ちゅるちゅるとラーメンをすする倫。  
固唾を呑んで倫を見つめる奈美。  
最後の一本を飲み込んで、倫は箸を置いて言った。  
「……普通だな」  
奈美は、がくりと肩を落として深くため息をついた。  
 
「ううー……ああー……わかってたけどね…」  
倫の横に掛け、奈美は机に突っ伏する。  
ここは、倫が買収した元ラーメン店。  
店も移転し、今や誰も使っていないその場所を利用して、奈美はラーメン作りに勤しんでいた。  
キッチンも奈美の意気込みも立派な物だったが、出来上がった物に下される評価はいつも『普通』。  
 
「ふつう……普通かぁー……」  
奈美が愚痴りだした。  
周囲の自分に対する評価、そしてその評価を受けても仕方のない自分自身のこと。  
この折れるまでの早さも彼女を普通たらしめてる所以かもしれない。  
話を聞く倫は、なぜだか少し楽しそうである。  
次第にその対象は、ある一人の人物へとシフトしていった。  
 
「先生もさぁー、チョコとかクッキーとかもらっといて『普通』、はなくない〜?  
 結構頑張って、おいしいの作れた……と思うんだけど」  
「菓子は普通、おいしい物だからな」  
「あ、そっか…………え?なら、おいしいって言えばいいじゃん」  
頬を膨らませて兄への文句を言う奈美のすぐ横で倫は楽しそうにくすくすと笑っていた。  
 
「……なあ、奈美?」  
「なにー?」  
「お兄様のこと…好きなのか?」  
「うぇっ?な、なんで急に!?」  
「気づいたらいつもお兄様の話をしている」  
「そ、それは倫ちゃんが先生の妹だから……で……」  
わたわたと動きながら否定する奈美だったが、じっと目を覗き込む倫の前で次第に大人しくなってくる。  
 
「……先生の周りにはいつも女の子いるし、可符香ちゃんとか千里ちゃんとか霧ちゃんとかまといちゃんとか……  
 愛ちゃんみたいに気にかけてももらえないし、カエレちゃんやあびるちゃんみたいにスタイルよくもないし、  
 それに先生、大草さんとか智恵先生とかがタイプみたいだし……やっぱり普通だもん私……  
 あーあ……倫ちゃんみたいに綺麗だったら違ったのかな?」  
自虐気味に笑ってみせる奈美の前で、倫はふーとため息をついた。  
 
「ええ、普通ですわ。ですが…」  
倫はラーメンの器を手にすると、凛とした態度で続ける。  
「私は、このラーメンをまた食べたいと思いましたわ」  
胸を張って、ふんと自身ありげに言うと、倫は奈美に微笑んだ。  
 
ふー、と深く息を吐きながら上を見上げる。  
透き通った空には、きらきらと星が瞬いていた。  
普段見る夜空とは違う、とても綺麗な星空。  
ぐっと体を伸ばすと、ちゃぷんと音を立てて水面が揺れる。  
眺める景色は雪で白く、また辺りにも少し雪が積もっている。  
少し肌寒い気温の中で、奈美は温泉に浸かっていた。  
 
「お湯加減はいかがでしょうか?」  
後ろから声をかけられて、振り向くと倫が立っていた。  
一糸纏わぬ姿で堂々と立つその姿に圧倒される。  
「え、あ……うん。すっごくいいよ」  
「ふふ、当然だな」  
 
(倫ちゃん……綺麗だなぁ……)  
倫も湯に浸かり、なんだかドキドキしてしまっている奈美の横に掛けた。  
「それで、今日のツアーはどうだった?」  
「楽しかった……うん。すっごく楽しかった」  
奈美は、少し頬を赤らめて答えた。  
 
 
倫が新しく始めた事業……それが、今二人が居る温泉宿だ。  
その宿も含めた糸色交通のツアープランのモニターをやらないか、と倫に誘われて今に至る。  
そしてもう一人、そのモニターに選ばれた男性が居た。  
倫の兄、糸色望だ。  
 
