四六時中、望の背中に付いて歩いているように見えるまといにも………どうしても望と離れなければならない時間  
というものが、ある。  
 
まずは、家族だけの重要な話があるとかで、望本人から席を外すよう言いつけられたとき。何か大きな異変でも  
あったのか、最近は倫と2人きりで話をすることが多くなった気がする。気にならないと言えば嘘になるが、流石  
のまといも、糸色家の一大事にまで首を突っ込むような真似は出来ない。今はただ、おとなしく様子を窺っている  
ような状態だ。  
次に、あまり大きな声では言えないが、用を足すとき。とは言っても、望が用を足すのであれば、まといは平気  
で男子トイレの中にまで入っていける。問題は………まさか自分の場合に、望を女子トイレに引きずり込むわけに  
はいかない、ということだ。こればかりは、急いで用を済ませて再び望に追いつくしかないのである。  
 
そして、最後が………今。  
「ありがとうございました、またお越しくださいませー。」  
「………ふふふ………。」  
こうして………撮り溜めた写真を現像に回すとき、そして出来上がった写真を受け取り、自室で選別するときだ。  
インスタントカメラ数台分の写真の袋が詰まったビニール袋をぶら下げて、まといは満面の笑みを浮かべながら街  
を行く。着物の袖が優雅に風に舞い、通行人達の視線を集める。  
「また、増えちゃった………私だけの、先生のブロマイド………ふふっ。」  
笑いが堪えられない、といった様子で、まといは知らず知らずのうちにスキップをし始める。一刻も早く望の傍に  
戻りたい、という想いももちろんあるが………新しいコレクションを手にしたときのこの高揚感と、誰も居ない  
静かな部屋でそれを眺め、壁に並べていくときの幸福感は、何物にも変え難いものがある。母親に頼めないことも  
ないのだが、やはり、この感覚は自分で味わいたい。  
「先生のグッズも、ちゃんと整理しようかな………でも、早く終わらせて、先生の所に戻らなくっちゃ。」  
夢見るような幸せそうな眼で、まといはそう言った。  
………ここで、まといの言う『グッズ』とは、例えば、首を吊り損ねて屋上の手摺りに残されたロープであるとか、  
書き損じて捨てられた遺書であるとか、旅立ちセットを補充する為の買い物の際に捨てられたレシートであるとか、  
そういうものだ。断じて、世間一般で言うところの『グッズ』を想像してはいけない。  
「ふん、ふふーん………♪」  
鼻歌混じりで、身体から幸せが溢れているような様子で、まといは家路を急ぐ。歩きながら、既に壁や天井のどこ  
にどんなショットを配置していくか、想いを巡らせる。  
大通りから逸れ、自動販売機が立ち並ぶその前を通り過ぎ、もういくつか角を曲がれば自宅が見えてくる………  
という、その地点に差し掛かったところで。  
 
「やぁ、望と一緒じゃないなんて珍しいね………常月さん。」  
 
突然、どこかで聞き覚えのある、しかしその主の顔を思い出せない声が、まといの背中を呼び止めた。  
 
 
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………まといは、数日前のその出来事を思い出していた。  
今になって考えても、何故自分がこんな目に遭わなければいけないのか、一向に納得ができなかった。  
「(………っ………。)」  
腹の中の感触が、気持ち悪い。教卓の下で息を潜めながら、まといは必死で、その強烈な違和感に耐え続ける。  
すると。その、頭上から。  
「あの、常月さん………。」  
望の声に、名を呼ばれて………まといは初めて、望の脚が眼の前に立っていることに気がついた。慌てて教卓の下  
から顔を覗かせ、望の身体を仰ぐ。  
 
「な、なんですか?」  
「あのですね、今更、席に戻れとは言いませんので………授業にはちゃんと参加して頂けると、先生嬉しいです。」  
まといが首を巡らせて黒板を見上げる。そこにはチョークの白い文字で、古文の文法問題が2問書き記されていた。  
そのうち1問は、まといが気付かぬうちに、指名を受けた千里がきっちりと解答した後だった。  
「ちょっと常月さん!教室に居る以上は、授業にはきっちり参加しなきゃおかしいでしょう!」  
見えないところから、千里の厳しい声が飛ぶ。まといはそこでようやく、自分がもう1問残された問題の解答を  
任されたのだということに気付き、慌てて教卓の下から這い出した。  
まといが、生徒達から見て黒板の右側に書かれた問題と、向き合う。授業はまるで頭に入っていなかったが、望に  
好意を寄せてからというもの、国語の勉強だけには並々ならぬ努力を注いできたまといにとっては、そんな基本的  
な文法問題など、朝飯前だった。  
「え、っと………っ………。」  
まといは一刻も早く教卓の下に戻ろうと、やや雑な字で解答を書き綴っていく………が、そのとき。  
「む………真っ白ですね………。」  
望は突然そう言って、黒板下のレールに置かれていた黒板消しの1つを手に取った。チョークの粉で、もはや文字  
を消した端から黒板が白く汚れていく程に真っ白になったそれを手に、望は、教室左手の窓に歩み寄る。  
「………あ!せ、先生ッ………!」  
ちょうど問題を解き終えたところでまといがそれに気付き、眼を丸くする。  
そして………望が窓を開け、その下の外壁に黒板消しを叩き付けて、白い煙が立ち上った、そのとき。  
 
