「せんせぇ〜」  
畳に寝転び本を読んでいた望に、甘えるような声を出して晴美が抱きついた。  
上半身を起こして、本を置いた望が晴美の方を向くと、晴美がちゃぶ台を指差した。  
その上には、コミックに原稿用紙にペンに……と晴美の同人誌作成用の道具一式が置かれている。  
原稿用紙には、男性二人が裸体で絡み合う姿が描かれていた。  
晴美の少々やっかいな趣味、やおい本である。  
 
「うまく、描けないんです」  
「描けない、って……」  
描けない、彼女がそう言うのは、少女にとって馴染みの薄いもの、いわゆる男性器の事だろうか?  
などと思うも、望はすぐに考え直す、いやしかしそれは、と。  
 
「あの……この間そう言って、さんざ私の事いじり倒したじゃないですか……」  
そう、その話は既に終わっていた。  
以前も、望は晴美に同様の事を頼まれたのだ。  
猫なで声で、甘えに甘える可愛い恋人に負けて、望は晴美の無茶な要望に応じてしまった。  
 
今でも鮮明に思い出せる。  
――男の人ってどこがきもちーのかな?  
なんて可愛い事を言う晴美に、逐一反応をチェックされながら、全身の感度を探られたあの日の事を。  
特に性器に関しては、どれほど愛でられ、弄られ、イかされ、観察されたか。  
さすがに、お尻の方は……『人差し指一本、第二関節まで』で勘弁してもらったのだが、  
いくら恋人同士でもあるとはいえ、その日の望の教師としての威厳は完全に地に落ちてしまっていた。  
 
その点に関しては絶望してみたりもしたが、晴美とそういうコトをしたのには後悔していない。  
生徒にそんな風に扱われるのが、予想外に気持ち良かったというのが一つ。  
お返しに、と望の方もたっぷり晴美の体を堪能させてもらったのが一つ。  
結果的に、その日以降の二人の行為の密度が、とても濃いものになったというのが一つ。  
どれもエロい理由だった。  
おかげで最近、晴美にいじめられながらされるのが、ちょっとお気に入りの望である。  
 
「ん?ああ、そっちじゃないですよ。それは大丈夫です、ほら」  
「うあ!?」  
真っ白な原稿を取って、さらさらと絵を描き、望の前に差し出す晴美。  
恐ろしいことに描かれたそれは、望のモノに似ていた。  
 
「描けないってのはですね。表情のコトで……」  
「表情?」  
「ええ。というわけで……先生、手伝ってください!」  
「私が手伝う……表情……それって……」  
にこりと晴美が微笑む。  
「大丈夫ですよ。先生はフツーにえっちしてくれればいいだけです」  
「やっぱりそれですか」  
「うーん。先生……ダメ?」  
望に抱きついて、柔らかな体を押し付けながら尋ねる晴美。  
そんな彼女に、今回も望は負けてしまった。  
 
布団の上に座った二人は、一糸纏わぬ姿で抱き合い、舌をからめ合う。  
しばらくそうした後、晴美が望の下腹部に手をやると、すっかり硬くなった望のそれが指に触れた。  
その感触に小さく反応した望が唇を離すと、晴美がくすりと笑い、顔を望の下腹部へと近づけた。  
晴美が、じっと望の顔を見つめながら、ゆっくりとした動きで望自身を口に咥える。  
ちょろっと舌を触れさせたかと思うとすぐに離し、指で軽く袋を揉んだかと思うとそれもすぐにやめる。  
それら一つ一つの刺激によって訪れる望の表情の変化を、見逃さぬように、と見つめる晴美。  
(ああ、今日は焦らされそうですねえ……)  
 
次第に一つ一つの動きが大きくなり、複合的になっていく。  
観察される緊張にも慣れてきた望は、茎に袋にと与えられる刺激に息を荒くして、その表情も乱れていく。  
望に奉仕しているうちに晴美自身も興奮して、指で自分を慰めていた。  
「っん……藤吉さん、もう……出ま……」  
言うやいなや、びくっと体を震わせて、望が多量の精液を晴美の口内へ吐き出した。  
射精の快感に酔いしれながら、望が霞んだ目を晴美の方へ向けると、その右手にはカメラが握られていた。  
 
「え……あ、撮りましたね!?」  
ちゅぽ、と音を立てて口を望から離し、晴美がデジカメの画面を望に向けた。  
そこには、とても気持ち良さそうな顔の望が映っていた。  
「バッチリ」  
「いやぁぁ!?」  
「いいじゃないですか。二人の愛のメモリーです。あとで先生にもあげますから」  
「要るかぁ!だいたい二人って、私しか映ってないじゃないですか」  
「ふふ、とにかく、ありがとうございました」  
くすくす笑いながら、晴美が望自身にキスをした。  
 
