暑き朱夏は身を横たえ、全てを落とす季節が足早にやって来る。
校庭は色付いた木の葉が舞い降り、一面を黄色に染められている。
秋の訪れを示すように、機織が短き時期を懸命に生きて鳴いている。
放課後、夕暮れの校舎は静けさに支配されず、虫の声が響く。
宿直室の二人は身を寄せ合いつつ、耳を澄ませる。
意識は互いに向けられず、外の世界へ。
大きな毛布に包まれながら、外音を聞いていた。
「キリギリスですか、…すっかり秋になりましたね」
「うん、…あっと言う間だったね」
「えぇ」
両思いを知り充実した日々を手に入れた二人。
変貌の欠片も見られず、退屈極まりない生活を脱け出したのだ。
それはあまりに急激だった。
急激な変化に休息を入れるかのように、二人は今日と言う日をのんびり過ごして
いる。
華奢な肩に手を回し、小さな体を引き付ける。
力に逆らわずに身を任せ、これまた小さな頭を預けている。
霧はそっと横を向き、望の横顔を見つめる。
暫くは気付かない振りを続けたが、熱心なその視線につい応えてしまった。
「どうか、しましたか…?」
正面から少女を見据え、決して目を反らさない。
疑問を乗せて目で聞いてみる。
そうすると、やっと霧は答えた。
「ううん、…何でも無いよ」
目を臥せて少し寂しそうな表情を見せる。
一瞬、何か粗相があったかと危惧したが思い当たる事は有りもしない。
この秋の日に、何やら想う事があるのだろう。
具体的で無いが、将来の不安など。
具体的に言えば、死への畏れだろう。
それは、誰も避けては通れない道なのだ。
そう考え付くと、望は少しだけ肩を抱く力を強めた。
より、少女との距離が縮まる。
霧も遠慮する事なく、その身を寄せた。
時の流れを早く感じれば、その時間の終りを恐れる。
当然、必然、偶然。
死を恐れるのは当然。
死が訪れるのは必然。
二人が出会ったのは偶然。
せめて身が滅びるまでは。
心も精神も崩れる前には。
二人、寄り添って生きていきたい。
それだけを望み生きていく。
それ以上は望まない。
それ以下は望まない。
二人離れずに、生きていきたい。
その強い決意、信念は機織の鳴き声と共に心に染み入った。
二人動く事なく、そのまま。
会話は無い。
只、抱き寄せる力だけが変化していた。
夜は明けたのか。
厚い雲に覆われた空は、太陽が確認出来ない。
可愛い寝息を吹き掛けながらも、望は物思いに耽ていた。
もし、自分が死んだら。
彼女はどうするだろうか?
もし、彼女が死んだら。
自分はどうするだろうか?
堂々廻りの議論は、脳内に疲れをもたらした。
(少し、散歩でもしてきましょうか…)
幼い寝顔を眺めながら思い付いた。
霧に付いてきて貰うかどうか。
起こすのは可哀想だ。
しかし、独りにするのも。
望は、五分程考えて毛布から抜け出した。
少女を起こさないようにゆっくりと。
二人の生活には大きいだろう食卓に走書きでメモを残し部屋を後にする。
何のことはない。
結論は簡単に出た。
自分が、独りに成りたかっただけなのだ。
霧が外に出るわけがない。
だがしかし、未来の事など誰にも分からないものだ。
少し想像してしまう。
一度見た夢のように、外で霧が遊び回る光景。
そんな未来を、想像してしまう。
外は太陽が出る代わりに、時雨がぽつぽつと降り出した。
和風の傘を広げ、望は街に繰り出した。
朝方の冷え込みは、熱った望の脳には丁度良い。
本当に降っているか分からない程の零雨。
地を叩く音など微塵も存在しない。
無音の世界だ。
それは淋しすぎる世界で。
瞬時に気付いた。
彼女を其処に、置き去りにしたのだと。
思う程に体は動かなかった。
全速力のつもりだが、それは速歩きに過ぎない。
唯、道順だけは正しかった。
校門に着いてすぐに、校舎を仰ぐ。
