『あんな華麗になるな』  
 
 
長い夏休みが終わった。生徒たちは寂寥としていた教室を、  
再び賑やかな場に戻した。  
それは、問題児が集結したことを意味していた。  
 
 「はあー。一日中、漫画描くことができるのも・・・昨日までか」  
 「もう! 学校は始まったのよ。きっちり区別つけなさい!」  
 
 「宿題がたまっちゃって、結局、昨日慌てて終わらせたよ」  
 「普通ね」  
 「普通って言うなー」  
 
 
 がやがやと、生徒たちが久しぶりの再会を楽しんでいたところ、  
教室のドアが開いた。  
 
 「お久しぶりです。みなさん元気そうですね」  
 「先生!」  
 
 そこへ足を踏み入れたのは、この教室の生徒。  
何人かの生徒は愛情を込めて彼を迎えた。  
 「元気そうでなによりです」  
 
 
 全校集会が終わり、再び教室に戻った一同。  
夏休みの出来事を話題に雑談し、宿題の提出を終えたあと、  
望は口を開いた。  
 
 「さて・・・みなさん。もうひとつの宿題、やってますか?」  
 「もちろんです。課題研究ですね」  
 「あまいですね」  
 望は鼻で笑った。生徒たちは首を傾げた。  
 「課題研究? あなたたち今までの夏休みを思い出してください。  
  始まる前は、すばらしいものを作ってやると、やる気いっぱい。  
  そして、創作意欲満々で取り掛かるのですが・・・  
  夏休みの誘惑! 睡眠、ゲーム、旅行、これらに邪魔されて、後回しになる。  
  そして、なれないことです。思ったように進まず、やる気を削ぎ  
  妥協妥協の連続。ある程度は形作られてますが、始めに思い描いていた作品とは  
  比べ物にならない。目標が大きすぎた。つまり、過大研究なのです!」  
 
 
 また、始まった。この馬鹿演説。  
   
 「・・・過大研究?」  
 「そう。自分の力量を超えた、過大な作品を作ろうとし・・・恥をかく。  
  日本の建築物の歴史と構造についてのレポートが2枚で終わってしまったり、  
  一枚の絵しか描かなかったり」  
 「そんな小説書いている人の実体験はどうでもいいですから、  
  きっちり、発表させてください!」  
 
 「わかりました。では発表会と参りましょう。ではまず・・・私から」  
 「何でだよ!」  
 
 「先生も研究してきたんですよ。題名は『世界の自殺者』」  
 「しょっぱなから、鬱になるのをもってくな!」  
 
 「世界の偉人で、自殺した人の理由、死因を調べて表にしました」  
 「駄目だ! 聞いてないこの人!」  
 望は、一枚の紙を出した。そこには簡単な表が書いてあった。  
 
 「興味深いのは芥川龍之介ですね。そして太宰治。  
  『世界の』と言いながら、日本人二人で終わりました」  
 「いくらなんでも、妥協しすぎだよ」  
 
 このようなスタートで、出席番号1番から、発表がされていった。  
 
 「僕は、絶望の仕方が足りてないようなので、人間心理について研究して・・・」  
 「まだ引きずっているのですか、青山くん」  
 
 「僕は、髪質と育毛剤の相性について」  
 「じゃあ、次は出席番号4番の・・・」  
 「せんせー?」  
 
 「俺は、最新のファッションについて」  
 「僕は、世界文学の作者の生い立ちと、作風の関連性について・・・」  
 「俺は、おっぱいについて」  
 「マリア、食べれる草と、食べれない草の・・・」  
 「私は、節約生活の仕方について」  
 メルメル『顔文字10000個作成』  
 「テロ活動についてのレポート、きっちり100枚です」  
 「世界中の珍しい訴訟について」  
 「しっぽ一覧。・・・アフリカ編」  
 「先生の一日の生活をすべて、表にしました」  
 「ポロロッカ星の気候と地形について」  
 「好きなJ−POPの人たちについて」  
 「古代ギリシャ制度と同性愛について」  
 「・・・・・・」(世界の武器)  
 
 
 望の予想は違った。皆が皆、大学教授宛らに、詳しいレポートを書いていた。  
そう、この連中ときたら、ある種においては、マニアの中のマニア。  
変人の集まりだった。  
 結局、適当に作っていたのは望だけとなり、後ろめたい気持ちになった。  
 
 「すみません! すみません」  
その中、教室に可愛らしい女性徒がいきなり飛び込んで来た。  
 「新学期早々、遅刻してすいません」  
 入ってきたのは、加賀愛だった。  
 「ま、まあいいでしょう。以後、気をつけてくださいね」  
 望は愛に甘いところがあり、ただそう言っただけだった。  
 「それはそうと、あとは貴方だけですね。加賀さん」  
 「何がですか?」  
 「過大研究です」  
 「・・・・・・」  
 
