四月。暖かな陽射しを連れた春が、街を包む込む。花は咲き乱れ、雑草は我先にと背を伸ばし、蟻が百万世界を築き始める。すべての、始まりの季節だ。
昼下がりにもなれば、教室にはサウナのような熱気がこもる。窓を開けて、気持ちのよい風を迎え入れても、昼寝を決め込む者は多い。
二のへ組の男子である芳賀も、眠たくなるもの=授業、という風に定義している。しかし、今日に限って彼の意識は途絶えそうになかった。むしろ、何らかの麻薬を打ったかのようにピンピンしていた。
四月の席替えにより、丸内翔子は窓側の最後尾の席、芳賀はその右隣の席になった。
内心、芳賀は喜んだ。二のへ組は可愛い女子が多いが、特に丸内翔子は天使に負けず劣らず、といったところだ。最近は夢にまで出てくるようになっていて、気になって仕方がない。
女の子にモテるためにはどうしたら良いのか?芳賀は“だれがどう見ても女子にモテモテな”久藤准に聞いてみたりもした。とっても感動したが、なぜ久藤がモテるのかは結局わからなかった。(もしかすると、背後に荒い鼻息のメガネ少女がいたせいかもしれないが)
仕方なく、芳賀は情報収集をして丸内翔子に関する情報を漁った。そして、いつの間にかアカバネ84のファンになってしまっていた。出費が痛いと青山に呟くと、「馬鹿だなぁ」とコケにされたが、数週間後、青山も散財していた。根津美子が目当てらしい。
自分は幸せ者だ。今、芳賀は強くそう思っている。何しろ、僅か一メートル先に丸内翔子がいるのである。
愛嬌のある笑みをふわっと包み込む、綺麗な髪。ずいぶんと苦労しているんだろうな。ああ、今日も美しい。可愛いですね。で、芳賀の目線はいつの間にか胸元に移っているのである。
頭の中をプリントアウトすれば、ほぼ間違いなくストーカーと見なされるであろう。芳賀はウキウキしながら、授業そっちのけで翔子を観察していたが、やがて少し様子がおかしいことに気づいた。
カリカリカリ。翔子は平然とノートに黒板の内容を書き込んでいるように見えるが、シャーペンが震えている。左手は時折お腹を押さえて、思い出したように痙攣していた。
「丸内さん……大丈夫?」
考えるよりも早く、小さい囁き声が出てきた。
芳賀は心配だった。もちろん彼も芳賀のはしくれなので、下心もある。しかし、今は本気で翔子のことを心配していた。
翔子は反応しなかった。さらに芳賀は小声で呟くように話し掛ける。やっと、翔子が少し振り向いた。
「あっ、……だ、大丈夫。ちょっと……寝不くぅ……。で、具合が悪い……だけだからぁ」
「そう……?」
……熱があるのかな、頬が赤い。ちょっと妖艶な感じで魅力的だ……、いやいや、そんなこと考えるなって。
翔子の前の席に座っている、根津美子が一瞬、芳賀の方を見た。声が聞こえたらしい。慌ててノートに書き込むふりをすると、美子は視線を戻した。
危ない、危ない。今、鼻の下を伸ばしていた気がする。見られたらマズい。というか、見られたか?芳賀は必死にいろいろ思考する。
……丸内さん……はきっと、女の子の日なんだ。芳賀はそう考えた。ほら、機嫌が悪くなるとか、言うじゃないか。だとすると、あまり話しかけない方がいいかもしれない。嫌われたら、大変じゃないか。
自分にそう言い聞かせているうちに鐘が鳴る。一斉に熟睡者達が起き上がり、不満げに道具を畳む教師を尻目にどうでもいい話を始めた。
翔子はしばらくもじもじしていた。やはりお腹を押さえている。腹痛だろうか?
とりあえず大事ではなさそうだが……。と、翔子が立ち上がった。ヨロヨロと壁や机を伝って教室を出ていったので、芳賀もついていくことにした。
その芳賀の後ろ姿を、根津美子の鋭い目が追った。彼が教室から出ていくのを見届けると、美子はニヤリとほくそ笑んだ。
……別にストーカーな訳ではないんだ。だって、今にも倒れそうじゃないか?
