何の変哲もない小さな民家。  
ここでは一人の少女が退屈そうに畳の上をごろごろと転がっていた。  
「最近特に面白い事もなくて退屈ですわ…」  
心底詰まらなそうに少女が呟く。  
ここ最近、特にやる事も無くて暇の絶頂を迎えていた。  
「倫様、望坊っちゃんをからかいに行ってはいかがですかな?」  
時田が提案を出すが、倫はそれを聞いて顔をしかめる。  
「お兄様をからかいに行くだけというのはもう飽きてしまいましたわ…」  
暇を潰すには兄である望にちょっかいを出すのが一番楽な方法なのだが、そう何回も同じ事を  
繰り返していては流石に飽きてしまう。  
「そうと言いましても、他にお暇を潰せる事など…」  
時田は少し困ったように首を捻る。  
倫の退屈を少しでも紛らわせようと時田はテレビをつける事にする。  
次々とチャンネルを変えていき、面白そうなものがないか探す。  
「少し止めてくれ…」  
倫はある旅館のCMが目に止まった。  
何も言わずにそれを見ているといきなり立ちあがる。  
「時田、お父様とお母様は家にいないよな?」  
「はい、お二人ともお忙しい身で御座いますから…」  
親が二人ともいない事を確認すると、倫はニャマリと笑う。  
倫の考えている事を大方理解した時田は早速準備に取り掛かる。  
「流石だな時田、察しが良くて助かるぞ」  
「ホッホ、主人の手助けをするのが執事の役目ですからな」  
時田は楽しそうに笑って言った。  
こうして倫の迷惑な暇潰しが始まった。  
 
 
「……という訳で実家に友人を呼んでお泊まり会をしようかと思っているのですが」  
倫は提案を望に説明をする。  
「何でわざわざ私の所に来るんですか…」  
あまり巻き込まれたくない望は、何でいちいち報告しに来るのかと尋ねる。  
乗り気でない望の態度を倫は予想していたらしく、望を無理矢理引き入れる作戦を練って来ていた。  
「あらお兄様、友人というのはお兄様の生徒達の事ですわよ」  
「そんな事は分かっていますよ」  
望は小さく溜息をつきながら言う。  
倫は望をじわりじわりと追い詰めるような声色で囁く。  
「いいのですか?お兄様が大切に保管しているあれが生徒達に見つけられても…」  
「残念でしたね倫!そういう物は私にしか分からない場所にちゃんと…」  
「お兄様のお部屋のタンスの裏にある隠し扉の事でございますか?」  
「な、何でそれを!?」  
誰にも教えていない筈の隠し場所をズバリ言い当てられ望は硬直する。  
その瞬間、時田がわざとらしく大きめに咳払いをした。  
望は固い動きで時田の方に振り向く。  
「時田…あなたですか…?」  
「壁紙の裏に隠した程度では私の目は誤魔化せませんぞ」  
得意げに言う時田に望はガックリと項垂れた。  
完全優位に立った倫は楽しそうに笑う。  
「ではお兄様、拒否権はございませんので言う事を聞いてくださいませ」  
「わ…わかりましたよ…」  
望は死ぬほど嫌な予感がしたが言う事を聞くしかなかった。  
 
「とりあえずお兄様はここで暫くお待ちください。私は他の準備がございますので」  
倫はそう言うと何処かへと走っていった。  
「坊っちゃん、私は別にあの写真は見られても特に困る物だとは思いませんが…」  
「何だか恥ずかしいので見られたくないんですよ…」  
 それに時田があの時、勝手に写真を撮らなければこんな事には…」  
望は溜息をつきながら呟いた。  
「そう言いながら長い間大事に保管していたのは何処の誰で御座いましょうな」  
「ぐっ……そうですよ、私ですよ…!」  
時田に痛い所を突かれ、望はやけくそ気味にそう言った。  
「彼女は坊っちゃんとあの頃から本当に仲がよろしくて、実にお似合いで御座いますよ」  
「からかわないでください!!」  
時田が茶化すと望は顔を赤くして首を横に振った。  
(ふむ…やはりどちらも素直になるのが苦手なご様子で…これは少し背中を押して差し上げましょう。  
 それにしても坊っちゃんは、早く写真を見せればいいものを……相変わらずのヘタレで御座いますな…)  
頭の中でかなり酷い事を思いながら、時田は一瞬だけ黒い笑みを浮かべた後、ある作戦を練り始めた。  
 
