保健室に入ると、四つ並んだベッドの一番奥、窓際のベッドだけがカーテンで遮られていた。
外は薄暗く、すでにいくつかの電燈に明かりが灯っていた。
ほとんどの生徒は下校し、教職員の人数も減っているせいで
校内は昼間の賑やかさが嘘のような静けさだった。
「陽が落ちるのが早くなりましたね」
望は色を無くした室内を見回してからつぶやいた。
そして誰からの侵入も許さないかのように、カーテンで隙間無く
閉じられたその空間に歩み寄り、そこを開いた。
すると、窓から薄い明かりが差し込んで 自分の膝を軽く抱くような姿勢になって
寝転んでいる可符香を照らし出した。
「待ちくたびれちゃいましたよ」
ごろりと寝返りを打ち、いつもと変わらぬトーンで可符香は言う。
何故か彼女の瞳は少し潤んでいた。
「いや、すみません。なかなか仕事が片付かなくて」
あれはその日最後の授業中の出来事で、あの後 結局可符香は教室に戻らずに
保健室に篭もっていた。
その時 望は女子生徒達から抗議攻めに遭っていたが、なんとかはぐらかした。
「それじゃあ…先生」
望は上目遣いで見上げる可符香に視線を落とすと、
スカートから伸びる白い脚が目に入った。
制服の上からでもわかる胸の膨らみは 今はそれほど無かった。ブラは外しているんだろう。
「ええ……では…」
「今日は先生の好きにしてくださいね」
「はあ…わ、わかりました」
行為のときは、いつも何かを企んでいるような笑顔でリードしていた可符香が
長距離走でもした後のような表情で誘う姿は初めて見たので、望は少々戸惑った。
しかし同時に、望の身体はどくどくと脈打ち始めている。
ぎこちなく可符香の上に覆い被さり、右手で彼女の額を押さえ付け、唇を重ねた。
抉じ開けられた唇から、望の舌が入ってきた。
「…っん…」
口の中を舐め回してくる望に応えるように、可符香も舌を絡ませる。
互いの唾液が混ざり合い、やがて可符香の口端から滴り落ちた。
唇を離しては、また重ねる。その行為を続けながら、望がゆっくりと可符香の身体の
中心へ手を這わせると、彼女の下腹部がビクンと震えた。
「あっ…」
スカートの中に手を入れ、下着をずるずると引き下げて脱がし、秘部をそっと擦ってみた。
すると ぬるりと指に纏わりつく感触があった。
しかしそこは、この短い間では充分過ぎるほど濡れていることに望は気付いた。
そして先程の可符香の潤んだ瞳、妙に疲れたような弱々しい表情を思い出し、恐る恐る訊く。
「あの……もしかして私が来るまで…一人で、してました?」
自慰行為を指していることを、可符香はすぐに理解した。
「…だって…どうしても我慢出来なかったんです…」
可符香は恥ずかしそうに身を捩り、悪戯がバレた子供のように目を伏せる。
この場所で自らの手で行い、一人身悶えする可符香を望は想像した。
すぐに堪らなくなってしまい、再び彼女と唇を深く重ね合わせていた。
そして耳、首筋、鎖骨に唇を這わせていき、制服を捲り上げて、柔らかな乳房を露にする。
貪るように片方の乳房を舐め回し、吸いあげた。
「…ああっ…ん、はぁ…ッ!」
もう片方の乳房は、掌を最大限に使って揉み解すと、その柔らかなふくらみは
望の指の動きに合わせて簡単に形状を変えていく。
その行為が終わる頃には、乳房に赤い指の跡が残ってしまっていた。
胸から下へ移動する手は、可符香の秘部へ向かった。
愛液で濡れるそこに、ゆっくりと人差し指を第二関節まで押し込めていく。
「あっ…ぁ…ん!…ああッ!やっ…」
ぐちゅぐちゅと粘着質な水音が響き、可符香は快感の悲鳴を上げた。
「一人でするよりずっと気持ちいいでしょう」
僅かに口角の上がった望は可符香の耳元で囁いた。
「ぁんっ…!あ、あぁ…っ!…はぁッ…」
望はわざと指の根元まで入れずに焦らして、声を上げる可符香をじっと眺めていた。
今まではされてばかりで、なかなか思い通りに行えなかったからか
喜びが込み上げてきたのかもしれない。
指を抜くと、とろとろと愛液が溢れ出てきた。可符香は小刻みに身体を震わせている。
望は袴の腰紐を緩め、主張しきった自分の肉棒を取り出した。
「入れますよ…大丈夫ですか」
「…は、……い…っ」
望は可符香の両膝を掴み、脚を開かせた。
硬くなったその先端を彼女の入り口にあてがい、器用に沈め始めた。
可符香は声にならない声をあげ、望にしがみついてくる。
望は肉壁の締め付けで途中で果ててしまいそうになったが、その熱を必死に抑えた。
「ん、ぁ…せん、せ…ッ!だめぇっ!あ、あぁっ」
「もう…少しですから…我慢、してください…」
「はあっ、あ…ぁッ…あんっ」
二人は汗で額や首筋に髪をはりつかせ、呼吸も荒くしながら
やっと完全に繋がることができた。
「…ん、あっあっ、せ…先生…っ!」
しかし可符香は、あまりの刺激に耐えられず腰を上下に動かし始めた。
可符香の腰に手を回し、彼女の動きに合わせて望は気持ち良さそうに声を荒げた。
結合部から粘液がこぼれ、望によって持ち上げられた可符香の腰に向かって流れ出ていく。
「き、もちいい…ですかっ…?あっ…先生……ッ」
可符香は無理矢理笑顔を作ろうとしたが、それは出来なかった。性感には敵わない。
「いいですよ…このまま…いきましょう、か」
途切れ途切れに会話し、望は可符香の胸に顔を埋めた。
可符香は身体に溢れる快感を逃がすかのように 首を上下左右に忙しなく動かしている。
互いの性器を擦り合わせ さらに求め合い――
「あ、あっもう、無理です…ッ…あんっ、あ、あぁぁッ!」
涙を流す可符香の叫びで、望は限界を悟り、一気に引き抜いた。
しばらく二人は達したときの体勢のまま、呼吸が落ち着くまで抱き合っていた。
気付かなかったが、二人とも腕や脚に着衣が引っ掛かっているだけの姿だった。
望は足首の辺りで袴が皺寄せ合い、上の着物は女性が羽織るショールのように
肘だけで保たれていた。
可符香の制服、腹、乳房、首、顔にまで精液がべっとりと付着しているし、
シーツは汗や混合液でバケツをひっくり返したように濡れている。
そんな状況に望はやや顔を引きつらせて つぶやく。
「なんか…変態みたいですね…」 ぼんやりとした意識の中で、可符香と目を合わせた。
すると、可符香はふふ、と笑って、もぞもぞと擦り寄ってきた。
影もなんの含みもない笑顔に見えたのは、いつのまにか出ていた明るい月の光の
せいではない。と思う。
おわり。