「はあ…」  
 深いため息、カウンセリング室の中、望はがっくりと肩を落とす。  
それを見て、やれやれとあきれる智恵。  
この部屋にいるのはこの二人の先生だけだった。  
今日は相談ではなく、告白なのだが、いつもと変わらぬ風景だった。  
 
 「智恵先生、あなたのことが好きなのに…」  
 「それはさっきから聞いてますよ。でも…糸色先生」  
 智恵はここで、いった話を区切り、望の体を眺めた。  
 「な、なんですか?」  
 舐め回すような視線に、望の頬が朱に染まる。  
 「糸色先生…私を満足させることできます?」  
 「で…できま…すとも」  
 最後の三音が小さい。自分に自信がない証拠だ。  
 
 『あなたと運命を共にできれば、私も少しは生きる事ができると思います』  
心から愛する女性に対し、こう純粋な台詞を言っただけだというのに、  
なぜそんな話に発展してしまうのだろう。  
 だが、恋愛というのはうまくいかないのが常套である。  
 
 「いままで、付き合った人、すぐ疲れて縮む人ばかりでしたし…」  
 縮む…何が!?  
 望は疑問に思ったが口に出さなかった。  
 「糸色先生は、丈夫ですの?」  
 「まあ、昔は…」  
 「今が問題なんですよ」  
 智恵が莞爾と微笑む。  
逆に望は血の気が引いている。  
お坊ちゃんとして暮らしていた反動で、都会に出た途端に  
超が付くほど遊び人となった望。  
昔の望は体力もそれなりにあり、その顔を利用し女性を口説いた。  
数多の女性と夜を共にし、あまつさえ可愛くて好みであれば  
少年だろうと毒牙に欠けていた。  
 しかしそれは昔の話。女性を落とす如才がない性格と整った顔を残して、  
すべて衰えてしまったのだ。  
 
「じゃあ、先生?」  
 智恵が問いかける。  
 「私に証明してくれたら、付き合ってあげますよ」  
 「本当ですか?」  
 「じゃあ、いいですか? 先生に好意を持っている生徒…結構いますけど…」  
 「ま、まあ自慢じゃないですが、5人ほど…」  
 望は照れながら頭を掻く。  
 「じゃあ、先生のクラスで先生に好意を持っている生徒5人と今日…」  
 「今日?」  
 「関係を持ちなさい」  
 「…あっちの意味で?」  
 「それ以外に何が?」  
 さらっと答えられる。  
 困った。困った。いくらなんでもそれはないだろう。  
女性徒5人に今日一日でヤれだなんて…  
 「そ、そんな…教師がそんなことできるわけないでしょう。  
  況してや自分のために生徒を利用するだなんて…」  
 「じゃあ、やめますの?」  
 「……そのような快楽を捨てて、立派に教師として生きる方がいいのです」  
 「そう」  
 「ええ」  
 
 長い沈黙があった。  
 「…糸色先生…そんな価値転換を…私…そういう弱者の考えは嫌いです」  
 「え?」  
 望は、智恵の言っていることがよくわからなかったが、彼女が立腹だということは感じ取れた。  
 「自分に自信がないからって、こういう生き方が、いい生き方だというのは…私は許すことができません」  
智恵はいきなり望の襟を掴んだ。完全にSモードだ。  
 「ちょ…」  
 「自己否定は、人にあるまじき行為です!」  
 「すいません! すいません! 自分に素直になります。私はあなたが好きです。  
  あなたと付き合うためになら、自分の生徒に手を出すとしても頓着しません。」  
 望は必死で謝った。自分の弱さから、快楽を殺そうとしたことが智恵の反感をかったようだ。  
彼女からしてみれば、克己心を持つ方が好ましいのである。  
   
 「糸色先生。そうです。自分を肯定してください。それが一番ですよ」  
 「やってみせましょう。一日で5人。今の私でもできるはずです」  
 こうして、遊び人、望が復活した。  
 
 
 「ところで智恵先生?」  
 「何ですか?」  
 「『今日』ということは、午前0時からということですよね」  
 「そうですが?」  
 「じゃあ、あと4人ですね」  
 望はノートにペンを滑らす。  
 
