暗い夕暮れ時。  
学校での全ての仕事を終えた望が歩く。  
今では、すっかり自分の家と化した宿直室。  
疲れた右手を酷使して、ドアを開ける。  
「ただいま帰りましたよ」  
宿直室に居るはずの霧に声を掛けた。  
残暑の続くこの時期でも、霧は毛布を手放さないで迎えに来る。  
…はずだった。  
いつもなら望の帰りを、今か今かと待つ霧。  
望がドアを開ければ、その目の前にやってきて出迎える。  
しかし、今日はその姿が見えない。  
不審に思い、中に上がりこむ望。  
台所にも居らず、望はその身を居間へと向かわせた。  
テレビもあり、さして広いとも言えない、その居間で。  
霧と、交が眠っていた。  
望があげた薄いタオルケットに包まれて。  
安らかな寝顔が、可愛らしい。  
ただ、望が気に入らなかったのは。  
交が、霧に抱き締められていることだった。  
優雅に寝静まる霧の笑顔には、微笑みがこぼれる。  
だが、その霧の腕に包まれる交には、敵対心が。  
醜い嫉妬心、五歳の甥に持つべきものではない。  
そんなことは望にも分かっている。  
しかし、それを抑えきれないのは、霧を愛しく思う気持ち。  
自分の恋慕の想いが強すぎるせいだと分かっている。  
それを恥じるべきか、誇るべきか。  
霧の寝顔と、交の寝顔を交互に見て、望は考えた。  
二人が起き出すその時まで。  
 
「小森さん、あまり交を甘やかしてはいけませんよ…」  
「あっ…、や、だ、せんせぇ…」  
「今後こんなことがないようにお仕置きです…」  
「んっ、あっ、…も、もう、イっちゃうよぉ…」  
「うっ、出ます…!」  
「ああっ!!はぁ、はぁ…」  
 
霧はそれから、もっと交を甘やかすようになりましたとさ。  
 
 
 
 

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