 放課後  
 
 「課題研究をやってないなんて」  
 「すいません。すいません」  
 愛の話を伺うと、こういうことらしい。  
課題を決めるたびに、こう考えてしまった。  
『私なんかに調べられたら、この人たちに失礼だ』  
『歴史を調べたら、偉人さんに失礼だ』  
『博物館の人に迷惑が掛かる』  
『図書館にいる人に迷惑が掛かる』  
 こんなことを思って夏休みを終えてしまった。  
 
 「まあ、貴方らしいと言えば、貴方らしいですが」  
 「すみません」  
 愛は、涙目で謝罪するものだから、望を少し顔を赤らめる。  
やっぱり可愛らしいな、加賀さんは。  
思わず、望は抱きしめようとするが、ある男によってそれは遮られた。  
 「かーがーさーん」  
 「ムッ! この頭の悪そうな声は」  
 「木野さん!」  
 望と加賀に近づいてきたのは、加賀に想いを寄せる木野だった。  
なにやら、ハイカラのものを持って。  
 
 「なんでしょうか?」  
 「これ! 絶対似合うから!」  
 案の上、人間には似合わない服だった。  
赤と紫の縞々に、黄色の斑。しかも露出度が高い。  
というより、どこから袖を通すのだろうか。  
 「無理です。私にはレベルが高すぎます」  
 当然の反応だ。  
 「せっかく、この夏、研究して来年の流行の傾向を読んだんだ」  
 その前に空気読めよ。  
 いつもなら、望も反対するのだが、露出度の多い服に負けてしまった。  
 「では、加賀さん。ほかの人たちの課題研究の協力してはどうですか?  
 そうすれば今回は加賀さんも課題をしたということに」  
 「うっ。先生がそういうなら・・・」  
 
 
 木野の持ってきた服を着た加賀は、滑稽でしかなかったが、  
服以外の部分、つまり白い肌や、少しだけ見える谷間などはとても魅力がある。  
 
 「最高だ。加賀さん」  
 「うう。可愛らしい」  
 「は・・・恥ずかしいです」  
 おどおどして、胸元を隠す彼女に、二人はすっかりと虜になってしまった。  
 
 厄介というものは、新たな厄介を呼ぶものである。  
木野の姿を見つけた青山と芳賀がのこのことやってきた。  
 二人は愛の姿を見て、驚き半分、嬉さ半分といったところか。   
 「加賀さん! なんていうか・・・」  
 「まあ」  
 姿は可愛らしい。誰がどう見てもそうなのだが、服が似合うと言うことはできない。  
それは賛美ではなく愚弄を意味している。  
 
 「ところで、お前らどうしたんだ?」  
 「ちょっと、課題研究で遣り残したことがあって。  
  まあ、発表が終わったとはいえ、完成させたいんだ。見せるためじゃなくて、  
  自分のためにやるのがこの研究だから」  
 尤もらしいことを言う芳賀だったが、お前の研究はおっぱいだろうが。  
 
 「俺も気になるところがあって・・・」  
青山もそう言っている。  
 
 「それは・・・いいことなのですが、主に何について?」  
   
 「Bカップのさわり心地について」と芳賀。  
 「ツンデレの心理について」と青山。  
 
 訊いて損した。  
 
 「わ・・・私・・・そうですよね。協力しなければなりませんよね」  
愛は言った。  
好意を寄せている望の言葉である。愛は実行に移した。  
 
 「じゃあ、協力させてもらいます」  
 
 次の瞬間、愛は意外な行動に出た。  
芳賀の手を握ると、その手を誘導し、服越しに自分の胸に押し付けた。  
 
 「なっ!」  
 「加賀さん!!」  
 「うわっ! ちょっと!」  
 
 「研究の・・・材料になりましたか?」  
 顔を紅く染めて、愛は囁く。  
 「芳賀! 何してんだよ!」  
 木野が鬼の形相で、その手を振り払った。そして、ぎゅうと加賀に抱きついた。  
後日、このことについて、本人はさりげなくやってみたと、ほざいていた。  
 
 「俺・・・何もやってないし・・・」  
 「こら、加賀さんから、離れろよ! 大丈夫だったか?」  
 自分は何もしていないのに、いつの間にか芳賀は悪者扱いだ。  
   
 「青山くん。・・・し、心配しなくてもいいわよ! これぐらい大丈夫だから」  
 ぷいっ。小さなポニーテールをピコピコさせて、そっぽを向く。  
 
この行為に、木野はもちろんのこと、青山、芳賀そして望までもが愛に  
惚れてしまっていた。もう最後の理性すら、壊れてしまった。  
   
 「愛してる。加賀さん」  
 木野は、強引に彼女の頬を両手で押さえてキスをした。  
 「んーんー」  
   
 愛はじたばたと抵抗するが、青山によって、それは封じ込まれた。  
 「動かないで」  
 青山は、彼女の両手首をつかんで彼女の両足に、自分の両足を絡み付けた。  
そして、彼女の後ろ髪に頬ずりしだした。  
 