そうだ。もしそうなら歩くのは大変じゃないか。とすると……。
どうやって女子トイレに付き添うか、というところで芳賀の目が覚めた。おいおい、それじゃあまるで変態じゃないか、常月じゃあるまいし、と考えなおす。
だが、翔子自身もトイレに行く気は無いようだった。
彼女は小走りに駆けていく。翔子はクルッと回転して廊下の左側に消えた。慌てて芳賀も駆けつけ、階段を仰ぎ見る。
「……?階段を登るの?変だなぁ」
乱れた足音に芳賀は違和感を感じて、左右に誰もいないことを確認する。タタタタという音は頭の上をぐるぐる回っていき、今は多分……屋上だろうか?
芳賀はどうしようかと少し迷った。漫画とかでは必ず追いかけている。なら、追いかけるのが吉じゃないかな。
ちょっと間違っていると言えなくもないが、芳賀は翔子の足跡を辿り始めた。
「……っ……っ……っっ!」
手は、すぐにびっしょり濡れちゃった。こんなに濡れるなんて、感電しないといいけど。
「あああああっ……!」
早くこれを抜いてしまいたい。でも、そんなことをしたら、……。
「んんんッッ……」
声が抑えられないよぅ……。次の時間、どうしよう。サボったりしたらまずいよね。絶望先生の授業……。
だめ……。やっぱり堪えられない……ここで……。
ガチャン。
「あっ」
「えっ」
まず、芳賀は見間違いだと思った。次に、見当違いだと思った。そして最後に、夢だと思った。
目の前にいる女の子は確かに丸内翔子だ。ふわっとした髪型、丸い大きな目……。
が、屋上でスカートの中に手を突っ込み、しかもお漏らししているみたいに辺りをびしょびしょにしているのも丸内翔子?
芳賀はとりあえず、天気の話でもしようかと思った。今日が晴れだったか雪だったか忘れてしまったから、言葉にはできなかった。
「は……はは」
とりあえず笑ってみる。そうだ。彼女はきっと……なんだろう。いったい全体、この状況はなんなんだろうか。そういやここって屋上だっけ。
翔子はしばらく口を開けてポカーンとしていたが、やがて正気を取り戻したらしかった。
「やっ……やぁぁぁぁぁぁっっ!!」
彼女が顔を真っ赤にして叫びながら痙攣したので、芳賀は飛び上がった。屋上だからといって、周りに聞こえない保証はない。
「なっ……なに、どうしたの!?丸内さん!」
「いや……見ないでぇ……」
翔子は顔を真っ赤に染めて、腰をくねくね動かしている。耳まで夕日みたいだ。
太ももに巻き付いているのは……スイッチ?というか、……なんだこれ?
「ちょっと……どうしたのこれ……丸内さん……?」
「き、聞かないでぇ……お願い、します……」
どうしよう……というかどうすれば…………絶望先生なら?
いや、絶望先生だと話がこじれて物凄く厄介だから智恵先生の方が……。
「先生呼んでくる!」
芳賀はドアを開けかけたが、足が滑ってしこたま鼻をドアにぶつけ、さらにくるりと体が回転して骨盤がドアノブにクリティカルヒットした。翔子が学生服を掴んで引っ張ったのだ。
「止めて……お願ぃ!」
あまりの痛さに芳賀はしばらく呻くことすらできなかったが、腰の痛みが引くと別の意味で顔を真っ赤に染めた。
「痛いじゃないか、丸内さん!見てよ。どうしてくれるの?」
「ぁ……ご、ごめん……っん」
ポケットに常備しているハンカチで鼻血を拭くと、芳賀はその場に座り込む。
「とにかく、丸内さんは何してんの?状況がよくわからないんだけど」
「……っぁ」
相変わらず翔子は痙攣していた。何かがブーンと響いている。芳賀の思考は停止状態に陥っていた。
うん、これは、夢にまで見たエロ漫画的展開だ。だけど、現実として、いや、目の前にある問題として、でもない……とりあえず、何なんだ?