 『小森 霧』 クリア  
 
 智恵の白けた目が、望に刺さる。  
 
 「何か?」  
 「生徒に手を出してるじゃないですか…」  
 「だって、かわいく誘ってくるもんだから…」  
 
 ただいま朝礼前、残り4人。  
 
 望は名簿を見つめる。  
 
 木津千里  
 小節あびる  
 常月まとい  
 三珠真夜  
   
リミットは、今日の24時まで…  
 
 
 一限目終了後、望は真夜を呼び出した。  
 「三珠さん。話があります」  
 真夜は、何も言わずに望についていく。  
いつもの鋭い目は、何かを威嚇するようだったが、決して白眼視をしているような目ではなく、  
むしろ愛されたいという寂しげな瞳が望を映していた。  
このような難しい年頃の女性は、教師として守ってあげたいと思う望であるが、  
今は守るどころか、その体を得ようとしている。この背徳が、望を興奮させた。  
 「三珠さん。あなたこの前、犬に棒を突き刺しているところを見ました。  
  何故です? 地域の方からここの制服を着ている子が、そのような動物虐待をしていると連絡があったんです。  
  とてもお怒りでしたよ。私たちのイメージを落としたのです」  
 真夜は、何も言わず俯いた。  
 「それでですね…」  
 望は、そう言いかけて、すばやく身を翻した。  
 真夜が包丁を右手に持ち、振りかざそうとしていたからだ。  
 「危ない!」  
 望は、真夜の持っていた包丁を振り落とし、彼女を押し倒す。  
 「あなた…学校にいられなくなりますよ。…誰にも見つからなくてよかった」  
 「…」  
 真夜は表情はそのまま、顔を赤らめる。自分を殺そうとした相手を、  
一番に気遣ったからだ。無論、これは望の本心である。  
 
 「ちょっと、人のいないところに行きましょうか」  
 
カウンセリング室  
   
 「智恵先生はいないようです。たしか用事があったから…」  
 望は真夜を椅子に座らせる。そしていきなり、制服の上から胸元を弄った。  
 「他に凶器がないか、身体チェックさせてもらいます」  
 身体チェックというには、手先がいやらしく動く。胸から腹、そして制服の中に腕をいれ、  
直に肌に触れる。スカートの中にも手をいれ、絶対に凶器などあろうはずもない太ももを揉む。  
 「……」  
 真夜は抵抗することもできず、望のテクニックに溺れた。スカートがはずされ、  
パンツが脱がされたとしても、とても自然な流れで拒否はしなかった。  
 「ふふっ。三珠さんには、お仕置きが必要なようで…あなたが棒を刺した犬と…」  
 望は、ここで自分の袴を脱いだ。  
 「同じ思いをしていただきましょうか」  
 望は、彼女に覆いかぶさると、自分のそれを彼女の中に差し込む。  
 「……」  
 真夜はこのような状態になったとしても、喘ぎ声一つ出さずに、望の動きにあわせ、腰を揺らした。  
顔色一つ変えない彼女を見た望は、彼女を乱してみたいという欲求を掻き立てられ、動きを激しくする。  
結局、彼女は無表情のままだったが、望は真夜が我慢して快楽に耐えていることを感じ取り、大いに満足した。  
 
 
 
 「もう、休み時間も終わりですね」  
 望はそういうと、ラストスパートに入った。  
 望の液が、どくどくと真夜に入った。  
 
 「ふう」  
 行為が終わって、一息休憩を入れていた望だが、体にある異変を感じた。  
下半身が少し冷たい。何か金属が当たっているように…  
 
 「み! 三珠さん!」  
 望は吃驚し、血の気が引いた。自分のまだ元気なそれに、真夜が狙いを定め包丁を当てているのだ。  
狙いが定まったらしく、真夜は、大きく包丁を振りかざす。  
 
