『私、好きなものにいじわるしたくなるんです。』  
 
私の性格は、歪んでいるのかも知れない。  
「さて。さきほどは有難う、だいぶ、君の性格が掴めて来た。」  
けど、それって………そういう歪みがあるのって、きっと、私だけじゃないはず。  
「証拠過多………ねぇ。怖ろしいものだよ、先入観というのは………君の場合は、特に性質が悪い。」  
そういう、気持ちって………誰の心の中にも、少しくらいはあるものでしょう?  
「まぁ、非があるのは君自身ではないがね。周囲の人間が、勝手にそう思い込んでしまうだけだ。」  
だから………もしかして、って思う。もしかすると、ひょっとして、万が一………この人も、そうなんだとしたら。  
「だが、君自身が1番よく解かっているように………君の本質は、到ってシンプルで素直なものだ。」  
こうして、私にいじわるをしているこの人は………まさか、私が好きなんじゃないか。そう、思ってしまう。  
「見た目通りの、嗜虐性。それは、愛情表現の際にまで及ぶ………言っちゃ悪いが、かなりの重症だな。」  
私、糸色先生のことは好きだけど………いや、確かに、この人も『糸色先生』なんだけれど………そんなの、困る。  
「いや、気に入った。その歳で、それほどまでの資質を備えているとは。親近感すら感じるよ。」  
気に入った、なんて言われても、困る。そりゃぁ………正直、嫌な気は、しないけれど。  
「そこで………どうだろう。1つ、提案なんだが………。」  
………なんだろう。何を、求められているんだろう。  
「君に、危害は加えない。その代わり………その資質、私に、育てさせてはくれないかな?」  
どうやらこの人は、私に、悪くない感情を抱いてくれているらしい。  
ただ、こんな所に閉じ込めてみたり、かと思ったら親しげにいろんなことを尋ねてきたり。気に入った、と言って  
みたり、かと思ったら危害なんて言葉を使って脅してみたり。先生の感情表現はどうも、複雑で、面倒臭いみたい。  
 
そして。  
先生の、そんな所に………面倒だからこの際、先生、と呼んでしまうことにしよう………なんだか私も、親近感の  
ようなものを、感じていた。  
私の心も………複雑で、面倒臭いから。そう、自覚してるから。  
 
………私は、先生を信用してみることにした。なんだか、仲間が見つかったような気がして嬉しかった。  
「そうか、そう言ってくれると、こちらとしても嬉しいよ。余り………君が痛めつけられる姿は、見たくない。」  
私が頷いたのを見て、先生が言う。やっぱり、言葉にはどこかチクリとするような怖さがあるけれど………それが、  
自分と先生が似ている、っていう感覚を強くさせていく。  
そう考えているうちに、先生が、部屋の外から誰かを呼んだ。すぐに、看護婦の格好をした女の人が部屋に入って  
きた。綺麗な人だな、と思ったけれど………その人の眼を見て、私は少し、背筋が寒くなった気がした。  
「この間話したあの娘だ、さっき軽く性格診断をしてみたが………間違いない、と思うよ。」  
「あら本当、可愛い娘ですね………それに、良い眼をしてます。見た目通りの素質、ってことですか。」  
また、言われた。素質素質って、私、そんなに人に褒められるような特別な所なんてあったっけ。少し、照れる。  
「じゃぁ………詳しくは、彼女に教わってくれ。」  
「よろしくね、ええと………?」  
「………ああ、三珠真夜、さんだ。」  
「真夜ちゃんね。それじゃ………着いて来てくれる?」  
あれ、先生と一緒じゃないんだ………って、ちょっと残念がってしまった自分が、少し後ろめたかった。糸色先生  
一筋、っていう他の女の子達みたいに熱烈なアタックは出来ないけれど………ちょっとやそっとじゃ揺るがない、  
っていう自信は、あったんだけどな。  
それと、やっぱり………この看護婦さんと2人きり、というのが、やっぱり少し怖かった。理由は、口では上手く  
説明できないけれど。  
「安心しなさい、彼女の腕は、私が保証するよ。」  
私、別に病気でも何でもないはずなんだけれど………一体、何の腕を保証してくれてるんだろう。  
そうこう考えているうちに、私は看護婦さんに導かれて、部屋を出る。去り際振り返ると、先生が、片手を上げて  
私に挨拶してくれた。ちょっとだけ胸がドキッとして、また、ちょっと後ろめたくなった。  
 
