高い木々に囲まれた小道は、生い茂った枝葉の落とす影に覆われ、ここまでは眩しい日差しも落ちてはこない。  
普段なら暑苦しさすら覚える蝉の合唱も、遥か頭上から遠い声が届くだけで、時おりそよぐ風は、木々の香りを  
含み、涼やかな匂いを運んでくる。  
 
少女が一人。涼しげな白いワンピース姿で、日 に焼ける事は気にしていないのかノースリーブの肩には何も掛け  
ず、剥き出しにさらしている。  
およそ山林を歩くには不向きなピンクのミュールの爪先が、柔らかい地面を音も無く踏みしめた。  
楽しそうに飛び跳ねるような動作で、小道を少しずつ進んでいるように見える。  
日陰に包まれた道に、光の浮島が作られたように点々と落ちる木漏れ日の上を選んで、飛び伝いながら歩いてい  
るようだった。  
片手で帽子のつばを握り締め、軽やかに飛び跳ねる度に、頭の左右で対象的に括った長い髪が尻尾のように跳ね  
ている。  
楽しそうに口元に笑みを浮かべ、さくり と音を立てて飛ぶ。  
 
──と、着地した拍子にバランスを崩し、前のめりに転びそうになってしまう。  
なんとかもう片足を踏み出しバランスを立て直すと、足元に、脱げてしまったミュールが転がっていた。  
「………ぁ…!」  
拾い上げようとしてかがみ込むと、さっき着地した時だろう、ストラップが外れてしまっている。  
手にとって確かめてみるが、根元の金具から壊れてしまっており、簡単には直せそうもない。  
小さく溜息をつき、少し未練がましくそれをいじっていると、ふと、こちらに近づいてくる足音が耳に入ってきた。  
「──大丈夫ですか?」  
こんな所で一人しゃがんでたら、それは具合が悪そうにも見えるだろう。  
横手から気遣うような声が掛けられるが、少女は少しおっくうそうに肩を落として見せただけで振り向こうとはしない。  
地面に落とした視線の先には、ゆったりしたジーンズの足首とスニーカーを履いた足先が見える。  
様子からして、おなじように散歩していたのだろう。  
取り敢えず、変質者の類ではないようだ。そう判断し、肩に掛けた小さなポーチに手を伸ばそうとしていると、  
相手も屈み込んだのだろう、地面に置いたミュールに日に焼けた様子もない白い手が伸びる。  
「…ああ、紐が取れてしまったのですね。ちょっと拝見させて頂いてよろしいですかね?」  
 
──聞き覚えのある、…いや、聞き間違いようも無いその声。  
弾かれたように顔を上げた少女と、しゃがみ込んだ青年の、眼鏡をかけた線の細い面が鉢合わせた。  
 
「…………!!」  
少女は息を飲み、一瞬きょとんとした青年の顔も、みるみる血の気が引く。  
「…お……音無さん……!?」  
うわずった声で名前を呼ばれた少女は、手を伸ばしかけていたポーチからサッと携帯を取り出し、素早く文字を  
打ち込む。  
そして、青年の鼻先に画面を突き付けた。  
本人としては、相手への文を打ったつもりだったのだろう。  
だが間の悪い事に、受信されたメールがそのタイミングに重なったようで、携帯を突き付けたと同時に着信音が  
鳴り、なぜか自動開封された文面が表示されてしまった。  
 
『めるめる〜 どこにいっちゃったんだい? パパが悪かったよう 返事しておくれ〜』  
 
「……音無さん……お父上とケンカでもされたのですか?」  
絵文字が散りばめられたメール文に当惑しながらも、少し心配そうな声色で尋ねられ、芽留は慌てて画面を確かめる。  
そしてすぐに、眉を釣り上げて真っ赤になりながらも、再び携帯を突き付けた。  
『勝手に人のメール見んな! このチャラ男のダメ教師が!』  
「…いや、あなたが見せてくれたのでしょう?」  
『そんなわけあるか! このハゲっぱなし!』  
困った顔をして後ろ頭を掻きながら、ようやくいつもの調子に戻ったようで、先生は拾い上げたミュールを片手  
に芽留に微笑んでみせた。  
 
「…ええと。まだ怒っています?」  
『コロスコロスコロス』  
「あー……」  
先生は苦笑を浮かべ、手元に目をやり作業へと戻る。  
ゆったりとしたホールの様な広めの店内には、自分たちの姿しかない。  
数あるテーブルは全て空席だが、流行っていないという訳ではないのだろう、隣接したボートハウスの桟橋には  
船は一台も泊まっておらず、ガラスの向こう一面に広がる湖へと、みな出払っているようだった。  
テーブルを挟んで向かい合わせに座っているが、芽留は帽子を掛けた椅子を横に向けて先生に背を見せ、手に持  
っているジェラートを黙々とつついている。  
「…でもまあ、ワンピースでおんぶでは色々とまずいでしょう?」  
『だからって 姫抱っこは ねーよ!! 歩けるって言ったろーが!』  
「そこそこ距離がありましたから… 転んではいけないと思いましたので…」  
小さく笑って肩をすくめると、応急処置が終わったのかストラップを二、三回張ってみせ、芽留へと差し出す。  
「どうぞ。取り敢えず履けるようにはなりましたよ。」  
『……恩着せるのか。』  
半眼で振り返った芽留に悪戯っぽく笑ってみせただけで、特に何も答えずに先生は自分の前にあるアイスコーヒ  
ーを口元にまで持ってゆく。  
からからん と、氷が少し騒いだ音がする。  
 
芽留は顔の半分を振り返らせて、チラチラとグラスに入ったコーヒーを飲むその姿を見ていた。  
いつも学校などで見る時とは全く違う先生の姿に、動揺を隠しきれないのだろう。  
袴姿の時はどこか病弱そうに脆く儚い印象を漂わせていたのだが、若返ったような錯覚すら覚える目の前の先生  
は、血色の良い元気そうな顔色に、Tシャツ姿から伺える肩と胸板は意外としっかりとして健康な若者そのもの  
だった。  
常に背筋を伸ばしていた普段とは違い、片手の肘をテーブルに置いて、椅子にもたれながらグラスを傾ける姿か  
らは、行儀の悪さより先に違和感すら覚える新鮮さが溢れていた。  
『──ニセモノ?』  
「って、いきなりなんです? 私は本物ですって! 影武者でもありませんよ?」  
こちらを窺いながら画面を見せる芽留に苦笑しながら頬を掻いてみせた。  
 
