蒼白い月が輝いていた夜。
未知の運命に足を踏み入れた夜。
愛は妄想を抜け出し、真実の被害者となり。
望もまた、生徒を毒牙に掛けた真実の加害者になり下がった。
そんな不思議な夜。
真実を見い出した夜を越えて、二人は今までの関係を見失った。
望の心に咲いた花は、まさに麻薬であり。
少しずつ、少しずつ愛に溺れていった。
愛は既に、糸色 望という男に全身が沈んでいた。
もう、何処にも行く事は出来ない。
二人一緒に、堕ち続けるのみである。
それを確信した望は、愛を呼び出した。
中途半端にぶら下がるより、一気に堕ちてみたかった。
秋の夕暮れの宿直室。
晴れ渡る空は、真っ赤に染められている。
それをぼんやりと眺めていた望の耳に、微かな音が。
最初は幻聴かとも思ったが、再び控えめなノックが響く。
「開いていますよ、加賀さん」
誰が来るかは、分かりきっていた。
誰が来たかも、分かりきっていた。
少女の性格とは真反対の宿直室の扉は、ガラガラと遠慮せずに音を立てる。
自ら作った空間に身を寄せて、少女が室内に入る。
相変わらず愛は、おどおどとした態度を崩さない。
その瞳には不安が満ちている。
愛する者に、呼び出されたからだ。
「加賀さん、呼び出された理由は分かっていますね…」
「すみません!私、何か至らない事をしてしまったのでしょうか…」
作戦通り、望はニヤリとした。
愛ならば、そう言うだろうと。
予想通りだった。
「加賀さん、貴方は相変わらず加害妄想が酷いですね…」
「…!?すみません、すみません!」
「また、被害を受ける事を覚えた方が良いようですね」
「すみま…、えっ…?」
眺めていた窓から離れ、愛の元へと忍び寄る。
少女は少しだけ後退りをしたが、すぐに扉に背が着いた。
少女を追い詰めて、望は愛の顔の横にある扉に手を着いた。
手は取らずに顎を持ち上げる。
あの夜とは少し違うが、とても良く似ている体制で。
望は少女に口付け、扉に着いた手で鍵を閉めた。
「んっ…、ふぁ…」
顎を持った手も、鍵を閉めた手も、今は頬を支えている。
少女から逃げる気は感じなかったが、望は押さえ付けた。
無理矢理行為をしているという背徳感を、全身で感じていた。
僅かに開いていた隙間から舌をねじ込み、徐々に少女を犯す。
自分の物ではない口内を蹂躙し、支配していく。
口元が汚れるのも気にせず、望は口付け続けた。
普段は欠片も見せない荒々しさで。
長い間そうしていると、息苦しくなってきたのか。
愛が望の胸を押し始めた。
「んんっ…!」
加害妄想少女にしては珍しい行動だったが、それ故に望は興奮を重ねた。
最後に舌を絡ませてから、望は口を離した。
「けほっ、はぁ…、はぁ…、はぁ…」
「…大丈夫ですか?加賀さん」
「は、はい。平気です。それより、私何かが先生を押してしまって、すみません…」
こんな時まで加害妄想とは。
望は感心し、また至福を感じていた。
加害妄想を続ける限り少女への教育を止めるわけにはいかない。
すなわち、まだ続けられるのだ。
「次は、優しくしますから…」
「は、はい…」
一度離れて、出来上がった空間。
その空間を詰めて、少女に近付く。
残り数センチの距離にくると、少女は目を瞑った。
顎をギリギリ分かる程度に押し上げ、望を迎えに行く。
導かれるままに、望は口付けた。
「んっ…、ちゅ…」
先程の荒々しさは、全く存在しない。
何処までも相手を労る優しさが、其処にはあった。
唇を舌でなぞり、軽く吸い付ける。
体を押し付けることもなく、柔らかに抱き寄せる。
そうすれば、少女も胸の前に置いていた手を退けて。
恐々と、望の背中に腕を回す。