「あ………っ、ぅ………!?」  
 
呻くような声と共に、まといの身体が、小さく震えた。  
 
 
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数日前。  
「………よし。これが、君の部屋からお借りした、君のコレクションだ。」  
命はそう言って、まといを診療所の地下室まで呼び出す口実に利用したそれを、まといに差し出す。  
数箱並んだそのダンボールの中身は………望の写真と、『グッズ』だった。。  
「………どういうつもりですか、命先生。いつの間に、こんなこと………。」  
「君のお母様の留守に、ちょっと人に手伝ってもらいながら、ね。安心しなさい、1枚残らず入っているよ。」  
「………じゃぁ、それ返して貰って、帰ります。何だか知りませんけど、もう2度とこんな………。」  
「まぁ、そう急ぐな。少し、聞いて貰いたい話があるんだ。」  
命は乱暴に、脚を使ってダンボールをまといから遠ざけながら言った。自慢のコレクションを足蹴にされ不快感を  
露わにするまといの顔を、正面から見据えて………命が、言う。  
「単刀直入に言おう。私は君を、私の奴隷にしたいと思っているんだ。」  
「………………は?」  
言葉の意味を理解しかねて、まといは、やや苛立った様子で首を傾げた。  
「何言ってるんですか?ふざけないでください、私早く戻りたいんです。それじゃぁ………。」  
「待て、待て。本当にせっかちだな、君は。」  
「暇じゃないんですよ私。今だって、先生がどこで何してるのか気になって仕方ないんです。」  
まくし立てるように、きつい口調でそう言われ………それでも、全く動じる様子など見せずに。  
「よし、それじゃぁ………その望の、命に関わる話だと言ったら、聞いてくれるかな?」  
命は、あっさりとした口調で、そんな重い言葉を言ってのけた。まといの表情が、固まる。  
「………なんですって?」  
まといがさきほどまでの勢いを失ったのを見て、命は、小さく頷いた。  
 
