「んっ…ふぁっ、ぁぁあぁ! はぁんっ、やっ、ああぁぁん!」
彼女が声を上げる
普段からは想像できないような色めいた声
1時間前・・・・・・―――
放課後、雨の中を走る加賀愛の姿を発見した。
こちらも走って追いつく
呼び止めると、オドオドしながら走るのを止めた
「ちょ…加賀さん、なんで傘無いの?朝から雨降ってたじゃん」
「木野君…!…実は、ある人困っていた人に渡してしまって…」
「はぁ?」
なんてお人よし
「まぁ、いいけどさ、それじゃあ加賀さんが風邪くから。ほら、中に入りなよ」
「スイマセンスイマセン!私なんかが他人に心配してもらうなんて!!」
「いやそんな気にしなくても」
「私のことはご心配なさらずとも!!それでは…」
「いやいや、待ってよ!本当に風邪ひくって!」
腕をつかんで半ば強引に傘に引き入れる
「スイマセンスイマセン・・・」
ただ謝る彼女
もう少し卑屈じゃなくてもいいのに
自分に素直に生きれないのか
そこが彼女のいい所でもあるが
それにしても好きな加賀さんと、こんな機会に相合傘できるなんて
雨の日も悪くはない
加賀さんは傘のギリギリに入ってオロオロとこちらの表情を伺ってくる
「もっと寄ってよ」
「でっでも・・・」
さらにオロオロし始めた
「じゃないと二人とも濡れちゃうじゃん」
すでに彼女はずぶ濡れなのだが
「肩とかはみ出て……」
ギョッ
す…透けている!!!
「……?」
目が釘付けになってしまった
「木野君・・・・・・?」
制服はぴったり素肌に張り付いて体のラインも丸分かりだ
目が泳ぐ
高鳴る心臓
「木野君!!危ない!!!」
「え?・・・おわぁ!!!!」
ぼーっとしたまま道路を横断する所だった
「な、何だか心此処にあらずといった風でしたが…」
「へ?あ!うん!!なんでもない!」
加賀さんの顔さえまともに見れなくなった
こんなにも余裕の無い男だったなんて
つくづく情けない
「っくしゅん」
「あ」
ずびずば
「大丈夫?」
「は、はい!平気です!!・・・・っぷし」
「風邪じゃね?」
「いや、このくらい何ともありませんよ・・・」
そう言いながらも先ほどから何だか足取りも覚束ない
彼女のおでこに手を当ててみると
「熱っ!!」
「ひゃ!」
ビクビク
急に手をかざしたからビビってる。なんだろうこの可愛い小動物は
「加賀さん、コレ絶対風邪ひいてるよ。家ってもうすぐ着く?」
「いゃ…もう30分ほど歩かないと…」
「ん・・・それじゃ俺の家すぐそこだからウチに来なよ」
「そんな・・・!迷惑ですから!!」
「じゃないと倒れそうだし」
「ぅう………でも…・・・・」
「迷惑とかぜんぜん思ってないからさ、な?」
「あぅ…」
相当具合が悪かったのか
素直に家について来た
「ウチの人仕事で誰も居ないから、気楽にして」
「…はい…」
とりあえず自分の部屋に案内した
「ちょっと待ってて、タオル取ってくる」
「・・・・・・はい」
階段を下りながらふと部屋の状況を思い出す
ん?
・・・・・・
まずい
記憶が確かならベッドの上に大事な本の『ビバ☆エロ街道』が乗っていた筈だ
どうしようどうしよう
確実に見られただろう
あああ
タオルを取って部屋に戻るが、ドアを開ける勇気がない
とんだ変態野郎だと思われただろうか
ここに連れ込んだのも下心があったからと思われるだろうか
無かったわけではないが誤解はされたくない
どうしようどうしよう
ドアの前で激しく葛藤しているが
「・・・・・・っぷしゅんっ」
部屋の中から小さなくしゃみが聞こえてくる
今はそんなこと気にしている場合ではない
彼女の体調が優先だ
「ふぅ・・・」
しょうがない
意を決して部屋の中へ入る
部屋の隅っこで顔を真っ赤にして正座している加賀さんがいた
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・見た?」
「・・・・・・・・・・・・・・・はい・・・・」
今だベッドの上に存在し続けるビバ☆エロ街道
恥ずかしくて顔から火が出そうだ
「あの・・・・タオル持ってきたから・・・」
「…あ、ありがとうございます・・・・・・」
タオルを受け取る時いつも以上に慎重な手つきになっていた
警戒されているのか?
「・・・・・・加賀さん?」
「はっ!はいっ!?」
声が裏返っている。たらりと伝う汗
熱で潤んだ大きな瞳
「大丈夫?」
「ぁ・・・・・・あまり・・・大丈夫ではありません・・・・・」
きっと彼女も混乱しているだろう
その上風邪でフラフラしている
見ていると何だか申し訳なくなってくる
「横になったら?」
「え・・・」
「ベッド貸してやるよ」
「せ、制服が汚れているので・・・」
「じゃあ脱いじゃいなよ」
「!」
彼女がさらに部屋のすみっこへ後ずさった
「でもっ・・・・でも・・・」
俺は立ちあがりゆっくり歩み寄っていく
「あのっわ、私着替えが…」
びくびくと部屋の隅で震える彼女
好きな子は苛めたくなる
そうクラスの誰かが言っていた時もあった気がする
「あの…そっ……その…!」
壁に手を当てて逃げられないように閉じ込める
「加賀さん、」
彼女の怯えはピークを迎えていただろう
「俺に風邪うつしちゃいなよ」
「・・・・・・っ・・・・・・」
荒々しい口付けをする
「んんんんん!!」
彼女が顔をそらしたので顎をおさえて無理やりこっちを向かせる
「ふ・・・っ・・・木野く」
角度を変えてもう一度口付けをした。今度は深く舌を入れる
彼女の口腔内で逃げ惑う舌を絡め取り舐め回す
熱のせいなのかとても熱い
恐怖で震えているのが自分にも伝わってくる
別にサディズムなわけではないが加虐性向なのかもしれない
加賀さんは涙を流した
その姿に思わず背中を粟立てた
息子もゆっくり立ち上がる
「すいません加賀さん
愚息がお世話になるかもしれません
あしからず」
続く