久しぶりに感じる人肌は、あまりにも温かくて、望はうっすらと目を開けた。
目の前の少女は、つり目をきつく閉じており、酷く緊張しているように見える。
少女の想いを察した望は、慈しみながら頭を撫でた。
「ふぅ…、んっく…、ふぅん」
嬉しそうに鼻を鳴らす少女。
それに合わせて、より深く口付ける。
舌を重ね合わせ、絡みつく唾液。
絡み合った舌を引っ込め、少女の舌を自らの口内に誘い込む。
と同時に、それに吸い付いた。
強く離さないように吸い、溢れ出る少女の味を堪能する。
望は、互いの耳にまで届くような大きな音で、それを飲み込んだ。
ゴクリと鳴ったその喉に気恥ずかしさを感じるのか。
愛は、頬を朱色に染めあげている。
その反応に気を良くして、望は再び舌を差し入れた。
愛は何をすべきかを、理解している。
望にしてもらったように、その舌に吸い付いた。
背の高さから、必然的に望の顔の方が高い位置にある。
重力に逆らわず落ちてくる望の雫を、惜しみ無く受け入れた。
「ちゅ…、んぅ…、はぁ…」
数秒もすれば、二人も離れる。
口内に残る雫を飲み下す。
望のように業業しい音は立てず、小さくコクリと喉を鳴らした。
「加賀さん…、構いませんか?」
「…!?」
望の手は、愛を引き寄せると共にブラウスの裾に掛けられていた。
それが、何を意味しているのか。
接吻など問題にならない程の、深い闇に飛ぼうとしている。
しかし、愛は受け入れた。
控え目で、大人しい彼女らしく。
朱色の顔面を、一度だけ頷かせた。
望はブラウスをたくし上げて、純白のブラを暴く。
色白な少女の肌に良く似合う。
暫くの間は、それごと乳房を楽しんでいたが、やはり直接触れてみたくなる。
少女の胸に重ねていた手を背中に回し、ホックを探る。
背中でうごめく望の手、それさえにも快感を感じるのか。
愛は、絶え間なく甘い声で歌う。
支えを失い、空を舞うブラジャー。
姿を見せる美しき乳房。
何にも憚られる事なく、その柔らかさを堪能する。
若々しく、張りのある胸を揉みしだきながら、左胸に口付ける。
「ひゃん…、んはぁ…」
円を描きながら舌を動かし、少しずつ頂を目指す。
その動きに気付いたのか、愛は少しだけ期待を重ねた。
そして、その期待通りに望は愛に快楽を与える。
小さな頂を口に含み、舌先で舐め回す。
舌のみでなく時折、前歯で甘噛みをし快楽に波をつける。
初めて味わう禁断の行為に、愛の精神はとっくに崩されていた。
もう、戻れない。
左を味わい切った望は右を同様に愛した後に、新たな秘部を嗅ぎつけた。
少女のショーツは、既に役割を放棄しており。
大事な女の部分は、濡れている事をはっきり強調している。
空いた右手を其処に伸ばす。
愛は気付いていない。
ピタリと、手が触れる。
ピクリと、少女が動く。
本当に最後の城が、落とされようとしている。
少女の聖域を守る最後の牙城が。
しかし、愛は望を受け入れた。
最初から、城は白旗を振っていたのかもしれない。
あの、最初のキスから。
望は胸をいじりながら、スカートに手を突っ込みショーツを撫でる。
湿っているそれは、望の手をも濡らした。
やがて、我慢できなくなったのは、望の方だった。
すぐにショーツをずらし、直接触れる。
形に沿って、人指し指ですじを撫でる。
切なげな少女の声が耳元で響く。
その声に合わせて、指を埋没させる。
キツイ締め付けに、指は進入を許されない。
それでも望は、ゆっくりと時間を掛けて馴らしていく。
第一間接まで沈めば、次は第二間接まで。
指が埋まりきれば二本同時に。
そうしていけば、愛の膣も望を受け入れる準備を完了させる。
「加賀さん、もう…」
「…はい」