 
…お泊まり会当日…  
電車内部  
「そういえば先生の実家に行くのも久しぶりだね」  
可符香はお見合いの時の事を思い出して言う。  
「第二集ぶりなのな…」  
マリアがニヤリとしながら呟く。  
「いや…それ私達は理解しちゃだめだから…」  
マリアの発言に顔を青くしながら奈美が反応する。  
 
「……どうして実家に帰るだけで交通機関一つを貸し切らなきゃいけないんですか…」  
望は殆どがガラ空きの席を見てガックリと項垂れる。  
気まぐれでどれだけの金が動いたのか、想像するだけで頭が痛くなってくる。  
望は現実逃避をするために、窓から外の景色を眺める事にする。  
暫くすると、時田が小さめの箱を持ってきているのが窓に写った。  
嫌な予感がして振り向いて見ると、時田はその箱を倫に渡している所だった。  
「さて…それじゃあ一つゲームをするか。ちなみに強制参加だからな。  
 この箱に人数分の紙が入っている、そのうち一つは当たりがある、それを引いた奴には  
 少し面白いものをやろう…」  
望は倫の説明を聞いて、特に危ないものではなさそうだと安心する。  
箱からそれぞれ一枚ずつ紙を引かれていく。  
「私、何も書いてないよ」  
「あっ、私もだ…」  
千里とあびるが紙を開いて倫に見せる。  
「残念だがハズレだな」  
倫がそう言うと二人は少し残念そうな顔をする。  
最後に可符香が箱から紙を取ると、時田が一瞬ニヤリと笑う。  
倫だけがそれに気付き、不思議そうな顔をした。  
 
「あれ…?可符香ちゃん、もしかして当たりじゃない?」  
奈美が可符香の持った紙に小さな○が書かれているのに気付く。  
「本当だ、うーん…別に当たるつもりはなかったんだけど」  
「確かに可符香ちゃんがこういうの当てたりするのは珍しいよね」  
いつも物事を外から操る可符香が、こういう風に中心に来るのは稀な事だった。  
今回も傍観者でいる為にわざと紙を引くのを最後にしたのだが、予想外な事に引き当ててしまった。  
「おや、当たりはお前か…まぁ偶には珍しい事があった方が面白いな」  
倫は思った以上に面白い事が起こったと表情を輝かせる。  
可符香はどうして当たったのだろうと疑問に思いながら首を傾げる。  
こういう事に関しての運はかなり良い方のだと思っていただけに、意外な結果に少し戸惑っていた。  
「さて…当たりのお前には景品をやるのだが、ここで言うのは少し面白くないな…」  
倫はそう言うと、可符香を連れて隣の車両に入っていった。  
「何だろうね景品って…?」  
あびるは閉じられた隣の車両へのドアを見つめながら言う。  
「きっと凄いおいしいお菓子とかそんなんだよ、いいなぁ〜」  
奈美が羨ましそうに呟く。  
「奈美ちゃんなら嬉しいだろうね…」  
その凄いおいしいお菓子とやらを食べている想像をしているのか、幸せそうな顔をしている奈美を見て  
あびるは半ば呆れながら呟いた。  
 
隣の車両…  
「まさかお前が当たるとは、偶然にしては少し出来過ぎなような気もするが…」  
倫は前に立つ可符香を見つめながらブツブツと呟く。  
倫の言っている事がよく分からない可符香は首を傾げる。  
「おっと…すまんな、こっちの話だ……。さて本題に入るが面白いものというのはだな………………」  
「…えっ!?」  
面白いものの正体を聞いた可符香は驚きの声を上げる。  
倫は可符香の声に珍しいものを聞いたと満足しながらうんうんと頷く。  
「ちなみにさっき言ったように強制だからな。…まぁ断る道理も無いと思うが」  
可符香がまだ驚いているうちに倫は逃げ道を潰すように言う。  
「それに…嫌では無いんだろう?」  
「う…うん…」  
倫の巧みな誘導に可符香はまんまと嵌る。  
「基本必要なもの以外は全部一人分しか用意しないからな、その間の時間をどう使うかはお前次第だ  
 あと無いと思うが向こうから何かしてきた場合はこちらからは手を出さないから自分で判断するんだぞ」  
「倫ちゃんは例えば何に使うの…?」  
「例えば?そうだな………うっ…!!? ま、まぁ人それぞれだ!!!」  
可符香の質問に倫は何か良からぬ想像をしたらしく、顔を真っ赤にして話を逸らす。  
倫の考えた事が分かったのか可符香の顔も真っ赤になる。  
「そ、そうだった!入ったらタンスの裏をよく調べてみろ!…じゃあこの話は終わりだ!!」  
倫はそれだけ言うと逃げるように走って行った。  
その後、心を落ち着かせる為に可符香は十分、倫は三十分の時間を催した。  
 
