「ふ、風浦さん」
「ん? 何? 愛ちゃん」
「あの、一緒にお弁当食べませんか?」
「・・・・・・」
「ああっ! そうですよね! 私みたいな根暗イクラお蔵女と一緒にお昼ごはんなんて!
マラッカ海峡の底までテンション下がりますよね!? すいませんでした変なこと言って!
今すぐ消えます! 一週間は風浦さんの視界に入りません!」
「待って」
「ひっ! ああ! 一週間では短すぎますよね!? すいませんすいません!
一ヶ月・・・いや一年は風浦さんの視界に入りません! すいませんでした!」
「・・・待って」
「ああ! 一年でも短すぎますよね!? もう一生あなたの視界に入りません! 今すぐ退学届けを・・・!」
「一緒に、食べよ?」
「へ?」
「椅子、久遠君のを使えばいいから」
「で、でも私なんかが人様の椅子を借りるなんて・・・自分のを持ってきます!」
「ええ? あー・・・うん、じゃあそうして」
「先生、あれが素の可符香ちゃんですよ」
「なるほど・・・しかし加賀さんはなぜ風浦さんを・・・?」
「さっき僕が愛ちゃんのそばで、『可符香ちゃんはいつも一人でご飯を食べてるなあ・・・』と、
つぶやいておいたんですよ。愛ちゃん、優しい子ですから」
「ほほう・・・」
「それじゃあ、僕はこれで」
「ええ、おもしろいものを拝見させてもらいました」
「・・・何がおもしろいんですか?」
「ひいいっ!? ふ、風浦さん!? いつからそこに!? い、いやほらこれはその!」
「そうだ! 先生、一緒にお昼ご飯を食べませんか? 愛ちゃんも一緒なんです」
「く、久遠君!? ってもういない! 絶望した!
人を虎の巣穴に誘っておいて、自分だけさっさと逃げてしまう教え子に絶望した!」
「何ですか、虎の巣穴って? ほら、早くこっちにきてください」
三すくみの話を読んでいたら、可符香の苦手な相手って誰だろう? という疑問を抱いたので書いてみた。
ひっかけたり陥れたりする前に自分から引いちゃう愛ちゃんは、実は可符香の天敵かもしれん・・・?