もう夏も終わりだというのに、蒸し暑い  
身動きすらできないほどの満員の電車内。いくら冷房が効いているとはいえ、暑さを感じずにはいられない  
毎朝の通勤、通学ラッシュ  
そんな中、ドアのすぐ隣の角  
満員であることにもかかわらず不自然に空いているスペース  
 
――そこに彼はいた  
 
 
僕は臼井。臼井影朗  
2のへ組をまとめる学級委員長だ  
でも生まれ付き影が薄いから、みんな僕がいることを気付いてくれないんですよ…  
だからこうしてここに体育座りしてるんです  
何故かって?  
 
だって僕が立っていると、スペースが空いてると思われて、どんどん押されて壁とサンドイッチ状態になっちゃうんですよ。それが堪らなく痛いんです  
…ちょっと気持ちいいけれど  
 
だから体育座り。これなら押されて壁に挟まれる心配はないですしぃ  
いや、そりゃ迷惑かもしれないですけどぉ…どっちにしろ気付いてもらえないんですからっ!  
 
痛っ!?ちょ、ちょっと、僕の足踏んでますって!…って日塔さん?  
 
あぁ、日塔さんも同じ電車だったのかぁ  
てかやっぱり気付いてないし…早く足をどけて…おぉぉぉぉ!?  
そのスカートの中で白く輝くそれは!!!ぱ、ぱ、ぱんつ!ぱんつじゃないですかぁぁ!  
ち、違いますよ!?決して覗くために体育座りしているんじゃないですから〜残念ッ!!  
 
…何故我慢しなかった僕  
とにかく、せっかくのチャンス。そ、そりゃ僕だって女性に興味はありますしぃ、小節さん一筋だ…けどそんなの関係―っと危ない危ない。また我慢しないとこだった  
さぁ気を取り直して、じっくり拝見させて…ん?  
 
んん?なんか日塔さんの様子が変だぞ?  
なんだか顔赤いし、モジモジしてるような…おぉ、足閉じたから綺麗な三角が!って…  
ちっ痴漢だ!  
後ろの奴…明らかに触ってますよ!?日塔さんのお尻を  
く、くそぉ一体どんな奴だ!?  
ジーパンに…背が高い?あぁこの姿勢じゃよく見えない!  
でも今立ったらパンツ見えなくなっちゃうし…も、もう少し様子を  
 
でも日塔さんなら普通に止めてって言いそうだけどなぁ、あ、普通って言っちゃった  
うわっ!そうこうしてる間にエスカレートしてるじゃないか!  
お、おっぱいまで揉みはじめた!羨ましい…じゃなくて、これは助けるべきなのかな…  
これを期にお礼として日塔さんに毎日弁当作ってきてもらえるようになっちゃったり…そしてそのまま  
 
なわけないか…はは  
 
にしても…  
な、なんて大胆な奴なんだ  
ついに服の中にまで手を入れて日塔さんの、お、おっぱいを…  
周りからは見えてないみたいですけど、僕からは丸見えですよぉ!?  
うわわ!あんなに激しく揉みしだいて、しかもち、乳首まで…あぁやって触るのかぁメモメモと  
いや、こ、このままじゃ日塔さんが!早く助けないと…  
でも助けたところで気付いてもらえないかも…  
はっ!逆に携帯で撮影してこれをネタに日塔さんの身体を―  
 
 
って僕にそんなことできるわけないじゃないですかっ!  
い、今僕が助けてますよぉ日塔さん!  
 
 
で、でもなんかよく見たらそこまで嫌がってない気が…  
むしろ…うーん  
 
これ…僕も触ってよさげじゃないですかね!?  
 
なんか微かに喘ぎ声っぽいの聞こえますし…  
うん!いける!いけますよ!  
下見です!いきなり小節さんの身体触れたら心臓に悪いので、女体の下見の意味も兼ねて僕も触るべきでしょう!というか今しかない気がします!  
ど、どこから触ろうかな?  
やっぱ僕もお、おっぱいを…  
よ、よし臼井影朗!男になる時だぁぁぁぁ!!!  
 
 
 
――その時、冷房から神風が吹いた  
 
 
 
「連れて行かれちゃいましたね…臼井君」  
 
「思わず叫んじゃいましたけど…ま、まさか臼井君にずっと見られてたってことはないですよね!?」  
 
「それはないでしょう…それに普通じゃないプレイをしようと言ったのはあなたじゃないですか」  
 
「そ、それはそうですけどぉ…って何ですかそのチャラチャラした格好」  
 
「こ、これはそのっ…万が一誰かに見られた時のための変装というか何というかですね…」  
 
「でたっ!チキン!」  
 
楽しそうに会話をしつつ目的の駅の改札を抜ける二人の背後  
ニヤリとする少女の髪飾りが不気味に輝いていた  
 
おしまい  
 

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