「先生、先生……。」  
「霧さん……。」  
 
 何度も好きと言いたい、愛してるって言いたい。   
でも、その言葉を口にすると、先生がどこかに行ってしまう様な気がして言えない。  
……先生に一言、好きって言って欲しいけど、わがままだよね。  
だって、いつも先生はやさしいから。 先生と触りあえるだけでもいい。  
 
 汗で湿った胸に、先生の乾いたスタンドカラーシャツが擦れて気持ちが良い。  
少しでもつながってたくて先生の腰を追いかけるけど、先生は動きを逆手に取り、  
わたしの中に激しく出し入れする。   
 
 ずちゅずちゅ、となっちゃう位濡れて、おしりと太腿に垂れて、先生とぶつかり、  
今度は、ぱちゅぱちゅ、という音に変わる。 こういうときって先生はやさしくない。  
だって頭の中がまっしろになってくるけど、これは、あまり、好きじゃないから。  
やだよ、先生をわからなくなって、そのまま……せんせいが、いなくなったら……。  
 
「霧さん……そろそろです。」  
「せ、せんせっ、きょうは、なかでっ……いいよぉ」  
「ええっ、もう……持ちまっせん!」  
「せんせい、せん、せい!」  
 
「先生……綺麗にしていかないと。」  
 
 すっかりと萎んでしまった先生の陰茎を口に含み、わたしの露と混じった白濁液を舐め取る。  
 
「……霧さん、また大きくなってしまいそうです。」  
「……だめだよ、先生。 今日は大事なお仕事でしょう。」  
「それもそうですね……いつもありがとう。」  
「いいよ、頑張ってね。」  
 
 先生は手早く着物を纏い、袴を締める。 いつ見ても決まっているね。  
 
「では、行ってきます。 霧さん、交をお願いしますよ。」  
「行ってらっしゃい。」  
 
 先生は帆布のスーツケースを携えて立ち上がる。 でもちょっと変。  
ガーゼの毛布を体に掛け、咄嗟に駆け寄って先生の着物を直した。  
 
「先生、襟が乱れてるよ。今日は大切な日なんでしょ?」  
「ありがとう。 ……でも、その格好で玄関に来ると、照れます。」  
 
 ハッとして自分の姿を鏡で見ると、ガーゼの毛布にうっすらと自分のボディラインが映り、  
隠しきれていない陰部から太腿に、先生とわたしの行為の跡がぬらぬらと光っている。  
 
「……恥ずかしいね。」  
「いえ、綺麗ですよ。 では。」  
 
 毛布で体をくるみ、部屋の布団の上に寝転がると、さっきの行為が頭の中に思い出された。  
……布団に残った温もりに甘える。 やさしい先生も、意地悪な先生も好き。  
あと、締め切った襖の奥に気配が有り、覗いていたのは知っている。  
 
「……ねえ、そういうのはいけないよ。」  
「……霧姉ちゃん。 分かってたの?」  
「うん。」  
 
 縁側、襖の外には交君が立っている。 先生と抱き合っていたときから分かっていた。  
襖をさっと開けて素早く中に滑り込む。 今のわたしの姿を他人に見せたくないのかな。」  
 
「霧姉ちゃん……僕……。」  
「どうしたの?」  
「子供だから良くわかんないけど、こういうの駄目だと思う。」  
「ふふ、えっちね。」  
「ち、違うよ! そうじゃなくて!」  
 
 耳まで真っ赤になった交君を見ていると凄く微笑ましい。 昔の先生もこうだったのかな?  
 
「望兄ちゃん、隣の女子大生の人と、その……。」  
「……知ってるよ。」  
「だったら、何で!? 僕なら、姉ちゃんを大切にする! 絶対に浮気なんかしないよ!」  
「……まだ、キミには分からないよね。」  
「分かるよ! 霧姉ちゃんのこと、好きだから!」  
「分かってない。 先生、わたしがいないと駄目な人なの。」  
「そんなの、変だよ。 兄ちゃんがお姉ちゃんを棄てたら……。」  
「いいよ、今はわたしの所に帰ってきてくれるもの。」  
「オカシイよ! そんなの!」  
「まだ、分からないよね。」  
「分かるよ!」  
 
 私は後ろ向きになった交君を、背中から拘束する。  
 
「ね、姉ちゃん!?」  
「ふふ、おちんちん大きくなってるよ?」  
「だって、お姉ちゃんが、可愛くて……。 その……。」  
「交は、おっぱい好き?」  
「お、お姉ちゃんのは好き!」  
「……そっか。」  
 
 寝間着の隙間から手を差し入れ、大きくなったものを掴むと、交君は腰が砕けた様にへたり込む。  
そのまま布団に横たえ、少し扱くとあっけなく果ててしまった。  
 
「……だ、駄目だよぅ! ……ああっ!」  
「……ここまでしか駄目だよ、わたしは先生のものだから。」  
 
 交君は声を殺して泣いている様だった。 ……肩が震えているからわかる。  
 
「……ほら、ご飯作ってあげるから、水を浴びてきてね。」  
「お姉ちゃん、僕、僕……。」  
 
 泣いている交君を自分に重ねる。 いずれ私の前から先生が居なくなったら、私はどうするんだろう?  
 
おわり  
 

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