「びっくりしてたね、先生。何の罠ですか!?とか言っちゃって」  
「そうだな」  
そのときの望を思い出して笑いあう。  
結局、そこに居るのが奈美だけだったためか、それとも倫の押しの強さに負けたのか、望も参加した。  
はじめは、望が少々警戒していたせいと、奈美も緊張していたせいで少しぎくしゃくしていたが、  
次第に二人の緊張も解け、いつもの気安さで、そしていつもより近くで、長い時間を共に過ごした。  
もちろん倫も居たがあくまでガイド、奈美としては望と二人きりでデートや旅行に来たような気分だった。  
 
「ありがと、倫ちゃん」  
お礼を言う奈美の前で、倫はこれみよがしにため息をついた。  
「まったく……重要なのはこれからだぞ。今までのはお膳立て、わかっているのだろう?」  
「あ……やっぱり?」  
奈美が困った顔で笑う。  
現在この宿に居るのは、少数の使用人を除けば、オーナーである倫と、望と奈美だけである。  
もちろん、まだオープン前の宿であり、部屋などあり余っている。  
そして、望と奈美は、男と女、教師と生徒、用意された部屋は当然別々だ。  
倫によって用意された、二人っきり、邪魔者はなし、そして一夜を過ごすというこの舞台。  
だが、倫の手助けもここまで、ここから先は、奈美自身が動かなければならない。  
 
「うぅぅ…………うまくいくかな」  
「今日のお兄様は、お前と過ごせて楽しそうだったぞ。それに……」  
むにゅ、と奈美の胸に手をやって軽く揉んでみる倫。  
「奈美は、なかなか殿方に好まれそうな体をしていると思うがな」  
「きゃっ……そ、そう?」  
「ああ。少しくらい下品な方が良いらしいぞ」  
「げ、下品って何よぉ……そりゃ、倫ちゃんに比べたら……だけどさ」  
むう、と不満げな顔をする奈美に、倫はくすりと笑った。  
 
「お酒をお持ちしましたわ、お兄様」  
「ああ、倫…と、日塔さんも」  
倫の後ろに付いて、奈美はぺこりと会釈をすると、望の前に座った。  
 
「どうぞ、先生」  
「あ、どうも。ありがとうございます」  
奈美が望に酌をする。  
望は、既にアルコールが入っていたようで、ほろ酔い状態だ。  
 
「お前もどうだ?」  
「え、いいの?」  
「あら、少しくらい構いませんわよね。お兄様も付いているんですし」  
「んー…………まぁ、いいんじゃないですか」  
「じゃ、ちょっとだけ」  
奈美が、倫に差し出されたお猪口を口にした。  
 
 
――――いつのまに眠っていたのか、目が覚めると奈美は布団の中に居た。  
望と酒をちびちびと飲みながら、話をしていたあたりから記憶が少し飛んでいる。  
とても静かだ。  
静寂の中、穏やかな寝息だけが聞こえる。  
 
「……え?先生?」  
すぐ傍にあった望の顔、どうやら望の胸に抱かれて眠っていたようだ。  
奈美がもぞもぞ動いたせいか、望もまた目を覚ました。  
 
「ん……どうしました?」  
優しく微笑んで、望が奈美の頭を撫でた。  
びく、と奈美の体が硬直する。  
(一緒の布団、優しい先生……これって……)  
 
かぁ、と顔を赤らめて奈美が尋ねる。  
「せ、先生?もしかして私……先生と……えっちしちゃったんですか……?」  
「は?いやいや!そんなことは……あの、覚えてないんですか?…………好きって言ってくれたの」  
「っあ……い、言った……気がします……言いました」  
きゅ、と望の浴衣を掴み、火照った顔を隠すように望の胸に押し付けた。  
 
少し記憶が回復した。  
酒の力を借りて、どうにか望に伝えた想い、そしてもうひとつ。  
「あの……そのとき、先生に何かされたような気がするんです……けど」  
「……」  
望の手に頬を撫でられ、奈美が顔をあげる。  
一瞬望と目が合ったが、奈美はそっと目を閉じた。  
少しして、唇に柔らかな感触が触れる。  
 
「まだ酔ってますか?」  
「ちょっと……先生こそどうなんですか?」  
「少しだけ……でも、本心です」  
「……嬉しい」  
ぎゅう、と望に強く抱きつくと、今度は奈美のほうからキスをした。  
 