「それはそうと音無さん。ここにいるという事は……やはりお父上を避けて?」  
芽留はようやく体をテーブルの方へと向き直し、食べ終わったジェラートのグラスを置く。  
『悪いか うっとうしくて仕方ねーんだよ それにオレの事言えんのか ハゲ』  
「いえ、私は『避諸』に来たわけではなく… もともとこの蔵井沢が地元ですよ? ちょっと立ち寄っただけで…」  
『ボンボンだから フラフラしてんだな 』  
「人聞きの悪いことを言わないで下さい…!」  
即座に反論しながらも、本気ではないのだろう。  
シニカルな笑みを浮かべてグラスを置き、テーブルに乗せた腕で頬杖をついてみせる。  
 
いつもよりやや前髪が垂れ気味で目を半分ほど覆っているように思える。  
暗い光を宿したような瞳で自分に微笑みかけられ、芽留は一瞬心臓が跳ね上がり、慌ててごまかすように席を立  
ち、すたすたとボートハウスの方へと歩いていってしまう。  
「音無さん?」  
ガラスのドアを開け、桟橋の方へと歩みゆく芽留を追って先生も席を立った。  
 
 
湖面には時折そよ風が吹き抜けているのか、小さなさざなみが立ち、日差しを照り返して輝いている。  
はるか彼方に見えるボートに乗る人たちは皆オールを漕ぐ手を止めて、漂っているように見えた。  
湖上は涼しく気持ちが良いだろうという事は想像に難くない。  
うらやましそうに遠くの船と、一隻も残っていない桟橋を見比べ、芽留はため息をついた。  
「……よければ一緒に乗りませんか。」  
背後にいた先生から声をかけられ、芽留は鼓動が、どき、と一度大きく跳ね上がった事を感じる。  
──しかしボートは残っていないはず。  
そう考えながらも期待し、急いで振り返った芽留は先生が指さす物を見てへなへなと全身から力が抜けてしまう。  
たしかにボートではある。……だがその一隻はまっ白い白鳥かアヒルをかたどった足漕ぎ式の物だった。  
 
馬鹿にするな、と、怒って捲し立ててくるだろう。  
いつもの芽留を想像して、待ち構えていたとも言える状態で先生は芽留を見ている。  
だが、当の芽留は、一瞬怒ったような顔をしたものの、突っかかりには来ず、への字に曲げた口と今にも泣きだ  
してしまいそうなほど潤んだ目で恨めしそうにこちらを見ているだけだった。  
携帯を突き付けられて苦情を連呼される事を予想していただけに、先生は焦ってしまった様子でとっさにハンカ  
チを取り出すと芽留に手渡そうと近寄る。  
「ああ、すみません! ちょっと冗談のつもりで……」  
その手からハンカチを引ったくり、芽留は先生に背中を向ける。  
『まず オマエ一人で 一周してきやがれ』  
「……すいません。それは恥ずかしいです。」  
ちょっとバツが悪そうに首をすくめる先生をチラリと振り返り、小さく鼻を鳴らすとハンカチで眼がしらを拭いて  
、ついでに携帯の液晶画面も拭いてみせる。  
 
『ぼっちゃん メガネをお拭きしましょうか?』  
指で挟んだハンカチを軽く回しながら、小首をかしげ、すました顔で先生を見上げる。  
「……いえ、遠慮します。」  
思わず苦笑いを浮かべた先生を見て芽留はニヤリと笑いを浮かべ、ミュールの乾いた足音を立てながら桟橋の先  
端まで歩いて行った。  
少し遅れて先生もその後に続き、板張りの縁まで来ると横に並んで湖を眺める。  
 
相変わらず照りつける日差しは強かったが、適度に湖面を風が流れており、それほど暑さは苦にはならなかった。  
そよ風に髪を揺られて気持ち良さそうに芽留は目を細める。  
その目をチラリと横にやってみる。  
隣に佇む先生は、ジーンズのポケットに親指だけ残して手を入れ、片足にだけ体重をかけてもう片足の膝を少し  
曲げて崩した姿勢で立っている。  
遠くを見つめる表情からはいつもの悲観した様子は全く感じられず、何だか急に先生が自分に近い年齢に近づい  
てきたような気がして、芽留はしばらくその姿を飽きもせずに眺めていた。  
 
ポケットに手を入れて、曲げた肘と胴の間に隙間が見えた。  
芽留は気がつくと、そのスキマにそろそろと手を伸ばして腕を通そうとしている自分に気が付き、慌てて手を引  
っ込める。  
そんな芽留の行動には気がつかない様子の先生は、湖面を眺めたままポツリと口を開く。  
「何だか、デートしているみたいですねぇ。」  
「…………ぃ……!?」  
さらりとした何気ない口調のその一言に、芽留の心臓は大きく跳ね、あっという間に顔色を朱に染めてしまった。  
即座に返す言葉が見当たらず、胸の前で携帯を握りしめたまま、芽留は顔を伏せて必死に落ち着こうとしている。  
「……あ。いえ、まあその、なんと申しますか。…私、昔から、いつか恋人などできたら、この場所で一緒にボ  
ートに乗りたいな、などと思っていましてね。」  
 
何とか落ち着き、悪口雑言をメールに打ち込もうとしていた芽留の収まりかけた鼓動は、今度こそ激しく打ち出  
し始め、頭に血が上り、うなじには汗が吹き出してくる。  
最高に紅潮した顔を見せないように俯いたままで、芽留は高鳴る心臓となぜか同時に沸き上がる苛立ちに、何と  
も表現しがたい怒りとも照れともつかない表情を浮かべ、そろりと一歩後ろへ下がる。  
先生はそんな芽留に気がついていない。  
芽留は、イタズラをする前の子供のような微笑を浮かべると、桟橋の縁に立つ先生の背中に軽く体当たりをかける。  
「おや? 音無さ……」  
それと同時に、隣に姿が無い事に気がついた先生が体ごと振り向く。  
目標物に突然避けられ、勢いあまった芽留は止める事ができずに桟橋から飛び出してしまう。  
「………ゎ……!?」  
「え!? 音無さん!!」  
宙に浮かぶ自分と、先生の叫び声がやけにゆっくりと聞こえ、目の前に迫る水面に芽留は思わず目を閉じた。  
 
