気がつくと、音無芽留は森の中にいた。
(えっ、一体ここはどこだ・・・?なんでこんな森にいるんだ・・・?)
芽留は手に持っていた二つ折りのケータイを開いて電波を確認したが、案の定、圏外であった。
一応辺りを見回すが、どこを向いても空に向かって伸びている木ばかりで、人っ子一人いやしない。
(まずいぞ・・・、オレ、迷子になったのか?)
芽留は急いで出口を探そうと、森の中を歩きだした。
しかし、いくら歩いても出口は一向に見つからない。
(くっそ〜、全然見つかんね〜!!出口は一体どこなんだよ、も〜!!)
そうこうしながら歩いていると、一軒の木造の家が芽留の眼前に現れた。
(おおっ、こんなところに家があるなんてラッキー!!
なんで森の中に家があるのはは分からねーけど、この家に住んでる奴に訊けば何か分かるだろう。
ついでに出口がどこにあるかも教えてくれたらいいな)
そう思いながら芽留は、木造の家の扉を開けた。
家の中には、禿げた頭の人面ウサギが、他の人面ウサギ三人と一緒にお茶会をしていた。
テーブルの上にはティーカップに注がれたお茶と、器に入ったクッキーがある。
人面ウサギ達は芽留の方へ顔を向けた。
「おや、お客様ですか」
「しかも、人間の女の子とは珍しい」
「君、名前は何て言うんだい?」
人面ウサギの一人に名前を訊かれて、芽留はケータイを開いた。
ケータイは未だ圏外であった。
仕方がないので、メールに自分の名前を打って、それをウサギ達に見せた。
『オレの名前は音無芽留だ』
「ねむ・める、ですか?」
「いやいや、あれはおとなし・めると呼ぶんですよ」
禿げ頭の人面ウサギが他のウサギに読みを教えた。
どうやら、日本語の分かるウサギ達のようだ。
芽留は丁度いいと思い、ウサギ達にこう訊いた。
『なあ、一体この森はどこなんだ?オレ、道に迷っているんだ。出口を知ってたら教えてくれないか?』
「どこの森かですって?あなた、この森がどこか知らずにここに来たんですか?」
『オレだって来たくて来たわけじゃねえよ!気が付いたら森の中にいて、ケータイも圏外で、誰にもメールを送れないんだよ』
「そうですか。ではこの森のことについて教えてあげましょう」
禿げ頭の人面ウサギは紳士的な口調で芽留に教えた。
「この森は『兎の森』といいまして、我々のような紳士のウサギが住んでいる、とても平和な森です」
お前らの外見は紳士じゃねーよ、どう見てもむさくるしいオッサンだよと、芽留は心の中で呟いた。
禿げ頭の人面ウサギは話を続ける。
「この森は他の動物や人間が訪れることは滅多にないのですが、この森にやってきたのは貴方が初めてです」
『この森から出られる方法はないのか、教えてくれ?』
と、芽留はさらに禿げ頭のウサギに訊いた。
「う〜ん、無いことは無いのですが、ただで教えるわけにはいきませんね」
『ど、どうしてだよ!?オレは早くここから出たいんだよ!!』
芽留のこの言葉に、他の人面ウサギが口を開いた。
「だって、もし貴方がここから出て、この森のことを他の誰かに喋られてしまったら、人間がこの森を探そうとするかもしれないでしょう?」
「もしこの森が見つかってしまえば、わんさかと人間がここへ入り、心ない者達が森を汚し、我々を新種のウサギとして研究の対象とするでしょう」
「この森の平和を守るためには、貴方をここから出すわけにはいかないのです」
『そ、そんな!そこをなんとか頼むよ!!この森のことは絶対に誰もしゃべらないから!お願いだ!!』
芽留は目に涙をためながら懇願した。
禿げ頭の人面ウサギは顎に手を当てながら数分考えると、芽留にこう言った。
「わかりました。貴方がここまで言うのなら、この森から出る方法を教えましょう」
『本当か!?恩に着るぜ!!』
禿げ頭の人面ウサギは「ただし」と付け加える。
「それにはまず条件があります」
『じょ、条件ってなんだ?』
「それは、我々のお茶会に花を添える『ウサギ』になってもらうことです」
禿げ頭の人面ウサギはそう言って、パチン、と指を鳴らした。
その瞬間、芽留の胸に違和感が走る。
芽留は赤面しながら両胸を押さえた。
(な、なんだ・・・?胸がスースーする・・・)
芽留はその発展途上の胸を両手でさすった。
(ブ、ブラが無い!)