「つまり、取引だよ。君がおとなしく言うことを聞いてくれれば、望が死なずに済む。簡単だろう?」  
「ち、ちょっと………ちょっと、待って!先生が、死ぬって………どういうこと!?」  
もはや敬語を使っている余裕など完全に無くして、まといは噛み付くように命に尋ねた。さきほどまでの冷徹な  
態度とは一変、予想外の衝撃的な言葉ににわかに慌て始めたまといの眼を見据えて、命は続ける。  
「おや。望からは、何も聞いていないか………まぁ、それはそうだな。ただの生徒に、そんなことは教えないか。」  
「だから、何なの!?ハッキリ言って!!」  
「なら、お教えしよう………望が抱えている、その生命に関わる重大な病について。」  
生命に関わる、病。その言葉を余りに唐突だとは思いながらも、それを自分の中で完全に否定することが出来ずに、  
まといは顔を蒼褪めさせた。  
「専門的な話は省くが、まぁ平たく言えば『心臓が動かなくなる病』だ。」  
「な、ッ………う、嘘よそんなの!!先生、そんなこと一言も………ッ!?」  
「あいつが、生徒の前でそんなことを言えると思うかね。それが愛する相手なら、なおさらだ。」  
さりげなく、まといの心を煽るワードを織り交ぜながら、命はその………今日、この日の為にでっち上げた、望の  
身体の中にありもしないその病の説明を、続ける。  
「現代医学では、完治させることのできない不治の病だ。それに対抗する薬は、存在するが………。」  
「だったらなんで!?薬があるなら、死ななくて済むんでしょう!?」  
「最後まで聞け。その薬も、病の進行を抑えるだけのもので………しかも、扱いが特別に難しい。」  
「難しい、って………どういうこと!?」  
「分量を間違えれば、死に至る劇薬なんだよ。しかも、その用量も、投与する際の体調に左右される。」  
「そ、そんな………そんな、の………ッ!?」  
「嘘じゃない。そして、望の様子から、それを見極められるのは………おそらく、私だけだ。」  
余りのショックと絶望に、正常な判断能力を失い、いつの間にかその作り話を信じ込んで。まといは、愕然とした。  
愛する人が抱えた、余りに重過ぎる病。そして、長い時間を共に過ごしておきながら、この瞬間まで、自分がその  
ことを全く知らなかったという事実。何重もの衝撃が、まといの心に襲い掛かる。  
そして………次にまといは、更に衝撃的な事実に、気がつく。  
「………ちょっと、待って………それじゃぁ、あなた………?」  
「何だい?」  
「何、って………あなた、先生を、じ、自分の家族を………人質にするって言うの!!?」  
「ああ。あいつは、君に対しての強力なカードになると思ったんだが………その様子だと、大当たりだな。」  
まるでお茶でも飲みながら談笑するときのような、平然とした口調でとんでもないことを口走った命の顔を………  
恐怖におののき震えるまといの双眸が、見つめる。  
「どうして!?なん、で………なんで平気で、そんなこと言えるのッ!?」  
「正直ね………憎たらしいんだよ、あいつが。あいつばっかり、君達みたいな娘に囲まれて良い思いをして。」  
さきほどまでの態度とは一変して、吐き捨てるような調子でそう言って、命は嘲笑するような笑みを浮かべる。  
「昔からそうだった。いつだって、私の方が努力をしていたのに………報われるのは、あいつばっかりだ。」  
「………そんな、ことで………ッ!?」  
「すぐに『病死』させてやっても良かったんだが………幸いにも、この使い道を思いついたものでね。」  
「………あなた、狂ってるわ………だ、だいたい、そんなことしてただで済むと思ってるの!?」  
「少しのミスなら咎められないくらいに、扱いが困難な薬なんだよ、あれは。単なる医療ミス、で片付く問題さ。」  
「そんなことになったら、私が本当のことを言うわ!!警察にも、マスコミにも!!全部、バラすわよ!?」  
「『死んだ教師に一方的な感情を抱き続けたストーカー少女』………そんな人間の妄言を、誰が信用する?」  
「な………ッ………!?」  
「これでも私は、世間的な信用には自信があるんだ。君のような小娘には負けないよ。それに………。」  
「………それに、何よ………!?」  
「後始末のことも、考えてある………君が『後追い自殺』をしたとしても、誰も不審には思わないだろう?」  
「………ッッッ!!?」  
さらりとそう言ってのける命を眼の前にして、まといは、今度こそ完全に絶句した。  
 
命の語った、その話は………病のことも薬のことも、望に対する嫉妬のくだりも、全てがデタラメの作り話だった。  
そもそも、そんな病を抱えている人間が首吊りなんて激しいショックに耐えられるはずもなければ、こんな小さな  
診療所の院長風情がそんな劇薬を扱う資格など持っているはずもない。冷静になって考えれば、すぐには気付か  
なくとも、違和感くらいは感じそうなものだ。望に対する感情も、そこまで強いかと言われればそうではない。  
だが、命にとってはもはや、それはどうでもいいことだった。重要なのは、望の死をちらつかせてまといの精神を  
揺さぶり、どれだけ心からその話を信じ込ませ………交渉に応じやすくなるか。その1点だけだ。恋は盲目、とは  
よく言ったもので………現にそうして、今の自分の全てである望を失うことを想像してしまったまといは、今や、  
完全に命の話を疑うことを止め、ただその恐るべき言葉に慄き震えるばかりだった。  
「さて。それでは、状況が理解できたところで………交渉に移ろうか。」  
「………ッ………!」  
「まぁ、私が言うのもなんだが、ただの一方的な要求になるだろうがね。」  
冗談めかした口調で放たれたその言葉に、まといが、ギリ、と奥歯を噛み締める。しかし、それでももう一言も  
反論や罵倒の言葉を返してこない様子を見て………命は、まといが自分の策に堕ちたことを、悟った。  
「しかし………なに、君とちょっとした遊びをしたいと思っているだけなんだ。そう、怖い顔をしないでくれ。」  
「………遊び………?」  
「………いや、語弊があったかな。君『で』ちょっとした遊びをしたい、と言った方が正しいか。」  
「………何、させる気よ………。」  
怒りと恐れの入り混じった視線を命に向けながら、まといは消え入るような声で呟く。命は、勿体ぶるような遅い  
足取りで、部屋の隅にある戸棚へと歩み寄る。その上半分、ガラス張りで中に並んだ薬の瓶や実験器具、医療器具  
が見える戸………ではなく、下半分、中の見えない鉄の戸を引く。キィ、と耳障りな音が響く。  
そして。  
「ちょっと………コレを付けて、学校に行って貰おうと思ってね。」  
「………な、ッ………!!?」  
そこから命が取り出した物を眼にして………まといは、愕然とした。  
 