激しい水音が上がる。  
──が、いつまでたっても水面に触れた衝撃もなく、呼吸が苦しくなる事もない。  
恐る恐る目を開けて見ると、まず見えたのは青い夏の空と流れて行く雲が幾つか。  
一瞬仰向けで宙に浮いているような錯覚を覚えるが、首を捻ると、湖面から突き出した二本の腕に支えられ、落  
下は免れた事が理解できた。  
よく見ると、二本の腕の間からは水中から気泡が湧き出ており、この下に人……先生が居る事は間違いない。  
呆然としていると、先生はその体勢のまま、芽留を桟橋の上へと運ぶつもりらしく、ゆらりと一歩進み出る。  
『く くすぐってーよ!!!!』  
 
背中側で自分を支える手に、芽留は擽ったそうに顔を歪め、器用に携帯を操作する。  
 
一拍置き、ダンクショットの要領で芽留は桟橋の上へと放られ、尻餅をついてへたり込む。  
続いて水しぶきと共に水中から先生が上がり、橋板の縁に胸から上だけを出してへばり付き、苦しそうに息を吐  
き出した。  
「…し……死んだら……どう……す……」  
お約束の台詞を吐こうとしたのだろうが、苦しそうに息も絶え絶えでは、かえっていつもの冗談ぽさが感じ取れ  
なくなってしまっていた。  
笑っていいのかどうかわからなかったが、取り敢えずちょっと苦笑を浮かべて見せ、尻餅をついたままの自分の  
姿に気がついて慌ててスカートの前を押さえる。  
『ちっ もう少しだったのに 残念』  
「な…何がですか!? まったく……」  
目の前に突き出された画面を見て、少し余裕を取り戻したのか、先生は疲れたように苦笑いを浮かべ、水滴まみ  
れになっている眼鏡を外すと、水が滴り続ける前髪をかき上げて後ろに撫で付ける。  
剥き出しになった額に数本のほつれた髪が垂れる。  
そして、やれやれといった風に溜息をついて、目の前の芽留へと微笑みかけた。  
 
おそらく当人にはその気はなく、単に目が悪い事で焦点が合っていないだけだろう。  
しかし、どこも見ていないような遠い目で、まっすぐに自分と視線を合わされた芽留はたちまちのぼせるように  
赤くなってしまい、びっくりしたように見開いた目を逸らす事もできずに、心臓を握り締められたように胸の中  
が痛くなってくる。  
ほとんど無意識の内だろう。芽留は携帯を持ち上げ、震える手でボタンを押す。  
連続撮影のシャッター音が続けざまに鳴り渡り、先生は驚愕の表情を浮かべる。  
 
「ぜ、絶望した! 情けない写真をネットにばら撒かれ── わわっ!?」  
叫んだ表紙に手を離してしまい、再び水音を立てて姿が消える。  
 
携帯を閉じた芽留は、正面からは顔を逸らし胸に小さな手を当てて落ち着こうと深呼吸していた。  
簡単には驚きから冷めないのか、紅潮した顔のまま少し目を潤ませ、やがて満足そうに小さく微笑んだ。  
 
 
 
開くドアの音、そしてスリッパの音をさせて、先生がリビングへと入ってきた。  
「すみませんね。シャワー使わせて頂いちゃって。」  
『 よう みみずもしたたる イイオトコ 』  
「ちょ、ミミズなんて滴ってませんから! やめて下さい!」  
本気で嫌そうに眉を寄せ、先生は少し声を荒げて見せる。  
ソファーに座って携帯をいじっていた芽留は、ひょいと肩をすくめると立ち上がって玄関口の方へと歩きだす。  
『ほれ、暗くならねーうちに帰れよ 湯上りの散歩は気持ちいいぜ』  
「…湯冷めしそうですが。まあいいです。──何だか面倒おかけしちゃいましたね。」  
小さく礼をして靴を履きながら、先生はふと気がついたように芽留の方を見る。  
 
「音無さんは、いつまでこちらの別荘に居られる予定ですか?」  
尋ねられ、芽留は小首を傾げて携帯を操作する。  
『あのヤローが嗅ぎつける前には 引き払うぜ』  
「…あなた、逃亡犯ですか。…まあ、大変なお父上なのは分かりますが。」  
『そうだぜ もっと同情しろよハゲ! 』  
わざと疲れたような仕草をしてみせる芽留に小さく吹き出しながら、先生はドアノブに手を掛ける。  
「では、失礼します。…一人で心細くなったら、いつでも呼んで下さいね。」  
その言葉に、芽留は少し頬を膨らませる。  
『コドモじゃねーんだよ! オメーこそ 明日の朝刊に載るようなマネすんなよ 変態教師 』  
「…私は変質者ではありませんから!」  
笑いながら軽く手を振り先生はドアを閉めた。  
 
『おいハゲ 』  
打ちかけてはいたが間に合わなかった文面を見て、少し溜息をつくと、芽留はのろのろと鍵を掛けて玄関を離れた。  
だが途中で足を止め、小走りで玄関口まで戻って靴を履こうとした所で、やはり思いなおしたように首を振る。  
もう一度、今度は深く溜息をつくとリビングの照明を落とし、階段を上がって行った。  
 
ゆっくりと上りながら、携帯を取り出してフォトフォルダを開く。  
薄暗い中、モニターの明かりに照らし出された芽留の表情は先ほどよりも沈み、手にした携帯を少し強く握る。  
そのまま駆け足で階段を上がり、芽留の姿は二階へと消えて行った。  
 
 
カチャリと鍵を掛けられた音が聞こえた。  
無機質なその音にどこと無く寂しさを覚えながら、先生は芽留の別荘を後にする。  
もう日は山の向こうに沈み消え、人の姿も少ない別荘地は街灯もまばらで、あちこちに暗い闇がわだかまってい  
るように感じられる。  
ゆっくりとした足取りで歩きながら周囲に目をやる。  
シーズンにも関わらず、空き家なのか単に使用されていないのか、明かりが入っていない宅が多い。  
どうしてもさっきからホラー映画のワンシーンが脳裏をよぎってしまい、先生は思わず頭を抱えて立ち止まる。  
「……ちゃんと戸締りはしたのでしょうか。」  
ぽつりと呟き、やがて回れ右をすると急ぎ足で今来た道を戻り始めた。  
 
玄関先は先ほどと変わった様子はなく、そっとノブを引くと鍵がかけられている事がわかった。  
念のため、一階の窓の施錠も確認するため、外壁にそって周囲を歩きはじめる。  
だが、先生の心配を他所に、しっかりとロックされカーテンも閉められており、ほっと胸をなでおろす。  
──ふと見ると、勝手口だろうか、小さいドアが目に入った。  
「…さすがにそれはないでしょう。」  
苦笑しながらノブに手をかける。……ドアは何の抵抗も無く開いてしまう。  
一瞬の硬直の後、ちょっと青ざめた顔で静かに足を踏み入れると音も無くドアを閉じて中から鍵をかけた。  
 
