千里×望(仮面教師ゼツボウ)でリリキュアのパロです  
仮面教師ゼツボウと戦い勝利したその後の予告漫画の話のみです  
※バットエンドな悪堕ち微エロなので嫌いな方はかなりご注意下さい  
 
 
「かっ、仮面教師ゼツボウ!!」  
「アハハハハ、久しぶりだな諸君」  
怪しげな仮面に変な杖、まだ記憶に新しいその姿に全員で驚愕した。  
「そんな、倒したはずなのに!」  
「どうしてっ」  
「迷ってる場合じゃないわ。カフカちゃんメルちゃんっ…変身よ!!!!」  
「「了解」」  
 
「あ、ちょっと待って下さい」  
手を上げ変身しようと意気込んでいた所を引き止められ、勢いのまま転びそうになる。  
「もうっ!何よおっ!!」  
「いや、あのですね。今日は千里さん、あなたにだけ用がありまして…」  
急に小声でボソボソと話しかける姿に少し動揺する。  
「ええっ!?ちょっと…みんなの前で…その…どういうことですか!」  
「プレゼントがあるのですよ」  
「え」  
瞬間的にポッと顔が真っ赤になるのが自分でもわかった。  
けれど出てきたものは予想を遥かに超えるものだった。  
「これを」  
「ダ……ダンボール…の仮面?」  
顔の前に突き出されたのは仮面教師がつけているものとは明らかに違い、子供のおもちゃ同然のような代物だった。  
「ちょっと、どういう…ッ」  
「あなたならこの意味わかって下さると思いまして」  
仮面に覆われて素顔まではわからないがきっとニヤニヤといやらしい顔を浮かべているだろう。  
「なに…」  
人を馬鹿にしたのを思い知らせてやろうと仮面を乱暴に掴んで投げつけようとしたところで―――  
「きゃああぁぁぁーーーッ!?」  
「千里ちゃん!?」  
仮面に触れた部分からビリビリと電撃のようなものが全身に流れ込み激しい衝撃が頭の先からつま先まで襲う。  
「確かに、渡しましたよ」  
不覚にも敵である仮面教師に支えられるのを感じながら、意識は暗闇へと消えていった。  
 
私は夢を見ていた。とても幸せだった一時を…  
「ん…ここは?」  
眠い目をしながら体を起こす先生にゆっくりと優しく声を掛ける。  
「おはようございます。先生」  
「千里さん…」  
眩しそうに一度目を伏せながら風に乗りゆらゆらと落ちるピンク色をぼぉっと眺めている。  
「わたしは…何を?」  
「よく眠られてましたよ先生」  
質問には答えずにっこりと微笑んだ。  
すると先生は舞い散る桜を見上げ目を細めながら切なそうに呟いた。  
「長い…夢を見ていました…はっ!なにかこう…大事なことを忘れてしまっているような…むぐっ」  
これ以上言葉を言わせないように、唇に人差し指を押し当てた。  
戸惑う先生の表情が幼く見えた。  
「いいの…もう終わったんだよ全部」  
「あっ…」  
驚きに見開いていた目に優しさが戻るのに時間はかからなかった。  
「はい」  
「先生…」  
「ん?」  
「おかえりなさい」  
 
