、今度は聞こえないような声で呟いた。  
「……荒れる気持ちも分かるけど。──もっと素直には………なれないか。」  
最初から選ぶ余地の無い倫の立場を一瞬想像し、去って行くその背中にはかける言葉は思い付かず、  
暮れかけた日差しの中へと小さくなってゆくのを黙って見送っていた。  
 
今まで自分の好きなものばかり追いかけていて、考えなかった事がある。  
もしこの先、どちらかを片方だけ選ばなくてはいけない事になったら。  
比べ様がないものでも、離れなくてはいけなくなったら。自分はどうするのか。  
 
一方を、より大切だと選んだ時、もう一つの物が色褪せてゆく──  その様は今は想像できない。  
 
「どうにも……困ったものね。」  
まるで他人事のようにつぶやきながら、遠く離れてゆく倫の姿に自分の背を向ける。  
蝉の声に混じり、ほとんど聞こえない松葉杖の音を立てながら、ゆっくりと歩き出した。  
 
 
 

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