(まだ、起きていらっしゃらないようですね…)
宿直室の窓は暗いままで、生活感が感じられない。
霧が起きる前にと、歩を速める。
校庭を駆け抜け、昇降口に着く。
傘を折り畳み、一息付ける。
水滴を落とし、自らが作り上げた模様に目を向ける。
冷たいコンクリートに、冷たい雨が。
滲みながら吸い込まれてゆく。
そうして視線を動かしていると、ある物が目に入った。
それは、機織だ。
しかし、その機織は既に生命の燭を亡くしてるのか、ぴくりとも動かない。
無惨に横たわり、触角を垂れ下げている。
どうやら、雨に流されてきたようだ。
望は、宿直室を目指そうとした。
こんなものに構う余裕は無いのだ。
そう、無い。
無いのだが何故か。
望は目を離せなかった。
静かに、淋しそうに。
横たわっているだけ。
なのに、それは。
自分の自殺未遂よりも明確に、死を痛感させた。
何故か分からない。
理由は必要ないかも知れない。
只、死を実感させた。
より、死が身近な物に感じる。
思い立った望は、走り出した。
走って、走って。
機織から遠ざかった。
或いは、死から逃げようとした。
息を切らせながら宿直室の扉を開ける。
立て付けの悪い扉は、派手に音を立てて開いた。
霧は起きていたようで。
その音に気付かないわけがない。
毛布を揺らしながら望に近付く。
その手にはタオルが握られており、大事そうに抱えている。
「…大丈夫?どこ行ってたの、先生?」
「少々、散歩に…」
「お風呂、沸かしてるよ、入る?」
「…すみません、小森さん」
タオルを渡してくれるのかと思いきや、頭から被せられる。
と、為す術もなく髪を掻き乱された。
少し背伸びをし、少し背を屈める。
二人の距離が一気に縮まる。
「それなら、着替え用意するね」
寒くない程度に水滴を取ると、霧は離れようとした。
特にそうしようと思ったわけでも無いのだが、望はそれを引き留めた。
離れてゆく手を握り締め、そのまま引き寄せる。
先程目にした切ない瞳。
本能的に言葉が口を出ていった。
「小森さん、一緒に入りませんか?」
今二人は、狭い浴場に身を入れている。
顔を紅くさせながらも霧は返事を返した。
只、一度首をもたげただけではあったが。
確かな意思表示だった。
「朝からお風呂なんて、贅沢だね」
望を目の前に座らせて、霧が楽しそうに語りかけた。
成人男性標準的な体格の望の背中は、霧からすれば十分に大きい。
その背中に、タオルを当てて擦りあげてゆく。
石鹸の泡が表面を占拠する。
時折見える白く柔らかな肌。
だが、望はそれに触れたいと思わない。
昨日の晩から脳を駆け巡る疑問が、重く乗し掛るのだ。
自分が死んだら、どうなるのか?
少女が独りに成ってしまうのか。
それは、少々傲慢な考えの気もしたが、恐らく、そう間違ってはいないはずだ。
あの淋しい世界に取り残される。
彼女が独りで。
生きていくのか。
胸が、締め付けられた。
「小森さん…」
「んー、なぁに?せんせぇ」
嬉しそうに、いや、楽しそうに背中を流してくれる霧に話し掛ける。
作業を止めずに、そのまま問い返してくる。
だから望も、そのまま話を続けた。
「…先生、決めましたよ」
「何を決めたの?」
「もう、死にたがるのはやめにします…」
「え…!?」
動きが止まる霧。
しかし、その言葉には確かにそれだけの驚きが備わっている。
絶望先生が死にたがらない。
これはもはやタイトルを変えるしかない。
そんな状況に陥ったのだ。
だから霧は、必死に止めた。
「ど、どうしたの、急に…?何かあったの?」
「はい、実は…」
望は全てを話して聞かせた。
色々な想いが詰まった話だった。
霧を独りにしたくないという話がメインだったが、機織の事も思い出していた。
機織は死にたがったのだろうか?
