「あーあ…もうどうしたらいいんだろう」  
私、日塔奈美は、誰も居ない放課後の教室で呟いた。  
机にうつぶせて、ため息なんか吐いてみたりする。  
あーあ。  
何もかも普通な私だけど、最近、普通ではない悩みができてしまった。  
 
―先生を、好きになってしまった。それも、自分の担任を。  
 
先生の名前は、糸色望。絶望先生、なんて呼ばれて慕われてる。  
死にたがりでネガティブでどうしようもない人だけど、カッコよくて本当はとても優しい。  
先生のことを知れば知るほどに、私は先生に惹かれていって。  
…気がつけば、気持ちは恋に変わっていた。  
 
(今までこんなに人を好きになったこと、なかったのよ)  
けれど、私は生徒。彼は先生。  
想いを伝えられる関係でもなければ、結ばれることもないだろう。  
―大体、私なんて普通だし!顔も大して可愛くないし性格も良くも悪くも無い程度だし、  
ほんとにどこを取っても普通だし!  
しかも、生徒と関係を持ったとかなったら、先生は首を吊りかねないし…。  
可能性なんていったら、とんでもなく絶望的。  
私はこんなに先生のこと、好きなのに…。  
急にセンチメンタルな気持ちになってきた。自然と、私の目に涙が浮かぶ。  
「…好きです。先生、好き…」  
目から落ちてくる雫を拭わないまま、私は子供のように泣いた。  
 
―その時。  
 
―ガラッ  
「あれ?日塔さんじゃないですか。何やってるんです?」  
 
突然、教室の扉を開けて入って来たのは…なんてことだろう。  
私の想い人、糸色望、本人だった。  
「え、あの、えっと」  
思わぬ人物の登場に、私はあたふたした。  
けれど、そんなのお構いなしに先生は私の席に近づいてくる。  
「何を慌ててるんです?―って、えぇ!?日塔さん、どうして泣いてるんですか!」  
「こ、これはなんでもな」  
「まさかイジメですか!?日塔さんがイジメにあっているというのですか!?  
 私のクラスでイジメがあるというのですか!?そしてその責任を私に押し付ける気ですね!  
 絶望した!現代の学校教育に絶望した!」  
 
…なんか、とんでもない勘違いをされてるみたいだ。  
先生は窓にぐりんぐりんと頭を押し付けながら、死んでお詫びしますとかなんとか言ってる。  
「ち、違います!違いますから!それで泣いてるわけじゃないです」  
私がそう声をかけると、先生はほっとした顔で笑った。  
「あぁ良かった。死ななくて済みましたよ。安心しました」  
どうせ死ねないくせに、と心の中で笑っていたら、先生は私の前の席に腰を下ろした。  
そのまま椅子だけを後ろに向けて、私と向かい合う形になる。  
 
「…では、どうして泣いていたのですか?話くらいだったら先生聞いてあげられます」  
じっ、と私の顔を見つめて、先生は言う。  
(…こんな至近距離で先生の顔を見たの、初めてだよ)  
鼓動が速くなる。  
薄暗い、誰もいない教室。先生と二人きり。窓の外には紅く染まる空。  
こんなロマンチックなシチュエーション、滅多にない。  
きっとこの機会を逃したら、もうこの想いを伝えることはできないだろう。  
 
―今なら、言えそうな気がした。  
 
「…私、先生のことが好きなんですっ!」  
勢いだけの、告白。飾った言葉も何もない、口からそのまま出ただけの。  
私は耳まで真っ赤になって…先生の顔を、まともに見れなかった。  
「日塔…さん?」  
先生がどんな顔をしているかなんて、分からない。  
ただ、きっと困ってるんだろうなって空気は伝わってきて…私はどうしようもなく、居た堪れない気持ちになった。  
「ごめんなさい、私、帰ります!」  
「ちょ、日塔さん!」  
がばっ、と。  
席を立って、そのまま教室を出ようとした私は…  
先生に、抱き締められた。  
 
「あ、違、こんなことするつもりじゃなくて、私は、あの」  
私を抱き締めたまま、先生はおろおろとうろたえ始めた。  
「ご、ごめんなさい。いま離しま…」  
「…離さないで!」  
腕から私を解放しようとする先生を、私は逆に強く抱き締める。そしてぎゅうっと、腕に力をこめた。  
―離さないで。このままでいさせて。  
願いが通じたのだろうか。どうすべきかしばらく迷っていたような先生も、私を強く…包み込んでくれた。  
そのまま先生に身を預けて…互いに言葉を交わさぬまま、時間が過ぎていく。  
 
