「……何だかスランプね……」  
自分で書いた同人誌を見て呟く、  
どうにも最近あんまり良い構図が描けない。ネタは多いのに。  
「……そうだ!、先生の寝姿からスケッチを……!」  
我ながら良いアイディア!、ナイス私!  
私が本気を出せば、宿直室の屋根裏に入ることくらい容易い事。  
そしてそこではあんな光景やこんな………ふふふふふ  
ふと気がついたら不審そうな目で先生がこちらを見ていた。  
……表情に出てたかな?、千里にも時々言われるけど、こればっかりはなぁ……  
――AM.2:30――  
さて、無事屋根裏侵入成功!……この学校、やっぱり警備甘すぎよね?  
多少古典的とは思いつつも、やっぱりこれが一番かなーって事で  
双眼鏡と覗き穴を……よしっ  
寝顔良い感じねー、何の夢見てるのかしら?  
……って、ん?、あれは……  
「……よし、寝てるわね……」  
常月さん?辺りをキョロキョロ見回して何を……  
ハッ、まさか先生に夜這いを!?  
……んー、久藤君だったら良かったんだけどなぁ……  
あ、先生の布団に近付いて……何かに引っかかった?  
「!?、これは……!?」  
そのままその何か白い…包帯かな?  
に巻き取られた常月さんは、早業で柱に縛り付けられちゃった  
と、なるとやっぱり……?  
「かかったわね、抜け駆け厳禁」  
「っあなたは!」  
やっぱり小節さんか  
コレ、ちょっと個人的に面白そうな展開かも!  
先生には迷惑な話だけど、私に被害は及ばないし  
ジタバタしてる常月さんを尻目に、  
先生に近付く小節さん……今更だけど先生、  
千里も含めてあんな子達相手にしてて良く生きてるわね……  
異性にも同姓にもモテるなんて、流石!、そして久藤くんが先生の兄弟達と奪い合いを(省略)  
バキベキッ  
!?、何の音?……まさか!?  
……良かった、ここは安定してるわね  
なら、一体……  
「うなっ!」  
「っ!?」  
ち、千里!?っと危ない、危うく声出すところだった……  
にしても千里、何で床下に潜ってるのよ!  
あ、常月さんの包帯今ので切れたわね  
ドゴッ 「………」  
ってまた!?今度は……三珠さんか、壁破壊とは大胆な……先生、良く寝てられるわね  
でも、やっぱり幾らなんでもフラグ立て過ぎじゃないかな?  
何か火花飛び散ってるし……臨戦態勢だし、  
もしかして、今からオフエアバトルでも始めるつもりじゃ……  
「「………」」ダッ  
あ!動き出し……  
「う……ん、」  
あ、先生の身じろぎで止まった、  
先生起こしちゃマズイもんね、今回はこのまま休戦?  
「にいさ……ダメですよ、そんな……あっ……」  
!!今の寝言何!?ちょ、最高!最高よ今の!  
「アリアリアリアリ!フィーバ……あ」  
マズイ、声出しちゃった……  
 
「曲者ぉ!!」シャッ  
ヒィッ!?い、今千里の包丁が掠った!  
このままだと消される!  
は、早く逃げ……  
バキバキバキッ  
また誰か来……じゃない!  
私の足元の板がさっきの包丁で割れ……!?  
ドサッ「きゃう!」「っうぐぅ!?」  
お、落ちちゃったよ、この危険な場所のど真ん中に!  
松島トモ子がライオンのオリに落ちた様なものよ!  
皆目を丸くしてコッチみてるよ………どうしよう  
……ん?、私の下に誰か……先生!?  
と、言う事は、この体制的に、私が先生を  
襲ってるように見えないことも無い……いや、実質見える訳で……  
「ヒィッ!?、だ、誰ですか何なんですか何するんですか貴女あぁぁ!!」  
ヒィィ!!、先生起きちゃったしパニクってるし!そりゃそうだけど!  
ヤバイ、今回ばかりは本当にマズイ、これもう傍から見たら私が先生襲ってるだけだよね、うん  
だとしたら、当然千里達は……もう千里が鬼の形相に!?  
ちょ、包帯が……動けな、って三珠さん!バットを握ってコッチ来ないでぇぇ!!  
「いやああああああ!!」  
何とか包帯を引きちぎって逃げることはできた、私の顔は見えてなかったみたいで追撃も無い。……死ぬかと思ったけど  
正直、自分に運動神経があって良かったとコミケ以外で思ったのは始めてかもしれない。  
とりあえず、辺りが暗かったのと皆が混乱してたのは不幸中の幸いだった、  
もしあの環境じゃ無かったら私は今こうして学校には居られなかった……考えただけでも恐ろしい  
「あ、おはようー!」  
「ん? おはよう風浦さん」  
今日は随分とご機嫌みたいね、先生に物凄いイタズラでも仕掛ける時のような笑顔が  
私に向けら…れ?……もう嫌な予感しかしない。  
いやいや、でもあの時風浦さんは居なかったし、偶々そう見えた……  
「千里ちゃん!千里ちゃん!昨日ね、宿直室の屋根裏に……」  
だけじゃ無いぃぃ!お願い待って!、千里は本当に危険だから!  
本当にシャレにならないの!!  
「…………」  
!、チラっとだけどこっち見た!?、やった!風浦さんに想いが通じ……て無い!?  
何か黒い笑顔でこっち見た気がする!  
 
