あびると臼井、夕方の図書室にて。
「……」
「……」
「……」
「…あの」
「……」
「…小節さん?」
「…あ、臼井君…いたの?」
「ええ、ずっと」
「…まといちゃんみたい…」
「ええっ!? べ、別に付きまとってたわけじゃ…!」
「ううん、さっきの言い方が」
「…ああ、『ええ、ずっと』、ですか…」
「うん」
「確かに…そうですね」
「…で、何?」
「は? ああ…その問題、さっきからずっと悩んでるみたいだったから…」
「わかるの?」
「ええ、一応」
「どうやるの?」
「えっとですね…」
「……」
「で、ここが…」
「…あっ」
「…わかりました?」
「うん」
「…いやあ、小節さんにもわからない問題ってあるんですねえ…」
「うん」
「…嫌味じゃないですよ?」
「うん、ありがとう」
「えっ? はは…どういたしまして」
「……」
「……」
「……」
「…そろそろ下校時間ですね…それじゃ、僕はこれで…」
「うん、私も帰る」
「…そ、そうですか…じゃあ、駅まで一緒に…とか…」
「うん」
「えっ? …僕と一緒に帰る…?」
「うん」
「…はは…」
「ん?」
「い、いや! な、なんでもないです!」
普通「ほんとに見たんですって!」
絶望「いや、それはない。ないない」
普通「ほんとですよ! あの後あびるちゃんと臼井君、二人仲良く…!」
絶望「日塔さん、人を騙すにはあまりにも普通すぎる嘘です」
普通「普通って…! じゃなくて…ほんとのことですから!」