晴美が、唾液と精液でべとべとになった望を舌で綺麗にする。  
とろん、と惚けた顔で、晴美は指で自身を慰めながら、その行為に没頭していた。  
そこに、パッと光が瞬いた。  
なんだろうか、と晴美が顔を上げると、望が先ほどのデジカメを手にしていた。  
「お返しです」  
晴美がしたように、晴美の痴態が映った画面を向けて、意地悪く望が笑った。  
さすがに顔を赤らめ、視線を外したが、むしろ晴美の自身を慰める指の動きは激しくなってしまっていた。  
 
「はぁ……せんせえ……」  
「はいはい、わかってますよ」  
しとどに濡れる晴美の秘部を前にして、望のそこがまた熱くなった。  
望が布団に寝転んで晴美を手招きし、晴美はその誘いに応じて、望を自身の中へと、ずぶずぶ沈めていく。  
「っく……」  
熱く、きゅっと締め付ける晴美のそこへ挿入した望が、快感と苦しさの混じった顔をする。  
そこで、またカメラのフラッシュが瞬く。今度は、晴美がデジカメを手にしていた。  
その不意打ちにちょっとした抗議を込めて、少し乱暴に望が下から腰を打ちつけると、  
その衝撃に晴美は可愛い声を上げ、大きな胸をぷるっと揺らしてカメラを落とした。  
 
「あ、あっ……あんっ……せんせっ」  
望が腰を打ちつけるたびに、晴美が甘い声を漏らす。  
その動きで、ぷるぷると震える晴美の胸は、下から見上げる望の興奮をより喚起させた。  
望と晴美は、快楽の渦に飲み込まれて、声をあげながら互いを求めあう。  
最高潮に高まった二人は同時に達し、膣内に射精を受けた快感に、晴美は全身を震わせた。  
 
「っふ……ぅん」  
ぬぶっという粘着質の音と共に、晴美が腰を上げると、晴美の秘部からポタポタと精液が零れ落ちた。  
「はぁぁ〜……先生」  
ぐったりと脱力して、晴美が望に擦り寄るようにして横に寝転んだ。  
満足そうに目を閉じて、絶頂の余韻に浸っている晴美の頭をなでながら望が言う。  
「ね、藤吉さん。何か忘れてません?」  
「……何か?」  
「ええ……される方、ですよ」  
「される方?」  
「だから……こっち」  
腕を伸ばし、望が晴美の尻を撫で、すぅっと谷間を指でなぞった。  
 
「こっち、って……ええー!?いいです、いいですよそれは!ほら、いつもされてるからわかりますし!」  
「それは、こっち……でしょ?」  
指を晴美の秘部に挿して、望が言う。  
「んっ……でも、その……」  
「ちょっとくらい経験してたほうが、良いんじゃないですか?ちゃんと優しくしますから」  
「うう…ん」  
望も晴美も、お互い甘えられると断れない所は同じだった。  
 
よつんばいになって、晴美は枕にかじりつくような格好で望に尻を向ける。  
「優しく、優しくですよ!ほら、私、優しくしたじゃないですか!」  
優しくした、というのは先日のアレのことだろう。  
だが、例の『人差し指一本、第二関節まで』というのは譲歩の結果で、当初の晴美の要求はもっと激しいものだった。  
 
「わかってますって……ほら、力抜いて」  
「う……ん」  
望が晴美の柔らかなヒップに手をやり、尻たぶを左右に少し広げて菊門をさらさせた。  
「っあ……へ?ええ?ちょ、ちょ、ちょっと待ってせんへっ!?」  
声を裏返らせて、晴美が望の方へ振り向いた。  
「……どうしました?」  
「今、先生?な……」  
「舐めました、けど?」  
自分が望にしたこと同様、指を挿し込まれるのだと思っていた晴美の顔が、カーっと紅潮した。  
 
「優しく、って言ったのはあなたじゃないですか。いきなり指入れるよりは優しいですよ?」  
「うぅ……でも……」  
「多少恥ずかしいくらいが気持ち良いものです。ほら、先生に任せて」  
「……うん」  
任せて、と言われても普段はあまり頼りにならない望である。  
だが、こういうときに限れば、いつだって望は晴美をしっかりと導いてくれていた。  
結局、持ち前の好奇心の強さに負けた晴美は、再び元の体勢に戻り、望に身を任せた。  
 
望の舌が、晴美の菊門の周囲を舐めて湿らせる。  
しばらくそうして、晴美の体を温めた後、指を使って広げた穴に望の舌が侵入する。  
「うぅん……くっ……あっ、あぁ……」  
初めは異物感でしかなかったそれが、晴美が慣れていくうちに、次第に別のものに変わっていった。  
むずがゆく、むしろ気持ち悪いくらいであったはずの望の舌による刺激は、もはや快感だ。  
 