 「間一髪!」  
 望は、彼女の刃から脱兎のごとく逃げ出した。  
そして彼女から離れ、袴を履くとさっさと部屋を出てしまった。  
 
 「遅れないでくださいね」  
 
 
 そういい残して。  
 
 『三珠真夜』 クリア   
 
 二限目 残り3人。  
 
昼食の時間  
 
 「あびるちゃん! 一緒に食べよう!」  
 「いいわよ。風浦さん」  
   
 あびるは、ここで周りを見渡した。  
 「やっぱり、ゴメン。他の人にしてくれる?」  
 あびるはそう言って、教室を出た。  
 「? あびるちゃん?」  
 
 
 「やっぱり…」  
教室と廊下の間にシッポが挟まっていた。トカゲのシッポのようだ。  
 あびるは、トカゲのシッポを見つけ悦に入る。  
 「ニホントカゲ…」  
 
 そして、もって帰ろうとしようとしたが、目線の先にあるものに釘付けになった。  
 「ミ…ミナミヤモリー!!」  
 廊下には、またシッポが落ちていた。  
 
 そして、その先には、  
 「アオカナヘビ!」  
   
 さらに数メートル先に、  
 
 「グリーンアノール!!」  
 
    
 
 今はもう使われていない理科室。  
シッポを追って、遠くまで来ていたようだ。  
そして中には、意外な人物…あびるの愛しい人がいた。    
   
 「ここの教室は、誰も使ってないようです。あびるさんは、どうしてここに?」  
 「しっぽがあったからです」  
 よくわからない回答だが、罠を仕掛けたのは望だから、『そうですか』と答えた。  
彼女はとてもうれしそうに微笑んでいる。  
 (いつも冷たいのに、こういうときだけ、こんな顔できるんだなあ)  
 「…そういえば、小節さん。これ知ってますか?」  
 「ブラキオサウルスの化石です。尻尾の部分だけですけど…」  
 「…尻尾!!」  
 あびるは目を光らせた。  
 「本物ですよ。勿体無いでしょう? 改装するから処分するんですよ。」  
 「先生! 欲しいです。しっぽしっぽしっぽ!!」  
   
 「あー。それは駄目ですよ。でも…内緒であげちゃいましょうか。先生は良い先生ではないので。  
  でも、条件付きですよ。誰にも言わないでくださいね」  
 望はあびるの肩を掴み、教室内に招き入れると、ゆっくりとドアを閉めた。  
 
 
 「あんっ! あん! ああっ!! いい!!」  
 望は、あびるの体を舐め回す。深い口付けをしながら、豊満な胸を甚振る。  
胸元の包帯の間に指を入れて、乳首を摘むと、あびるはとてもいやらしく鳴いた。  
 (智恵先生ほどじゃないですけど、本当に大きいですね)  
 望はあびるの胸に顔を埋める。そして思いっきり吸い付いた。  
 「いいよ! せんせ・・ああっ!」  
 「やわらかい」  
 あびるはこの上ない幸せを味わっている。好きな人と愛し合い、その上珍しい尻尾が入るのだ。  
望もあびるの身体的魅力に狂わされ、余裕もなく彼女を求めてしまっている。  
 赤い乳首を丹念に舐めて、歯で軽く噛む。  
犬歯を使って、強めに噛むとあびるは痛さと快楽によって、より一層喘いだ。  
 
 「先生のぉ…食べたい」  
 「しっかり、お願いしますね」  
 望はあびるの三つ編を引っ張って、自分の股間に近づける。そして頭をがっしりとつかんで、  
強引に、自分自身を舐めさせる。  
 
 「うぉ…うぉうぃい!」  
 「気持ちいいですよ。もっと歯を使って…」  
 「んんあ!」  
 望は絶頂を向かえ、液を彼女の口内に放出する。  
   
 「はあっ!」  
 「次は、下からですよ」  
 望の両手が、あびるの太ももをつかんだ。  
そして、ゆっくりと自身をあびるの中へ…。  
 「あああああ!」  
 望はもう一度、大きな乳房を両手で掴みながら、腰を動かした。  
 
 
 使われない教室に、いやらしい音が響いた。  
 
 『小節あびる』 クリア  
 
 5限目 残り二人。  
 
「小節さん。…結構タフですね」  
 望は少しばかり疲憊し、壁に凭れ掛かった。  
 
 終業のチャイム。もう生徒が帰ってしまう。  
 「木津さんは…」  
 千里は、きっちりと下校時間には下校をしてしまう。反対にまといは、  
終日(ひねもす)自分のそばにいるので、先に狙うは千里だ。  
 望はこう結論を出した。しかし、千里の相手をするとなると、それは  
恐ろしいことだ。一歩間違えれば死を招く。  
望は、一計を案じて乾坤一擲の大勝負に出た。  
 