 「加賀さん。もっと・・・資料が欲しいな」  
調子に乗った芳賀が今度は自分の意思で胸を触った。  
触るだけではなく、揉みだした。  
 「ああっ」  
 木野の舌によって口内を犯されながら、愛は喘ぐ。  
三人の野獣の愛撫はエスカレートしてきた。  
 
愛は、最後の救助船に願いを託した。  
恋の相手である望に、助けて欲しいと訴えかける。  
 
 しかし、この救助船。碌でもない欠陥品である。  
上目遣いで訴えたのがまずかった。  
望も、ここまでされたら野獣になってしまう。  
もともと、駄目人間である。野獣になるのも簡単だ。  
 
 
 「加賀さん。そんなアホみたいな服。とってくださいよ」  
 望はさりげなく木野がグサリとくる台詞を吐いたが、  
木野は気にもかけてなかった。  
望の手が愛の服にかかる。あっという間に服を脱がした。  
 
露になった乳首に、いち早く芳賀が吸い付いた。  
 「あっ! ずるい」  
 木野も乳首をベロベロ舐めだした。  
 「や、めて、ください」  
   
 「いやらしい顔してますね」  
 三人の男子は、愛の胸の取り合いをしていた。  
望は少し離れて、その様子を眺めていた。  
 
 「もう、オレ限界だ」  
 「オレも! 加賀さんが誘うからいけないんだ」  
 「加賀さんが、責任取らないとね」  
 「やっぱり、私が悪いんですね」  
 
 木野は勝負パンツごと、ズボンを下ろした。  
 「きゃー! やめてください! いいかげんに・・・」  
 愛は必死で首を振った。運が悪いことに、彼女の鋼鉄の頭が  
木野の鼻にクリティカルヒットした。  
 「してください!」  
 木野は、鼻血を出して床にぶっ倒れた。  
心なしか、満更でもないように笑っていた。  
 「大丈夫か! 木野!」  
 青山が木野の体をゆすった。反応がない。気絶している。  
 「あ! すみません! すみません!」  
 愛の神速の最敬礼によって、今度は青山が犠牲となった。  
青山は後頭部を打たれ、木野の上に重なって倒れた。  
 「ああ、また!」  
 愛は青山の頬を軽くたたく。  
 「しっかりしてください」  
 その様子を、芳賀は、上から様子を伺っていた。  
 「救急車呼ばないと!」  
 愛は立ち上がった。いきなりだったもので、芳賀の顎に石頭がぶつかった。  
 これで三人の犠牲者が出た。  
 
 
 
 「やれやれ、盛りが付いていると損をしますね」  
望は、たんたんと語る。  
 「まあ、あなたがそんな綺麗な姿ですから、わからないでもないですが」  
   
 望は、愛に軽く口付けをした。  
 「初めてなのに、乱暴されるのは嫌でしょう? 続きは私と場所を変えてしましょう」  
 愛はうれしそうに、そして恥ずかしそうにうなづいた。  
 「加賀さん。うれしいです」  
 「勘違いしないでよ! 別に、先生が相手だからやるんだからね」  
 「たぶん・・・使い方間違っています」  
 望は、愛にもう一度口付けをした。今度は長かった。  
 
                         END?  
 
 
 その後  
 
 
 「こうして、古代ギリシャ七賢人の一人、キロンが教育に同性愛を取り入れ・・・  
  それはこうして遠く、今の日本まで引き継がれているの」  
 藤吉晴美。問題児の一人は、淡々と語った。  
彼女の目線の先には、パンツを下ろし、仰向けになって倒れている木野と、  
その上に覆いかぶさっている青山の姿があった。  
 「彼は、このような名言を残しています。『汝、自身を知れ』と」  
 
 「それ、意味が違うと思うけど・・・」  
 
 「何、言っているんですかあ」  
問題児のトップが現れた。  
 「これはメッセージです。今年のポロロッカ星は豊作になるでしょう」  
 「なんにせよ! こんな卑猥なモノ見せて・・・訴えてやる!」  
 メルメル『おめえが言うな! ヘンテコパーマ >(”)』  
 
 「僕、いい童話を思いつきました」  
 「この醜態を見て!!?」  
 
 そのあとのことは、どうなったか・・・知りたくもない。  
 
                      END  
 

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