『て、てめえ、一体何をした!』と芽留はケータイの文字を打とうとしたが、芽留の下着にさらなる変化が襲った。
(ひゃっ!ぱ、パンツが勝手に食い込んでくる・・・!!)
芽留が穿いていた白のパンツは段々とハイレグになっていき、ティーバックパンツに変化した。
(いた、い・・・!)
変化はまだ終わらない。
芽留がティーバックの食い込みの痛さに太ももを擦り合わせていると、そのすべすべとした太ももが、ざらざらと音を立てる。
(こ、この感触って、まさか・・・!)
芽留は慌ててワンピースの裾を上げると、そこには、ベージュのタイツに包まれた自分の下半身があった。
タイツの下のティーバックが、彼女の股間をいやらしく表現する。
芽留は激しく赤面するが、服の変化は待ってはくれなかった。
両指でつまんでいたひざ下まであるワンピースの裾が、急激に太ももの近くまで短くなる。
途端、ワンピースが空気を抜いたかのように、芽留の幼い体にピタッとくっついた。
(こ、今度は何だ・・・!?)
芽留は目をぱちぱちとさせながら、服の変化に戸惑う。
白のワンピースは黒に変わり、裾の部分が股間の部分で一つに合わさり、ティーバックの時と同じように、ぐぐぐっとハイレグ状になった。
履いていた白いシューズも黒に変色し、ぐいっとかかとの部分を押し上げる。
(う、うわわっ!)
かかとを押し上げられて、芽留はバランスを崩す。
白いシューズは、黒のハイヒールへと変貌していた。
服の変化はさらに続く。
肩と背中の部分が露出し、首と両手首に詰襟とカフスが巻かれ、
頭にはウサギの耳のカチューシャがぐんぐんと伸び、お尻と背中の間に白いポンポンが現れる。
その様は本物のウサギと耳としっぽが生えてきたように思わせる。
カチューシャとポンポンが現れたところで、服の変化は終わった。
芽留の着ている白いワンピースは、バニースーツとなってしまった。
芽留は変わり果てた自分の姿に呆然とする。
(も、もしかしてオレは、バニーガールになったのか!?)
「う〜ん、我ながら素晴らしい!どこからどう見てもバニーガールだ」
「幼いながらも、なかなか似合っておりますよ」
「こんな愛らしいバニーは見たことがない!」
人面ウサギ達は芽留のバニー姿をほめると、
「では、さっそくお茶を酌んでもらいましょうか」
と、カップに入ってあったお茶をぐいっと飲み干した。
人面ウサギ達はテーブルに空になったカップを置いた。
「では、芽留さん。そのポットで我々のカップにお茶を淹れてください」
禿げ頭の人面ウサギはテーブルに置いてあるポットに指差しして芽留に言った。
芽留は心の中で歯ぎしりをした。
(くっそ〜。よくもオレをこんな恥ずかしい格好にしやがったな〜!
今すぐにでもぶん殴りたいが、もし殴ったら、森の出方を教えてもらえないかもしれない。
仕方ない。こいつらのお茶淹れをしてやるとするか)
芽留はテーブルに置いてあるポットの取っ手を持つと、禿げ頭の人面ウサギのカップにお茶を注いだ。
お茶を注ぎ終わり、芽留が他の人面ウサギの座っている椅子へ行こうとした瞬間、禿げ頭の人面ウサギは、芽留の胸をさわっとなでた。
あまりの突然の出来事に芽留はびくっと反応する。
「うむ。まだ育ってないなだらかな胸だ」
禿げ頭の人面ウサギはにやりと笑う。
芽留は顔を赤くしながら、禿げ頭の人面ウサギを睨みつける。
(っ・・・!何胸触ってやがんだこのハゲウサギ!!)
芽留はケータイにそう打ちたかった。
が、人面ウサギ達の機嫌を損ねては、森の出方を教えてもらえなくなる。
ここは我慢だ我慢、と、芽留は心の中で呟いた。
芽留は禿げ頭の人面ウサギのお茶を淹れ終わると、他の人面ウサギの下へ行った。
きっと他の人面ウサギはセクハラまがいのようなことはしないだろう。
芽留はそう思っていた。
が、他の人面ウサギ達も禿げた頭の人面ウサギ同様、バニースーツに身を包んだ芽留の肢体に触れた。
一人は露出した背中を、もう一人はくびれはじめた幼いウエストを。
最後の一人に至っては、タイツに包まれた太ももとお尻を触った後、お尻の部分に生えている丸い尻尾をくいくいっと引っ張った。
この最後の一人がした行動に対しては、他のウサギが文句を言った。
「おいおい。我々は彼女の身体の一部分しか触ってないのに、君だけお尻と太ももの二か所を触るなんてずるいぞ」
「しかも、最後の尻尾の部分を掴むのは、もっとずるい!」
「いやぁ、すまないすまない。つい可愛らしくてね〜」
もちろん、羨望の思いを込めての文句であるが。
芽留はウサギ達のこの会話に恐怖心を覚えた。
もしかしたら自分は、この気持ちの悪いウサギ達に犯されるのではないかと。
芽留が恐怖に満ちた表情をしながら思っていると、禿げ頭の人面ウサギが芽留の顔を見て、こう言った。
「もしかして、君、こう思っているのではないかね?『自分はもしかして我々に凌辱されるのではないか』と」
(や、やばい!!思っていることが顔に出てた!!)