一階は全て灯が落とされており、暗い廊下を手探りで進む。  
冷静に考えれば、この場合は自分の行動が不法侵入者なのだが、悪い想像にとりつかれた先生はとにかく芽留の  
安否を確かめようと、恐る恐る暗闇の中を玄関口へと向かう。  
門灯の明かりが見え、少し目が慣れてくると、そっと階段の上を覗き込む。  
二階の廊下に明かりが漏れているのが見え、一段一段ゆっくりと上ってゆく。  
その明かりは半開きになっているドアから漏れているようだった。  
悪い考えを押し消し、何が出てきてもいいように拳を握り締めて、先生はすり足で進む。  
そろり、と隙間から部屋の中を覗き込む。  
 
 
芽留は── いた。  
ここは寝室なのだろう。キャミソールと短パンに着替え、ベッドの上に横向きに寝転がっている。  
一瞬目が合ったかと思ったが、なにやら携帯を見る事に夢中になっているのか、気がついた様子はない。  
楽しそうな── とは何か様子が違う気がして、芽留の表情に先生は訝しげな顔をする。  
芽留は、やや上気したような顔に、目を細め、うっとりとした表情を浮かべていた。  
今までに見た事もないようなその顔に、先生は思わず身を乗り出してしまう。  
芽留の全身が見て取れた。  
横たわった芽留は、片手で携帯を目の前に固定し、もう片手は下の方へと伸び、その指先は柔らかい生地の短パ  
ンの中へと潜っていた。  
潜った指先が芽留の一番大事な所でもぞもぞ動くのが見える。  
動かすたびに体を小さく震わせ、細い腰を僅かにくねらせながら少しずつ吐息が荒くなって行き、瞳は潤み始め  
て恍惚とした表情が浮かんでくる。  
絶頂に達して行こうとする事は見ているほうにも判った。  
廊下まで聞こえてくる程、呼気が激しくなり、時折細い鼻声を漏らして、泣きそうにも見える表情を浮かべた。  
その芽留がふと視線を遠くに飛ばし── 今度ははっきり、先生と目が合った。  
 
二人とも、そのままの姿勢で固まり、動く事が出来ないでいる。  
芽留は大きな瞳を見開き、口を丸く開けたまま呆然と先生の姿を凝視して、  
「────ッ!!!」  
声にならない悲鳴を上げてシーツを蹴り上げ、ぐるっと体に巻きつけてその中に身を隠してしまう。  
「…あっ! 音無さん……!」  
思わず声を上げながら駆け寄る先生だったが、ベッドの上に放り出したままの携帯の画面を見て思わず動きが止  
まった。  
「こ…れ…… 私です…か……?」  
その声にシーツに包まった芽留がビクッと動き、素早く隙間から手を出して携帯を掴み中へ取り込む。  
 
声を掛けあぐねていると、すぐにまた携帯を持った芽留の手が差し出された。  
『見たな!? 見たな!? 見たな!? 全部見ただろ!?』  
再びシーツの中に手を戻し、画面を打ち直して差し出してくる。  
『コロスコロスコロスコロスコロス!!!』  
芽留はシーツの中でジタバタ暴れている。  
先生はなんとか諌めようと思ったのだろう。ベッドの上へと上がり、シーツに手をかける。  
暴れていたシーツの塊が、ピタリと動きを止めた。  
『てか オレが死にてえよ』  
差し出された画面は文字だけだったが、自分の頭の中に、聞いた事のない芽留の声が響いた気がして、先生はそ  
ろりと腕を伸ばしながら声をかける。  
「年頃になれば、誰もが行なう行為でしょう?」  
『そーいう問題じゃ  』  
ぐい と、やや乱暴なくらい力強く芽留の体は先生へと引き寄せられて、あっという間に腕の中へ抱えられてしまう。  
シーツが払われ、びっくりした芽留の顔が現れる。  
背中から肩越しに覆いかぶさるように抱きしめられ、芽留は慌てて抜け出そうともがくが、非力な上にこの体格  
差ではびくともしない。  
『はなせコラ!』  
「駄目ですよ。」  
『何が駄目なんだよ!?』  
尚ももがく芽留の耳元に先生の顔が近づけられる。  
「私が離したくありませんから。」  
告げると同時に、芽留の剥き出しの肩にそっと唇で触れる。  
 
ぞくりっ と、決して悪寒では無いが、くすぐったさに近い感覚が走り、芽留は携帯を打つ事も忘れ硬直してしまう。  
携帯を持っていない方、左手首に先生の左手が添えられ、その長い指が芽留の小さな手先に絡まり、手の平を親  
指で撫でながらほぐすように包み込む。  
戸惑い続ける芽留は、首を捻って先生の顔を見上げる。  
相手の顔が見たい。どんな表情で自分に触れているのか知りたい。  
期待しているような表情を携えて見上げようとした時、  
「……ひゃ!?」  
驚いたように、ビクリ、と体を飛び上がらせて大きく息を吐き出す。  
さっきまでずっと自分で触れて敏感になってしまっている場所へと、滑り込むように触れてきた先生の手は、短  
パンの生地の上からでもはっきりとした質感を感じ取れる。  
「……!!」  
指先が微かに動いた。  
布越しとは言え、これまで自分以外の人間が触れた事の無い場所に触れられている状態が、はっきりと視界に入る。  
めまいを起こしたように視界が揺れ、反射的に逃げるような動作をしてしまう。  
『なにすんだ!?』  
ほとんど画面を見ずに何とか打った文字を突きつけた。  
ひと呼吸置き、先生の静かな声が耳に入る。  
「…続き、です。……先ほど、満足するまでは至らなかったように見えましたから……」  
 
先ほどの光景が蘇り、芽留の目の周りがのぼせた様に真っ赤にそまり、激しく首を振って見せる。  
「…す、すみません…! お嫌でしたか… そりゃそうですよね……」  
慌てて芽留を離そうとする先生に気がつき、咄嗟に握っていた左手を掴み返しベッドに押し付けた。  
「音無さん……?」  
芽留は押し黙ったまま一度先生の顔を見上げ、そして携帯のボタンに指を走らせる。  
先生には見えない角度で、打ち込んだ画面をチラリと覗いた。  
『めずらしく強引と思ったら やっぱチキンがでるのかよ』  
ちょっと苦笑を浮かべ目を細めた。  
そこで画面を消し、握ったままの左手で先生の指をやや強く握り締め、小突くように肘で先生の脇腹をつついた。  
 