動物は死ぬその時まで、自分の死を知らない。
なら、機織は生きようとしたはずだ。
この世界には生きたくても生きていけない生命がある。
そして、死がとても身近な物だと感じられた。
全てを話して聞かせた。
霧は黙って聞いてくれた。
無駄な相槌を打つこともなく、静かに耳を傾けた。
まるで、機織の鳴き声を聞いているかのように。
「というわけです。…理解して頂けたでしょうか?」
「うん…」
霧は話が終わると、止めていた両腕を動かし望に抱き付く。
いや、望を抱き締めたのだ。
豊かなバストを押し付けながら望に語り返す。
「先生はやっぱり、凄く優しいんだね…」
「そうでしょうか…」
「うん…、優しいよ。」
「ありがとう、ございます…」
「だけどね、…死にたがるの悪い事じゃないと思うよ…」
「…!?」
「先生の言う通り、生きたくても生きていけない人が一杯いるけど…」
「…」
「死にたいと思う人は、そう思うなりの事があるはずだから…」
「…」
「それは、否定出来ないよ。思想は多分、自由なんじゃないかな?」
まさか、自分の教え子に諭されるとは。
教師人生の中でもかなり珍しい事象だ。
目から鱗がボロボロ落ちる。
「そうですね、確かに…「だから!」
これまた珍しい事象だ。
霧が望を制し、言葉を重ねる。
より体を密着させ空間をなくしてゆく。
「私が先生に死んで欲しくないって思うのも、自由だよ…」
次に目から落ちたのは鱗ではない。
もう少し温かくて、人情的なものだ。
何だかスッキリした。
独りで悩んでいたのが馬鹿らしい。
二人の考えは何ら変わらない。
互いに生きていて欲しい、という簡単なもの。
唯、それだけ。
それたった一つなのだ。
「小森さん、変わりましょう…」
「え?あっ…、うん」
頬を濡らす雫は見られたくなかった。
誤魔化すために、自らにお湯を掛けてから霧の方に向き直す。
先程までは何とも無かったのに。
突然、少女の背中に興味が湧いてくる。
ヴィーナスのように白く、美しい。
一片の穢れも無い、まさに大理石の滑らかな肌。
しかも、とても子供とは思えない艶めかしいボディライン。
隠すことも無く、喉を鳴らしてしまう。
タオルを押し当てて、軟らかく擦るように気を付けながら綺麗にしてゆく。
普段、自らを洗うようにしては駄目だろうと考えて、慎重に。
もはや擦ると言うよりは、なぞる。
そう表現した方が良いだろう。
「あははっ、せんせぇ、くすぐったいよ」
霧が与えられる感覚から逃れようと身をくねらせる。
少女はそんなつもりは無かっただろうが、その動き。
あまりにも妖艶で、望への刺激に変わる。
それに耐え切り、何とかお湯で背中を流してあげる。
楽しそうな表情だ。
霧は無邪気にも微笑んでいる。
だというのに、独りで欲情している。
少し、罪悪感を感じる。
「小森さん、流しますよ…」
再び、ゆっくりと背中にお湯をかける。
望はその動きを眺めていた。
霧のしっとりとした肌を、摩擦を無視して滑り落ちてゆく。
重力しか存在していないかのように、滑り落ちてゆく。
それは、とても美しく。
つい、手を這わせてしまった。
「あははっ、あははっ!!」
本当に擽ったいようで、霧は始終笑っている。
流石にそんなつもりで触れているわけではないので、徐々に力を込める。
次第に感じ始めたようだ。
「んっ…、はぁ…」
呟いているのか、吐きだしているのか分からない声を出す。
望は止める事なく撫で続けた。
霧の肌は吸い付いつくような、心地好い弾力を保っている。
長い爪で、水滴の後を軽くなぞる。
体が、ピクリと震える。
それに釣られて、更に激しく指を這わせる。
ふと、視線を上げると見覚えのある美しいうなじが。
唇を寄せる。
「ひゃあ…!」
今度はピクリでは無い。
はっきりと分かるように、少女は震えた。
幼い独占欲が満たされてゆく。
それに気を良くして、望はより深い反応を求めた。
右手を上気した頬に添え、左手を胸に当てる。
指を上手く使い、霧を横に向かせ口付けた。
半ば無理矢理で強引な接吻だが、霧は拒まずに優しく受け入れた。
舌を唇に触れさせると、霧は望を迎え入れた。
「んっ…、はぁ…」
ピチャピチャと音を立てながら互いの舌を味わう。
望は、はやる気持ちを抑え付けながら、ゆっくりと舌を絡め合い、唾液を霧の口
内に送り込む。
同時に左手でやわやわと胸を揉みしだく。