芽留の背中に怖気が走るが、禿げ頭のウサギはにこやかにほほ笑んで言った。
「安心したまえ。我々は淑女に対してそんな破廉恥なことは行わないよ。
我々は淑女の肢体を触ることが好きであって、決して凌辱することが好きなのではない」
何せ、我々は紳士なのだからね、と、禿げ頭のウサギは締めくくった。
(レイプすることが破廉恥だっつーんなら、女の身体をいやらしく触るのは破廉恥じゃねーのか?
紳士は紳士でも、変態紳士かよ)
芽留が心の中でそう突っ込みを入れると、四人のウサギは、カップに注がれたお茶を一気に飲み干し、空になったカップをテーブルに置く。
「では、おかわりを頼むよ」
禿げ頭のウサギは言う。
芽留は「仕方ない。これも森から出るためだ」と思いながらカップにお茶を注ぎ、そして、変態紳士のウサギ達にその幼い肢体を触られた。
数十分後、芽留は床でぺたんと座りながら涙を流していた。
ウサギ達によって、自分の身体をいやらしく触られたからだ。
(くぅ・・・っ、こんな屈辱は初めてだ!!
けれど、よく耐えたぞ、オレ!!なにせ、ポットの中のお茶は全部無くなったんだからな!)
テーブルに置かれたポットは、お茶が無くなっていた。
四人のウサギ達も芽留の身体を存分に触ったことで、満足げな顔をしている。
禿げ頭のウサギはほほ笑みながら言う。
「いや〜、こんなに楽しいお茶会は初めてだ。
人間のバニーガールの身体をいっぱい触ることができたのだからね」
禿げ頭のウサギに続いて、他のウサギを口を開いた。
「今まではバニーガールを妄想しながらのお茶会だったからね」
「実際に本物のバニーガールを拝めるなんて、今まで生きてきた中で最高のイベントだよ」
「素晴らしい。いや〜本当に素晴らしい」
芽留は「満足げな顔をしてないで、早く出口を教えろよ」と思いながら、四人のウサギ達を見つめていた。
すると、禿げ頭のウサギは芽留の方に顔を向け、
「芽留さん。我々のお茶会に花を添える役目を果たしてくださり、本当にありがとうございました。
では、約束通りこの森の出方を教えてあげましょう」
と言った。
(やった!これで外に出られる!!)
と、芽留がガッツポーズをすると、「あ、そうだ」と禿げ頭のウサギが何かに気づいたかのように言った。
『な、なんだ?まだ何かしろとでも言うのか?
言っとくが、もう一回お茶酌みしてくれなんて言う頼みは、お断りだからな!
もしそんな頼みごとを言ったら、無理矢理にでも出口の場所を吐かせてもらうぞ!!』
芽留はそう書いたメールの画面を禿げ頭のウサギに見せた。
「いえいえ。貴方の服を元に戻さなければと思いましてね。
外に出る時、そのバニー姿では周りの人に笑われてしまうでしょう?」
言って、禿げ頭のウサギはパチンと指を鳴らした。
途端、バニースーツは、白いワンピースへと瞬時に戻った。
『おおっ、服が戻った!ありがとうな、おっさん!!』
「いえいえ。どういたしまして。では、この森の出方を教えてあげましょう」
禿げ頭のウサギは、胸ポケットの中にしまってあった用紙を取り出し、ペンでそれに何かを書くと、それを芽留に渡した。
用紙には、森を出る方法が日本語で書かれてあった。
「この家を出たら、数メートル先にある右方向の矢印が描かれてある看板までまっすぐ進みます。
そして看板通り右へ進むと、大きな切り株があるので、そこに座り目を閉じて、外に出たいと念じるのです。
そして、三分後に目を開ければこの森から出られます。
もし忘れてしまったら、この用紙を見て思い出すといいでしょう」
『おお、わざわざすまねえな。でも、どうして森の出方を知ってるんだ?』
「いや、私達も時々他の森へ行く時にこの方法で行くんですよ。
あなたもこの方法で行けば、外へ戻ることができるでしょう」
『おう、わかった。色々とありがとうな、おっさん。それじゃあな!』
芽留が家を出ようとすると、禿げた頭のウサギが「ちょっとお待ちを」と彼女を引きとめた。
「お土産に、お茶会の時に余ったクッキーを渡します。お家に帰って食べるといいですよ。」
『おおっ、わざわざお土産をよこすなんて、オッサン意外に良い奴だな。ありがとうな』
「いえいえ、それほどでもありませんよ。では、お気をつけて!」
『おう。それじゃあな、おっさん!』
芽留は禿げ頭のウサギが渡したクッキーの包みを受け取ると、笑顔でウサギ達の家を出た。
さて、芽留は禿げ頭のウサギの書いた用紙通り、右矢印の看板のあるところまでまっすぐ歩き、看板に辿り着くとそこを右へ曲がった。
しばらくすると、禿げ頭のウサギの言った通り、大きな切り株があった。
(おお、大きな切り株だ!これで外に出られるぞ!!)