 
…糸色家到着…  
「うむ…思ったより時間が掛ったな」  
倫は窓から暗くなった外の景色を眺めて呟く。  
「まぁお泊まり会なんてものはこのぐらいの時間からが丁度良いか、荷物は時田が運んでおくから私達は夕食でも…」  
「待ってました!」  
倫が言葉を言い終える前に奈美が表情を輝かせて走り出す。  
他の人達もその後を歩いてついていく。  
「では、頼んだぞ時田…」  
「分かっております、可符香様の荷物でしたな…」  
時田は他の荷物を大部屋に運ぶよう使用人に指示した後、可符香と望の荷物を持って大部屋とは別の方向へ  
歩いていった。  
 
「いただきまーす!」  
奈美は言うと同時に食事を次々と平らげていく。  
それはかなりのスピードにも関わらず、全て綺麗に食べられていた。  
「……お兄様…あいつはこんな役回りでしたか…?」  
「本当に何処でどう間違ったんでしょうかね…。とにかく私はまたダイエットに付き合わされるのは御免ですよ…」  
二人は奈美の食べっぷりを若干引き気味になりながら眺めていた。  
 
 
食事を終えた後、一同は風呂に入り広間で寛いでいた。  
「浴衣まで用意しているなんて、何だか旅館みたいだね」  
奈美は色んな意味でかなり満喫したのか、楽しそうに言う。  
倫も思った以上に楽しかった事にご機嫌な様子だった。  
(まぁお楽しみなのはこれからなんだがな…)  
倫は可符香に視線を向けてニヤリと笑う。  
「さて、大部屋に布団を敷いてあるからそろそろ移動するか」  
倫がそう言うと殆どの人がぞろぞろと大部屋に向かって行く。  
「お前はあっちだぞ」  
倫は可符香に近づいて大部屋とは別の方向を指差した。  
可符香は何も言わずにコクリと頷くとゆっくりと歩いていった。  
(ふむ…あの様子では昼のあの事をまだ引きずっているな…)  
倫は可符香の顔が微かに赤くなっているのに気付いていた。  
(まぁ…私も同じ状況になったらああなると思うがな…)  
頭に思い浮かぶあまりよろしくない想像を振り払う為に、倫は首を横に振る。  
「倫は何処で寝るんですか?」  
可符香と入れ替わるように望が現れる。  
「私は大部屋に行きますわ…お兄様はご自分のお部屋でお休みください」  
「大部屋にするんですか。そういえば大部屋に風浦さんがいませんでしたが…」  
確認しに大部屋に入った時、可符香がいなかったのを思い出す。  
「お兄様のお部屋で寝させるつもりですが」  
倫はさらっと流すようにとんでもない事を言い放つ。  
「へぇ…そうなんですか………へっ!?」  
頭の中が一瞬麻痺して、自分の妹の言った事を理解するのに時間が掛った。  
「一体何のつもりですか!」  
「何って…それが昼のゲームの景品ですわ」  
「私が安心していた裏では、そんな内容で始まっていたんですか…」  
もっと注意して見ているべきだったと望は項垂れる。  
「ちなみに…どんな状況になっても絶対に受け入れてもらいますのでそのつもりで…」  
「分かりましたよ…どの道私に拒否権は無いんですから…」  
諦めたように望は溜息をついて呟く。  
「さて…なかなか面白いものが見れそうですわ…」  
望がぎこちない様子で部屋に向かったのを確認すると倫は大部屋に入っていく。  
「あっ、倫ちゃん。可符香ちゃん知らない?」  
「あいつなら昼のゲームの景品を楽しんでいる所だ」  
「……………?」  
奈美は倫の言葉の意味がよく理解できなかったが、特に気にする事は無かった。  
 