 
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秘裂に沈められたローターが、その合図を受けて振動を始める。  
「………ふ、ぅ………っ………!?」  
眼の前には黒板しか無いので、今は誰にもまといの表情は窺えず。従って、まといの中でそんなものが暴れ回って  
いることにも、まといがそれに必死で耐えていることにも気付かない。  
だが、それでもまといは、振動に耐えるだけで精一杯で、その場から動くことが出来ずにただ歯を食い縛り続ける。  
黒板に押し付けられたチョークが、バキ、と欠けた。  
「(だ、駄目、しっかりしなきゃ、駄目………皆の………先生の、前なのよ………!?)」  
ゆるゆると、しかし確実に、身体が高まっていくのが感じられる。絶頂の気配が、遠くで顔を覗かせる。  
そして。まといにとっては永遠ほどに長く感じられた数秒の、後。  
「………おや、どうかしましたか?」  
綺麗になった黒板消しを片手に、望が、まといの隣に戻って来た。  
振動が、止む。瞬間、まるで気が抜けてしまったかのように、まといはその場にしゃがみ込んでしまった。  
「つ、常月さん?」  
「………う、ぅ………。」  
突然の出来事に、望を初めとする教室中の人間の視線が、まといに集中する。今の今まで、その最深部をローター  
の振動に責め立てられていた身体を、小さく震わせながら………まといは、よろよろと立ち上がる。  
「すいま、せん………ちょっと、立ちくらみがしただけです。」  
「そ、そうですか?なんだか、顔が少し、赤いようですが………?」  
「教卓の下って、ちょっと暑くって。大丈夫です、問題も解けました。」  
「あ、いや、暑いなら、外に出ればいいと思うんですが………って、聞いてませんね。」  
まといはそう言い訳をして、そそくさと望の隣を通り過ぎて、また教卓の下へ潜り込む。望はその様子に、ほんの  
少しだけ違和感を感じながらも………とくに追求することはせずに、それを見送った。  
望が、黒板に向かい合って生徒達に背を向ける。問題の採点と解説に、移る。  
 
 
独り戻った、薄暗い空間で。  
「(………大丈夫………バレて、ない………。)」  
まといは、足元までを覆う着物の内側………しっとりと湿り気を帯び始めた秘所の感覚に、気を取られていた。  
 
