クチ…ピチュ…
暗い部屋に水音が響く。
「クッ…ふぁ…」
徐々に高まる私の気持ちに比例するように水音が大きく激しくなってくる。
「アッ…く…やっ…」
それ自身が意思を持った生き物のように、指が頂上へと導くように激しく動く。
「もう…や…ああ…せん…」
ビクッと体が震え、私は指を動かすのをやめた。
後始末を終え、濡れた下着を履き替え私はベッドに横になり色々な事を考える。
女子大生に変装し、カレーを届けた時は嬉しそうに受け取り食べてくれてた。
その後も、顔を合わすと美味しかったと言ってくれた。一緒に道を歩いた事もあった。
隣の1年生に変装してラブレターを渡したときは受け取ってくれた。
その後大変な事になっていたけど、困った風にもまんざらでも無い様にも見えた。
だけど…いつまでたっても彼女達が私だということに先生は気づいてくれない。
それどころか…本当の私に接する時と、彼女達に接する時の先生は明らかに違う。
なにか…私には少し警戒をしているような素振りが見える。
「仕方ないよね。」思わずため息が出る。
確かに初めて桜の下であった時から、私は先生の隙を探しては自分が楽しめる方向へと導こうとしていた。
私だけでなく、そうする事でクラスの皆も先生も楽しい気分にはなる。でもそれを繰り返せば自然と先生も
私に対して警戒心を抱くようになる。警戒心は自然と棘になり、私との間に壁を設ける。
「ヤマアラシのジレンマ…か…」
先生は私に棘を向ける。他人を容易に受け入れる事ができない私もやはり棘があるんだろう。
でも…私は先生ともっと近づきたい。千里ちゃんや纏ちゃんのように先生に自分の気持ちを伝えたい。
だけど…お互い近づきすぎると棘が刺さってしまう。近づきたいけど近づけない
…だけど…ヤマアラシの棘は刺さると抜けていく。お互いの棘さえなくなれば私は先生にもっともっと近づける。
しかし私の棘は抜けても抜けてもすぐに生えてくる。昔の記憶。お父さん…お母さん…叔父さん…。
先生と私以前に…私の中にも2匹のヤマアラシがいるみたい。
いつか。私の中のヤマアラシの棘が抜け、先生と私の棘も抜ける日が来るのかしら。
そんな事を考えながら…私はいつの間にか眠りに落ちていった。