 
薄暗い廊下を、看護婦さんの背中を追って進んでいく。あの部屋に誘い込まれたとき階段を下ったから、ここが  
地下だってことは解かってる。窓が1つも見当たらないのも、こんなに静かなのも、空気がひんやりしてるのも、  
全部そのせいだろう。  
「でも、本当に嬉しいわ。あなたみたいな、可愛い娘が来てくれて。」  
看護婦さんの言葉に、思わず耳が熱くなる。こんな悪そうな女の子が本当に悪いわけがない、ってよく言われる  
けど、それはつまり外見は見るからに悪そう、ってこと。そんな素直な、可愛い、って言葉なんて………もう長い  
間、言われたことがない。  
「先生のお眼鏡に適ったんですもの、素質は確かなはずよね。楽しみだわ、仲良くしましょうね!」  
そう言って、看護婦さんがウインクする。それを見て私は、ほんの少しだけ胸に残っていた苦手意識が、薄れるの  
を感じた。さっきの怖い感じは、ただの気のせいだったのかも知れない。  
けど………やっぱりまた、言ってるけれど。素質、ってなんのことなんだろう。  
「私、今までいろんな人達の相手をしてきたけれど………こうして後輩を育てるのって、実は初めてなのよね。」  
いろんな患者さんの相手をしてきた、ってことを言っているんだろうか。  
………いや、待って。今………?  
「………ふふ、ふ………本当、楽しみだわぁ………。」  
後輩、って言った?私………看護婦さんの、後輩になるの?  
なんで?私、お医者さんや看護婦さんの勉強なんて1回もしたことないのに?  
「さて、と。それじゃ………まずは、『みんな』をご紹介しておきましょうかね。」  
そうこう考えているうちに、今度は、鍵が掛かった鉄の扉の前に辿り着いた。  
………この南京錠、いいなぁ。先生の首にぶら下げたら、似合いそうだなぁ………。  
と、またそんな余計なことを考えているうちに………看護婦さんがドアを開ける。ギギギ、と耳障りな音を立てて、  
ドアが軋んで向こう側へと開かれる。廊下よりももっと暗くて、中の様子が見えないその部屋に、慣れた様子で  
踏み込んでいく看護婦さんの背中に付いて入っていく。  
「じゃ、紹介するわね。」  
看護婦さんが壁際を手で探って、すぐに、カチ、と小さな音がした。暗かった部屋に蛍光灯の灯りが点って、一瞬  
だけ眼の前が真っ白になる。暗闇の中の急な光に、だんだんと眼が慣れていって、そして………。  
 
「じゃぁこれから、私達と………この子達と、仲良くしましょうね?」  
私は、そこに居た、大勢のそれを見て………ビクリ、と体を硬直させた。  
 
並べられ、あるいは重ねられた、黒くて頑丈そうで冷たそうで背の低い………鉄の、檻の中。  
いくつもの瞳が、一斉に、その視線を私に向ける。  
そこに、首輪をはめられ、太い鎖で繋がれ、そして、他には何も身に着けないまま裸で収まっている………その  
『人達』の姿を見て。私は、ぞぞぞ、と背中に嫌な感覚を覚えた。  
 
入り口で固まっている私の眼の前に歩いて来た、看護婦さんが………にこり、と、怖ろしい笑顔を見せる。  
「それじゃぁ、まずは………その服を、なんとかしましょうか。ここに居る以上、そんな格好、許さないわよ。」  
私の脚が、後退りをするより先に………私は腕を引かれて、その部屋に引き摺り込まれていた。  
 
 
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最近………教室が、やけに静かに感じられることがある。  
その理由を、考えていたら………最近、糸色先生やクラスメイトの友達が巻き起こす出来事に巻き込まれることが、  
少なくなったような気がすることに、気がついた。  
………ああ、私ったら一方的に皆のことを『友達』だなんて!相手は、そう思っていないかも知れないのに!  
すいません、勝手に友好的な感情を抱いて!ろくに話したこともないのに気持ち悪いですよね、本当にすいません!  
………それは、ともかく………最近教室が静かになった、というのは、確かなことだと思う。何より、教室に居る  
クラスメイトの人数が、少しずつだけれど、減っている気がする。  
木村さんや日塔さんは、少し学校を休みがちになった気がする。ああ、すいません、心の中で勝手に出欠チェック  
なんてしてすいません。  
いつも教卓の下に居た常月さんも、この間の『あの事件』以来、顔を見ていない。ああ、すいません、人のあんな  
恥ずかしい思い出を、すぐに忘れて差し上げることが出来なくてすいません。  
糸色さん………妹の倫さんの方も、最近、糸色先生と2人きりで話し込むことが多くなった。ああ、すいません、  
ご家族の大事なお話をしているんでしょうに、私のような部外者がそんなことを気にしてすいません。  
それから最近は………三珠さんの姿も、見かけなくなった気がする。ああ、すいません、ええと………とにかく、  
すいません。  
………とにかく、そんなわけで………最近めっきり、皆と一緒にドタバタと慌てるようなことが、少なくなった。  
「(………けど、やっぱりなんだか………少し、寂しいな………。)」  
最近、こうして心の中で独り言を呟くことも、多くなった気がする。  
この間までのような、ドタバタしている空気も………正直な話、私は好きだった。物心付いた頃からずっと、他の  
人に悪い影響を与えないように、人から離れて生きてきた私を………無理矢理に巻き込んで、滅茶苦茶に振り回す  
ような、あの教室の、先生の、クラスメイト達の空気が。  
ああ、すいません本当にすいません!糸色先生も、毎回ご苦労なさっていたでしょうに!少しでも楽しんでしまい、  
本当に、申し訳ございません!  
というかもしかして………私が何か、皆さんを不快にさせるような言動をしでかしてしまったんでしょうか。それ  
で、皆さんこうして距離を置くようになってしまったんでしょうか。  
ああ、だとしたら私は、取り返しの付かないなんて怖ろしいことを!そうですよね、きっと私が悪いんですよね!  
きっと私が、皆さんの空気を悪くしてしまったんですよね!すいません、本当にすいません!  
「………はぁぁぁ………。」  
帰りしな、いつも通りにそんなことを徒然と考えてしまう。  
その申し訳無さと、自分の思考の情けなさに………今日何度目かの、溜息が漏れた。  
 