「………………。」  
そして、結局………教室の外からその様子を見つめていた視線に気付いた者は、誰も居なかった。  
 
 
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「何よ、それ………!?」  
「見ての通り。ローターと、貞操帯だ。こっちは、ちょっと細工をしてあるがね。」  
命はそう言って、戸棚から取り出したそれを机の上に並べた。1つは、かなり細長い、まるで太いペンのようにも  
見える特殊な形のローター。もう1つが、革と金属で造られた、見るからに窮屈そうな貞操帯だ。  
「これを入れて、これを履いて、あとは、普段通りの生活を送って貰えればいい。簡単だろう?」  
「ばッ………馬鹿なこと言わないで!!何の為に、そんな………!?」  
「別に、意味は無い。ただの、私の趣味………ちょっとした、娯楽だ。」  
何でもない調子でそう言った命の顔を、まといが睨みつける。  
「………最低………女の子に、そんなこと平気で………!!」  
「それで、その細工について少し説明するから………1度、入れてみてくれ。」  
「な………ッ………!?」  
その刺さるような視線も憎悪に満ちた言葉もさらりと受け流して、命は更にとんでもない注文をする。まといは、  
顔を真っ赤に染めて言葉を失ったが………命の視線に、もはや自分に拒否権など無いのだということを、痛感する。  
「どっちみち、逃げ道が無いことは理解しただろう。なら、情報は少しでも得ておいたほうが良いんじゃないか?」  
「………信じられない………最低の趣味してるわ、あなた………!!」  
「自覚はしてるつもりだよ。」  
命はそう言ってローターを手にし、まといに歩み寄る。まといはいりじりと後退りしたが………すぐに、その背中  
が冷たい壁にぶつかってしまう。  
「………それじゃ、失礼。」  
まといを完全に壁際に追い詰めて、命はその場にしゃがみ込む。まといの着物をたくし上げ、暗がりの中を手探り  
で進み、その秘所へと手にしたローターを近づけていく。太股の上を命の手が這う感触に、まといはぞくぞくと  
身を震わせ、襲い来る寒気に耐える。  
「どれ、少し濡らさないとな………よ、っと………。」  
「あ、ふ………ッ、ぁ、あ………!?」  
完全に着物の中に上半身を隠してしまった命が、手にしたそれを仕込む準備の為に、まといの下着を脱がし、その  
秘裂に指を這わせる。まといの腰がビクリと震え、きゅ、と脚に力が入る。  
「あまり時間を掛けるのも面倒だ、少し飛ばすぞ。」  
そう言うが早いか、唾液に濡れた命の指が、初めから情け容赦の無いテクニックでまといの秘所を刺激し始める。  
濡れた指で肉壁を掻き分け、まといの声と身体の震えを頼りにあっという間に最も敏感な部分を探り当て、そこを  
執拗に愛撫する。肉芽を摘み、捻り、押し潰すように弄ぶ。  
「あ、やぁ………あうッ!!だ、駄目、そんな………そこ、らめぇ………!!」  
「………そう、その調子だ。考えることを止めれば、もっと、愉しめると思うぞ?」  
「だ、誰が、そんな………あ、あああぁぁぁッ!!?」  
心を準備する暇も与えられず、まといは早くも、それまで感じたことが無い程激しい感覚に溺れ始めていた。吐息  
が熱を帯び、足腰がガクガクと痙攣を始める。声が、抑えられなくなる。  
「や、な、舐めッ………止めて、嫌、あ、ぁ………ぅ、ぁ………!!」  
「あれだけ口汚く罵っていたわりには、あっけなかったな。もともと、感じやすい身体なのかな?」  
「そんなの、し、知らないッ………う、あッ!?」  
2本の指で、ぐちゃぐちゃと水音を立て始めた秘裂を中身を掻き出すかのように愛撫し、つ、と垂れ堕ちる愛液を  
舌ですくい取って………やがてまといの秘裂が、男のモノを十分に受け入れ得る程にまで解れたことを確認して、  
命はその激しい攻撃を停止した。  
「………よし。これだけ濡れれば、十分だろう。」  
絶頂の寸前まで追い詰められ、しかもそこで刺激を止められて。最高潮まで高まったまま、その熱を発散すること  
も出来ずに、まといの身体は小刻みに震え続ける。そして、ぼう、とぼやけたような意識の中………まといはその  
下腹部に、何かが侵入してくるのを感じた。  
 
「あ、あぁぁ………!?」  
「これだけ濡れていれば、簡単に入るだろう。どうだ?」  
命の言葉の通り、既に完全に解れきっていたまといの秘裂は、ローターの振動部を容易くその内側へと受け入れた。  
滑り込んだ冷たい感触が、また、まといの背筋を震わせる。  
「これがどういう玩具かは………まぁ、今時の高校生なら知らないはずがないだろう?」  
「………っ………!」  
「あとは、君の中に埋まったそいつが振動して………君の身体を果てさせてくれる、というわけだ。」  
着物の中から這い出て立ち上がり、命はまといよりも頭1つ以上高い位置から、その顔を見下ろした。その言葉に、  
だらしなく蕩けきっていたまといの顔が、少しだけ強張る。  
命の意図を察し、恐怖に染まり始めたまといの表情を満足げに見下ろしてから………命は、更に続ける。  
「ただね………今、君の中に仕込んだそいつには、ちょっと特殊な仕掛けが組み込んであるんだ。」  
命はそう言って、懐から、1本の万年筆を取り出した。くるくると、指先で起用にそれを数回転させてから………  
そのキャップを、捻る。カチ、と、何かが噛み合う様な音がする。  
「これは、『発信機』だ。そして、君の中に仕込んだそいつには、『受信機』が接続されている。」  
「………ッ………?」  
命の言わんとすることが理解できず、まといは、惚けたような顔で命が手にした万年筆を見つめた。命が、微かに  
にやつきながら、その様子を眺める。  
「今、このスイッチを入れた。この発信機からの信号を、今、君の足元の受信機が受信しているわけだ。」  
そう言われて、まといは足元に視線を落とす。着物の裾から、秘裂の中まで繋がっているコードが延び、その端に  
は携帯音楽プレイヤーのような小さな機械が取り付けられていた。何か、ランプのようなものが点滅している。  
「今は、なんともないだろうが………私がこうやって、離れてみると………。」  
命はそう言って、壁に身を預けて荒い吐息を繰り返すまといから、距離を取る。1歩、2歩、3歩………そして、  
その脚が5歩程後退りした所で、まといの中に………いや、まといの中に埋められたローターに、変化が現れた。  
「あ、う………〜〜〜ッッッ!!?」  
思わず、まといが眼を剥いて声にならない声を上げる。その肩が大きく震え、足腰が立たなくなり、そのまま壁際  
でぺたりと尻餅をついてしまう。  
その、下腹部からは………ごく小さなモーター音が、響いていた。  
「発信機とある程度距離が離れると、振動し始める仕組みになっているんだ。よく出来ているだろう?」  
「あ、や、駄目ッ、これ駄目ぇッ………と、取って………や、あぁぁぁぁ!?」  
手を伸ばせば自分でそれを引き抜くことが出来るのだが、さきほどまでで完全に感度を上げられた身体を振動に  
襲われたまといには、そんなことに気付く余裕すら残されてはいなかった。床にへたり込み、着物の上から必死で  
股間を押さえその振動に耐えるまといの姿をしばし鑑賞してから………命は再び、まといに歩み寄る。発信機から  
の信号が、ローターの振動を停止させる。  
「ルールは、簡単だ。私の僕が、望の服にこれを忍ばせる。君はいつも通りに、望に付き纏って貰う。」  
「ぁ………う、ぁ………ッ!」  
「ちなみに、今のが『レベル1』の振動だ。距離が遠くなればなるほど、振動は強烈になる。全部で、5段階だ。」  
「………ッ………っっ………。」  
「更に、これを仕込んだ後、この貞操帯を身に着けて貰う。勝手に、それを外せないようにね。」  
「………は、あぁぁ………ッ………。」  
「明日の朝、ここで準備をする。その後、望に1度近づいた所で自動的にスイッチが入り………ゲーム開始だ。」  
襲い来る余韻に震え続けるまとの頭の上で、命はその一方的な『遊び』のルール説明を続ける。  
「何度も言うようだが、君に拒否権は無い。毎朝、必ずここへ来るんだ。期限は1週間………いいね?」  
 