…どのくらい、そうしていただろうか。  
外を見たら、日はほとんど暮れて月が顔を出している。  
「…日塔さん」  
「…はい」  
「どう、しましょうか」  
沈黙を破って発せられた、意味深な問い。  
どうするって言われても。私は戸惑った。  
先生と離れたくない。どうせ明日からはまた、普通の「教師と生徒」に戻ってしまうのだから。  
その思いが、私の中で大きくなる。  
だったら、せめて、今夜だけでもいい…  
決意する。  
私は、最後の勇気を振り絞った。  
「先生。抱いて、くれませんか…?」  
 
びくりと、先生の腕が強張るのが分かった。  
(―なに、私、淫乱な子みたいじゃない―)  
私は自身が発した言葉の重大さに気付いて、消えてなくなってしまいたかった。  
恥ずかしくて、情けなくて。また涙が出てくる。  
「ごめんなさ…っ…私…」  
嗚咽まじりに、それだけ言うのが精一杯で。先生の着物に、私の涙が染みていく。  
 
―突然だった。  
私は強い力で肩をつかまれ、そのまま上を向かされた。  
目の前にあるのは、先生の顔。そして私は先生と…キスをしていた。  
(…!?)  
何が何だか分からなかった。唇と唇が触れ合って、キスをしている、と分かったのは覚えてる。  
一瞬のことだった。急で。でも私、先生と。  
「…日塔さん」  
おずおずと、先生が私に声をかける。  
だけれど、私は返事が出来なかった。  
さっきとは違う、嬉しさと感動の涙がぽろぽろと流れてくる。  
「ごめんなさい、私、日塔さんを…」  
優しいこの人は、私を傷つけてしまったと思っているのだろう。  
私は、ふるふると首を振って、笑った。  
「いいんです…嬉しいです」  
それを聞いて、先生も微笑んだ。そして困ったように、問う。  
「本当に…いいんですか?」  
その質問の意図を、私は理解した。  
先生になら、私の純情を捧げても構わない。その意思は変わらなかった。  
「…はい」  
こくりと、私は頷いた。  
 
「んっっ…」  
唇の間から差し込まれた舌が、私のそれと絡み合う。  
経験したことのない、甘い刺激。愛しい人の味。  
始めはただ絡めるだけだったのが、徐徐に互いを求める激しいものへと変わっていった。  
「あっ…」  
声を思わず上げてしまう。恥ずかしい…。けれど、そんな私を見て先生は微笑んだ。  
「恥ずかしがらなくて、いいんですよ」  
そう優しく言う。ゆっくり先生の手が動いて、私の背中の下着のホックを外した。  
そのままセーラー服をたくし上げられて、先生は私の…乳首をぺろりと舐める。  
「ひゃん…っ!」  
突然与えられた刺激に、私は思わず反応してしまった。  
くすりと先生は意地悪く笑って、胸の突起を舐め続ける。  
手では、もう片方のふくらみを揉みしだきながら。  
(よりによって、胸の大きさまで"普通"じゃなくても良かったのに…)  
ふと、そんな事を思う。  
男の人は、大きい胸が好きだというのはよく聞く。  
けれど私の胸はたいして大きいわけでも、小さいわけでもない…まさに、人並みのものだった。  
「ごめんなさい先生…私の胸、大きくなくて…」  
行為の途中なのに、思わず謝ってしまう。  
ん、と先生は動きを止め、じっと私の胸を見つめた。  
「…そうですか?」  
「…恥ずかしいから、そんな見ないで下さい…」  
「私は気にしませんけど…」  
 
まじまじと身体を観察されているという羞恥に、私はふいっと顔を反らした。  
その反応が面白いのか、先生はくすくす笑いながら綺麗な形ですけどね、と言ったりしている。  
…意外とSなのかも知れない。  
 
「…んっ」  
いつの間にか再開されていた動きに、びくんと体をふるわせた。  
先生の手は変わらず胸に刺激を与えながらも、片方は私の中心…秘められた部分に向かいつつあった。  
―これから先生の一部、受け入れるんだ。  
無意識に体が強張り、不安な目で先生を見つめてしまう。  
「…初めて、ですか?」  
そんな私の様子を見て、先生が尋ねた。こくり、と頷く。  
すっと、下着の中に指が滑り込んだ。ぬるっと、先生が私の蜜をすくう。  
「…ちゃんと、濡れてます」  
かぁっと、顔が熱を帯びていくのが分かった。私、感じてるんだ…。  
「指、入れますね」  
「え…ああ…っ!!」  
突然、答える間も与えられないままに、中に指が進入してきた。  
「始めは痛いかも知れませんが…すみません」  
くちゅくちゅと、先生が私の中を動き回る。  
「あ…ぁ…はぁっ…先生っ…」  
初めての、異物の感触。頭がおかしくなってしまいそうだった。  
痛みと快感が入り混じる、ひどく切ない感覚。  
「あっ…せん…せぃ…っ!!」  
指が出し入れされる度に、くちゃっとやらしい音を立てる。ひどく濡れていることが私にも分かった。  
段々と、快感が頭と身体を支配し始める。  
「あっ…あっ…ああっっっ…!!」  
何も考えられないまま、私は先生にしがみつく。  
 