出し抜けに芽留の耳たぶに先生の口が触れ、唇で咬むように耳たぶを下から上へとなぞる。  
声も出ずに体を震わせて、芽留は少し恨めしそうに眉を寄せた顔で振り向いた。  
その瞬間を待ち構えていたかのように、素早く先生が顔を寄せ、唇が重ねあわされる。  
そっと触れただけの口付けだったが、芽留は目を丸く見開いて硬直してしまう。  
唇を一度離し、芽留に微笑みかけると、今度はやや力強く唇を奪いに来た。  
 
瞳を閉じ、熱っぽい表情を浮かべた先生が目の前にいる。  
ぼんやりとその顔を眺めていると、途端に芽留の唇に先生の舌先が触れ、口唇を撫でるようになぞる。  
しびれるような感覚が走り、ビクビクと肩を小さく震わせた芽留の唇を割り、さらに口内へと侵入してきた。  
自分の舌先に相手の舌が触れた瞬間、たまらず唇を引き離し、先生から顔をそむけて大きく息をつく。  
 
 
芽留の脚の付け根にある先生の手が動き始めた。  
最初はゆっくりとなでるように、時折指を曲げ服の下にある秘裂の上をなぞるように動かす。  
手を止めて中指で一か所だけを重点的に攻めると、芽留は背中を反り返らせて少し苦しそうに息を漏らした。  
「音無さん。体から力を抜いて…… 私に寄りかかっていて下さい。」  
先生は芽留の体を支え直し、背中を自分にもたれかかるような態勢に持ってくると、再び指を這わせだす。  
そのまま、もう片手で芽留の下腹辺りを抱え込むと、ゆっくりと撫でながら手のひらを上へと持って行く。  
キャミソールの上から胸に触れると、すぐそこに小さな突起があることが分かる。  
下着はつけていないようで、指先で転がすように触ると芽留は目を閉じて細い声を上げた。  
「…とても…… 可愛らしいです……」  
壊れ物でも触るようにそっと胸の膨らみのある辺りを手で包む。  
ほとんど掴む事はできないそれを、少し強引に寄せるように揉みしだくと、芽留はちょっとすねたように口を尖  
らせた。  
 
『小さくて苦労する とか思ってんだろ このロリコン!』  
額にコツンと突きつけられた画面を見て、苦笑を浮かべながらも、先生は芽留の胸を愛撫しつづけている。  
「…ロリコンかどうかは、わかりません。ただ……」  
そう言って突然手を翻し、するりと裾の中へと入り込み直接少女の乳房に触れる。  
「……ただ、いまは、とにかく、貴女が愛らしくてしかたがないのです……」  
やや強く胸の柔らかみを握りしめ、指の腹で小さな突起を撫でる。  
「こうして貴女に触れていると言う事が、たまらなく……」  
芽留は顔を反らしながらも、じっとその声を聞いているようだった。  
 
短パンの上から触っていた手を戻し、素早く、へその下から直接肌を伝い下腹へと潜りこむ。  
少女のそこは、すでにとろとろになっており、溢れ出している温かい蜜がたちまちに指に絡みつく。  
先生の細い指が器用に動き、秘裂を花びらのように開くと、その中の陰唇を指先でつつきはじめる。  
「……! ……!?」  
声も無く、芽留の体が何度も跳ねあがった。  
指がさらに動きまわり小さな淫核を探り当てると柔らかく転がすように弄り、触れるか触れないかの加減を保ち  
ながら秘裂を何度も上下にさする。  
小さく、猫のような声を漏らしてなすがままに愛撫を受け入れていた芽留だったが、先生の指が次第に自分の奥  
へと沈んで来ている事を感じ取ると、ハッとしたように顔を上げた。  
『ちょ まて! 指は入れんなよ!』  
先生は驚いたようにちょっと眉を上げてみせた。  
「──ええ、分かってますよ。安心してください。」  
その言葉にほっとしたような顔を見せ、即座にまたぶんば! と顔を向ける。  
 
『オメーのために取ってあるとか そんなんじゃないからな! 誤解すんじゃねーぞ!』  
「え……?」  
呆けたような先生の顔と、勢いで文字を打ったのか、もう一度画面を見直す芽留の視線が絡まった。  
『何を言わせんだ ハゲ! オレはツンデレじゃねー!』  
すでに上気しきっている顔をさらに赤くして怒る芽留に、嬉しそうな柔らかい笑みを浮かべて目を閉じ先生は芽  
留を抱き寄せる。  
秘所を蹂躙する手の動きが速まってゆく。  
芽留はあっという間に翻弄されてゆく意識の中で、いつのまにか胸を触っていた手で短パンも下着も下げられて  
いることに気が付く。  
剥き出しになった下半身は、自分の行為からの一連の動作で、びしょびしょになっているのが見えた。  
いまは恥じらう余裕もなく、奥歯を少し噛みしめながら目の前、自分の真上にある先生の顔をみる。  
今しがた自分に触れた唇が目に入った。  
先生も気がついたのか芽留の顔をみる。素早く携帯が差し出された。  
『察しろよ ヘタクソ』  
潤んだ瞳で切なそうな表情を浮かべ、自分のほうに顎を突き出している芽留の意図に気が付き、今は笑い返す余  
裕もないのか真剣な顔のまま芽留の唇を塞いだ。  
そのまま二人同時に求めるように舌を絡ませ合う。  
                          
芽留は意識が切れかけた電灯のように点滅してゆくのを感じ、そして、押しとどめていた、体の奥底から湧き上  
がってくるものを解放した。  
ふっ と全身の力が抜け、電池が切れたようにくたりと先生に体を預ける。  
周りとの感覚が遮断される。  
起きたまま深い眠りにつくような、広がって行く開放感に包まれ、微笑を浮かべたまま目を閉じた。  
 
 
頬を撫でる手の感触に目を開けると、すぐ上に先生の澄ました笑顔があった。  
「……気持ち……よかったでしょうか? …と聞くのも変ですかね。」  
ややきまり悪げに笑いながら、芽留の頬にピタリと手を添える。  
芽留はちょっと顔を赤らめ、恥ずかしそうに笑いながら携帯を手に取った。  
『なんか 宇宙かどっかに 放り投げられたみてーだった』  
さっと文字を見せて顔を背けた所で、自分の格好に気がつき、慌ててシーツを引き寄せて前を隠す。  
 
