9月1日、金曜日。二学期の始業式が終わった後のホームルーム。絶望先生が、課題の山を点検しながら口を開いた。  
「えーと…あれ? 日塔さん…課題はどうしたのですか?」  
「…すみません。できませんでした」  
「藤吉さんは?」  
「忘れてました。というか、もう二学期なんですか?」  
「…二人とも、バケツを持って廊下に立ってなさい!」  
 
 ホームルームが終わり、皆が大掃除をしている最中、まだ二人は立たされていた。と、そこへ絶望先生がやって来て、説教を始めた。  
「二人とも、バケツは降ろしていいです。日塔さん、確かに火事を見に行くのを止めなかった私もよくなかったのですが、あれからまっすぐ家に帰ったのでしょう? 全然進まなかったのですか?」  
「…はい…すみません…」  
「藤吉さん。いきなり私服で登校したりして…」  
「私、コミケの会場にいたはずなんですけれど、気が付いたら学校にいたんです」  
 絶望先生は溜め息をついた。  
「仕方ありませんね」  
「じゃあ、宿題出さなくていいですか?」  
「藤吉さんっ!」  
「ヤバッ…」  
「課題は絶対に出して下さい」  
 ここで先生は間を置いて、小声で付け加えた。  
「かといって、今さら独力でどうにかなる量ではないですよね。…仕方ありません。今日はもう授業はありませんよね。分からないところは先生が教えます。二人とも、家でお昼を食べた後に、課題を持って先生の部屋へいらっしゃい」  
 二人は一斉に声を上げた。  
「えー!? 宿直室にですかぁ?」  
「なんか変だなあ」  
「しーっ!とにかく、来週の月曜の朝の職員会議までに宿題が揃ってないと、先生としても立場がいろいろ危なくなるんですよっ(甚六先生に、冬の査定に響くかもって釘を刺されてるんですからね)」  
「……」  
「今日と明日の二日あれば終わるでしょう。日曜日は先生用があるので、絶対に明日までに終わって下さい。いいですね?」  
「は〜い…」  
 
 二人が課題の山を抱えて宿直室にやってきたのは午後一時過ぎだった。奈美はセーラー服のままで、晴美もセーラー服に着替えてきていた。二人とも多少元気がないのは、家でも叱られたからであろうか。  
 お盆明けに壊れたクーラーはもう修理されているようで、勉強するのに支障はない。挨拶もそこそこ、二人はそそくさと課題の消化を開始した。  
 
 一時間ほど経ち、絶望先生が用事で外出することになった。さぼらないように、と念を押して出ていった五秒後に、どちらからともなく話が始まった。そのうち、  
「ねえねえ」奈美が晴美に尋ねた。「藤吉さんは、夏休みの後半、どうしてたの?」  
「それがね、コミケで出した本が全部売れたし、欲しかった本が全部買えたし、嬉しい〜〜って思ってたら、いつの間にか今日に…」  
「それ、タイムリープよ」  
「へ!?」  
「みんな心配して探したのよ。で、絶命先生がね…」と、奈美が当時の経緯を語って聞かせた。  
「ちっとも知らなかったわ……で、日塔さんはどうして?」  
「それがそのう…」奈美は言い澱んだ。  
「8月31日にはやる気満々になってんだけどぉ、絶望先生が家に来て、近所で火事が起こったのを見に行って、それから…」  
「それから?」  
「…マ、マ太郎ちゃんが猫を追いかけて、ヤローが風呂に入ってるところへ飛び込むのを見ちゃって…」  
「何それ〜!? で。どうしたの?」  
「……」黙ったまま、奈美は真っ赤になった。  
「あ、わかった!」晴美はニャマリとし、急に声を潜めた。「見たのね、そいつのを」  
「……」奈美は黙ったまま、コクンとうなずいた。  
「どんなだった?」  
「……よくわかんない……」  
 もちろん嘘である。思わず見てしまったそれがいつまでも瞼の奥にこびりついて離れず、悶々として宿題が手につかなかったのだ。  
 晴美はじれったいのか、「夏休みの友」の裏表紙の隅にサラサラッと走り書きをした。「こんな感じ?」  
「きゃー、藤吉さんのえっち!……そこはそんなに大きくなかった」  
「そうなの?(じゃあ勃ってなかったのね…)」  
「…ここはもうちょっと大きかった」  
「え〜!? じゃあ、こう?」晴美は前の絵の隣に絵を描き足した。  
「うんうん…で?」「そうそう…きゃー!」  
勉強そっちのけですっかりお絵かき大会に熱中していた二人は、いつの間にか絶望先生が帰って来ているのに気付かなかった。  
「何してるんです、二人とも」  
「きゃあ〜〜!」「いやーーー!」  
「これっ! ここは学校の中ですよ、そんな声出さないで下さ…って、なな何ですか、この絵は!?」  
「す、すみません……」  
「…ゴホン…これ、差し入れですから」絶望先生はアイスクリームとジュースの入った袋を二人のそばに置き、別の袋の中身を冷蔵庫にしまい始めた。  
「とにかく、ちょっと休憩しましょう。辻利の抹茶アイスですよ」  
「辻利って、京都のですか?(絶望先生京都好きだなあ)」  
「そう。おいしいですよ。溶けないうちにどうぞ。…後は、もう脱線しないよう先生が監視してあげます」  
「ふえ〜ん」  
 