「もしかして……丸内さんって……」
そう言いかけて、翔子と目が合った。思わず、二人とも固まってしまう。
芳賀にとって、こんなに近くで丸内翔子の瞳を見つめることは、今までにない、初めての経験だ。いや、そもそも、好きな女子のあらぬ姿……で、いいんだろうか……を生で見ていること自体……。
少し熱を帯びた目で翔子に見つめられ、芳賀は悦びを感じた。心が膨張して、ありとあらゆる感覚を押し出したような気分だった。
心臓の音がうるさかった。息をするのが苦しい。なぜ、神さまは心臓なんか作ったんだろう……?
もう、モータ音なんか、気にならなかった。どうでも良かった。
丸内翔子が目の前に迫ってくる。というより、芳賀が身を乗り出している。いや、どっちなんだろうか?
セーラー服が眩しい。視界いっぱいに可愛い顔が映し出され、その艶やかな、そして淫らな吐息が耳にかかる。
知らず知らずのうちに、芳賀は秘めたる想いを吐露していた。
「丸内さん……、丸内さんのことが……好きだ……」
キィィィーンコォォォーンカァァァーンコォォォーン
二人はチャイムで、横っ面を殴られたような、衝撃を受けて我に返った。
さらに真っ赤になって、二人は視線を外し、俯く。大音量で鳴り響く六時間目のチャイム、二のへ組では国語の授業を開始する合図が、タイミングよく鳴ったのである。
「ご、ごめん……ま、丸内さん」
「……」
気まずい。
二人の頭に卵を落とせば、たちどころに卵焼きが出来上がっただろう。
芳賀は告白までしてしまった(場の空気で)。もう、取り消せない。いや、好きという発言を取り消したいわけじゃない。でも、これじゃあ、何というか……。
「芳賀くん……私も」
「え?」
「いい……んっ……いいよ」
天使が一斉に、芳賀目掛けて矢を放ち始めたように感じた。
「えっ、あああの、その」
「わ……私も……ぁん、……芳賀くんが……好き……です」
一本残らず、矢が芳賀の心臓をブチ抜いた。これ以上、真っ赤にはなれないというほど、芳賀の顔は紅潮する。
「それは……ほ、ホント?」
「本当……です」
翔子に手を握られて、芳賀は想った。夢だったら困るから、頬をつねらないでおこう。
代わりに、ぬるぬるする彼女の手を握り返した。
心臓が飛び出しそうだ。
いや、いっそ飛び出した方が、都合がいいかもしれない。
また、翔子の顔が近づいてくる。
「丸内さん……」
それは、始めての経験だった。
ふわり。
そんな感じだ。
いいのだろうか。だって、彼女は。
いや、もう、そんな些末なことはどうでもいい。
どうだっていい。
構うもんか。
手を翔子の腰に廻して、彼女を抱き寄せる。
目はつぶったまま。
翔子は芳賀の首に手を巻きつけ、さらに熱いキスを求めた。
もちろん、そうする。
舌が、遊ぶ。
行き場を失った息が、漏れる。
もっと、翔子を抱き寄せる。
情熱的に。
背中を弄り。
セーラー服のエリの下に手を滑り込ませ。
可愛い耳にあいさつ。
彼女は悦びに震え。
うなじに優しく口づけ。
乱れた吐息すら、美しい。
妖艶。
翔子の手が芳賀の胸元に留まり。
ボタンを外していく。
芳賀も、止まらない。
もっと、もっと感じたい。
丸内翔子を、夢が醒める前に。
セーラー服の裾に手をかけ。
上へとずり上げる。
エリの間の白い、大きなふくらみ。
「丸内さん……」
「いいよ……芳賀くん」
恥ずかしげに呟く、翔子。
芳賀は恐る恐る、世界でもっとも神秘的な物体に手を触れる。
壊れて、しまわないだろうか?