体をすり寄せて奈美は望に甘える。  
幾度も口付けを交わして抱き合うが、しばらくすると望のほうが腰を引きはじめた。  
それに気づいた奈美は、足を望の足に絡めてくる。  
望の大きくなった絶棒が奈美の太股に触れた。  
「……すいません」  
「ふふ、いいですよ」  
望の目を見つめる奈美、少し怯えた様子ではあるが、確実に望を誘っていた。  
 
「……普通、って言わないんですか?」  
「いえ……きれいです、かわいい」  
浴衣をはだけさせた奈美の胸に触れながら望が言う。  
むにゅむにゅと、柔らかな胸を揉み、また口に含んで舐める望。  
「……うぅ、なんか調子狂う」  
「結構大きいんですね、すごく柔らかいですし、いやらしい体してるじゃないですか」  
「あっん……誉めてるんですかぁ、それ……」  
「愛してます」  
奈美の耳元で甘く囁くと、かぷりと耳を噛んだ。  
同時に手が奈美の下着の中まで入り込み、奈美の秘所に触れた。  
優しく入り口をさすり、その中へと指を挿しこんでいく。  
 
「あっ、あっ……あぁぁ、せんせぇ」  
「痛くないですか?気持ちいい?」  
「あっ……わかんな……ですぅ……うぅぅ、気持ちいいのかもぉ」  
自身の中で異物が動く感覚に奈美は翻弄されている。  
強く望に抱きついて、細かく震えながら甘い吐息を漏らす。  
効果を感じた望が指の動きを激しくしていくと、一瞬奈美が硬直して、続いてがくっと力が抜けた。  
 
「イッちゃいましたね」  
「は……はいぃ…」  
力の抜けた奈美の下着を脱がし、股を開かせると、望は奈美の秘所に顔を近づけて濡れた蜜壷に吸い付いた。  
 
「ひゃっっ!だめ……そんなところ舐めちゃ……き……汚いです」  
「汚くないでしょう。さっきお風呂にも入ったんですし」  
「でも……あぅっ……ん、あっ、あん」  
「それに、私が舐めたいんです、あなたのここを」  
望に指で左右に割れ目を広げられ、その中を覗かれ、舐められる。  
指や舌が動いて、ぴちゃぴちゃと卑猥な水音がする。  
とんでもなく恥ずかしくて、でも嬉しくて、気持ちいい。  
 
「ま、まってぇ……せんせいばっかりずるい」  
望の頭を押しのけて止める奈美。  
体の向きを変えて、望の下半身に手をやる。  
「私だって……先生にしちゃうんだからぁ」  
そう言って、望の浴衣に手をかけて脱がす奈美。  
だが、いざ望の大きくなった絶棒を生で見てしまうと動きを止めてしまった。  
 
「うわ……」  
「……してくれるんじゃなかったんですかぁ?無理しなくてもいいんですよ?」  
望が奈美の膣内に指を入れて、前後に動かしはじめた。  
煽られた奈美は半ば自棄になって、絶棒に触れる。  
そして、かぷっとその先端を口に含むと、どうだ、と望に視線を飛ばした。  
だが、単に咥えただけであり、望は一瞬驚いた顔をしたが、ふっと鼻で笑って奈美の秘所への責めを再開する。  
 
(え?え?だめなの?男の人ってこうしたら喜んでくれるんじゃないの?)  
襲いくる快感に翻弄されながら、奈美はぐるぐると眼を回す。  
(そっか。先生みたいに……もっと舐めたり、さすったりしてあげないと)  
奈美が絶棒をぺろぺろと舐め始めた。  
しかし、緊張と望に秘所を責められていることもあって、動きも拙く、ぎこちない。  
共に弱点を握り合っているはずなのに、圧倒的に奈美のほうが不利であった。  
 