そして、その、直後。  
「やぁ、望のクラスの………加賀さん、だったかな?」  
私の背中に、誰かが、そうして声を掛けた。  
 
 
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また、数日経って。私はもう………少し前の自分が思い出せないくらい、その新しい感覚と意識に馴染んでいた。  
「それじゃ………今日はいよいよ、本当の実践訓練ね。」  
看護婦さん………ではない。私の『先輩』が、そう言って微笑む。初めは怖いようにも思えたその微笑も、こう  
してこの快感に溺れてしまい、もう、自分がそれを浮かべる側になってしまった。  
「大丈夫、独りじゃないわ。私が、傍についていてあげる。」  
そう言って先輩は自分と同じ、全て黒で統一された、革で造られた露出度の高い水着のような服と、やはり革製の  
ハイヒールのブーツと、肘まである革手袋と、顔の半分を隠すマスク………そういえば前に、智恵先生がこんな  
格好をしていたのを見たことがある気がする………を身に着けた私の肩を、ぽん、と優しく叩いてくれた。  
緊張が、少しだけ、解れる。  
 
あの日から………私は、いわゆる『女王様』として、先輩に、特殊な趣味のある人間の調教法を教育されてきた。  
 
首輪と鎖に繋がれ、裸で檻に入れられた………そして、それを快感に感じている、あるいはその資質のある人間  
達。あの日初めてここに入ったときは、その視線を一身に受けると、全身がすくみあがるような思いだったけれど  
………先輩の丁寧な教育のお陰もあって、今ではすっかり、この環境に慣れてしまった。  
あの日、『とりあえずは形から』と言われて着せられた、この服。これだって、こんな格好でたくさんの人の視線  
に晒されるのは恥ずかしくて堪らなかったはずなのに………こうしていることが、普通になってしまった。  
 
他人を痛めつける、ということにも………それで相手が悦ぶ、といくら言われても、初めは抵抗があった。鞭が  
人の肌に叩き付けられる音、身体を拘束された人達の叫び声、呻き声………今では考えられないが、初めはそれ  
を聞くだけで、両耳を塞いで眼を背けてしまいたくなった。  
けれど………先輩は、言ってくれた。  
『抵抗があるなら、まずは「命令されて無理矢理やらされている」と考えて、自分を納得させなさい。』  
その言葉の効果は、絶大だった。人の身体を殴り、打ち、締め上げて、痛めつける………その罪悪感も、自分の  
行動が人に無理強いされているんだと考えると、少しずつ薄れていった。そうして、だんだんと感覚が麻痺して、  
過激な調教にも手を出せるようになって………今ではもう、すっかり調教という行為の虜になってしまった。  
 
私は別に、暴力自体に魅力を感じているわけじゃない。誰かの苦しそうな顔が見たいわけでもない。  
この役目の、魅力は………もっと、別の所にあった。  
私に殴られた人達が、一瞬、痛みに顔をしかめて………すぐに、もっと、もっとと、子供の様に同じことを、更に  
痛いことを催促してくる。痛めつければ痛めつける程、もっと激しい仕打ちを求めてくるようになる。自分のその  
行動が、心の底から、求められている………その感覚が、堪らない。  
もっと、強く殴ってください。激しく踏んでください。きつく締めてください。口汚く罵ってください………は、  
私は無口だから言われないけれど。そう求められる度に、私は、私の身体の奥の方に………何か、熱いものが  
湧き上がってくるのを感じるようになった。  
レッスンの後、着替えるとき………自分の大切な部分の変化に気付いて、私は、その熱いものがなんだったのかを  
知った。初めて、それに気付いた夜は………堪らず、自分のしたこと、言われたことを思い出しながら、ベッド  
の中で何度も何度も自分を慰めてしまった。自分の頭がおかしくなっちゃったんじゃないかって、ほんの少しだけ  
怖かったのを覚えてる………いや、実際、私は気が変になっているのかも知れない。  
………もう、それでも構わないけれど。  
 
とにかく、そうして私は先輩の指導の下、たくさんの人達で実践を重ねながら、この道を進んできた。  
けれど、今までの調教は全て………先生と先輩が、ある程度マゾヒストの素質を開花させてくれた誰かが、相手  
だった。私が来たときにはもう、いろいろなことを期待しているような人ばかりだった。男の人も、女の人も。  
 