『どうせ やらしい女だとか 思ってんだろ!』  
『いつもこんな事してる訳じゃねーからな!』  
上目で先生を睨みつけて、芽留は低く唸る。  
「…そんなに恥ずかしがらないでも大丈夫ですよ。年頃になれば当たり前の事で……」  
 
『ハズカシイ物は ハズカシイんだよ!』  
『てか オレばっか不公平だろ!? オメーも見せろ! コラ!』  
ずい と携帯を突きつけて迫ると、先生のベルトのバックルに手をかけて強引にベルトを引き抜いてしまう。  
「ちょ!? ちょっと音無さん! 何を!?」  
グイグイとGパンを芽留に引っ張られ、先生は慌ててズボンを抑える。  
『オレだけ 半裸にしやがって しかも恥ずかしい事させたじゃねーか!』  
「いや、まあ、それはそうなんですが……」  
半笑いになって先生が抵抗を止めたと見ると、芽留は勢いづいて下のトランクスごと一気に引き下ろしてしまう。  
 
「────!?」  
その瞬間、勢いよく飛び出した絶棒が目の前にそそり立ち、声にならない悲鳴を上げて後ろに飛び退いた。  
「…そんなに驚かなくても。」  
自分のズボンを抱えたまま、目を丸くしてそれを凝視している芽留に、少しへこんだ様子で先生はうなだれる。  
驚いた顔のままおずおずと近寄ってきた芽留が、絶棒にゆっくりと手を伸ばした。  
「…う!?」  
そっと握りしめるように触れると、先生が低い唸り声を上げ硬く肥大した絶棒が大きく跳ねた。  
またまた後ずさる芽留に先生は少し照れくさそうに笑う。  
「モンスターとかじゃないんですから。怖くないですよ。」  
『どこに そんなモノが収納してあったんだ!? おかしーだろ!?』  
まじまじと見つめながら不思議そうな顔をする芽留に、困った顔で先生は首を少し傾げる。  
「…しまってあったというより…… こうなってしまったと言うのか… いやまあ、予想して然るべき事だった  
のでしょうが。……まあ、つまり…」  
言葉の最後に首を振って見せ、すっ と芽留の腕を取り、静かな動作で顔を近づける。  
「……?」  
「…つまり、音無さん。私はあなたが……どうしようもなく可愛くて仕方がないようです。」  
一瞬意味が掴めずぽかんとする芽留を、その言葉を理解する前に胸の中に抱え込み、両腕を背中に回して抱きしめる。  
「私に自分を預けてくれて、腕の中で感じてくれている仕草も、時々漏らす声も、こんな時も忘れないいつもの  
毒舌も、全部、自分の腕の中にあるのだと思うと、もう離したくなくなってしまい…… 私は……」  
抱きしめる手を少し緩めて芽留の体を離し、正面からその瞳を覗き込む。  
「私は…… あなたと愛し合いたいのです。」  
どこか少年を思わせる、照れくささを隠し切れていない、はにかんだ笑みを芽留に向けた。  
芽留は頬を染めた顔のままで、自分を見つめる先生の瞳の奥を覗いていた。  
 
いつになく饒舌になっている事。  
瞳の奥に、かすかに揺れる不安そうな光が、芽留には見えた気がする。  
──断られたら。……とか、ここまできて思ってるんだろうな。  
なら、自分が返す反応は決まっている。  
──同じ。──いつもと同じ、だ。  
     
そっと、目の前に携帯を差し出した。  
『だれが 愛し合うかよ! このハゲ! シネ! バカ!』  
画面を見せながら片手は先生の腕を取り、細い手指を探り当てて壊れそうなくらい力いっぱい握りしめる。  
かざした携帯が小さく揺れている。  
それと同じく、芽留の瞳も潤み揺れているように見えた。  
 
 
返事は無かった。  
代わりに、自分の手が優しく握り返され、背中に回された手を支えにしてゆっくりと体がベッドに横たえられた。  
携帯をどけると、何とも言えない透明な微笑みが見える。  
横たえられた自分にかぶさるように体を重ねた先生の唇が落とされる。  
唇を触れさせただけ。なのに、今までになく熱っぽい口づけが交わされた。  
『…ロリコン教師 』  
わざとそっぽを向きながら、芽留は笑うように鼻を短くならしてみせる。  
照れ笑いを浮かべたまま、先生はTシャツを脱ぎ去った。  
無造作ともいえる動作で先に進められ、芽留は次第に鼓動が落ち着きなく打ち出しはじめた。  
シーツが除けられて、芽留の下半身が再び露わになった。  
脚を閉じてもじもじしていると、上着のキャミソールに手をかけられる。  
『変態! 犯罪! チカン!』  
罵る単語が打ち出されるが、抵抗するわけではなくするするとそれは頭を通って脱ぎ去られ、芽留は慌てて手胸  
の前に当てて両手で乳房を覆うように隠す。  
 
「…見せて……くださいませんか?」  
まさか言葉で申し出てくるとは思っていなかった芽留は、恥ずかしさで顔を真っ赤にそめて激しく頭を左右に振る。  
先生はなんとも言えない愛おしそうな顔で、恥じらう芽留に微笑んだ。  
「……ほんとうに、可愛らしいです。」  
ぽつりと落とし、芽留の白い腹部に顔を落とした。  
鼻先で触れながらゆっくりと下腹部の方へと下り、何も生えていない芽留の恥丘へと移動してゆく。  
何をしようとしているのか気がついた芽留が動くより早く、その唇が吸いつくように秘裂に入り込んだ。  
「!!!!」  
芽留の喉から声にならない嬌声が上がる。  
陰唇を口唇で甘く噛み、舌先を尖らせて秘裂を上へ下へと繰り返しになぞる。  
今度は舌を潜り込ませるように膣口をなんども味わうように弄る。  
「…ぃぁ……!?」  
強烈な感覚に、必死に逃がれようとする芽留の腰回りを、動けないように腕で固定し秘肉とへ何度も口唇を這わせる。  
やや性急なほどに芽留を責め続けていたが、少女がすでに息も絶え絶えに細い甘い声を漏らしている事に気が付  
くと、そこで愛撫を止めて体を起こす。  
「……つい、夢中になってしまいました……」  
すこしバツがわるそうに呟く。  
 