はい、私は再び帰ってきました」  
「なっ!」  
冷たい声と同時に急に辺りが暗くなって足元さえも見えなくなってしまう。  
「あなたのために…」  
「な、何を言っているの!?」  
「フフフフフ…」  
「違うッ、先生じゃない!あなたは仮面教師ゼツボウ!?」  
「そうです」  
懐からトレードマークの仮面を取り出し不適に笑う。  
「そうよっ、確か私倒れて…」  
では今私は夢の中に勝手に宿敵に割り込まれるのを許すほどに心をさらけ出し無防備な状態にあるということになる。  
相当に危険な状態に立たされているのは間違いない。  
「あのダンボールの仮面は一体…」  
凄まじい衝撃を思い出し身震いしながら問いかけた。  
「これのことですか」  
言いながら仮面教師が手をかざすと、下の暗闇から黒い光を放ちながらそれが現れた。  
「なんかさっきより毒々しくなってるわね…」  
プレゼントすると言っていたがこんな明らかに危険なものを素直に受け取るわけがない。  
「さっきは不覚を取ったけれど、もう負けないわ!変身!!」  
呪文を唱えると辺りに青い光が現れ体をリボンのようなものが覆い全身を変化させていく。  
魔法の力を溢れさせ変身が完了する。  
「あなたは戦う気がないのかしら」  
普段ならしっかりと顔を覆い表情を隠している仮面は手に握られたままだった。  
「いえ…これはこうするのですよッ!」  
突然持っていた仮面をこちらに向かって放り投げてきた。  
ダンボールの仮面の横をすり抜けてブーメランのようにくるくると回りながら飛んでくる。  
「しまっ…!」  
とっさのことに避けることも出来ず仮面は吸い寄せられるように両手の中に納まった。  
 
ドクン!  
「な…」  
覚悟した衝撃は訪れず変わりに頭の中に何かが勝手に入り込んできた。  
夢の中だけあって明白に感じることができる。  
「う…あぁ…」  
(…なにっ?この感覚)  
始めはわけがわからず流れてくるものに対して耐えるのが精一杯だったのだが、  
次第にそれらがなんらかの感情であることが理解できた。  
(もしかしてこれは…せんせいの…)  
仮面を通して一方的に頭を侵し暴れる思考に心が張り裂けそうなほどに痛い。  
(ぜつぼう?)  
先生の絶望が私に入りこんでくる  
まるで世界中の悲しみを集めたような重く苦しい絶望が…  
先生は今までこんな思いを抱えながら戦っていたというの?  
たった一人で…長い間…どのくらいこの過酷な運命と戦っていたのだろう。  
「きゃっ…!?」  
急に体から力が抜けて前に倒れこみそうになる。  
「大丈夫ですか」  
「あ…」  
地面に倒れる前に後ろから支えられ、持っていたはずの先生の仮面が地面に転がっていた。  
「あなたにはまだコレは耐えられない」  
それを拾い上げながらこちらを眺める瞳にしっかりとした意志があるように思えた。  
「先生…!」  
咄嗟に仮面を持った方の腕を取り必死に呼びかけた。  
「この仮面をつければあなたは私と同じになれるのですよ」  
けれど先生から返事が返ってくることはなかった。  
空いたほうの腕で宙に浮かぶダンボールの仮面を取り私の両手に押し付けてきた。  
「あなたは私の事が好きなのでしょう?」  
「なっ…!!」  
心が激しく揺さぶられた。  
わかってる、わかってるのこれが罠だって。  
目の前に居るのは私の好きな先生ではなくて、ゼツボウの仮面に操られている先生で  
私を仲間に引き入れる為だけに感情を利用するような卑劣な感情の持ち主なのだ。  
真実を知ってしまったらもう私に抗うだけの力が無いのをわかってて近づいてきたのだ。  
そんなの許せないに決まっている。  
でもそんなことよりも許せないのは…  
今まで先生が大事だった癖に先生自身のことなんてこれっぽちも考えず戦ってきた私。  
自分の気持ちしか考えていなかった私…  
「あんなに苦しい戦いをもう一度繰り返すのですか?」  
あの時私が苦しんでいた何倍も先生は苦しんでいたはず。  
これ以上先生を孤独に苦しませるわけにはいかない。  
分かち合えるというのならば、少しでも苦しみを軽減させてあげたい。  
「この仮面を受け取ってくだされば、あなたも私も幸せになれるのですよ」  
「わかったわ…」  
膨大な重苦しい絶望を先生がたったひとりで背負い犠牲になって私達を守ってくれていたことを誇りに思う。  
先生の本当の優しさを誇りに思う。  
「…すぐそっちに行くね先生」  
持っていたダンボールの仮面をゆっくりと自分の顔にはめていく。  
「…バイバイ…みんな…」  
優しい二人の仲間を一瞬思い浮かべたけれど、瞬く間に消えていった。  
 