 
望が倫と話をしている間、その先の望の部屋では…  
「確かタンスの裏とか言ってたよね」  
望の部屋に入った可符香は倫の言っていた事を思い出してタンスを見つめる。  
試しに持ってみるともう使われていないのかタンスの中には何も入ってなく、可符香一人の力でも  
簡単に動かす事が出来た。  
タンスの裏には、破れた壁紙の奥に隠し扉がある。  
可符香は倫の言っていたものはこれだと思い、扉を開ける。  
中には一枚の写真だけが入っていた。  
「これって…あの時の…」  
写真の中では少年と小さな女の子が楽しそうに笑い合いながら手を繋いでいた。  
その少年と女の子は誰がどう見ても望と可符香だった。  
可符香は幼い頃に出会った、優しいお兄ちゃんの事を思い出す。  
あの時の可符香は一緒に遊んでくれたその人に幼いなりの特別な感情を抱いていた。  
だから何も言わずに別れてしまった時は一晩中悲しみに暮れて泣いた。  
そのくらい大切な人だった。  
「あの人は先生だったんですね……」  
今の自分が望に抱いている感情とあの時の感情が合わさり、想いがより強いものへと変わっていく。  
可符香は暫く顔を赤くしながらボーっとしていたが我に返ると写真を自分の鞄の中にこっそりと入れ、  
タンスを元の位置に戻して何事も無かったようにし、部屋から出てドアの前で望が来るのを待った。  
 
 
(ま、まぁ布団は一枚だけらしいですが、風浦さんなら別に何も起こらない筈ですよね…?)  
『何も起こらない筈』この単語を何回頭で言ったか分からない。  
内心動揺しまくりの望はそこまでの距離がある訳でもないのだが、自分の部屋までの道がかなり長いものに感じられた。  
やっとの事自分の部屋に着くと、部屋の前に可符香が立っているのを見つける。  
「あっ、先生……あの…その……」  
(な、何か私の思っていた反応と違いますよ…  
 風浦さんならもっと余裕ありそうな反応すると思っていたんですが…)  
望の予想とは真逆に、可符香は望を見ると恥ずかしそうに顔を赤くして俯いてしまった。  
その違いから望も何だか変に意識してしまい、顔を赤くする。  
「と、とりあえず入ってください」  
「はい…」  
 
部屋の真ん中に敷かれている布団の数は倫が言っていた通り一つだけ、それに枕が二つ置かれている。  
「先生、先に入ってください」  
「えっ…はい…分かりました」  
望はコクリと頷き、布団に入って横になる。  
そんな数えきれないほどしてきた事をこんなに緊張しながらやった事は今までもこれからも無いだろう…  
可符香は少し落ち着いてきたのか望が布団に入った後、恐る恐る布団に入っていく。  
一枚の布団ではやはり小さく、二人が入る為には嫌でも密着をしなくてはいけなかった。  
暫くこの状態でいる事にしてみたが、両者とも一向に眠気が訪れる事は無い。  
(こんな状況で眠れる訳ないじゃないですか…)  
視線を横にずらすとすぐ目に入る可符香の姿。  
意識するなと言う方が無理な話だった。  
「先生、眠れませんね…」  
「はい…そうですね…どうしたらいいでしょうかね…?」  
望は困ったように言う。  
可符香は望の質問を聞いて少し黙り込んだ後、意を決し望の方に体を向けていきなり抱きついた。  
「ふ、風浦さん!!?」  
「えへへ…何だかいつもより先生が近くに感じれて嬉しいんです…」  
望の胸に顔を埋めながら可符香は言う。  
「いつになく素直なのもそれが原因ですか」  
「そうかも知れませんね」  
望は微笑むと可符香を優しく抱きしめ返す。  
可符香は少し驚くが、すぐに望に微笑み返した。  
「風浦さん、ちょっとこっちを向いたままにしててください」  
「………?」  
可符香は言われるまま望の顔を見つめている状態を保つ。  
望はそのまま顔を近づけて可符香に唇を重ねた。  
「ふえっ!?」  
突然の事に可符香の顔が真っ赤に染まる。  
「せ、先生、いきなりはずるいですよ!」  
「まぁ良いじゃないですかこんな時くらいは…」  
望は可符香を強く抱きしめて言った。  
「先生、急な事でよくわからなかったのでもう一回してください」  
可符香は少し恥ずかしがりながら上目遣いで望を見つめる。  
「これ以上何かやったら抑えられなくなってしまうかもしれませんよ?」  
そんな事を言っても何も変わらないと分かっているのだが望は可符香に言う。  
「私……先生なら…いいですよ…」  
「風浦さん……」  
望は可符香の覚悟と不安の入り混じった言葉を聞いて、優しく可符香を呼ぶと、もう一度唇を重ねた。  
 