あれから………もう、数日が経った。  
「真夜ちゃん………調教には、そろそろ慣れてきた?」  
隣で、あくまでも優しい声でそう言った看護婦さんの言葉に、私は1度こくりと頷いて………頷いてから、自分が  
それを無意識のうちに認めてしまったことに気がついた。  
自分でも気付かない間に、そういう意識、というか、自分の中の普通の感覚が、書き換えられていっている気が  
する………それにあまり不安や恐怖を感じないのも、この看護婦さんの所為なのかも知れない。初めて出会った  
ときに感じた嫌な感じは、きっとこういうことだったんだ、と今更になって実感する。もう、その嫌な感じがどう  
いうものだったのかも、思い出すことが出来ないけれど。  
「もう、この快感の虜になっちゃったかしら。その調子なら、もうすぐ………一流に、なれるわね。」  
看護婦さんが、愛おしそうな、本当に寒気がするくらいに熱の篭った愛おしそうな眼で、私を見る。まるで、獲物  
かなにかになったような気分で、私は身体を緊張させた。  
「あなたみたいな可愛い娘を、私色に染められるなんて………先生には、いくら感謝してもしきれないわ………。」  
頬擦りをしてきそうなくらいに顔を寄せて、看護婦さんが言う。  
 
いや………。  
「それじゃぁ………いつもの格好に、お着替えしましょうか?」  
もう、私は………この人を、『看護婦さん』と呼んでは、いけないのかも知れない。  
 
 
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「あ、あああ、の、あ、あ、あの、あの………っ。」  
突然のことに、上手く声が出てこない。  
「そう、怖がらないでくれ。やりにくくて適わん。」  
「ああ、すいませんすいません!勝手にいろいろ想像して怖がって、すいません!」  
「………や、冗談だよ。仕方ないさ、怖がらせるようなことをしてるのは、こっちだからね。」  
「あああ、すいません、冗談に気付ける余裕も無くてすいません!」  
「………ただ、そう謝り倒すのは本当に勘弁して欲しいな。会話に、支障が出るレベルだろう。」  
「ああああ、すいま………。」  
「だから、ねぇ。」  
「………すっ………っっっ。」  
先生に………糸色先生のお兄さん、糸色命先生に言われて、私はようやく、自分のくちから勝手にどんどん飛び  
出していく謝罪の言葉を、塞き止めることができた。厄介な性分で、本当にすいません………。  
ただ………本当に、怖い。どうして………こんな地下室で、後ろ手に手錠を掛けられたまま、椅子に座らされて  
いるんだろう。まるで、悪役に攫われた映画の中のヒロイン………ああ、私みたいな貧相な顔と身体で、そんな  
あつかましい喩えをしてすいません!私なんか、通行人A役だって身に余るくらいで………。  
「………頭の中で謝るのも、止めたまえ。」  
「え!?せ、先生、まさかそんな力が………ああ、こんな汚れた頭の中を覗かせてしまってすいません!」  
「いや、そうじゃなくてだな………顔に、もろに出るタイプだろう。君は。」  
「え?あ、ああっ!漫画や小説やアニメの見過ぎですいません、妄想が過ぎて本当にすいません!!」  
「………まぁ………もう、いい。とにかく………質問に、移ってもいいかな?」  
………さっき塞き止めたと思ったら、こうも簡単にさっきに逆戻りしちゃうだなんて。本当に馬鹿みたい………  
本当にご迷惑をおかけします………ああ、だからこうして頭の中でも謝っちゃうのが………。  
「まぁ、軽い性格診断のようなものだ………君の本質を見抜く為の、ね。」  
ああ、今度は気にせずに話を続けてくれた。いいんです、その方が………私の妙な癖に構って頂いていたんじゃ、  
いつまで経ってもご用事が済みませんもんね、本当にすみません………ああっ、今のは駄洒落じゃないんです、  
紛らわしい独り言ですいません、例えそれが頭の中でもすいません………。  
 
と。また、頭の中で際限なく謝罪の言葉を述べているうちに………先生が、話を始める。  
「それじゃぁ、まず………君は、君自身の性格についてどう思うかを………。」  
ペンを片手に、こんな状況とは裏腹な親しげな様子で話しかけてくる先生に、少し困惑しながらも………私は、  
先生の投げ掛ける質問に、答えていった。  
    
 
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また、数日経って。私はもう………少し前の自分が思い出せないくらい、その新しい感覚と意識に馴染んでいた。  
「それじゃ………今日はいよいよ、本当の実践訓練ね。」  
看護婦さん………ではない。私の『先輩』が、そう言って微笑む。初めは怖いようにも思えたその微笑も、こう  
してこの快感に溺れてしまい、もう、自分がそれを浮かべる側になってしまった。  
「大丈夫、独りじゃないわ。私が、傍についていてあげる。」  
そう言って先輩は自分と同じ、全て黒で統一された、革で造られた露出度の高い水着のような服と、やはり革製の  
ハイヒールのブーツと、肘まである革手袋と、顔の半分を隠すマスク………そういえば前に、智恵先生がこんな  
格好をしていたのを見たことがある気がする………を身に着けた私の肩を、ぽん、と優しく叩いてくれた。  
緊張が、少しだけ、解れる。  
 