「ふぁっ、やぁぁ……また、私……せんせぇ、もう許して…」  
「っ……だめです……あなたが言い出したことなんですから」  
絶棒はいまだに元気なまま、しかし奈美のほうは既に何度も絶頂を迎えさせられていた。  
だが、奈美も次第に要領を得てきたようで、そろそろ望のほうも辛くなってきている。  
その効果が現れたのか、一瞬絶棒がびくっと震えて、望が小さく声を上げてしまった。  
(あ、今の…………んっ!?)  
今度こそ、と意気込む奈美だったが、それを感じ取ったのか、望が奈美への愛撫を強くする。  
指が、彼女の最も敏感な芽に直接触れ、くりくりと弄られる感覚に意識が飛んでしまいそうだ。  
 
(ダメぇ……今度こそ、先生イかせちゃうんだからぁ)  
涙を浮かべてがくがくと腰を震わせながら、必死に望に口淫をする。  
ついには望のほうが負け、びゅるびゅると大量の精液を奈美の口の中へと放った。  
それに少し遅れて、奈美もまた絶頂を迎えた。  
ぶるぶる体を震わせながら、口内に望の精液を流し込まれる。  
「……けほ、けほ……んっ」  
望がティッシュを取って、精液で汚れた奈美の口を拭く。  
「気持ちよかったですよ…ありがとう」  
奈美を抱きしめて、布団に仰向けに寝転ばせる。  
「楽にしてください」  
奈美の脚を開かせて、既に硬さを取り戻していた絶棒を奈美の入り口に触れさせた。  
 
「あぁ、あっ……」  
ずぶずぶと絶棒を奈美の中へ埋めていく。  
しっかり濡れていたおかげか、比較的スムーズに入っていったが、その先端に引っかかりを感じた。  
「ちょっと、痛いかもしれませんけど……」  
「うん……」  
ズン、と強く絶棒を挿入すると、奈美の中で何かが切れ、膣から鮮血が流れ出た。  
奈美はぎゅっとシーツを掴んで痛みに耐えている。  
 
「だいじょぶ、です……うごいて」  
こく、と首を縦に振り、望が腰を前後に振りはじめる。  
はじめはゆっくりと、奈美の様子を見ながら次第に激しく……荒い息と甘い声が交じり合う。  
絶棒が膣内を擦る快感に、奈美は全身を震わせている。  
それにあわせてぐにゅぐにゅと変化する奈美の中が、望を狂わせる。  
 
「はっ……イきます!日塔さん、あなたの中に」  
「せんせ、せんせ……あっあっ」  
大きく膨らんだ絶棒が、その中身を奈美の中へとぶちまける。  
射精の快感に酔いしれる望の肉棒から、さらに精液を搾り出そうと奈美の膣がきゅうきゅうと締め付けてくる。  
最初の射精に続いて、残された精液がびゅ、びゅ、と断続的に奈美のなかへと吐き出されていった。  
 
汗を浮かべるお互いの体を抱き合って、望と奈美は何度もキスをする。  
「はぁ……先生と、えっちしちゃった……えへへへ」  
「……シーツ汚しちゃいましたね……倫に……というか、グルだったんでしょ、倫と」  
「あ、やっぱりわかっちゃいますか」  
「出来すぎでしょう、いくらなんでも……それにしてもこんないやらしい子だとは、先生知りませんでしたよ。  
 いやぁ、普通の子だと思ってたんですけどねえ……」  
「……でも、一応手を出したのは先生からです」  
「まぁそうですね……それに、実は先生そういうえっちな子大好きなんですよね」  
そう言う望の股間で、また絶棒が元気よくなっていることに奈美が気づいた。  
一瞬硬直するが、ふぅと息を吐いて、奈美は望の前で指で自身の秘裂を左右に開いてその中を見せた。  
「ど、どうぞぉ……」  
かぁっと顔を赤くしながら誘ってくる奈美を、早速、望は押し倒した。  
 
 
バスに揺られて、奈美と望は肩を寄せ合いながら眠っていた。  
二人とも少し寝不足のようだ。  
帰ったら、どうからかってやろうかと倫は思い巡らせる。  
 
「うん……せんせぇ」  
望は寝言で自分を呼ぶ奈美の肩を、まどろみながら抱き寄せた。  
二人を見ながら、倫はくすりと笑ったが、今度はため息をついた。  
 
「……ほら、妹なんかよりずっと簡単でしょう」  
自虐気味に笑いながら、倫は窓の外の流れていく景色をずっと眺めていた。  
 
 
 
 
おしまい。  
 

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