 「じゃ、帰るわよ。晴美」  
 「うん。かえろ」  
 
 望は廊下の曲がり角で待ち伏せしている。  
そこにじっと虎視眈々と機会を窺っているのをはたからみれば、ストーカーでもしている  
のではないかと思われるだろう。もっともその数メートル後ろに本物のストーカーがいるのだが。  
 
 「今だ!」  
 
 千里が曲がり角を曲がるその瞬間、望は態と彼女とぶつかった。  
 「すいません。…木津さん。お怪我は…」  
 
 この様子を傍で見ていた晴美は、思わず笑みを浮かべていた。  
望の手が千里のひらぺっっったい胸の上に置かれていたからだった。  
勿論、これは望が計算した結果だった。  
 「す、すいません。すぐ退きます!!」  
 望はこう言って、立ち上がる。しかしバランスを崩し、次は千里の太ももを掴んでしまった。  
 
 「せ…せんせい!!」  
 千里は怒りで顔を赤くさせる。しかし赤いのは怒りのためだけとは、誰も思わないだろう。   
 
 「ああ、またすいません!!」  
 「きっちり! 責任取ってください」  
 「わ、わかりました! ど、どうすれば…」  
 「結婚届持ってきます」  
 「ちょっと! 待ってください!!」  
 望は千里の腕を掴む。  
 「それより、息が荒いですよ。…もしかして欲情…してます?」  
 千里は訴えるように望を睨み付けた。  
 「そっちなら、私…きっちりけじめ着けさせて頂きます」  
 
 「晴美!」  
 千里は友人の名を呼ぶ。  
 「先、帰っててくれる? 私、先生に責任とってもらうから」  
 「ちょっと、千里!!」  
 「私の気持ちが落ち着くまで…その…あ、えっと…してくれ…ます?」  
 「やむを得ません。男として責任取りましょう。藤吉さん。木津さんを借ります」  
 「えっ? ええ、わかりました」  
晴美は二人を見送った。  
 
保健室  
 
 
 他に人がいなかったので使わせてもらおう。  
部活で、誰か怪我するとか…誰も来ないことを祈るばかりだ。  
鍵、閉めておくか。常月さんが廊下にいるのがわかるし…。  
まあ、誰か来たとしても、いろいろ説明すれば…  
 
 「先生!」  
 望の思考を凛とした声が遮った。  
千里は、ベッドに寝転がると、脱がしてくれという仕草でアピールをする。  
 「はいはい。わかりました」  
 
 (本当、小さいな。当てたとき床かと思ったぐらいだから)  
 「ちょっと、先生、人を裸にしながら、別のこと考えてませんか!?」  
 「いえ、ちゃんと木津さんのことを考えてました」  
 「そ、それならいいですけど…」  
 内心ドキッとしたが、納得してくれたので、望は胸を撫で下ろした。  
 
 (小節さんのもう一回、揉みたいな。あの人、妙にフェロモン出してるし…)  
 「何してるんですか?」  
 「え?」  
   
 望は、自分がしていたことに気付いた。千里の胸の前の空気を揉んでいたのだった。  
 「すいません。勘違いしてました」  
 「何をですか?」  
 (別の人と。なんて言えないよな。この子相手だとHの時まで神経を使うんだから…)  
 望は千里のピンクをリモコンのボタンのように何度か押してみる。  
 「あっ! あん!」  
 「意外と可愛い声出すんですね」  
 「うー」  
 望は、まじまじと千里の顔を見る。  
 「可愛いですね。今まで気付かなかったけど…」  
 「そんな、ほめてばかりいないで…続き!」  
 「はいはい」  
 褒めてほしいって、顔に書いてありますよ。望はそう口にだそうとしたが、  
あまりからかいすぎると、暴走してしまう。やめておこう。  
   
 「先生の…元気がないんです。ちょっと起こしてくれませんか」  
 千里は望のそれに口付け、一気に銜え込んだ。  
 「小森さんよりは下か…」  
 「はい?」  
 「いや、なんでもありません。続けて…はい、そうそう…よし、うまいうまい…ああ、もう…完璧です」  
 