二回目のキスから二人の奥に秘めていた感情が急激に高まり、互いを求めるように何度もキスを繰り返した。  
唇が重なる度に体温が急激に高まる。  
次第に物足りなくなり、前よりも長く、舌を絡め合い、更に濃厚なキスを交わす。  
「んむっ……せん…せ……んんっ……」  
可符香はとろけるような甘い声を上げる。  
その声を聞く度に望の理性が崩れていき、行為を更に激しいものにする。  
望は絡みつく可符香の舌を楽しみつつ、浴衣の上から乳房を包み込むように触れた。  
「ひぁ……ああっ………んあっ!!!」  
体温の高まった望の手が触れ、浴衣の上からでもその熱が伝わり、可符香の体がピクンと跳ねる。  
その間に望は浴衣をずらし乳房の小さな先端をこねまわす。  
先ほどよりも強い刺激に可符香は大きく反応する。  
望は乳房を手の平で激しく揉みしだき、可符香に更なる快感を与える。  
「ああっ……せっ…せんせ………せんせぇぇぇ!!」  
「風浦さん愛していますよ…」  
「わ…わたしも……です!……んんっ…ふわぁぁあああ!!!」  
二人は愛しい相手の事を呼び合いながらお互いの想いを確かめ合う。  
もうお互いの世界には自分と相手しかいない、高ぶる感情と相手の想いで興奮が増していく。  
望は遂に可符香の浴衣を脱がせて一番敏感な部分に触れる。  
「ふあっ……せんせいそこは…!!……ひぁあああ!!!!」  
望の指が触れた瞬間、可符香の体中に電流が走るような快感が襲い頭の中が真っ白になる。  
望は可符香を更に激しく責め立て、白い首筋に舌を這わせた後、耳を甘噛みする。  
「んあっ……せんせ…ひあっ!!…そんなにしたら……おかしくなっちゃいますよぉ…!!!」  
大きな快感に体を震わせ、夢中で声を上げる。  
可符香が声を上げる度に望の興奮も更に増していき、彼女に対する行為も更に激しいものになっていく。  
「っ…!!せんせい…せんせい!!……ふぁぁあああああ!!!!!」  
望の立て続けの行為によって、可符香は軽い絶頂まで至ってしまう。  
体から力を失い、倒れこむ可符香を望が優しく抱きしめる。  
「風浦さん、大丈夫ですか?」  
少しやり過ぎてしまったかと望は心配しながら可符香を見つめる。  
可符香は望に微笑みながらコクリと頷く。  
「大丈夫ですよ先生…私、とっても嬉しいんです。  
 こんなに先生の近くにいられる事なんて、絶対に出来ないって思っていたから…」  
ずっと素直になれなかった気持ちを、勇気を持ってぶつける事が出来た。  
そして望は優しく自分を受け入れてくれた。  
可符香はその事実がこれ以上ないくらいに嬉しかった。  
「だから先生も我慢しないでください…もっと近くにいて欲しいんです」  
「風浦さん……」  
望は可符香をギュッと抱きしめた後、軽いキスをする。  
可符香は望の体温を感じて安心したように微笑んだ。  
 