「っ…いやああああああっ!」  
さっき先生の仮面に触れた時とは比べ物にならないほどの絶望と、  
それに抗おうとする魔法の力が体の中でぶつかり合いガクガクと激しく揺さぶられる。  
「体はまだ反抗しているというところですか。仕方が無いですね」  
「はっ…ううっ?」  
 
「千里さん大好きです」  
「―――ッ!」  
その言葉を聞いた瞬間すべての思考が停止した。  
「…あ…ああっ…」  
いつの間にか瞳から涙があふれて仮面に覆われている頬を濡らしていた。  
うれしいのか、かなしいのかその涙の意味はわからないけれど…  
「せ…んせぇ…」  
仮面から溢れ出した絶望がすさまじい勢いでどんどん体を包んでいくのがわかる。  
魔法の力の源が思いであるからこその作戦だった。  
「うぅ…はあぁ…」  
「大丈夫ですよ、そろそろ苦しくなくなってくるはずですから」  
言われてすぐに効果が現れてきた。  
渦巻いていた絶望が段々と甘い痺れを伴う快感へと変わってきていた。  
「な…んで…やあぁ…」  
自分の中にある魔法の力と絶望がいつの間にか混ざり合い馴染んできてそれが心地よく思わず色っぽく息が漏れた。  
ぼんやりとしながららこのまま先生とも心を一つにできたらいいのになと願った。  
願ってしまった。  
「だめ…ですか?」  
心が全て絶望の仮面で覆われてしまった時自分はどうなってしまうのだろう。  
もう今までのように先生のことを愛しく思うことができるかはわからない。  
これが正気でいられる最後かもしれないという事実に気がつきいてもたってもいられなくて、  
精一杯の力で黒いかたまりに覆われている右手を動かしそこに居るであろう先生の方に腕を伸ばした。  
せめて触れたくて力も、残った魔法の思いもすべて込める。  
絶望がすべての快楽となる今その行動はただ体が急速に熱く気持ちよくなっていくだけだった。  
「はぁ…あ、あぁ…はん…っはぁッ…もッ…!」  
「いいですよ」  
欲望の波に意識すべてがのまれようとしたギリギリのところで右手が暖かいぬくもりに包まれた。  
「せ…」  
名前を呼ぼうとしたところではめられていた仮面が外され胸の辺りに置かれた。  
明るい光とともに最も望んだ人がそこに居た。  
「千里さん、私が弱いばかりにこんな…」  
今にも泣きそうな顔で悲痛に叫ぶ先生の顔が見えた。  
「…ッ…あぁ…うっ…」  
言葉がすぐに声にはできず嗚咽のみが漏れた。  
先生が居た。まだここに。  
大丈夫だよ、と強く抱きしめたかった。  
私なんかより強くて尊くて愛しくて本当に大切なんだよと伝えたかった。  
「ふ…は…ッ………ぃ」  
本当はそんな悲しそうな顔させたかったわけじゃないのに、と謝りたくてでもできずに遂に体も心も限界を超えた。  
「ふわあああああ…うううぅぅあああんんんんッ―――!!」  
これで…先生と一緒に…ずっと……  
絶望と幸せで満たされながら仰け反った背中から崩れ落ちていった。  
 
「・・・さん・・・千里さん」  
「あ…せんせい?」  
「気がつかれましたか」  
「私どうしたのかしら…?何か夢を見ていたはずなのだけど…」  
「ぐっすり眠られてましたよ」  
「あっ!も、もしかしてずっと私の寝顔を見てたのですか!」  
「あはははっ、かわいかったですよ」  
「ちょ、ちょっと先生っ!」  
 
「いいじゃないですか、これからは…ずっと一緒なのですから」  
 
千里の足元にはダンボールだったはずの仮面が、完全な仮面となり転がっていた―――  
 

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