あの日から………私は、いわゆる『女王様』として、先輩に、特殊な趣味のある人間の調教法を教育されてきた。  
 
首輪と鎖に繋がれ、裸で檻に入れられた………そして、それを快感に感じている、あるいはその資質のある人間  
達。あの日初めてここに入ったときは、その視線を一身に受けると、全身がすくみあがるような思いだったけれど  
………先輩の丁寧な教育のお陰もあって、今ではすっかり、この環境に慣れてしまった。  
あの日、『とりあえずは形から』と言われて着せられた、この服。これだって、こんな格好でたくさんの人の視線  
に晒されるのは恥ずかしくて堪らなかったはずなのに………こうしていることが、普通になってしまった。  
 
他人を痛めつける、ということにも………それで相手が悦ぶ、といくら言われても、初めは抵抗があった。鞭が  
人の肌に叩き付けられる音、身体を拘束された人達の叫び声、呻き声………今では考えられないが、初めはそれ  
を聞くだけで、両耳を塞いで眼を背けてしまいたくなった。  
けれど………先輩は、言ってくれた。  
『抵抗があるなら、まずは「命令されて無理矢理やらされている」と考えて、自分を納得させなさい。』  
その言葉の効果は、絶大だった。人の身体を殴り、打ち、締め上げて、痛めつける………その罪悪感も、自分の  
行動が人に無理強いされているんだと考えると、少しずつ薄れていった。そうして、だんだんと感覚が麻痺して、  
過激な調教にも手を出せるようになって………今ではもう、すっかり調教という行為の虜になってしまった。  
 
私は別に、暴力自体に魅力を感じているわけじゃない。誰かの苦しそうな顔が見たいわけでもない。  
この役目の、魅力は………もっと、別の所にあった。  
私に殴られた人達が、一瞬、痛みに顔をしかめて………すぐに、もっと、もっとと、子供の様に同じことを、更に  
痛いことを催促してくる。痛めつければ痛めつける程、もっと激しい仕打ちを求めてくるようになる。自分のその  
行動が、心の底から、求められている………その感覚が、堪らない。  
もっと、強く殴ってください。激しく踏んでください。きつく締めてください。口汚く罵ってください………は、  
私は無口だから言われないけれど。そう求められる度に、私は、私の身体の奥の方に………何か、熱いものが  
湧き上がってくるのを感じるようになった。  
レッスンの後、着替えるとき………自分の大切な部分の変化に気付いて、私は、その熱いものがなんだったのかを  
知った。初めて、それに気付いた夜は………堪らず、自分のしたこと、言われたことを思い出しながら、ベッド  
の中で何度も何度も自分を慰めてしまった。自分の頭がおかしくなっちゃったんじゃないかって、ほんの少しだけ  
怖かったのを覚えてる………いや、実際、私は気が変になっているのかも知れない。  
………もう、それでも構わないけれど。  
 
とにかく、そうして私は先輩の指導の下、たくさんの人達で実践を重ねながら、この道を進んできた。  
けれど、今までの調教は全て………先生と先輩が、ある程度マゾヒストの素質を開花させてくれた誰かが、相手  
だった。私が来たときにはもう、いろいろなことを期待しているような人ばかりだった。男の人も、女の人も。  
 
けれど。今日は違う、今日は………先輩の言う通り、本当の、実践訓練。最後の、関門。  
今から、私は………資質だけはあるけれど、自分の中のマゾヒストとしての才能に全く気付いていない人を相手  
に、調教をする。もちろん、先輩もサポートしてくれるけれど………まだまっさらな誰かをそういう風に染めて  
いくのは、初めての経験だ。相手は………なんと、同年代の、女の子らしい。  
期待と不安が、入り混じる。先輩も私を見て『私色に染められるなんて』とうっとりした表情で言っていた。  
今回は立場が少し違うけれど………私も、同じようなことを思っている。  
 
このドアを出て、先生の所に行けば………そのときが、やって来る。  
「ミスを恐れちゃダメ。思いっきり、可愛がってあげるのよ………いいわね、真夜ちゃん?」  
私は、鞭を片手にこくりと頷いて………縄の束を持って部屋を出た先輩の後に、続いた。  
 