少し経った後、望は可符香を仰向けに寝かせて、大事な部分に大きくなった自分のモノをあてがう。  
「んっ…先生…来てください……」  
望はゆっくりと前に腰を突き出して、可符香の中へ入っていった。  
「風浦さん……っ…!!!」  
「あっ…くぅ……せんせい…の…入って……すごいあついですっ!!」  
身に襲いかかる快感と痛みの入り混じった感覚の中、可符香は望の一番近くまで来れた事による幸福感を感じる。  
望は腰を振る速さを徐々に速めていく。  
「んぁ……ひうっ…せんせ………せんせぇええええ!!!!!」  
自分と相手の粘膜同士が擦れる度に、熱く焼けるような刺激が二人を快感の渦に溺れさせるように襲いかかる。  
望が腰を動かすと、嬉しさと快感が可符香を責め立て、目元に涙を浮かべながら切なげに声を漏らす。  
そんな可符香の声が耳に入る度に、望の可符香に対する愛おしい感情が高まっていく。  
求め合うように口付けをし、舌を絡ませ唇を離した後も唾液による銀色の糸が二人の唇を繋ぐ。  
快楽の虜になった二人はお互いの手を合わせ、指を絡ませながら更に動きを激しくしていく。  
「風浦さんっ!!……風浦さんっ!!!」  
「せんせいっ!…すきです……だいすきですっ!!!」  
次々と襲いかかる強烈な快感により、二人の視界に火花の様なものが飛び、周りの物が見えなくなる。  
だが二人は繋がり合っている愛しい人を見失う事は決してない。  
握り合う手が、聞こえる声が、お互いの存在をはっきりと感じ合い、繋ぎ合わせる。  
もはや二人の間を遮る物は何も無かった。  
「せんせ……わたし…もう…!!」  
「風浦さん…私もそろそろ限界です……!!!」  
「…きてくださいっ!…さいごまでいっしょにっ!!」  
限界が無いように感じられるほど高まり続けた熱も遂に限界を迎え、二人の動きが一気に加速する。  
今まで溜まっていた熱が溢れだし、二人を絶頂まで押し上げる。  
「風浦さんっ!!…愛していますっ!!!……風浦さんっ!!!!」  
「せんせいっ!!!……せんせぇえええ!!!!………ひぁぁああああああ!!!!!!」  
絶頂を迎え、果てた二人はパタリと布団に倒れこむ。  
望はまだ絶頂の余韻が残り、頭がくらくらしていたが、傍にいる可符香を優しく抱きしめる。  
可符香もそれに応えるように、望の背中に腕を回した。  
二人はそのままお互いの体温を感じ取りながら眠りについた。  
 
 
…翌日…  
「なんか先生と可符香ちゃん…いつもと雰囲気違わない?」  
「え?…いつも通りだと思うけど?」  
遠くで他愛もない会話をしている望と可符香を眺めながら千里がそう呟いたが、それを聞いた奈美は別段疑問に  
思う事は無く、いつも通りだと言う。  
「よし…そろそろ帰るぞ」  
「はーい、ほら千里ちゃんも行くよ」  
千里が謎の違和感に首を傾げていたが、奈美に言われ思考を中断する。  
「よしこれで全員だな…」  
倫が全員いる事を確認すると全員を電車に乗せた後、近くにいた時田に耳打ちをする。  
『時田…お前昨日のゲームの時、何かしただろ』  
『ホッホッホ、バレましたか』  
時田は特に焦る事なく、正直に認める。  
『出来過ぎてると思ったんだ、写真の事を話題にした後、偶然あいつが当たるなんて』  
『昨日言いました筈ですぞ、主人の手助けをするのが執事の役目だと』  
『ハァ…全くお前は優秀な執事だな…』  
倫は時田に若干呆れながら呟く。  
「倫、時田、もう電車が出ますよ!」  
「そうですわね…それじゃあ帰りましょうか」  
倫と時田は望に呼ばれ、電車に乗りこんだ。  
 
 
…後日…  
望はいつも通り宿直室で平和な日々を過ごしていた。  
「先生!」  
「風浦さん、どうしたんですか急にやって来て」  
宿直室のドアを開けて入って来たのは望の愛しい少女、風浦可符香だった。  
望は突然の訪問に首を傾げていると、可符香が手に袋を持っている事に気付く。  
可符香はご機嫌な様子で宿直室に入って来て机の前に立つと、袋から写真立てを取り出す。  
その様子を望はよくわからないまま眺める。  
可符香は写真立てを机の上に置くと、今度は一枚の写真を望に見えないように取り出す。  
写真を飾り終わると可符香は嬉しそうに笑って、望の隣に座る。  
何を飾ったのか気になった望は写真立てを自分の方に向けた後、驚きの表情を浮かべる。  
「なっ、何でこれがここに!?」  
「先生の部屋から持って来たんですよ」  
望の疑問に可符香は答える。  
「そうなんですか…やっぱりこういうのは見つかってしまうものなんですね…」  
恥ずかしさから顔を赤くしながら望は呟く。  
そんな様子の望を見て可符香はニコリと微笑むと望にキスをした。  
「先生、あの時から、そしてこれからも…ずっと大好きですよ!」  
 
 

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