むしろ、ぼくが壊すべきなのだろうか。
暖かい。
そして柔らかい。
手に吸い尽くような、不思議な感覚。
艶やかな、翔子の小さな喘ぎ声。
とても可愛く、どこか切なく。
キス。
胸を愛撫しながら、キスを胸に移し。
そのまま手の仕事を引き継ぐ。
形の整った、いわゆる普通の胸。
たまらない。
刺激する。
乳首を舌で弾き。
甘噛みする。
一瞬、翔子が跳ねる。
少年はクスッと笑って。
右手で少女の背中を押さえ。
左手で少女の乳房を揉みほぐし。
口で、反応を楽しむ。
翔子は喘いで、また跳ねて。
恍惚とした表情で、芳賀を見つめる。
「芳賀……くぅん、もっと、もっと……」
こんな幸せがあるだろうか。
少女の腰を優しく押さえ。
スカートをめくり上げ。
胸から、腹に移り。
腹から、秘所に到達。
未知なる、ジャングル。
地球にただ一人残った冒険家は。
ここにいた。
「ところで……これは抜いていいのかな」
芳賀はお取り込み中申し訳ありませんが、という軽い口調を装う。
翔子の秘所に刺さっているのは、どうもローターらしかった。どう見ても財宝には見えない。
「ぁは……抜いて……」
コードを握って引き抜くと、ツルンとイチゴ型のローターが飛び出す。翔子は一声、今までよりも大きく跳ねた。
「ねぇ……丸内さん。これって、どういう趣味?」
「それ……?」
もう、ロマンチックなムードぶち壊しである。おっぱい星人だって、それくらいのムードは欲しいのだ。
翔子の荒い息は、幾分か収まったようだった。
「……美子とね、賭けたの」
「賭けた?」
「うん。いつまで付けてられるか、っていう賭けだったの。理由は……くだらない理由」
「どんな?」
「それより、続き、しない?」
首を傾げる翔子を見ると、突然、芳賀は翔子を苛めたくなった。
いきなりローターを、秘所の肉芽のあたりに突っ込む。
「ひゃぁ!?」
翔子は思わず逃げようとする。だが、芳賀の右手ががっちり背中を押さえていた。
「もっとロマンチックなものを期待していたんだよ、丸内さん」
「ちょ、ちょっと待っあ、ぁぅぅんッ!」
翔子の足を開かせたまま、芳賀は頭を秘所に埋める。翔子は驚き、必死に腰を捻って逃げようとした。
「丸内さんがそういう人だったなんて、知らなかったよ。授業中にローター?それでも満足できないの?」
「や、ちがっ、ひゃあ!」
「ここが感じてる?淫乱だね」
「やんっ、あッ、んぁッ!」
太ももの付け根を押さえられて、翔子はもう、逃げられない。ローターと舌で、秘所をぐちゃぐちゃかき混ぜられる。
強く、弱く。
浅く、深く。
そして、愛情と一緒に。
快楽が、徐々に翔子の脳を溶かしていく。
「待ってぇ、あっ、や、ぁッ、やぁぁぁぁぁッッッッッッッッ!!」
翔子の頭が真っ白になったのは、一目瞭然だった。今までにないほど体が跳ね上がり、絶頂の痙攣はしばらく翔子を気絶させた。
芳賀はまともに愛液を浴びた。少し体を振るい、顔を拭う。
意識を取り戻した翔子は、余韻を感じてるようだった。
「……芳賀くんだって……たらしじゃない?」
「巧いだけだよ」
「そうだね……」
翔子は芳賀の首に両手を廻し、またキスをする。甘い、甘い、キスの味。
少女は、少年の耳元で囁く。
「私……芳賀くんが欲しい」
「えっ……。でも」
「あるから、使って」
翔子はスカートのポケットからコンドームを取り出すと、芳賀に渡した。
「やり方を間違えたら、妊娠しちゃうからね?」
「脅かさないでよ」
「それとも、やめちゃう?」
その言葉は、芳賀の辞書になかった。
「でも、丸内さん……怖くないの?」
「ちょっと……怖いよ。でも、大丈夫。私、……芳賀くんと一緒に、気持ちよくなりたいの」
一緒に。
その言葉は、芳賀の人生の青春の一角として、焼き付くだろう。
芳賀にとっては、衝撃的ですらあった。
「んと……こうかな?あれ?」
これも、衝撃的であった。ああ、これがコンドームなる物か。ざらざらしてる面が上なんだっけ?引っ張って伸ばすのかな?
