「さあ、皆さん!今日は抜き打ちで持物検査をしますよ」
望が言い放った言葉に、愛はびくりと身を震わせる。
(どうしたらいいのでしょう…わ、私の安心毛布が…)
着々と進んでいく抜き打ち検査。漫画雑誌や携帯ゲーム機がいくつか教卓の上へ重なり、愛の順番はあっという間に回ってきた。
「次は加賀さんですね。それでは、バッグの中を見せてください?」
「はい…す、すみません……」
ビクビクとしながら通学鞄の蓋を開ける。
「ん?何ですか?この布は…」
「そ、それはっ」
望は、布を指でつまみ上げてばさりと広げた。リアルな豹の顔がど真ん中に描かれた個性的なTシャツがクラス全員の前に晒される。愛は顔を青くして俯く。
「……それは、私の安心毛布です…」
「…木野って加賀さんと付き合っていたんだ」
「……木野、いつから加賀さんと付き合ってたの?」
「…木野も結構やるねー」
「え!お前らどうして分かったんだよ!」
ホームルーム終了を知らせるチャイムが鳴り、休み時間に突入するや否や、久藤・青山・芳賀の三人が木野の机をぐるりと囲むのだった。
end.