芽留は駆け足で切り株の前に着くと、言われた通りに切り株に座って目を閉じ、「外に出たい」と念じた。
そして、三分が経過してから芽留はそっと目を開けた。
禿げ頭のウサギが言った通り、芽留は森から脱出することができた。
芽留が座っている場所は、町の駄菓子屋のベンチだ。
芽留は急いでケータイを開き、アンテナを確認した。
アンテナはきちんと三本揃っている。
(やった!外に出られた!!)
芽留はベンチの上で外に出られたことを喜んだ。
と、そこへ、大草麻菜実がやって来た。
麻菜実は白い半そでのTシャツに青のジーパンを着ており、片手に買い物袋を下げていた。
おそらく、主婦の仕事の途中なのだろう。
「あら、芽留ちゃん。駄菓子屋のベンチでそんなに喜んで、何かいいことあったの?」
『おう、麻菜実か!実はな・・・』
芽留はそう言いかけて、ウサギ達が森のことを言われては困ると言っていたことを思い出し、
『い、いやな。今までクリアできなかったケータイのゲームがやっとクリアできたんだよ!』
と言ってごまかした。
麻菜実は「ふーん。でも、ケータイのゲームをしてた様には見えなかったけど」と頬に人差し指を差しながら言った。
芽留は麻菜実が疑っているのを見ると、なんとかして麻菜実の気をそらせようと、禿げ頭のウサギから渡されたクッキーの包みを取り出した。
『そ、そうだ、クッキー一個食うか?』
芽留は包みを広げると、クッキーを一枚取り出し、それを麻菜実に渡した。
「あら、本当に良いの?ありがとう」
麻菜実は芽留から渡されたクッキーをおいしそうに食べた。
と、そこへ、ピンクの半そでのTシャツとクリーム色の半ズボンという格好をした日塔奈美も現れた。
「あ、大草さんに芽留ちゃん!」
『おっ、普通か!良いところに来たな!』
「普通っていうな〜!」
『まあまあ、固いこと言うなよ。実は近所の人に貰ったクッキーをおすそ分けしようと思ってよ、お前も食うか?
大草には一枚あげたんだよ』
「本当!ありがと芽留ちゃん!」
奈美は芽留からクッキーを一枚貰い、うれしそうにサクサクと食べた。
「おいし〜!こんなクッキー初めて食べたよ〜!」
「本当ね〜。ほっぺたが落ちそう」
『へ〜、そんなに美味いのか。オレも一個食ってみるか』
芽留はクッキーを一枚取ると、それを口の中へ運ぶ。
(おお、なかなか美味いじゃねえか!こんなクッキーは今まで食べたことがねえぞ!
森の中を迷ったり、バニーガールにされたり、体を触られたり、散々な目にあったけど、
こんな美味いクッキーが食えたんだから、終わりよければすべて良しとするか)
芽留はそう思っていたが、残念ながら、「終わりよければすべて良し」にはならなかった。
麻菜実と奈美は突然、胸を押さえ出した。
芽留は二人のこの行動に首を傾げた。
『どうしたんだ二人とも?胸なんか押さえて』
「む、胸のあたりが、変・・・」
「な、なんか、スースーする・・・」
芽留は目を凝らして麻菜実の押さえられていない側の胸の方を見てみると、乳首の先がピンと立って影を作っていた。
『もしかして、ブラを付けてないのか?二人ともうっかりしてて、付けるのを忘れたんじゃねえのか?』と、芽留がメールを打とうとした瞬間であった。
二人は同時にお尻を押さえ、内太ももをすりすりと擦り合わせた。
「ひゃっ!お尻までスースーする・・・!!」
「やだ!勝手に食い込んでくる!!どうなってるの!?」
芽留は二人のこの言葉を聴いて、自分が森の中の家でバニーガールの姿に変身する際、パンツがティーバックになったことを思い出した。
(も、もしかして、二人のパンツがティーバックになっているのか!?)