望が舌を離すと、既にその感覚にハマりつつあった晴美が、やめないで欲しいという意思を込めて、  
甘ったるい声で望を呼んだ。  
「っ……せんせぇ……?」  
「良さそうですね。じゃあ次、指入れますね」  
指を挿し込まれて、一瞬、晴美の息が止まり、苦しさを覚えるも、すぐにまた望の指の動きに溺れる。  
だが、しばらくすると望が指を抜いて立ち上がった。  
「すいません。ちょっとの間だけ、目を瞑っていてください」  
「ふぇ?……うん」  
 
早く続きしてくれないかな、とうずうずしながら望の言う通り目を閉じる晴美。  
すぐに望は戻り、再び晴美の肛門に指を入れて前後に動かし始めた。  
「あっ……せん、せっ……」  
「ふふ、ちょっと大事なコト忘れてましてね…………目、開けていいですよ」  
「はい…………あ……」  
晴美が目を開けると、目の前に鏡があった。  
もちろんそこに映るのは、自分の姿。  
両手で枕をぎゅっと握りながら、潤んだ瞳で、はぁはぁと息を荒げ、快感に酔いしれる己の顔だった。  
「ほら、しっかり見て。表情描くための恰好の資料でしょう?」  
「…………きもち……よさそう……」  
自分の痴態を見せつけられた晴美は、さらに強く興奮しながらも、まるで他人事のように呟いた。  
 
「ねぇ藤吉さん?私も……いいですかね?」  
晴美の背後から、望が鏡越しに晴美を見つめて尋ねた。  
「んっ……それって、先生の入れる、ってこと?」  
「無理なら……」  
「いい……ですよ」  
熱に浮かされたような顔で、晴美もまた鏡越しに望に答えた。  
 
望が晴美の秘部からしたたる愛液を指ですくって、肛門に馴染ませる。  
「苦しいかもしれませんけど……入れますよ?」  
「はい」  
ぎゅっと目を瞑る晴美の菊門に当てられた望自身が、その中へと入っていった。  
「あっ、ぐっうう……」  
晴美が涙を流してぶるぶると震えながら、苦しそうな声をあげる。  
「大丈夫ですか?抜きます?」  
「苦しい……けどなんとか。でも、ちょっと待って……」  
 
はあはあと肩で息をしている晴美が落ち着けるまで、柔らかな誘惑に耐えながら望がじっと待つ。  
しばらくして、息の落ち着いてきた晴美が、枕で涙を拭って、少しだけ腰を動かす。  
「っひ……ん」  
その刺激に一瞬呼吸が止まった晴美に、望が心配そうな顔をする。  
「……どうぞ、先生」  
望が頷き、ゆっくり腰を前後に動かし始めた。  
 
「っ!……ふぅ、はぁっ……ああ」  
晴美が苦しさと、ほんの少しの快感が混じった声を漏らす。  
望は、そんな晴美の様子を確かめながら、腰の動きを少しずつ大きくしていった。  
「せんせっ、きもちよく……なって、きまし……た」  
「よかった……でも、無理はしないで下さい」  
「はっ、い……」  
 
腰の動きと、二人の息遣いが激しくなっていき、晴美の秘部がとろとろとよだれを垂らす。  
「はーっ……はーっ……先生、いいです……こ、れ」  
「ええ……く……限界です、もう……」  
「はい、はいっ……っん、あ、あぁぁ……」  
晴美の中で、望の分身が膨張し、精液を放つ。  
直腸内で射精を受けた晴美は、だらしなく口を開けて、その未体験の感覚に溺れていた。  
 
「うっ……ん」  
並んで寝転び、ちゅくちゅくと舌をからめ合う望と晴美。  
「……ふぅ、どうでした、藤吉さん?」  
「きもちよかった……です」  
「ふふ……ああ、いいものがありますよ」  
と、望がデジカメを手に取り、晴美に見せる。  
そこに映っていたのは、目を閉じて、半開きの口から涎を垂らす晴美だった。  
ちょうど、望が絶頂を迎えた直後あたりだ。  
「またこんなの撮って……先生の変態」  
「あなたには、言われたくありません」  
 
「先生、またしてくださいね……お尻。今度は、先生にもしてあげますから」  
「……優しくしてくださいよ」  
「ええー?私、ちょっと泣かしちゃうくらいが好きなんですけど?」  
「勘弁してください……」  
「ちぇー」  
なんて、半分本気の冗談を言い合って、二人はまたキスを交わした。  
 

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