形の良い房を撫で、時にはきつく絞り込んだ。
手の中で、先端が硬くなってゆくのを感じる。
それに気付いた望は、執拗に其処だけを責めた。
いつの間にか、霧は対面に座り直していた。
役目を失った右手を後頭部に回す。
霧も両腕を望の体や頭に回し、抱き締めた。
より深く、口付け会う。
より深く、身を寄せる。
「んっ、…ふぁあ」
霧の舌を吸い、その唾液を貪る望。
もう、どのくらいの間口を交わらせているのか。
感覚が痺れていく。
いや、感覚が痺れると言うよりは、共有。
一人だけの感覚でなくなっていく。
そう表現した方が的確だろう。
そう思い付くと、漸く望は唇を離した。
離れる二人の間は銀の糸で繋がれている。
霧は少しうつ向きながら、真っ赤になっている。
陶磁器に優るとも劣らない、その美しい肌を朱色に染めている。
その可憐な姿に可愛いさを覚え、望は更なる場所に手を伸ばす。
「あんっ…!?」
既に濡れそぼった其処は、簡単に望の指を受け入れた。
適当に指を動かし、霧の中をほぐれさせていく。
暫く続けると、霧の力が段々抜けてゆく。
そうして、完璧に脱力した霧を抱えて、浴槽の縁に座らせた。
抵抗しないのを良いことに、望は霧の脚を大きく広げさせる。
「きゃ…!!やだっ…」
恥ずかしさからだろうか。
霧は両手で顔を覆う。
しかし、指の間から覗く双眸には期待や不安の色が見えている。
それを確認するように望は眼前の秘部に口付けた。
何時まで経っても初々しい霧の反応に望は満足げで。
顔が緩みきっている。
しかし、すぐに目の前に集中する。
花びらは僅かに開いており、奥からはお湯とは全く違う蜜が溢れている。
口付け続けて、それらを吸いあげる。
瞬間、霧が髪を揺らしながら望の頭を抑え付け、密着させる。
口では拒もうとも、体は正直だ。
余計に溢れ出す蜜を一心に吸いながら、快感を与える。
味などありはしないのだが、望の味覚は確かに甘さを感じていた。
「小森さん、気持良いですか…?」
「…!?」
顔を離して意地悪な表情で訊いてみる。
こういう時、霧は嘘を吐かない。
だが、恥ずかしさから素直にすぐには言わない。
沈黙が続く二人の浴室。
しかし望がアイコンタクトで、
“答えないと続けませんよ…”
と、伝えると霧はボソリと呟いた。
「………うん」
そんな可愛らしい返事をする。
それが嬉しくて堪らなくて、更に優しく愛撫を続けてゆく。
外面ばかり刺激していた舌を休ませてから、望は中へと滑らせる。
ゆっくり、ゆっくりとその膣壁を確認しながら奥を目指す。
「あぁ…!!気持ち良いよぉ…、せんせぇ」
正直な感想が口をついて出る。
望はそれに応える為に、舌を最奥まで滑らせる。
同時に手を花びらの元へ持ってゆき、その頂点を撫でる。
新たな快感の波に乗り、蜜が滴る。
それらを、わざと音を立てて吸い取る。
今や浴室の中は望の舌使いの音だけが響いている。
いや、だけではない。
その愛撫を受け入れて、脚を開いて喘ぐ霧の声も。
「んんっ!!」
そろそろ限界だろうか。
望は舌を抜き取る。
霧の切ない声が上がる。
すぐに代わりの指を指し込んでやる。
舌は蕾の所へと移動させ、一気に責め立てる。
「やぁ…、だめぇ…!だ、めぇ…!!!」
霧が嬌声を奏で、脚を震えさせる。
少女の蕾を舐めるのではなく、吸い付く。
指を鍵状に変形させ膣の上側を集中的に擦る。
「あぁ!!せんせぇ!!!」
霧が一際大きな声を出し、体を弓形に反らす。
望の口元にかかる無味無臭の液体。
脱力して喘ぐ度に、少女が潮を噴く。
全てを口で受け止めると、霧への愛しいさが溢れかえる。
望は立ち上がり、すっかり力の抜けた霧に囁く。
「逝きましたか?小森さん…」
「…はぁ、…はぁ」
楽しそうに訪ねる望。
再び真っ赤になる霧。
それがまた可愛くて、唇を合わす。
軽く舌を絡ませ、そして離れる。
離れてゆく感触に寂しそうにする霧。
「小森さん…、良いですか?」
何の事かは、分かっているはずだ。
望も、そろそろ我慢が効かなくなっていた。
自らの欲望を遠回しに訊いてみる。
満たしてくれるのか、どうか。
霧は一度だけ、しかし、はっきりと伝わるように頷いた。
達したばかりの少女にすぐ付き合わせるのは少々厳しい気もしたが、望の絶棒は
はち切れんばかりに元気だ。
霧を立ち上がらせ壁に両手を付かす。
高く上げられた秘部を見つめる。
バックでの行為は想像しただけでも体に電流が走る。