 
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………さっきにも増して、上手く声が出てこない。  
「おめでとう、思ったとおりだ。発現はしていないが、真性のマゾヒストだよ、君は。」  
「ぇ………えぇ!?えっ、な、何、を………ッ!?」  
いきなり、そんなことを言われて………動揺しない方が、どうかしている。これは普通の感覚ですよね、今回は  
さすがの私も、謝らなくてもいいですよね………?  
「度を越えた、加害妄想。しかし、君のそれは実は………『被虐願望』の、現われなんだよ。」  
「ひ、ぎゃく………って………?」  
「些細なことでも謝ってしまうのは………相手に、叱って貰いたいから。罵られることを、望んでいるからだ。」  
「え………そ、そんな、急に、あの、そんなこと言われても………わ、私………っ?」  
「勝手に謝罪することで、相手に非難されている状況を疑似体験している。正直………かなり、病んでいるよ。」  
先生は淀みない口調で、すらすらとそんなことを説明してくれた。そう言われても、私には、自分のこの癖が一体  
どんな意味を持っているのか、すぐに理解することが出来なかった。  
本当は、罵られたい?だから、その状況を疑似体験している?  
病んでる、というのは………自分でもこの癖は病的なものだと思うし、確かに少し納得できてしまう部分もある  
けれど………それにしたって、本当に、私はそんなことを考えているんだろうか。………ああ、お医者さんの先生  
が言うことに、私のような素人が疑いの眼を向けるなんて、本当はとんでもないことなんですけれど………。  
「………とは言っても、まだ、自分では気付いていないようだな。まぁ、深層心理のことだ、無理も無いか。」  
先生は、私の頭の中を見透かすように、そう言う。その言葉の通りだった、私は、自分の癖にそんなことが関係  
しているだなんて、生まれてから1度も考えたこともなかったんだから。  
「………すいません………。」  
また、反射的に謝ってしまう。先生は、1度解かりやすく肩をすくめた後………私の眼を見て、言う。  
「それで、だ。どうしたら、そのことを解かって貰えるか、と考えてみると………。」  
「………は、はい………?」  
「やはり………身体で実感するのが、1番だと思うんだ。違うかい?」  
私は先生の言葉の意味が解からず、ぽかん、と口を開ける。違うかい、なんて言われても………ああ、私の頭の  
出来が悪いからすぐに理解できないんですよね、ご迷惑お掛けして本当にすいません………。  
と、また頭の中で謝っているうちに。先生が、立ち上がって………私の隣に、歩いてくる。  
「………さて。それでは………。」  
「あ、の………それでは、って、何を………?」  
「いや、何………君の本質に気付かせてくれる、その人の所に案内しよう、というだけさ。さ、立って。」  
先生は私の腕を掴んで、椅子の上にへたり込むようにして座っていた私を無理矢理立ち上がらせた。後ろでに手錠  
を掛けられているから、バランスが取りづらい。なんだか、肩も痛くなってきた。  
「実はもう、すぐ隣の部屋に居るんだ。」  
「え、あの………気付かせてくれるって、どういう………?」  
「行けば解かる。それに、別に不安になることはないよ、なにせ………。」  
なんだか、怖いけれど………とにかく、先生に付いて行く以外に選択肢は無いらしい。そのことを悟って、すぐに  
歩き出した先生の後に続いた私は………。  
 
    
「君も………よく知っている、人だからね。」  
「………え………?」  
 
先生が小さくそう呟くのを、聞いた。  
 
 
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////  
 
 
こっ、こつ、こつこつ、こつ。  
2人分が混じって、不規則に聞こえるその足音が、近づいてくる。  
 
………獲物が近づく、その気配に………全身が、震える。  
 
そして。  
 
「お待たせ………連れて来たよ。」  
 
そのドアが、軋んだ音を立てて、開かれて………。  
 
 
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////  
 
 
開いたドアの先、その人影を見て………私は、おや、と思った。  
私と同じような、背格好………ああ、私なんかと比べられたら迷惑でしょうけれど………。  
そして、どこかで見たことがある………いや、何度も見慣れているものと同じ、その、髪型。  
「………ぇ、っ………?」  
喉の奥から、一瞬だけ、蚊の鳴くような声が出る。  
そして………私の視線の先のその人が、立ち上がって、振り向いて………。  
 
眼が合った、瞬間。  
「「………………ッッッ!!?」」  
私達は、同時に、言葉を失った。  
 
導かれた、部屋の中。椅子に座り、露出度の高い女王様のような、正直に言ってあまり似合っていないその衣装  
を身に着けて私を待っていたのは………この数日姿を見ていなかった、三珠さん、その人だった。  
三珠さんも、私を見て心の底から驚いているみたいに、1歩後退りをした。そして………その更に後ろで、三珠  
さんと同じような格好をして立っていた女の人が、よろめきかけたその身体を支える。  
「あら、真夜ちゃんどうしたの?」  
三珠さんは、何かを訴えるように、無言でその顔を見上げる。  
「………まぁ、驚くのも無理無いわよね。こんな所で、こんな形で………クラスメイトのお友達と、会うなんて。」  
楽しそうな声でそう言って、その人は小刻みに震えている三珠さんの顔の輪郭を撫でた。その手つきが、なんだか  
妙に大人っぽいというか………なんだか解からないけれど、その様子を見て私は凄く、ドキドキしていた。  
「………っ………。」  
三珠さんの口元が、微妙に動く。女の人が、それに反応して私に視線を向ける。  
………三珠さんが誰かと話をしているのなんて、もしかすると、初めて見るかも知れない。  
 