袴を押し上げる存在に愛も気付いていたようで、返事は単純明快なものだった。
自らの背に結ばれる紐を解き放つ。
鎖を失った絶棒は、空高く天を穿ち立つ。
壁に寄り掛かる愛の身を畳の上に寝転ばせ、びしゃにびしゃに濡れたショーツを脚から抜き取る。
恥ずかしさからか、愛は手で顔を覆っており表情が伺えない。
手首に手を添え、ゆっくりと離させる。
望の作戦は成功を収めたらしく。
涙目で、しかも上目使いで愛が見つめてくる。
その表情を眺めていたかったが、怯えるようなハの字眉は見るに堪え難く。
相反する精神状況の中でも、望の行動は速かった。
顔の横へ、口を寄せて鼓膜に囁く。
「入れますよ、加賀さん…」
蚊の飛ぶような声も聞こえず、愛は望にしがみついただけだった。
首の後ろに腕を回し、頬を寄せあい、ギュッと抱き締める。
それを肯定と受け取って、望は絶棒に手を添えた。
女の入り口に先を擦らせ、何度もじらす。
流石に堪えきれなくなり、愛がか細く声を漏らした。
「…せ、んせぇ」
それを境に、望は進入を開始した。
腰に力を込めて、指とは比べ物にならない圧迫感。
まだ未成熟なその身体には、大きすぎる存在。
優しく、優しく進めて行くが、やはり受け入れ難く。
少女の四肢に力が宿る。
思い切り握り締める手を、今だけは無視をして、望は絶棒を更に進める。
漸く辿り着いた其処には、少女が聖女である証が。
「くっ、い、行きますよ、加賀さん…」
「んっ、は、はい…」
一気に貫いた。
異物の進入によって、少女の身が汚された。
一筋の鮮血が、滴り落ちる。
絶棒を最奥で待機させ、少女の回復と慣れを待ち続けた。
長い間抱き締め合い、身を寄せ合っていると、愛の中に変化が。
最初は進入を拒んでいたはずなのに、今やそれを欲しがっている。
少女の心境に変化が有ったのではなく、少女の身体に変化が有ったのだ。
器用に絶棒を包み込み、中へ中へと誘い込んでいる。
久しく女体を感じていない望にとって、それは拷問にも近かった。
まだ、動いたら愛が痛い。
早く、動かないと自分が不味い。
矛盾する二つの事象の狭間で、望は堪えに堪えていると。
顔を紅く染めて、助け舟が目の前から出航してきた。
「んっ…、せんせ、もう、大丈夫です…」
「えと、じゃあ、動きますね…」
御預けを解かれた望は、性欲を十分に発揮し、腰を動かした。
ゆっくりとグラインドさせ、絶棒の全体に快感を与えていく。
それはそのまま、愛への快感となり得る。
繰り返して動き続ければ、自ずと愛の弱点が見えてくる。
大体の目星が付けば、其処を集中的に攻める。
自然と動きが速くなっていった。
「此処が良いんですか…?」
ほぼ確信を得ている望の問掛けに。
「んっ、ひゃん…、あぁ、はあぁ!」
もはや嬌声でしか答えられない愛。
少しずつ高まってゆく二人の性感帯。
昇りに昇り積め、限界が見えてくる。
限界のその先に、一体何があるのか。
自らの絶棒が弾ける直前に、望はそんな事を思っていた。
行為を終えて、布団を被り、並んで寝転ぶ二人。
全く着物を身に着けておらず、最初の行為から何回繰り返したか、覚えていない
。
只、後半からは獣のように愛を求めた。
今まで秘めていた想いを、今日という日に吐き出したのか。
望は、求める事を止めなかった。
「…す、すみません、加賀さん」
「そ、そんな、こちらこそすみません!」
「こんな、何度も生徒とするなんて…」
一度なら許される事でもないが、相変わらず望は絶望している。
そんな教師を、抱き締める生徒。
おかしな状態の上に、おかしな関係だが。
二人にとってはこれで良い。
このまま一緒に、奈落の底まで。
布団と一緒に堕ちていくだけ。