国交の無い某国から帰ってきた我らが糸色先生。  
 
「ふう。さすがに今回は帰ってくるのに苦労しました。」  
「あ。先生。お久しぶりですねえ。」  
「おや、風浦さん。今回ばかりはもう帰って来れないかと思いましたよ。」  
「うふふ。お疲れ様です。」  
「ええ。本当に。少し疲れたので休みたいのですが、少し留守番をしてもらっても良いですか?」  
そう言いながら絶望先生は部屋の奥へ。  
 
「先生帰ってきたんですって!!」  
「あ。奈美ちゃん」  
「あ…風浦さん。…先生は?」  
「疲れたから奥の部屋で寝てるよ。」  
「へー。突然居なくなっちゃうからどうしたかと思ったよ。」  
どうやら、日塔さんは先生がどうして居なくなっていたか事情を知らないよう。  
「困るなあ。私たちを捨てて、遊びに行ってもらっちゃ。」  
「嫌だなあ。遊びの訳無いじゃないですか。」  
「先生は、私たちが簡単に出来ないような体験を居なくなっていた期間中に経験してきてるはずです。」  
「そして…私達の知っている先生よりも一回りも二回りも教師として人として成長なさっているはずです。」  
「その経験を踏まえ、私達の今後の人生に影響をするような…そんな体験を話してくれるはずです。」  
「そうかなあ…」  
「そうに決まってますよ!!」  
 
そのやり取りを奥で聞いていた絶望先生。  
日塔さんが帰った後、こっそり出てきて、風浦さんに一言。  
「風浦さん。」  
「はい?」  
「あのような事を言われると困ります。あれでは私が何か立派な話をしないといけないではないですか。」  
「すればいいじゃないですか〜。そうそう無いですよ?某国の思想改…」  
「…わーーーー!!!!止めてください!!あなたこのスレをどうしたいのですか!!」  
「…先生…スレって…?」  
「ごほん。良くわかりませんが、思わず口をついてしまいました。やはり何か憑かれているようですね。」  
「先生。言葉の意味が違っていますが…?」  
「ある意味…これで良いのです。」  
「はあ…」  
「おや…あれは…?」  
扉が閉まっている用務員室の前を行ったり来たりする影が一つ。  
「はあ。先生帰ってきたって聞いたんですけど…私みたいな人間が、会いに行くと疲れも取れないでしょうね。」  
ガラッ  
「あ…愛ちゃん」  
「ひっ…すいません。すいません。私のような者が先生の顔を見に来るなんて迷惑ですよね。私のような者が来たら  
先生ますます疲れますよね。扉の影から見てますから。」  
「大丈夫ですよ。私は明日からでも授業に復帰したいと考えていますし。ささ。どうぞ中へ。」  
何故か顔を赤くした加賀さん。何かを吹っ切ったように…  
「ご…誤解しないでよね!!あんたが心配で顔を見に来たわけじゃないのよ!!」  
「別に早く学校に出てきて欲しくなんか無いんだから!!誤解しないでよ!!」  
プイッと顔を逸らし駆け出す加賀さん。どこからともなく…ホレッ…という音が聞こえたが本筋とは関係ない話なので  
先生と風浦さんは華麗にスルー。  
 
「えっと話を戻して…あの様に何か期待を持たせるようなことを言うと、皆さんの前で何かを言わないといけない  
雰囲気になるじゃないですか!!絶望した!!嫌な思いでも楽しく話させようとする教え子に絶望した!!」  
「義務も果たした事ですし、私はもう少し休みたいのですが、もしその間に誰か来た時は、もう少し抑えたふうにしていた  
だければ。」  
「そうやって、つまらないと思わせておいて珍しい話をした方が、みんなの印象も良くなるという物です。」  
「予防線ですね!!」  
「ま…そういう所です。それではもう少しよろしくお願いします。」  
そう言いながら、絶望先生は再び奥の部屋へ…  
 
「先生帰ってきたんですって?」  
「もう困るわね。明日から遅れた分の授業もきっちり取り戻さないと…。あら風浦さん」  
「あっ、先生今ちょっと休んでるんだよ。」  
「ふーん。で?先生どうだった?一人で長い間休んで、もしかして海外でも行ったのかな?海外…一人旅…言葉も  
文化も違う異国で…先生は…ウフ…ウフフ」  
ニャマリっと笑う藤吉さん。  
「うーん。それがどうもたいした事なかったらしいよ。ずっと日本に帰りたかったって。」  
「へえ…出会いとか無かったのか。つまんないの。」  
「うん。何でもずっと部屋に居たんだって。何か一回りも二回りも前よりしょぼくれた感じだったよ。」  
「は?何それ」  
「それで、何もネタが無いって言ってたし、もしかすると何か話を捏造するかもね」  
 
そのやり取りをじっと聞いていた絶望先生。これ以上不条理に貶められては大変と…  
「風浦さん!!あなたは何を言ってるんですか!!これ以上私を貶めるような事は言わないでください!!」  
「あら…先生。起きてらしたんですか?」  
「いや…起きてらしたんですかじゃありませんよ。何ですか。言うに事欠いて話を捏造などと。」  
「ただでさえ捏造・偽装等々、真実と違う事に対する非難が殊更大きい昨今。そういうことは実にデリケートな  
発言を求められる世の中なのです。」  
「はあ…」  
 
「あ、先生。ところでどこに行ってたんですか?」  
「ええ。ちょっと海外へ。言われる前に言っておきますが、あなたの想像しているような体験は何もありません  
でしたよ。藤吉さん」  
「ちえっ…つまんないの。でも、日本とはちょっと違う体験したんでしょ?」  
「ええ。まあ…色々と。」  
「結構海外へ行くと、その国に影響されて帰ってくる人居るじゃないですか。」  
「そうね。そう言えば旧さんとかも、インドから帰ってきたばっかりの時は随分あっち方面の人になってたものね。」  
「うーん。そうですね。日本は格差が大きいというのを、あらためて感じましたね。」  
「あら。意外と普通の意見ですね。」  
「やはり…理想の社会というのは、格差の無い全ての民が平等であるということが大事なのではないでしょうか。」  
「ふーん。まあまあ立派な事言ってるじゃないの。なんかどっかで聴いたような言葉ばっかりだけど。ちょっと先生の  
人間性が大きくなったのかなあ…。」  
「いやだなあ。藤吉さん。先生の見かけ倒しに騙されちゃいけませんよ。」  
「へ?どういう事?」  
「先生は中途半端に経験を自分の物にしてるだけですからねえ。もし先生の人間性が大きく見えたとしたら、それは半分  
アカのせいですよ。」  
 
その後  
「…良くない。それは良くない。」  
「ひっ!!千…千里…?」  
「半分なんて言わずに…きっちり知るか…?」  
「ひっ…ひいっ!!た・・助けてください!!風浦さん!!藤吉さん!!」  
徹底して、木津さんからその方面の話を教育されている絶望先生。…その様子を見ながらマリアが一言。  
「オチテナイヨ!」  
 
 
お後がよろしいようで…?  
 

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