どうやら私のことを尋ねられていたみたいで、その人は、どこか寒気のするような笑顔を見せて、答えた。  
「大丈夫。先生が選んだ娘だもの、間違いないわよ。」  
「ああ。この娘は本物だよ、君の『嗜虐願望』と対になる素質を持っている。本人は、気付いていないが。」  
「それに………今のあなたなら、自分の本能に嘘は吐けないハズよ。例え………相手が、お友達でもね。」  
2人の言葉を聞いているうちに………なんだかだんだん、三珠さんの眼が虚ろになってきたような気がする。ああ、  
変に勘繰ってすいません………でも、なんだか怖いんです、嫌な予感がするんです………。  
なんて、考えているうちに。私の、その予感は………的中してしまうことになる。  
「それじゃ、早速失礼………おい、手伝ってくれ。」  
「はい、先生。それじゃ、真夜ちゃんも、準備しておいてね。」  
「え、あ、あの………あッ、そ、それ、何持って………!?」  
先生の合図と同時に、三珠さんの後ろに立っていたその人が動き出して………突然、手に持っていたロープを、  
私の身体に回し始めた。先生と2人掛かりで、あっという間に私の身体の自由を奪って………最後には膝の裏を  
小突かれて、無理矢理に跪かされて、そのまま立ち上がれないように手首と足首をロープで繋がれてしまう。  
最後に手錠は外されたけれど、これじゃ、さっきと違って身動き1つ取れない。  
「え、あ、う、あ、あう………あ、あのッ………!?」  
そして。突然の拘束に、言葉が出なくなっている私に、追い討ちを掛けるように………いつの間にか部屋を出て  
いた三珠さんが、とんでもないものを、運び込んでくる。  
「え、え………ッ………!?」  
「真夜ちゃん、これ使うのは、初めてじゃないわよね?」  
そう言われて、小さくこくりと頷いた三珠さんが、引いてきたのは………いわゆる、三角木馬、という物だった。  
ああ、この年齢で、これが何に使う道具なのか、自分がこれからどんなことをされるのか、想像出来てしまって  
すいません………高校生らしからぬ不純な知識を持っていて本当にすいません………。  
そしてすぐさま私は、当然のことのように、その上に担ぎ上げられる。  
「あ、う………い、ッ………!?」  
手足の自由を奪われたまま、木馬の上に乗せられる。全体重が、私の下半身と木馬にのしかかってきて、大事な  
場所が硬い感触に容赦なく圧迫される。  
「すぐに慣れるさ。君には、その才能がある。」  
目線がほとんど同じ高さになった先生は、動揺と不安と痛みでうっすらと涙が浮かんできた私の眼を見つめながら  
そう言って、微かに笑った。  
「今日は、見学させて貰うことにするよ。この先は、君達に任せる。」  
「有難う御座います、先生。」  
ぎり、と奥歯を噛み締める音が、耳の奥の方で聞こえる。  
私は、全身が窮屈な中、必死で首を巡らせて後ろを振り返る。少し動くだけで全身が締め付けられて、痛む。  
「い、やぁ………み、三珠、さん………!?」  
そして。振り返ったその先、じっと私の方を見て立ち尽くす、三珠さんの眼を見て。  
 
私は………言葉を失った。  
そこにあったのは………そんな姿を見られることを恥じている女の子の眼でも、クラスメイトの身を案じてくれて  
いる同級生の眼でもない………獲物を狙う狩人のような、雌を狙う雄のような、眼だった。  
 
「それじゃ………愛してあげなさい、真夜ちゃん。」  
三珠さんの背後で、また、あの人が言う。  
私の眼を見つめたまま、三珠さんは、少しだけ息を荒げながら………無言で、鞭を手にした右腕を、振り被った。  
 
 
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気がついたときにはもう、私の鞭は、加賀さんの背中に振り下ろされていて。  
「うあああぁぁぁぁッッッ!!?」  
私がようやく我に返ったのは、加賀さんの悲鳴が耳を貫いた、その後だった。  
眼の前で、加賀さんの制服の背中が裂けて、その下に赤く染まった肌が覗いている。経験で、解かる………本当に  
思いっきり叩かなきゃ、こんな風に制服が破れたりは、しない。  
 
やっちゃった。どうしよう。私は友達に、なんて酷いことを。何も知らない友達に。この世界の快感なんて知る  
はずもない友達に。私は、人が苦しむ顔が見たいんじゃないのに。なんで、どうして止められなかったんだろう。  
嫌だ、駄目、もう、こんなこと………。  
 
「う、ぁ………痛っ………!?」  
初めて、何の快感にも目覚めていない人間を、痛めつけてしまった………その予想外の衝撃に、私が、自分を  
見失いかけていると。  
「………落ち着きなさい、真夜ちゃん。」  
背後から、先輩が、声を掛けてくれた。  
「大丈夫、怖くないから………この娘だって今は嫌がってるけど、すぐに、目覚めてくれるわ。」  
幾度と無く、私の眼の前で手本を見せてくれた………今の私と同じことをしたその手に、顔を撫でられる。緊張と  
不安が、少しずつ、溶け出すようにして薄れていく。  
「どうしても、駄目っていうなら………初心に、帰りなさい。」  
………そして。  
「………早く、続けなさい。私が、命令してあげるから。」  
先輩の、その言葉が………私の中の何かを、ぷつり、と途切れさせた。  
 
そうだ。初めは、いつもそうしていたじゃないか。  
私に、選択権は無いんだ。だから………これも、しなきゃいけないことなんだ。  
その言葉は、魔法のように………いや、そんな綺麗なものじゃない。もっと、そう………麻薬か何かのように、  
私の罪悪感を麻痺させて、行動への躊躇いを取り去ってくれる。  
「ほら、もう1回。良い声で、鳴かせてあげるのよ?」  
その言葉の、前では………私はいとも簡単に、2回目の鞭を、振り下ろすことが出来た。  
 