学生服を脱いでYシャツ姿になる。ずいぶんと暑くなった。しかし興奮は収まらず、どうやって避妊具を展開すればいいのかがわからない。
芳賀が手間取っていると、翔子はふふと笑いながら芳賀のチャックに手をかける。
「男の子って大変よね。興奮してるのが、一目でわかっちゃうもん」
「う……もしかして」
翔子は構わず、ジジ、とチャックを開けて、芳賀のトランクスをずり下げ、絶棒を取り出す。
「先に出さなきゃ駄目じゃない?というか、芳賀くん、濡れてるよ?」
「それは生理現象だもの」
「それじゃあ、いつも四六時中エッチなことを考えてるんだぁ?」
今度は攻守逆転だ。
「今だけだよ」
「嘘つき。いっつも膨らんでるじゃない」
「いやいやいや」
悪戯な笑みが眩しい。
芳賀を幾度も虜にしてきた、あの笑みだった。
絶棒の先をチロリ、チロリと舐めるその小さな、舌。
上目遣いで、芳賀は轟沈した。
「反則だよっ……く」
「芳賀くんって感じやすいんだね?私と一緒かな」
舌はだんだん、大胆に亀頭を舐めていく。
翔子の息だけで、芳賀は気持ちよさに溺れた。
乱れた髪を梳くと、翔子は本格的に絶棒を飲み込み始める。
一回、二回。
翔子の頭が上下するだけで、芳賀はもうたまらない。
「うっ……ちょっ、あ!」
「んー?」
今度は、逃げる芳賀の腰を翔子が固定する。
よりによって、翔子の舌技も芳賀に負けず劣らずだった。
「やばっいぃ、ぅっくあ!?」
首を逸らして、芳賀は放出する。しかし翔子は喰いついたままだった。
「ちょっ、丸内さん!汚いって」
「……っ、っ!何これ、苦いよぉ」
「それって、飲むもんじゃないと思うけど」
「芳賀くん、キスしよっか」
「今このタイミングで!?」
芳賀は学生服からティッシュを取り出して、翔子の口周りを丁寧に拭き取る。
「ほら、ペッて出して?」
「うー……」
吐くことをためらっているのか、翔子はちょっとの間だけ迷った。それでも、口の中のカルピス(原液)を吐き出す。
「これで、丸内さんとキスできるね」
芳賀がそう言うが否や、少女は少年に抱き付く。
「芳賀くんってさ……いつもライブに来てるでしょ」
「アレ、何で知ってるの?」
「可符香ちゃん情報」
「困ったなぁ……」
頭を掻きつつも、芳賀はまんざらでもない表情だ。
「でも、事前に知っていなかったら、私も受け入れていないよ?」
「丸内さんは……ぼくのこと……どう想ってる?」
目の前で、翔子は首を傾げて笑う。
「バカねぇ、さっきも言ったじゃない?」
見つめ合い、そのまま、二人は唇を近づける。
「付け方は、わかる?」
「わかるさ」
とはいえ、翔子にレクチャーされながら(しかもまるで役に立たない。ごめん丸内さん)きっちりとコンドームを装着することができた。
芳賀は何も言わずに、学生服を屋上の汚い床に広げる。
「ありがとう、芳賀くん。優しいね」
「いやあ、それほどでも……」
なんだか照れる。
翔子をその上に寝かせると、もっと顔が火照った。
いよいよだ。
絶棒の位置を手で調整して、翔子の秘所にあてがう。
「……準備はいい?」
「ね、芳賀くん。手を握って……」
「ん、こ、こう?」
「そう、そんな感じ。ありがとう」
少年と少女の両手はがっちりと結ばれた。
翔子の顔が汗ばんでいる。
芳賀も、緊張が止まらない。
「いいよ……来て」
芳賀が腰を動かすと、ゆっくり、ゆっくりと、絶棒が秘所の奥深くへと入り込んでいく。
「んっ……はぁッ……!」