ぼんやりと霞む意識の中で、その声を聞きながら………まといは改めて、もはや自分に退路が無いことを痛感し。  
「………ッ………。」  
そして………愛する人の生命を護る為、その辱めを受け入れることを、決意した。  
 
 
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教卓の下、まといはまた、あの日の出来事を思い出していた。  
まだ、先ほどまでの振動の名残が去ってくれない。広がった波紋が岸辺に跳ね返って再び戻って来るかのように、  
微かな余韻が、ゆっくりと全身を這い回り続けている。  
「(けど………大丈夫。このくらい………なんでもない。)」  
まといは自分にそう言い聞かせて、平静を取り戻そうとする。  
この数日、まといは朝から人目を忍んで糸色医院に赴き、そして、命の命令に従ってこんな格好をさせられ続けて  
いるが………今まで、耐え難いほどの振動に襲われたことは、1度も無かった。  
授業中は、このように教卓の下に潜っていれば、望とは一定以上離れなくて済む。仮にさきほどのように教室の  
端と端に離れてしまっても、それはほんの少しの間だし、振動のレベルも弱いままだ。  
トイレに関しては、命が手を打ってくれた。朝、命の元を訪れた段階で用は済ませ、そこで、排泄の機能を抑える  
薬を与えられている。おそらくは、用を足すことが仕掛けを外す口実として使えないように、との意図の下での  
対処なのだろうが………まといにとってそれは、ある種の救いになっていた。  
それと、最近になって増えてきた、倫との2人きりの会話も、問題が無いことは既に解かっている。宿直室での望  
の定位置は、入り口に比較的近い場所にある。ドアの前に張り付いていれば、ギリギリであるとはいえ、安全地帯  
に身を置くことが出来るのである。望の移動に際して、何度か振動に襲われたことはあるが、それもやはり短い  
時間の、弱い振動だ。この数日で、実証済みである。  
「(これなら………1週間くらい、どうとでもなるわ。)」  
あくまでも、自身が酷い状況に置かれていることに変わりは無いのだが………教卓の下、まといは独り、命の策に  
勝ったという実感を抱き、微かに不適な笑みを浮かべていた。  
「(学校のこと、先生のことなら………私の方が、ずっとよく知ってる。舐めるんじゃないわよ。)」  
命の提案したゲームを楽しむつもりなど、さらさら無かったが………自分にこんな恥辱を強いた悪魔のような男の  
誤算を思い、相手が一方的な勝利を確信しているであろうこのゲームに勝つということに、まといは確かに魅力を  
感じていた。  
「(何事も無く、1週間………絶対に、耐え切ってやるんだから………!!)」  
既に、命の言った期限の半分ほどが過ぎ去ろうとしている。口ほどにも無い、とはこのことだ………と、まといが  
独り想いを巡らせていると。やがて教室に、終業を告げるチャイムが鳴り響く。  
「………さて、では、今日はここまでです。それでは皆さん、帰りのホームルームで。」  
望は、チャイムが鳴り終わらぬうちにそう言って、本日最後の授業を切り上げる。教材をまとめて教室のドアへと  
歩き出すその背中を、教卓の下から這い出したまといが追う。もちろん、振動は始まっていない。  
「………お兄様、昨日の続きなんですけど………。」  
「そうですか、それじゃぁ………宿直室に。」  
また、倫が教室を去ろうとした望を呼び止める。望はそれだけですっかり倫の意図を理解し、倫を宿直室へ誘った。  
そして………望が、振り返る。  
「すいません、常月さん………家族のことで、大事な話がありまして。」  
「解かってます。宿直室の外で、お待ちしています。」  
「助かります………って、いや、本当はちゃんと清掃にも参加して欲しいんですけどね………。」  
苦笑する望に、淑やかに微笑み掛けて。まといはいつも通り、その背中に従って教室を後にした。  
付かず離れず、廊下を進む。宿直室までのいつものルートを辿る。次の角を右に曲がって渡り廊下を越えて、階段  
を下ればもう、そこは宿直室の前だ………。  
 