まだ感じる事に慣れていないのだろう。送り込まれる快感を受け流しきれず、苦しそうに喘ぐ芽留のへその上に  
かるく口づけると、唇を肌の上に這わせたままゆっくりと胸の方へと昇ってゆく。  
すこしくすぐったそうに身をよじる芽留は、涙目になりながらそれでも素早く携帯を打つ。  
『脳みそ焼き切れるかと思ったじゃネーカ バカ! コロス!』  
そんな少女に微笑みかけて、先生は芽留の胸の突起を口に含んだ。  
体をヒクつかせた芽留の反対側の胸を手の平で覆い、ゆっくりと揉みしだく。  
くちの中で可愛らしい乳首を舌で転がすたびに、芽留はか細い声をあげる。  
『完全に ロリコン だな! 変態!』  
先生は口を離して、愛おしそうに、少女の頬に手を伸ばす。  
「……あなたを愛しく思えるのなら、私はロリコンがいいと思いますよ。」  
真顔で告げられて、芽留は慌てて顔をそむけ、頬を赤くする。  
『もう すきにしろ!』  
 
もちろん芽留は言葉通りの意味で言ったのではないのだろう。  
顔を見合わせる。それは二人とも分かっている。  
分かっているが、違う意味で伝わった方が望ましかった。  
それも、お互いに共有している事なのだろう。  
               
怒張しきった絶棒が芽留の秘所の前に当てがわれた。  
さすがにもう余裕を無くしているのだろう、不安そうな表情で少し唇を震わせながら、芽留は目を強く閉じる。  
しかし、それは先生も同じように見える。  
早く芽留と繋がりたがっている自分の絶棒に手を添えて、表情を固くしていた。  
芽留は目をあけてその顔を窺う。  
「…こんなグロテスクな物が、あなたのここに、無理やり入ってしまうんですね……」  
厳しい目でそんな事をこぼした。  
芽留は素早く起き上がると、両手で先生の頬に触れ、自分の方を向かせる。  
『なにチキンやってんだ!』  
『ここまでしといて ほったらかすな バカ!』  
少し泣きそうな顔で、毒づく芽留に先生は言葉を返す。  
「…初めてが、私で…… 良いのですか。」  
『ダメなやつにここまでさせるかよ!』  
『オメー以外にいるのかよ!』  
頬を軽くつねりながら怒った顔をした芽留を見ていた先生だったが、やがてその頭を抱えるように抱きよせ、静  
かに口づけを交わす。  
 
「…………ン……」  
安堵したように溜息を洩らした芽留に、少し申し訳なさそうに笑いかけた。  
「音無さん、私は、これで、あなたが苦痛を訴えても止める事が出来ないほど、あなたを求めてしまいそうです  
…… 壊してしまいそうで怖く…… でも、やはり、あなたと…… 一つに… なりたいのです……」  
そう言って芽留のまぶたに軽く口づけを落とす。  
その表情からは、もう不安は感じられず、まっすぐに芽留の目を見つめていた。  
『こんなチャンス もう やらねーぞ』  
すました顔で目を閉じてみせると、口付けを請求するように口を僅かに開いて上を向く。  
「…今日一日で、ずいぶんと普段は見れない、私の知らないあなたを教えて頂きましたが……」  
言いながら芽留の肩に両手を回し、自分の方へと引き寄せる。  
「まだ、足りないです。……もっと、あなたを、見せて下さい。」  
目を細くした笑顔で、もう何度目かわからない口付けを交わした。  
 
 
ゆっくりと味わうように互いに唇を絡めながら、芽留の背中側から先生の手が伸びて行き、そっと両側にある髪  
留めに指が触れた。  
芽留はまだ気がついていない。  
器用に髪留めのゴムを広げ、両側を同時にするりと抜き去った。  
ぱさり。  
柔らかい音を立てて下りた髪が芽留の肩と背中に広がる。  
さすがに芽留も気がついて、瞳を大きく見開き、びっくりした顔をしてみせる。  
戸惑ったようにおろおろとしながら潤んだ目で先生を見つめていると、自分を抱きかかえ、覆いかぶさるように  
してベッドに横たえられた。  
「…見た事の無いあなたを、もっと沢山……見せてください。」  
ささやくような声でそう言うと、今度は力強く芽留の唇を奪い、強引に舌までもねじ込んでくる。  
『ウゼー事 言ってんじゃねー!』  
それでも何とか毒づく事は忘れない。  
そして芽留も先生の頭を力強く抱え込み、夢中で唇を震わせ深い口付けを交わす。  
芽留の胸を、秘所を、先生の手がやや乱暴に愛撫して行く。  
ぞくぞくと湧き上がる感覚に身をよじって耐えながら、芽留は先生の背中に手をまわししっかりと抱きしめた。  
しっかりと濡れそぼった秘裂に絶棒の先端が触れる。  
 
ほんの先端だけを芽留の大事な場所に沈めると、柔らかい陰唇に張り付くように包み込まれ、切ない程の快感が  
絶棒を駆け抜け、先生は首を震わせた。  
 
膣口に目の前の男性の物が触れている事が感じられる。  
口を離した芽留は、少し涙ぐんだ目で先生を見上げた。  
自分を見つめる、切なそうなその笑顔を見つめる。  
──いとおしい。  
見つめられた瞳から何度もそう語りかけられるように、脳裏に声が響く。  
芽留は相好を崩し、今まで誰にも見せた事がないような柔らかい笑顔を見せる。  
──来て。  
声は無かったが、はっきりと小さな唇がその言葉をかたどった。  
                          
ゆっくりと、ゆっくりと、男性自身が芽留の中へと沈んで行き、二人は繋がってゆく。  
予想以上に狭い芽留の膣内を力づくで押し広げながら、絶棒は奥へと侵入を続ける。  
手で握り締めたようにきつく包み込み、進入を拒む体内で純潔の証が突き破られた。  
芽留はその痛みに歯を食いしばりながらも、声を上げる事は無く、荒い息を繰り返しながら、ただじっと耐えて  
いる。  
絶棒と膣壁がこすれる度、ざりざりとした痛みが走り、芽留は先生の体にしがみつきながら涙をこぼした。  
激痛に耐える少女を気遣うように、首筋を、頬を撫でながら、ゆっくりと奥へと侵入を続けて行く。  
熱いくさびをその身に打ち込まれながらも、体内が先生で満たされて行く事を感じ、芽留は苦痛に耐えながら嬉  
しそうな泣き笑いを浮べ、唇を突き出してキスをねだる。  
 