ゾクゾクとする快感だ。
腰を掴み、霧の体を固定する。
天を高く突く、自らの絶棒を支えて目標を定める。
腰を寄せて、入り口に当てがう。
「行きますよ…」
「うん、きて…、せんせぇ…」
腰を進めて絶棒を埋没させる。
入れる瞬間の限りない閉塞感。
入れられる瞬間の限りない閉塞感。
存在を確かめ合う。
先程舌を踊らせた最奥まで辿り着くと、望は一息入れる。
霧に覆い被さる体制で体を支え、じっと動かずに居る。
そうしているうちに、互いに新たな快感を欲しがってしまう。
決して尽きる事のない欲望である。
「動きますよ、小森さん…」
「ふぅん…」
入れる時とは逆に思い切り引き抜く望。
絶棒が完璧に外気に晒される直前で止め、再び突き入れる。
何度も何度も、それを繰り返す。
単調な動きだが、それで十分。
息が荒くなってゆく二人。
特に望は、興奮を重ねているようだ。
浴室の壁に手を付いており、霧は背中を見せている。
その背中には、長く艶やかな黒髪が散りばめられている。
普段は綺麗に下へ向いている髪が、今は体に張り付いている。
ガクガクと震える脚。
しっかりと支えねばすぐに崩れてしまいそうだ。
普段の行為では起こり得ないであろう、あらゆる事象が此処にはある。
それらは、まとめて望の興奮剤となっていた。
まるで、無理矢理犯しているかのような。
そんな征服感が体を支配する。
只腰を振っているだけなのに、あらゆる快感を、感情を引き出す。
死ぬまで続けていたいと思う。
死んでも止めたくないと思う。
そんな脳の痺れ。
だけど、生理現象には抗えない。
訪れた射精感。
このまま霧の中に出したい。
ふと、そんな風に考えた。
それを、読み取ったのか、感じ取ったのか。
「い、良いよ…、ふぁ!こ、このまま中で…、んんっ!!」
そう言ってくれる霧を抱き締めて、望はラストスパートを掛けた。
霧は意識を飛ばされているようで、既に正気を失いかけている。
だけど、気にせずに繰り返す。
少女の中が気持ちよくて、どんどんそれに溺れてゆく。
全てを少女に捧げる。
望がそんな事を考える暇も与えぬ程に締め付け、まとわり付き、吸い取る。
もう、何も考えられない。
互いに壊れてゆきながら、そんな事に構いもせずに快楽を奏でる旋律を響かせる
。
肉壁と肉壁のぶつかる音が脳天を貫く。
駆け巡る解放感。
望は、気付いたら精を放っていた。
腰が抜けそうになる程の快楽。
ビクリ、ビクリと絶棒を突き抜ける。
それらを全て少女の中に注ぎ込む。
まだ成熟しない体に種を植え付ける。
背徳感と絶望感。
そして、それを超える幸福の時。
それは刹那の時ではあるが。
感じられただけでも至福の感覚。
子宮口に直撃する種。
それは更なる強烈な波となる。
「あっ…!ああっ…!!」
気をやりながら喘ぐ霧。
最後に思い切り突き上げる。
「ああぁっー!!!」
それが限界だった。
霧は望の放出を受けて、体をぐったりさせる。
倒れそうになった体を抱え込む望。
どうやら、動けそうにない霧。
シャワーを浴びようかと考えたが、両手が塞がったこの状態では難しい。
一応お湯を張っておいて助かった。
狭い浴槽の中を体を縮めながら入る。
が、やはり二人ではきつい。
仕方がないので、霧を自らの上に来るようにしながら望は湯の中に沈む。
まだ元気な絶棒が霧の肌に当たり、一瞬ビクリとなってしまう。
それを抑えてゆったりと浸かる。
先程までの躍動的な時間とは正反対。
揺蕩う時が過ぎてゆく。
ふと、髪の毛に顔を埋めた。
欲情していたはずなのだが、もう何も感じない。
只、その香りを嗅ぐと不思議な安堵感が満ちていった。
目を瞑り、嗅覚に集中する。
「ふふっ、擽ったいよ…」
行為を始める前に言った言葉と同じだ。
それだけの事なのだが、何となく嬉しい。
行為の後でも前でも同じ関係で居られる。
自分を受け入れてくれる事も。
自分が性欲のままに抱いていない事も。
それは達する時の幸福感とは違うが、何も変わらない。
素晴らしい高揚感だ。
それを伝えたかったのだ。
そう、それだけの事なのだが。
何故か言葉にならない。
だから、もう少し分かりやすい言葉に変えて伝えたい。
そう決意する望。
今は代替えで我慢して欲しい。
「ずっと一緒に、居ましょうね…」
と、だけ伝えておく。
「…うん」
その言葉が何か。
それは別の話で綴りたい。