と。まといが、望に続いて何気なくその角を曲がろうとした………瞬間。  
「………駄目だよ。」  
「え………ッ………?」  
細く、白い腕が………その着物の袖を、捕まえた。  
 
 
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同刻。傾き始めた陽の光が差し込む、糸色医院の診察室で。  
「(………確かに、あの学校はどちらかと言えば、彼女のホームグラウンドだ。)」  
命は。診療所の院長としての仕事を片付けながら、ぼんやりと、学校での出来事を思っていた。  
「(構造もよく知らないし、何より………望の行動パターンの情報に関して、彼女の右に出る者はいないだろう。)」  
真面目な顔をしながら、そんなことを考える。  
その通り。あの学校において、命の提案したゲームの難易度は、それほど高いものではない。学校のことも、望の  
ことも、命よりも遥かによく知っている………そして、常日頃からストーカー好意に慣れ親しんでいるまといに  
とって、『望から離れてはいけない』というだけのルールは、至極手応えの無いものだろう。  
「(しかもあの場所じゃぁ、私はおいそれと手出しは出来ない。ただ、待つしかない………そう。)」  
命は、さきほどまで診察していた患者のカルテに、必要事項を記入しながら、そんなことを考えて………。  
 
「(もしも………私が、独りだとしたらね。)」  
にぃ、と、唇を歪ませた。ペンを持つ手に、思わず力が入る。  
「(だが………君は、思いもよらないだろうね。既に、君のすぐ傍に………私の手足が、潜んでいるなんて。)」  
命は、心底楽しそうな笑みを浮かべながら、ペンを走らせていく。  
「(君のよく見知った顔で………そして、君と同じくらいに、学校のことも望のこともよく知っている。)」  
遂に、ペンの先端がカルテを引っ掻き、突き破ってしまう。  
「(どの道、君の勝利なんて用意されてないんだ。そろそろ………破滅するといい。生意気な、小娘が。)」  
 
静かに肩を震わせながら………命は、そのゲームにおける自らの揺るぎ無い勝利を、確信した。  
 
 
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振り返った先に立っていたその人物の姿に、まといは、我が眼を疑った。  
「………あん、た………!?」  
「駄目だよ。大事な話があるって、言ってたでしょ?」  
本来ならばそんな場所に、生徒達の行き交う廊下などに決して立っているはずのない少女………霧は、まといの  
着物の袖を、ギリギリと音が聞こえてきそうな程、眼一杯の力で鷲掴みにしていた。頭から布団を被り、ジャージ  
の裾と裸足の脚がその裾から覗いている。布団と長い髪の所為で、顔は見えない。  
まといの脳裏に、霧がその場に居ることに対する疑問が浮かぶが………しかしすぐに、それどころではないという  
ことに気付き、慌てて霧の手を振り払いに掛かる。  
「ちょっと、放して!急いでるんだから!」  
「だから、駄目だよ。」  
まといの言葉に、すぐさま、どこか機械的な返事を返して………霧は、隠れていた顔を、上げる。  
「………ッ………!?」  
「駄目だよ………絶対、行かせない………。」  
その、乱れ掛かった黒髪の下から現れた………どこか狂気染みた笑顔に、まといは、背筋を凍らせた。  
そして、その瞬間。  
「………ひあ、ッ!?」  
望に仕込まれた発信機との距離が離れたことを感知した受信機が、信号を送り………まといの最深部にまで到達  
するよう深く沈められたローターが、振動を始める。完全に不意をつかれ、まといは思わず上擦った声を上げた。  
「あれ、どうしたの………ねぇ、まといちゃん………?」  
霧が、そう囁きながらまといに擦り寄るように近づく。その顔には、未だ、あの笑みが張り付いたままだ。  
 
