ピチュ・・・クチュ。  
望の指が動くたびに、湿った音が宿直室に響く。  
それに、霧のため息が重なった。  
望は、ふふ、と笑って霧を見上げると、これ見よがしに指を動かしてみせる。  
「・・・っ!」  
霧は頬を紅潮させて、唇を噛んだ。  
瞳は既に潤み、目尻には涙が溜まっているようだ。  
「どうしました・・・?小森さん。」  
言いながら、望は激しく手を動かして、かき回した。  
「やぁ・・・っ、だめ・・ぇ、せんせぇ・・・!」  
「ふふふ・・・何を言っても無駄ですよ・・・。」  
口の端に笑みを浮かべながら、望は指を目の前に掲げた。  
「ほら・・・見てご覧なさい、こんなに蜜をしたたらせて・・・美味しそうですね・・・。」  
霧はもはや、答えることもできない。  
ただ、望を見つめて肩で息をするだけだった。  
「それでは・・・いただきますよ、小森さん・・・。」  
 
あーん  
ぱくんv  
 
「お・い・ひ〜vvv」  
「わーん、せんせぇ、ひどいよ〜!」  
「大人気ねーな、叔父さん!霧ねーちゃんも杏仁豆腐くらいで泣くなよ!」  
うんざりとした顔の交の前には、限定発売の『黒蜜杏仁豆腐』を抱え、指先に持ったスプーンで  
杏仁豆腐をこねくり回している望と、それを恨めしげに半べそをかいて見ている霧がいた。  
 
「うるさいですね、勝負は勝負。ジャンケンで買ったのは私です!」  
「でも、せんせぇ、その食べ方は汚いよ・・・そんなにかき混ぜちゃダメ!」  
「ほっといてください、私はこうやって食べるのが好きなんです!」  
(ダメだこいつら・・・早く何とかしないと・・・!)  
 
ちゃんちゃん♪  
 

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