精密機器というのは、本当に衝撃に弱い。  
 「おっと」  
 「あっ!」  
 昼下がりの、一番眠たくなる午後の始まり。事件は起きた。  
 トイレに行こうとしていた臼井が、立ち上がった拍子にうっかり奈美の携帯電話を引っ掛けて、机の上から落としてしまった。  
 「あー、私の携帯に何すんのよ!」  
 奈美は腕を組んで臼井を睨みつける。臼井は周囲の生徒からも睨まれて挙動不審になっている。  
 「いいいいya、これはわzaとじゃあ……」  
 神風は必要でないときによく吹くものである。急に臼井の姿が消え、そこにはもう誰も見えなかった。  
 「あれっ、消えた?」  
 「おい、臼井の野郎が逃げたぞ」  
 ざわっとモブが口々に騒ぐ。しかし、見えないものをどうやって処理するのか検討しかねて、議論が始まった。  
 当の奈美はため息をつきながら携帯を拾う。蓋が開いていて、電池パックが中から飛び出していた。  
 「あーあ、もう。壊れちゃったかなぁ」  
 半泣きで電池パックを押し込み、電源ボタンを押すが反応がない。うんともすんとも言わない。  
 「あー、もうムカつく!何よあいつ!」  
 電源ボタンを乱暴に押しまくる奈美に千里が近づいて慰めた。  
 「大丈夫。彼は後に非常に後悔することになるから。」  
 しかし千里がきっちりと落とし前をつけたところで、どうにかなるわけではない。  
 魔女裁判は任せることにした。でもそんなことをしようがしまいが、修理が必要なのは目に見えている。  
 「あーあ、最悪ぅ……」  
 奈美は夕日を浴びながら土手道をとぼとぼ歩いていった。  
 
   
 
   
 
 保守完了  
 
   
 
 「終わりなの!?」  
 「奈美ちゃんだとそうでしょう」  
 「奈美ちゃんだとそうでしょう」  
 
 

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