「どうですか?どれだけ終わりましたか…って、これ、今日明日中に終わりそうにないですねえ」  
「先生、家に帰ってもできそうにないですよぉ」  
 思案に暮れた絶望先生は、将来の自分の地位を優先したらしく、ある決断を下した。もちろん、後々まで絶望先生はこの決断を後悔することになるのだが。  
「うう…仕方ない。晩ご飯が終わったら、ここに戻ってらっしゃい。夜ぎりぎりまで勉強です」  
「えーー!? ここにお泊まりするんですかぁ?」  
「先生の部屋にお泊まり?」  
「なっ…違っ…違います! ちゃんと校内の別の場所を探しますからっ!」  
 しばしの思案の後、望はケータイを取り出し、電話を掛け始めた。  
「もしもし、小森さんですか? 今いいでしょうか? 実はちょっとお願いがあるんですけど…かくかくしかじかなんですが…はい、…そうですか、助かった! どうもありがとう。恩に着ます」  
電話を終えると、絶望先生は二人に言った。  
「小森さんが、隣の部屋ならどうぞって。布団も貸してくれるそうです。だから、晩御飯を食べたら、お泊まりセットを持って、もう一度ここにいらっしゃい」  
 
「じゃあ、小森さん、お願いしますね」  
「はい、先生」  
「ごめんね、小森さん」  
「いいのよ。気にしないで」  
「ねえ、小森さんは宿題出したの?」  
「うん、31日に先生の部屋に行って渡してきたよ」本当はご褒美にえっちしてもらったのだが、もちろん二人には言わなかった。  
「私達、まだ宿題が終わってないの。どうしよう」  
「どれとどれが残ってるの?…えーと、きっとどうにかなるよ」  
「え、本当?」「どういうこと?」  
霧は、パソコンを立ち上げ、ネットに繋いだ。  
「小森さん、パソコン使ってるんだ…」奈美が驚いたような声で言った。  
「うん、いろいろ便利だから…」主に神木君の情報を追いかけたり、秘密のアイコラ・動画をゲットするのに使っているのだが、これも言わなかった。  
「これ、いろいろ検索できるページだよね?」ディスプレイ上に現れたグーグリのページを見て、マックを使い慣れてきた奈美が尋ねた。  
「そうだよ。でね、こうすると…」  
言いながら、霧は[夏休み 天気]と入力した。  
「あっ」「何これ!?」  
 画面には、夏休み中の天気を表示してくれるサイトの一覧がずらりとならんでいた。  
「これで、日本全国の夏休み中の天気がわかるんだよ」  
「じゃあ、日記の天気のところは今すぐ書けるね」  
「ありがとう、小森さん。助かるわ〜」  
 早速二人は天気欄を埋めた。  
「でね、こうすると…」  
 
 結局、グーグリの検索機能や電卓機能を駆使し、二人は日記の内容をでっち上げただけでなく、自由研究はおろか、数学の計算問題まで済ませてしまった。電卓機能は三角関数にも対応しているので、高校の数学でも簡単な計算問題なら大丈夫なのだ。  
 ちなみに、著作権フリーの感想文サイトもあったが、さすがにゴーリーのはないようだった。  
「小森さんありがとー。私、日記なんか書けるはずないやって思ってたんだ」  
「私は数学がからきし駄目だから、もう数学の問題集は燃やしちゃおうかなって思ってたの。でもおかげで、計算の所は全部出来ちゃった」  
 二人は口々に礼を言い、風呂まで使わせてもらってから床についた。  
 余談だが、寝床で眠くなるまでゴーリーを読む、という作戦は失敗だった。寝入るまでには難なく読み終えたのだが、二人揃って悪夢で魘される羽目になったのである。  
 