下手をすれば大人と子供ほども体格差のある二人である。  
先生は背中を丸め、ぎりぎり届いた芽留に、やさしく口付ける。  
「…苦しくないですか?」  
痛がっている事は判っている。しかし、やはり芽留の様子が心配なのか少し不安げな顔で尋ねてくる。  
体内に入った絶棒は止めたまま、しかしきつく締め付ける芽留の膣内での恐ろしい程の快感に、それは、早く少  
女の奥まで入りたい、中を動き回りさらなる快感を貪りたいと言わんばかりにビクビクと震えている。  
 
『痛てーに決まってんだろハゲ!』  
「…そ、そうですよね。」  
『でも 途中でやめたりしたら コロスからな』  
涙目で訴えるように見つめられ、たまらなくなった先生は芽留の頭を胸に抱え、少女の奥まで突き入れた。  
芽留は先生の胸に顔を埋め、力を込めて相手の体を抱きしめたまま、口をぎゅっときつく結んで、痛みに耐えて  
いる。  
先生は、ゆっくりと小刻みに腰を打ちつけながら動きはじめ、芽留の暖かい膣壁の感触を絶棒に感じ取り、強い  
圧力で締め付けてくるその窮屈な体内を動き続け、言いあらわせないほどの快感に飲まれてゆく。  
「…ああ……音…無……さん……!」  
 
芽留は顔を上げ、自分の中で感じている先生の必死な表情を見て取り、胸が締め付けられるような感覚に囚われ  
目の前にある胸板に吸い付くように口付けて、思わず涙ぐんだ。  
 
痛い。痛いのはなにも変わらない。  
だが自分の中を動き回る熱い異物感、これが目の前にいる相手の物なのだと。  
そう考えるだけで、痛みとは違う何かが背中から頭の先まで突き抜ける。  
 
「…いとおしくて…たまりません。おかしくなりそうなくらい……」  
芽留の顔を覗き込み呟く先生に、涙目のまま携帯を拾い上げた。  
『だれが オマエなんか スキになるかよ! ハゲ!』  
『なりゆきで こーなっただけだっての! 勘違いすんな!』  
片手はしっかりと先生の背中にしがみ付いたまま毒づいて見せる。  
「…わたしは……あなたを……」  
芽留を攻め続けたまま、切なそうな笑顔で何か言いかける先生に、さらに携帯を突きつける。  
『ちょっと 遊んでやってる だけだ! バカ!』  
それだけ見せると携帯を手放し、ぷいっと顔を横に向けてしまった。  
先生は微笑を浮かべ、その細い首筋に口を寄せ、そっと唇でなでる。  
「…………ぃぃ!?」  
ビクリと芽留の体が震え、同時に緊張した膣壁がさらに絶棒を締め付けてきた。  
「お…… 音無さん! すみません、もう……!」  
腰を引こうとした先生に気がつき、芽留は がばっ と両足をその腰に回してしっかりと抱え込んでしまう。  
 
「ちょ……!? 駄目です…! 抜かないと……!」  
そう言っている間にも駆け上がって来そうになる物に焦り、なんとか芽留を引き離そうとするが、頑として足を  
離さず芽留は激しく首を振るばかりだった。  
──離れるな。  
確かに芽留の口がそう動いたように見えた。  
一瞬の迷いが起きるが、次には真剣な面持ちで芽留に顔を寄せる。  
「……受け止めて……下さい。」  
芽留は何度も首を立てに振り、目を閉じて力いっぱい先生を抱きしめた。  
 
                         
強く締め付けてくる体内の奥へと、自身を突き入れる。  
絶棒が震え、はじけた。  
快液が絶棒を駆け抜け、芽留の膣壁に打ちつける様に何度もほとばしる。  
狭い膣内を暴れ回るように痙攣し続けながら、快感の固まりを吐き出し続ける。  
たちまちに、膣内に収まりきらない快液が結合部から漏れ出し、純潔の赤い印と混じりシーツの上へと広がってゆく。  
 
どんな熱い衝撃が来るのか。  
身構えていた芽留はゆっくりと目を開ける。  
痛みも、衝撃もなかった。  
ただ、自分よりも高い体温の物が体内で広がり、じんわりとしみ込んでゆく。  
自分の中が暖かく満たされて行く事に心地よい幸福すら憶え、芽留は先生の顔を見上げる。  
その人は、苦しそうにも見える表情で、芽留の中に全てを吐き出そうと苦痛に耐えているようにも思える。  
芽留は目を閉じたままの先生に向かい、聞こえないような声でコッソリと呟いてみた。  
「…………すき…」  
 
 
長い放出が終わり、今は二人抱き合ったままベッドに横になっていた。  
汚れたシーツはとりあえず床に退け、タオルケットに二人でくるまり、余韻に浸るように互いの体に触れている。  
 
「…音無さん……」  
いままで無言だった先生が口を開いた。  
芽留は顔を上げる。  
「…学生の間は、無理でしょうから…… あなたが卒業したら……」  
そこまで言った所で、素早く芽留の手で口を塞がれて、先生は目を白黒させている。  
『また 勘違いさせる気か?』  
先生は苦笑した。  
「……本気ですよ。──でも、まあ…… これを言うのはもっと先にしましょうか……」  
頭を撫でる先生に、芽留は鼻を鳴らして笑った。  
 
ぴろりぱらぴりろら  
 
突然のメール着信音に、芽留はあわてて携帯を操作する。  
その顔色が、少し不機嫌そうになった。  
「…どうしました?」  
『クソヒゲハット……』  
「お父上ですか?」  
芽留は沈痛な面持ちでうなずいてみせる。  
『さっさと 引き払った方がいいな ここも』  
「…いえ、ちゃんと、改めてご挨拶……」  
『ヤメロ! とにかく 朝になったら出ようぜ』  
「そうですか……?」  
小首をかしげる先生の額を小突き、芽留は横になった。  
 
「では、少し眠りましょうか。」  
『…どうせなら もう一回するか?』  
「……え!? いや、その、それは……どうしましょうか……」  
うろたえる先生に、芽留はニヤリと笑って携帯を見せる。  
『 冗談 だっての エロ教師!』  
そして、さっとタオルケットにもぐりこんでしまう。  
先生は苦笑を浮べて頭をかきながら、寝たふりを始めた芽留をそっと抱きしめる。  
 
汗も引いて冷えてきた体に、互いの体温が心地よかった。  
いつしか、本気で寝息を立て始めた芽留の頭を優しくなでると、自分も目を閉じ、眠りへと落ちて行った。  
 
 
 

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