「どうしたのよ?、キッチリ、最後まで話しなさい!」  
「あ、ごめん千里ちゃん、それでね……」  
ちょ、風浦さああああん!!  
何で私集中砲火!?私何かし………あ  
もしかして、アレ!?、一昨日、下校しようと思ってた時  
知恵先生に突然持ち物検査されそうになって、持ってた先生×久藤君本の原稿を  
慌てて近くにあった風浦さんの机にしまってそのまま帰った事!?  
……翌日、普通に忘れ物を渡すような笑顔で返して貰ったけど、  
もしかして、実は結構怒ってた、とか……?  
『嫌だなぁ、早めに来てた先生に相当誤解されたくらいで 怒らないよぉ』  
テレパシーキタコレエエエエエエ!!  
え、何コレ超能力!?そして確信した、結構怒ってる!  
ごめんその事は謝る!いや謝りますから千里だけは御勘弁を可符香様!!  
「それでね、最後は屋根裏から……」  
!!、そのオチは……!  
「その話はダメえええぇ!!」  
「……え?、晴海、風浦さんの話本当だったの!?」  
「う……」  
しまった、墓穴を……  
「『昨日から襲う事を考えてニヤニヤしていた』、とか……そう言うのも? あとは……」  
何かあること無い事話し出したああ!  
しかも無い事の方が圧倒的に多い!風浦さんのばかああ!!  
「まぁでも、晴海がそんな事をするとは思えないし……。」  
「ち、千里……?」  
千里は私を信じてくれるよね……?  
とりあえずできるだけ澄んだ目をしておく……ダメ元だけど  
「………そうね、今直ぐじゃなくて、闇の法廷で裁こうか。」  
「それもいやあああああ!!」  
千里に引きずられていく私を見送る風浦さんの笑顔が、  
またも黒く見えたのは私の気のせいでは無いと思う  
……その後の事は思い出したくも無い、あんなの不当判決よぅ!  
とりあえずは、もう人の恋路に首を突っ込むのは止めよう  
『妄想は妄想で、構図は日常からさりげなく』  
うん、これだ、今度からそうしよう………  
 
end――?  
 
 
ガラガラガラ……  
「おや?、千里さんは欠席ですか?藤吉さんも」  
「二人とも、仲良く遊びに行ってましたよ、だよね奈美ちゃん」  
「え!?……あ、……うん」  
「?、……絶望した!!生徒の堂々としたサボリに絶望したああ!!」  
「何かもう、定番すぎてマンネリですね」  
「私の決め台詞なんですから、そんな事言わないでください!!」  
「あ、そうだ、先生今日何の夢見てたか覚えてます?」  
「直ぐに話題を逸らしますね貴女は……  
 ふ、これでも私は全ての悪夢を覚えていられると自負しています!」  
「と、言うと?」  
「あまり思い出させないで欲しいのですが……」  
「まぁまぁ、人に話すと消えるって言いますよ?」  
「……そのポジティヴは、好奇心から来てると顔に書いてあります」  
「え?……そ、そうですか?、やだなぁ、気のせいですよ」  
「!、先生が可符香ちゃんのポーカーフェイスを見破った!」  
「彼女はポーカーフェイスとは違う気がしますが……まぁ、普通のリアクションと受け取っておきます」  
「普通ってゆーなぁ!!」  
「先生の前フリのおかげで、今回も奈美ちゃんが出た時の暗黙のルール達成できました!」  
「いえ、貴方が私のフリに気付いてくれたおかげです!」  
パァン!  
「え!?、このやり取り暗黙のルールだったの!?というかドッキリ大成功のノリでハイタッチするなぁぁ!!」  
「あ、そうだ先生、今日見た夢って何ですか?」  
「ツッコミスルーされた!?」  
「あぁ、忘れる所でした、確か命兄さん関連で……」  
「絶命先生ですか?」  
「……それ、兄さんの前で言わないであげてくださいね、下手すると私より厄介ですから……  
確か、兄さんが手術していて……あ!完全に思い出しました!」  
「何をですか?」  
「『そんな太い血管の所を切りでもしたら危ないしもっと慎重に』と  
 横で私が言ってたのですが、ドジな兄さんはプチッ……その辺りで、上から誰か落ちてきて起こされました」  
「へぇ……(あぁ、それであの寝言だったんですね)」  
 
〜寝言の真相〜 糸冬  
 

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