と、突然。先生が、動きを止めた。  
 
「…そろそろ、私も限界です…。入れても、いいですか?」  
切なそうに、先生が聞いた。  
―先生と、一つになれるんだ。  
「…はい」  
今度は、私から先生に口付けた。  
先生は、そっと私を教室の床に横たえた。先生が覆いかぶさる体勢になり、また一つ口付けを交わす。  
私の入り口に、先生のものがあてがわれるのが分かった。ぎゅっ、と目をつぶる。  
「…いきます」  
ググッ……!  
その言葉と同時に、さっきとは桁違いの強烈な痛みが全身に走った。  
「いっ…!」  
ずぶりと、私の中に先生が入ってくる。  
こんなの想像以上だ。はぁはぁ、と無意識に息が荒くなる。必死で痛みに耐えようと、私は歯を食いしばった。汗が滲む。  
…やっとの思いで根元まで受け入れた時、先生は不安そうな顔をしながら、  
「…辛いなら…ここでやめときますか?」  
止まったままの状態で尋ねた。  
―こんな先生の優しさに、私はどうしようもなく惹かれているんだ。  
痛みを押し隠して、私は笑って答える。  
「大丈夫です。…先生の、好きなようにして」  
 
「あんっ!あんっ…!せん、せぇっ…!」  
リズミカルな動きに合わせて、思わず声が出てしまう。  
幾分か痛みも消え、代わりに快感が少しずつ見え隠れしてきた。  
摩擦が起きるたびに、くちゃりくちゃりと中が嫌らしい音を立てる。  
がくがくと力強く揺さぶられ、甘い疼きが起きる。  
「あぁっ…気持ち良い、ですっ……!!」  
 
(…私の身体…こんなにやらしいなんて知らなかった…)  
刺激に応えながら、私は思う。  
先生にこうされるまで、知らなかった私の身体。  
懸命に私の上で身体を動かす愛する人、この人が初めてで良かったと。私は心からそう思った。  
 
「…んっっ!!せ、せんせいっ…!」  
急に、先生のペースが速まった。  
「すみません日塔さん…っ、もう出そうです…!」  
パンパンパンと、激しく腰を打ち付けられる。  
「…っ!あぁっ…!ああああっ…!」  
私は、もう何も考えられなくなっていた。ただ、襲い来る快感に身を任せて、声を上げるしかなくて…。  
「せんせ…っ!せんせいっ、あぁっ…!好きっ!好きなのっ…!」  
もう自分でも何を言っているのか分からなかった。  
でも先生への愛しさが溢れてどうしようもなくて。好き、好き、とうわ言のように何度も何度も繰り返した。  
「…っ出ます…!」  
中のものが、どくんと脈打ち膨張するのを感じた。  
次の瞬間、どくどくと私の中に生暖かいものが注ぎ込まれる。  
「はぁ…っ…はぁっ…せんせい…」  
私は、果てると同時に胸の上に倒れこんで来た先生を抱き締めながら、  
うっとりと行為の余韻に浸っていた…。  
 
気付けば外は真っ暗だった。月の淡い光が教室に差し込んで、私たちの顔をかすかに照らす。  
お互いの姿が確認できる程度の明るさだけど、今はそれで十分だ。  
 
「…いま思えば、私たち大変なことをしてしまいましたねぇ」  
私を後ろから抱きかかえた体勢で、先生はふぅと溜息をついた。  
「これ、問題になるんでしょうね…なんかもう先生、死んでしまいたい気分になってきた…」  
鬱になりながら恐ろしいことを言う。でもまぁいつもの事だし、気にしない。  
「でも私は、先生に抱いてもらえて幸せでしたよ」  
先生の鬱を晴らすように明るく笑いながら、私は言う。  
「明日からただの先生と生徒でも、もう、それでもいいんです。  
 …私の中に先生を感じられた、それでもう幸せです」  
それは本当のことだった。まぁ確かに明日からただの師弟関係に戻ってしまうのは寂しいけど、  
仕方がないのだろう。  
せめて今夜だけでも。この願いが叶えられた今、私は十分に満足だったから。  
 
「…日塔さん」  
長い沈黙の後、先生が言葉を発した。  
「…このままはい終わり、じゃ虚しいような気がします。  
 日塔さんが私を好きと言ってくれて、正直に嬉しかったです。…このまま離したくありません」  
ぐいっと身体を反転させられ、私は先生の方を向かされた。  
「順番逆かも知れませんけど…日塔さん、良かったら、私の大切な人になってください」  
 
 
…死にたがりでネガティブでどうしようもない、けれど優しい愛しい人。  
対して、何に関しても普通少女の私。だけど今は、世界中の誰よりも幸せだと思った。  
その後交わしたのは、はじめての恋人同士の口付けだった。  
 
<終>  
 

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