この瞬間、芽留は脳裏に嫌な展開が思い浮かんだ。
(もしかして、このクッキーは・・・!!)
芽留がそう思った時には遅すぎた。
彼女の着てるワンピースも、変化が始まっていたからである。
麻菜実の穿いているジーパンと、奈美の穿いている半ズボンは、下半身にシワ無くぴったりと吸いつき、黒い穴が空いていく。
(特に奈美の半ズボンはぴったりと吸いつく前に、その裾が足首まで伸びていった)
二人の穿くズボンは、網タイツへと変化した。
網タイツで包まれた股間の部分は、ティーバックとなったパンツが透けて見える。
「いやぁっ!!何これえっ!?」
「し、下着が見えちゃうっ!!」
二人の服の変化はまだ続く。
二人の着ていたTシャツの裾はぐんぐんと伸びていき、股間の部分で一体化する。
同時に、麻菜実のシャツの色は緑に、奈美のシャツの色は赤へと変化し、袖の部分は消滅し、肩と背中の部分が露出する。
Tシャツは二人の丸い胸をぐいっと締め付け、妖しい光沢を放つレオタードとなった。
二人の首回りと両手首には詰襟とカフスが巻かれ、頭からウサギの耳のカチューシャがぐんぐんと伸び始め、お尻の部分からぴょこんっ、と白いポンポンが現れた。
麻菜実の持っていた買い物袋は、チョコレートのようにドロドロと溶け、銀色の盆とグラスに入った野菜スティックへと早変わりした。
最後に靴がその形状を変えハイヒールとなる。
二人は艶やかな緑と赤のバニーガールへと変身した。
「い、いやぁ・・・、お野菜が・・・」
「こんな格好、恥ずかしいよ・・・」
二人は赤面しながら網タイツに包まれた脚を、もじもじと恥ずかしそうに擦り合わせる。
芽留はバニーとなった二人を見て、『まずいことになった』と思った。
おそらくあのクッキーは、食べた女性をバニーガールにする能力があるのだろう。
でなければ、二人が自分の目の前でバニーになるわけがない。
(あの禿げウサギめ!とんでもねぇクッキーをよこしやがって!やっぱりあいつらはただの変態紳士だ!)
芽留は心の中で禿げ頭のウサギを罵るが、その時には彼女もバニー姿になっていた。
(畜生・・・。またバニーガールになっちまった・・・)
芽留が自分の身体を包むバニースーツを見てため息をつくと、麻菜実と奈美は芽留を見て、
「芽留ちゃんまでバニーに、一体どういうこと?」
「もしかして私達、未だない超常現象に出くわしたんじゃ・・・」
と言った。
芽留は真相をメールに打とうとしたが、言ったところで二人は信じてくれないと思い、打つのをやめた。
(くっそ〜!あの変態ウサギ共!!覚えてろよ〜!!また会えたらボコボコにしてやるからな!!)
芽留は心の中でそう叫んだ。
「音無さんは無事森を抜けることができましたかね?」
「あなたが出方を用紙に書いて教えてあげたじゃありませんか。きっと無事に脱出していますよ」
「それもそうですね」
「ところで、君が彼女に渡したクッキーだが、あれは確か人間の女性が食べると、たちまちバニーガールになってしまう代物だったはずでは?
本当に渡して大丈夫だったのか?もし外で食べてバニーになってしまったら、周りの人間からへんな目で見られることになるぞ」
「その心配はありませんよ。あのクッキーの能力は数時間たてば効果が切れるはずですし、彼女はきっと家に帰って食べたことでしょう。
家の中ならばバニーになっても部屋にいればいいだけの話ですしね」
「なるほど。そこまで考えているとは頭が下がりますな」
「全くですな」
「はっはっはっはっはっは・・・」
四人のウサギ達はそう談笑した。
しかし、ウサギ達は知らない。
芽留が外でクッキーを食べたこと。
そして、芽留がそのクッキーを二人のクラスメイトに上げてしまったことを。
後日、森から東京へ観光旅行しにやって来たウサギの紳士達は偶然にも芽留と再会し、そして、芽留に痛い目にあわされることになるのだが、それはまた別の話である。