 完全に元気になったそれを、千里はうっとりと眺める。  
 「これなら、木津さんも落ち着くでしょう」  
 望はベッドに仰向けになると、千里を中心に座らせた。  
千里は望のそれを掴み、自分の穴にあてがう。  
 ゆっくりとゆっくりと入っていく。  
 一分ぐらいして、全てが飲み込まれると千里がいきなり腰を振り出した。  
 「おお、積極的!」  
 
 (この様子ですとすぐにイケますね。常月さんは、簡単にやらせてもらえますし、  
  これで智恵先生と付き合えるわけです。あの色っぽい足を愛撫し、堆い胸を揺らさせ、吸い尽くすことが  
できるんですね。今みたいにやっていると、上下に大きく揺れるんでしょうね。  
私はそれを鷲づかみにして、揉んで揉んで、この棒を擦りつけるんです。  
 「ああ、智恵先生! 智恵先生!!」  
 望は想像した光景を浮かべ、達した。  
 
その快楽に酔いしれながら、夢現の中、千里から自分自身を引っこ抜いた。  
ぽとぽとと液がシーツを濡らす。  
しかし、数秒と立たぬうちに、望の全身の汗が冷たくなった。  
そして鳥肌が立ち、歯がガタガタと震えた。  
 
 千里と交わっている中、智恵先生の名前を叫んでしまったのだ。  
 
 殺気が生まれた。  
 
 いつも見る猟奇の目だ。よく、最後のページで見る…最後のページって何だよ。いやいやそれどころじゃない。  
1、言い訳する。2、謝る。3、逃げる。おいおい、何選択肢にしてんですか私は……あー!  
どうしようか、どうしようか、頭が混乱して智恵先生のことしか浮かばない…。  
こういうときに、ジャンガジャンガとかいうんだろうか…そういえば、最近見ないな、あのお笑いコンビ。  
だーーもーー!! どうしろっていうんですか? 自殺すればいいんですかああ!!  
 
 「うわーー」  
 望が頭を抱え絶叫したが、千里に首を掴まれ、声は消えた。  
   
 「せ…ん…せ…い」  
 「うぐぐ」  
   
 千里は、スコップ(どこからだした?)を手にし、天高く飛び上がる。  
天井いっぱいまで跳躍したかと思うと、スコップの先端を下に向け、串刺しにするように落下してきた。  
 
 狙うは、先ほどまで千里の中に入っていた、立派な…。  
 
 「やめてええええええええ」  
 
 
 「せっかく…せっかく、4人までいけたのに…あと一人だけだったのに…」  
 望はがっくりと肩を落とす。もう動かない死体のように倒れた。  
少なくとも、今日は大事な武器が使い物にならないのだ。傷まみれだ。  
 
 生徒と性行為していたと普通の医者に言えるわけもなく、  
軽蔑されるだろうから兄にも診せるわけにもいかない。  
 少し触れれば、激痛が走る。まといを受け入れることなどできはしない。  
このまま、徒に時が過ぎる。ご愁傷様ですという智恵先生の顔が思い浮かぶ。  
 
『先生のクラスで先生に好意を持っている生徒5人と今日…関係を持ちなさい』  
 
 朝の言葉が頭に響く。  
 
 「…そうだ」  
 望は顔を上げた。  
 
 「これで、5人です!」  
 望は自信満々に名簿を見せる。  
 
 「確かに、そうですね。一日で5人…でも」  
 「でも?」  
 
 「これは…なんです?」  
 
 智恵は最後の人物の名前に指を刺す。  
   
 『久藤 准』  
 
 放課後、自分の物が使い物にならなくなった望は、あることに気付いた。  
性行為であれば、ヤラれる側でもいいんじゃないか?  
そして望は、図書室で本を読んでいた久藤に、お得意の口説きを使って惚れさせた。  
 好意を持たせることからスタートさせたわけだ。あとは、誘い受けオーラで工藤を誑かし、  
…まあ、うまくいったわけだ。  
 
 
 「まあ、男性を使ってまで、私と付き合いたいという気持ちは、正直うれしく思います。  
  そこまで私を想ってくれるなんて…でも」  
 「でも? また『でも』ですか。何でも仰ってください」  
 
 「最悪なオチですね」  
 「ええ、私もそう思います」  
 
  END  
 

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