翔子が、喘ぐ。
目を瞑って。
快楽に耐える。
「全部……入ったよ」
ゆっくり、ゆっくり。
翔子をいたわるように。
ゆっくりと腰を動かす。
動く度に翔子が息を漏らし。
戻る度に芳賀が耐える。
一人でするときとは、比較にならないほどの快感。
動きはリズミカルになっていき。
秘所から漏れる音も大きくなる。
「丸……内さん!」
「んっ、いいよ、芳賀くぅん、気持ちいいよぉ!」
これは、芳賀の夢見た光景だった。
叶うはずがない、夢。
そう、夢。
昨日までは夢だった。
もし、これが夢でも。
芳賀は幸せだ。
「丸内さん……もうちょっとで……」
「わたし、も……イキそう」
リズミカルな突きを、もっと早く。
情熱的なキスを交わし。
手は握り締めたまま。
「イクっ、丸内さんっ!」
「ぁんっ、芳賀くぅん!」
二人の体は同時に反り返り。
二人は同時に絶頂を感じ。
そして、幸せだった。
しばらくしてからも、芳賀は翔子に覆い被さったままだった。
絶棒は縮こまる前に秘所から抜いたが、それ以上何かをする気になれないのだ。
でも……翔子のすぐ近くにいる。
それだけで嬉しかった。
翔子も笑顔だった。
「ねぇ、芳賀くん」
「なぁに?」
「今度から、私のこと……翔子って、呼んで」
「名前で?」
「うん」
ちゅ、と軽くキス。
「いいよ。ねぇ、丸内さん」
「なぁに?」
「いたた!つねらないでよ!」
「忘れたとは言わせないよ?」
「あっ、ゴメン。……翔子……ちゃん」
「……何だか歯痒いね。やっぱり、丸内さんで良かったかも」
「つねられ損?」
「損なんかじゃないよ」
二人は、またキスをする。
春の陽気が、二人を祝福していた。
一年はまだまだ、長い。
蛇足
「んっ……ふぁッ」
女子トイレの一室で、誰かが呻いた。
根津美子は便器の上で、ローターを引き抜いていた。
今までまったくその事実を誰にも悟らせなかったのは、さすが根津さんと言うべきか。恐らく、あの可符香も気付いていないだろう。
「試合に勝って、勝負に負けた、か」
美子は昨日の会話を思い出して、ため息をついた。
“ねぇ翔子、ローターを入れたままでも平静を保てる?”
“どうかな。難しいんじゃない?でも、面白そうだよね”
“……ここ最近、イベント続きでストレス溜まってるし……やってみない?”
スリルを求めて、どちらが長くつけていられるか、なんていう勝負までオマケして。
翔子が知らず知らずのうちに芳賀の目線を追っていたのは、美子も知っていた。
「何だか……淋しいな」
美子は一人呟く。
相方が幸せになるのは嬉しいけれど……。
どうも、引っかかる。
もしかして、嫉妬してるのかな。
美子は悲しそうに笑うと、レバーを捻る。洋式便所は、愛液で濡れたローターを呑み込んだ。
蛇足2
ガチャ
芳賀「あれ、せ、先生!?常月も!?」
翔子「ちょっと、そこで何しているの?」
まとい「何って……あなたたちの真似事に決まってるじゃない」
望「絶望した!淫乱な生徒ばかり受け持ち、その上淫らな行為までされるなんて!絶望した!」
まとい「その割には三回目ですけどね」
望「それを言わないでください」
芳賀「というか、先生……」
翔子「階段で私たちを見てたとか?」
マリア「おい、絶望!マリア、知恵先生連れてきたのナ!」
可符香「ふ……」
奈美「どうしたの、可符香ちゃん?」
可符香「んー、なんでもありませんよぉ」
ぐだぐだのまま、幕を落とす。
糸色了。