まずは、レベル1………何度か経験したその刺激が、まといの体を芯から震わせる。  
「ちょっと、止め、て………ぁ、早く、放して………じゃないと………ッ!?」  
「じゃないと、何?何か、マズいことでもあるの?」  
距離が離れ、レベル2………既に未体験の領域にあるその振動に、まといは瞬時に、迫り来る危機を察する。  
「あ、く………だ、駄目ッ………早く、行かなきゃ………!!」  
「………絶対に、放さないよ。先生の所になんか、行かせてあげない。」  
更に、レベル3………背筋を突き抜けるような衝撃に、もはや立っていることも、喋ることすらままならなくなる。  
「あ、あぁッ!!ら、め、止め、てッ………せ、せん、せ、えぇ………う、あぁぁぁ………ッ!!?」  
「どうしたの?なんだか、変な声出てるよ?」  
情け容赦なく振動は強まり、レベル4………周囲も流石に、まといの異変に気付き始める。  
「ほら、みんな心配そうに見てるよ?ねぇ、まといちゃん………?」  
「あ、や、あぁぁ………駄目、私ッ………こんな、とこ、ろッ………あ、ア、あ、あッ!?」  
 
………そして、遂に。  
それまでとは段違いの衝撃を持つ………レベル5。  
 
『ビイイイイイィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!』  
「あ”あぁぁぁぁぁぁァァァァァァッッッ!!!???」  
 
体の外までハッキリと響くほどのモーター音と共に、悪魔のような振動で、まといの内部を滅茶苦茶に荒らし回り  
………命の特製ローターは、一瞬で、まといの身体を絶頂へと誘った。  
まといが甲高い声で絶叫しその場に倒れこむ。横様に倒れ、激しく痙攣するその身体の下に………着物をじっとり  
と濡らしながら、生暖かい水溜りが広がっていく。  
「ど、どうしたの!?大丈夫、まといちゃん!?」  
「あ、ひ、ッ………ふあッ、く、あぐっ………ぁッ……!!?」  
わざと周囲の注目を集めるような大声でまといの名を呼びながら、霧が布団ごとまといに覆い被さる。  
霧は、布団のせいで周囲からは完全に死角となっている場所から、まといの着物の中に腕を滑り込ませ………手に  
した鍵を使い、手探りで、貞操帯を取り外した。  
「………ぇ、っ………ッ!?」  
意識が飛ぶような衝撃の中、まといは必死で視線を動かし、霧の表情を窺う。口では、突然倒れた友人を心配して  
いるようなことを言いながら………その顔はやはり、寒気のするような微笑みを浮かべていた。  
まといが、全てを悟ったとき………霧が、命の手中に堕ち、こうして命と共謀して自分を陥れたのだ、ということ  
に気付いたそのとき。まといの秘裂から、長いローターが引き抜かれる。霧が事前に命から聞いていた操作を行う  
と、まといを一瞬で果てさせたその振動は、あっけないほど簡単に止んだ。  
「………あん………あんた、あのッ………あいつ、と………ッッッ!!?」  
「ふふ………今更気付いても遅いよ。それじゃ………ちゃんと、呼んできてあげる。」  
回収した証拠を布団の中に隠し、霧が立ち上がる。一瞬だけ、勝ち誇ったような表情を見せた後………すぐに、  
心の底からまといを心配しているような、不安げな表情を浮かべる。  
「待っててまといちゃん!!す、すぐ………すぐ、先生呼んで来るから!!」  
霧はそう言って、独り倒れたまといを残し、望を呼びに………まといの屈辱的な姿を望に見せ付けるため、宿直室  
の方へと走り去った。  
 
「お、おい、何か………ヤバくね?」  
「どうしたのかしら、急に………?」  
「なんかさっき、変な音しなかった?」  
「音っつーか………なんか、変な臭いしてないか?」  
 
まといを取り巻く生徒達が、口々に何かを言い合っている。  
騒ぎを聞きつけ、へ組の生徒達も、教室から出てこちらへ向かってくる。  
やがて………霧に呼び出された望の足音が、近づく。  
 
世界の全てが終わってしまったような、絶望感の中………まといの意識は、闇の底へと、沈んでいった。  
 
 
 
(続)  
 

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