「あうッ!!ん、あああッッッ!?い、たッ、痛いです、み、三珠さん………っ!?」  
大丈夫、痛いのが苦痛に感じるは最初だけ。先生も先輩も、そう言ってるじゃない。  
 
「あぐッ………す、すいません、大袈裟ですよね、こんな………あ、あああッ!!」  
ほら、いつも通り。いつも通りに………眼の前の獲物を、マゾヒストの快感に溺れさせてあげなくちゃ。  
 
「いッ、あッッ………あ、はあぁッ!?」  
加賀さん、傷だらけになってきた。………凄く………可愛い………。  
 
 
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「ああああああッッッ!!?」  
痛い。背中も、腕も、首も………そして、ずっと押し付けられている、恥ずかしい部分も。痛くて堪らない。  
 
「い、だぁッ………え、ぅ………ん、あああッ!!」  
………なのに………どうして?どうして、こんな風になってるの?  
 
「あ、はッ………はう、ぅ………んッ………!!」  
どうして………こんなに、身体が疼くの?まるで………変なこと、してるときみたいに………。  
 
先生、さっき言ってた。私、マゾヒストだって。  
それって、よく言うMってこと………虐められて気持ち良くなる、変態だってこと?ああ、すいません、特殊な  
性癖を持っていたからって変態呼ばわりしたら失礼ですよね、それに私なんかが………。  
「………あ………うあッ、あッ、ぐっ………!?」  
………あれ?『私なんかが』………何だろう?  
痛みの所為なのかどうなのか、なんだか、頭の中がぼうっとしてきたけれど………今、私、『私なんかが言えた  
義理じゃない』とか、そんな風に考えてた?それって………私が、そういう人だってこと?  
もう………なんだか、よく解からない。どうでも良くなってきた気がする。すいません、投げ遣りですいません  
………けど、もう、考える余裕も無いんです………。  
 
「あら、この娘………ふふふ。ほら真夜ちゃん、見て………この娘のココ、もうこんなに、涎垂らして………。」  
あの人が、何か言ってる。うん、もう………自分でも、解かってる。  
「あらあら、そんなに腰を突き上げて………触って欲しいの?虐めて欲しいのね?」  
「あ、ぅ………っ………。」  
ああ、真夜ちゃん、じっと私のこと見てる。すいません、そうです、私は………こんな痛いことされて、それでも  
悦んでるような、変態だったんです。すいません、本当に、こんな娘ですいません………。  
あ………三珠さんの指が、私の入り口を掻き分けて、中に入ってきた。  
「あ、あああッ、う、ぇぁ………は、ひぃッ!?」  
「ほら、真夜ちゃんも触ってあげなさい………そうよ、もっと、奥の奥まで掻き回して。」  
指を曲げて、私のいやらしいお汁を掻き出すみたいに、何度も、何度も何度も何度も何度も往復させる。  
私、こんな格好で、虐められて………気持ちよくなってる。変態だ。すいません、本当にすいません………。  
「もう、ヒクヒクしちゃって。クラスメイトの女の子に触られて、イキそうになってるの?この、変態!!」  
「あ、はぁッ………き、来ちゃう、う、あ、ぁぁぁ………ッッッ!?」  
「言った通りでしょ、この娘も、虐められたがりの変態なのよ。ほら、もう1回コレで引っ叩いてあげなさい!」  
「あ、うああぁぁぁッッッ!!」  
そうです。私は変態です。叩かれて罵られて、気持ち良くなって、もっとして欲しいって腰を振ってる、救いよう  
のない淫乱娘です。  
だから………だから、もっと酷いことしてください。もっと酷いこと言って………汚い言葉で、罵ってください!  
「ほら、もうイッちゃいそうなんでしょう!?ねぇ!?」  
ああ、すいません、厚かましいお願いをしてすいません………でも、私、三珠さんにも罵られてみたいんです!  
お願いします、もっと………もっと………!!  
 
「あ………ッ………〜〜〜ッッッ!!?」  
 
………も、っと………!!  
 
 
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………2人とも、予想以上の出来栄えだ。加賀愛に到っては、まさか初日で一気にここまで開花するとは。  
「はぁい、よく出来ました………楽しかったでしょう?」  
うっとりした顔で頷く、あの表情………三珠真夜の方も、大した素質だ。  
本当に………あのクラスは、逸材揃いだな。この先も、楽しみで仕方が無い。  
 
「どうでした、先生?この娘、凄い才能でしょう………私が嫉妬しちゃうくらいですよ。」  
「ああ………やはり、私の眼に狂いは無かったな。磨けばもっと光るはずだ、今後も教育を頼んだよ。」  
「ええ………こっちの、愛ちゃんも一緒に、ですね。」  
 
………片方は快感の余韻で意識が飛んでるし、もう片方は彼女に任せた方が良さそうだ。とりあえず、加賀愛が  
回復するまでは待たなきゃいけないな………少し、部屋に戻って今後のことを考えるとしよう。  
 
「とりあえず、どこかで休ませておいてくれ。後始末については………直接、交渉する。」  
「解かりました。それでは………お疲れ様です、先生。」  
 
 
 
(続)  
 

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