「それじゃ、私はこれで」  
「うん」  
「それはそうと、先生、最近痩せ細ってきてますけど、大丈夫ですか?」  
「まあ……ちょっと睡眠不足気味かもしれないです」  
「そうなんですか」  
「あんまり、根をつめないようにして下さいよ」  
「ええ」  
「お疲れ様」  
「はい」  
意外にも場面は変わっていて実はここは糸色医院。  
しかも数日前だったりする。  
そういう状況説明を後からするというフェイントのズルさはさておき。  
夜間診療の時間が終わって、看護婦も帰った後、命はパソコンのモニターに向かった。  
「お、やった、また写真がUPされてる」  
ここ数日、こんな状況が続いている。  
「ハァ……かわいいよなあ………見てて癒されるよ」  
ずっとぼんやりと女の子の画像に見とれているのだった。  
「この子、いくつなんだろ。望の生徒くらいかな……」  
望の生徒というと、昨年の夏以降いろいろ遭遇してきて、その性格の悪さやねじ曲がった性質を持っていることで、うんざりしている。  
現実の女はキモい。  
でも、このモニターの中の彼女は裏切らないのだ。  
「あれ……?」  
制服姿の彼女のフォト。  
(これ……望の学校の制服と同じじゃないか……?  
 まあ、ありふれたセーラー服だが……もしかすると。  
 こんな子が望の学校にいるのか。うらやましい……)  
読者諸賢ならもうおわかりのこととは思うが、命がハマっているのは、ネットアイドルことのんだった。  
 
「ママ、大丈夫だから……」  
「大丈夫じゃないでしょ。こんな熱出してるじゃない」  
「こんなことしてるうちにも、先生に悪い虫がついたら……」  
「ダメよ。今日は安静にしてなさい」  
「それじゃあ、医者に行ってくる」  
「こんな時間に?」  
「大丈夫。あそこなら(流行ってないから)急患も受け付けるから」  
「……そう?」  
「じゃあ、行ってくるね」  
「先生のところに行っちゃダメよ」  
「わかってる……」  
そんなこんなで、その夜まといは糸色医院にやってきた。  
が、<本日の診療は終了しました>の看板が。  
(流行ってないのに、休むことは休むんだ……)  
帰ろうとしたが、何やら一室が明るい。  
(なんだ。命お義兄さん、いるんじゃない)  
まといの頭の中では命はいつの間にか義兄にされてしまっている。  
窓枠から覗くと……。  
「ことのん……ハアハァ………」  
(……!!)  
キモいものを見てしまった!!  
見ると、風を入れるためだろうか、窓が開いていた。  
そこからそっと入り込む。  
「お義兄さん!!」  
「……!! ひっ!! だ、誰ですか!!」  
「弟さんの許嫁です」  
「望の生徒の?」  
「はい」  
(……不意を討って上がりこんでくるなんで、さすが望の生徒だよ………)  
「それで、なんの用ですか」  
「……まず、ちゃんとズボンを穿いて下さい」  
「これは失礼しました。というより、そんなところから入ってくるなんて!!」  
「お義兄さんには失望しました」  
命には返す言葉もなかった。  
「熱が出ているので、診てもらおうと思ってきたら、診療時間が終わってて……」  
でも窓の明かりがついていたので見にきたらこんなざまだったと、まあ事情説明。  
「勝手に人のプライベートを覗かないで下さい」  
「それより何より、その子、うちのクラスの生徒ですよ」  
「え……?」  
「まあ、詳しいことは言うつもりはないですけど(お義兄さんが傷つくから)」  
「ぜひ、言わないで下さい!!(こんないかがわしいことをしていたことをことのんに知られたら大変だ!)」  
「そんなに頼むなら言いませんけど(なんでお義兄さん必死なの?)」  
「わ、わかりました。できることはなんでもしますから(脅迫されてるよ……)」  
「できることって?」  
そう言われると、できることは高が知れている。  
「………わかりました。薬事法に触れるか触れないかのものなんですが、秘蔵の媚薬をあなたにあげます」  
「……そんなのもらっても(困りますよぉ、と言おうと思っている)」  
「いいんですいいんです。ほ、ほら、これを使えば、男女問わず感度が上がって、望とも……」  
「……そういう使い方が、あるんだ」  
「でしょ? これで、手を打ってもらえませんか?」  
「もらっときます。じゃあ、これで帰ります」  
「熱があるとかいうのは……」  
「なんだか、治ってしまいました」  
帰っていくまといを見送りながら、命は後悔した。  
「実の弟を……売ってしまった………」  
 
とまあ、こんなことがあったのです。  
 
 
◆◆◆仮ブログ     脅迫◆◆◆  
中途半端にしたせいで、絶対非難されるに決まっています。  
続きを書けと、無言の圧力で脅迫されているんです。  
自分の実名で成分分析をしたら、33%が接客態度でできていました。  
人づきあいができない人間の3分の1が接客態度なんて言われても困ります。  
これは接客しろという脅迫に違いない。陰謀だ。  
仕方ないので続きを書きました。見たくもないようなものをお目にかけてすみません。  
私の28%は未公開映像でできています。  
今後も大事なところは未公開でいきたいと思っています。  
 

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