念願かなって望とのはじめてのキス。
しかし、まといにとってその味は複雑だった。
感覚に訴えてくるのは女子大生のカレーの辛味、そして感情に訴えてくる嫉妬の苦味。
でも、貪るように熱い接吻を交わすうちに、次第にまといの目がとろんとしてきた。
うっとりしたように、望の頬を撫でさする。
「先生………私、擦り切れるまで先生の身体を舐め尽くしたいです……」
「私はナメクジではありません……」
ようやく理性的に言葉で考えることができるようになってきた望が、それでもぼーっとした表情で答えた。
「しかし、常月さん、こんなに舌使いがうまいなんて、正直驚きました……」
「もっと舐めてあげますよ」
言うなりまといは望の胸元に舌を……。
「ひっ……」
ただ、核心である乳首にはなかなか到達しようとしない。
乳輪のあたりまで来ると、さっと舌を逸らしてしまう。
もう片側も、指で同じように責めている。
(あまりの焦らしっぷりに絶望した!!)
「はぁあ………常月さん、……お願いします………焦らさないで……」
「……先生。私のことを、愛してると言ってください」
「………そんなこと……」
「じゃあ、いいんですね?」
まといは、焦らし責めを継続する。
快感が背筋をぞくぞくっと振るわせるが、頂点に到達する直前でいつも肩透かしを食わされる。
望の目はどんどん潤んでいく。刺激に耐えられずに刮目していた目をしばたたいた時に小粒の涙が数粒ぽろぽろと零れた。
その雫が頬を伝って、鎖骨の凹みに落ちて、そこから垂れて胸元に向かう。
それがまといの舌の上にすっと入ってくる。
涙の小川が途中で汗を吸って少し膨らんでいたので、純粋な涙だけの味ではないが。
「先生の涙、私へ向けられた愛の味がします……」
もうこうなると論理もへったくれもない。
「でも、どんなに、正直な身体で証明してもらうより、私は先生の口から愛の言葉を聞きたいんです」
そう言うと、また、乳首スレスレの舐め攻撃を継続する。
「……ひっ………はぁっ……わっ、……わかりましたっ………愛してますっ!!」
まといの舌が止まった。
深刻な顔をして見上げる。少し不満そうだ。
(え……?)
「もっとはっきり言って下さい」
「そんな委員長みたいなことを……!!」
「『愛してます』だけだと、孫を愛してますとか、酒を愛してますとか、なんだって言えます」
「……まあ………そうですが……」
「誰が誰を愛してくれるのか言ってくれない限り、私、このまま続けます」
「そんな」
「いいんですよ? どうなってもいいなら……」
「……言います」
がっくりと項垂れる望。
「しっかり顔を見て、言って下さい。さあ……」
「はい」
望は観念してまといをじっと見つめた。
見つめ合ってみると、本当にかわいい生徒だ。
ごくっと喉を鳴らして覚悟を決めると、望は口にした。
「糸色望は、常月まといを愛しています(笑)」
「最後の保険は余計です」
言い直しを迫られて、2、3度繰り返させられた。
「何度聞いてもいい言葉ですから、もう一度言ってください」
「もういいでしょう!! 乳首舐めて下さい!!」
ついに望、キレた。フラストレーションが限界に達したようだ。
「先生ったら、甘えん坊なんだから」
焦らし好きのまといは、なんだかもったいないなあと思いながらも、望の願いを叶えてあげることにした。
れるっ。ちぇろっ。
「!!」
焦らしに焦らされた挙句に、まといの舌のテクニックで胸の一番敏感なところを責められたのだから、ひとたまりもない。
脳内麻薬が一気に放出される。
ちゅぷぅ…れるろっ………
身体が自分のものではないかのようにびくびくと痙攣し、望は失神してしまった。
「……先生!!」
いくら媚薬が効いているとは言え、あまりに焦らしすぎ、精神的に追い詰めたのとも相俟って、正気を保つことができず気絶してしまった望。
さすがのまといもちょっと反省した。
しかし……。
◆◆◆仮ブログ 脳内麻薬◆◆◆
思想・良心の自由なんて言いますけど、憲法で保障される前から想像は自由なんです。
いくら政府が麻薬を取り締まっても、脳内麻薬だけは禁止できません。
私も自分自身を取り締まることができません。
まといの一人称が「私」と「あたし」で揺れているとか、自分国の野党が責め立てます。
やっぱりドーピングの回の「あたし」を「私」に変えるべきでは。
いや、そんなにきっちりしなくともよいのでは……。
わからんっ!!
精神の二大政党分裂時代が到来です。
野党、うるせえよ。
そもそも原作も「私」と書いて「わたし」とルビを振るという、日本の政府が指定した常用漢字を無視したやり方をしてるから、いいんです。
俺は自由だ!!
盗んだバイクが盗まれた!!