 
 翌朝、二人と霧は宿直室で絶望先生と朝ご飯を食べた。  
「みんな、朝はトーストでいいですか?」皆に尋ねると、先生は食事の準備を始めた。一人暮らしが長いせいか、トーストに加え、ハムエッグ、サラダ、スープ、果物、ヨーグルト、ドリンク類が手際よくちゃぶ台に並んだ。  
 霧が先生の隣で手伝っている姿がすごく自然でーーまるで新婚夫婦のようだったーー、奈美と晴美はついぼーっと見とれていた。手伝いをしなきゃ、と思った頃にはもう「いただきまーす」と言うべき頃合いになっていた。  
 ちなみにハムエッグは霧が作った。(もちろん霧は料理が出来るのだ)先生には目玉二つ、自分たち女のコには目玉一つ。ごく自然だったので、奈美と晴美はまったく疑問を持たなかった。  
 
「ごちそうさまでしたぁ」「ごちそうさまでした」  
「お粗末さまでした。じゃあ、食後の紅茶を入れますね。その後で早速始めて下さい」  
 
 霧は後片付けの手伝いをした後、自室に帰っていった。二人の課題を見た先生は、  
「おや、かなりできてるじゃないですか。小森さんの所へ行ってからも頑張ったんですね。先生、感心しました。じゃあ、今日中には終わりますね」  
 二人は顔を見合わせて、「はい、何とか」と殊勝気に答えた。何しろ、霧とパソコンのおかげで、日記や夏休みの友はもちろんのこと、惑星の名前から絵画のラフデザインまで、目星はほぼついているのだ。  
 悪夢に魘されたゴーリーの読書感想文を何とか書き上げ、問題集をこなし、昼食。  
 続いて各科目の課題を次々とやっつけ(もっとも数学の証明問題や文章題は絶望先生に教わった)、工作も仕上げ、あとは絵を描くだけ。  
 下絵を画用紙にトレースして、絵の具をパレットに取り、ひたすら塗り塗り。晴美は流石に早い。奈美は多少荒いが、終わりたい一心で最後のラストスパートをかけた。やがて…  
 
 
「終わったあーーー!!」  
「私も…あとちょっとで…やった、終わったぁ!」  
二人が絵筆を投げ出し、畳に大の字になって脱力しているところへ、手提げ袋を二つ抱えた可符香が入ってきた。土曜だが、学校の中なのでいつものセーラー服姿である。  
「こんにちはー。二人とも、お疲れさま。頑張ってますか?これ、差し入れですー」  
「あ、可符香ちゃんだぁ。ちょうど今終わった所だよ」  
「何なに、…わぁ、ジュースとケーキだ! このジュース、きれいな色。ほんのり赤いのね。美味しそう」  
「嬉しいなあ。ありがとう。早速頂いちゃっていいかな?」  
 手際よくケーキとコップがちゃぶ台に並べられ、ジュースが注がれた。ハイになった奈美が乾杯の音頭をとる。  
「ではでは、課題の無事終了を祝しまして、カンパーイ」  
「カンパーイ」「カンパーイ」  
絶望先生も三人に付き合い、可符香が差し入れた飲み物を一気に喉に流し込み、ケーキを口にした。  
「このケーキ、美味しいですね。スポンジも上等だし、クリームも一級品ですよ。今度買ったお店教えて下さい。それにこのジュース、甘くてフルーティーで、するするっと飲めちゃいますねえ。」  
「でしょう? まだ大分ありますから、先生もどんどん召し上がれ」  
「…おっとっとっと。って、お酒みたいな事しちゃいけませんね。…あ〜、いい気分です。先生、ほっとしまひた。二人がね、か、…課題を…ね、出して…くれたから、ね、せ、…しぇんしぇ……」  
 あれよあれよと言う間に絶望先生はぐらぐらっと来たかと思うと、コトンと横になってしまった。  
「先生?」「もしもーし、おーい、起きてますかぁ〜?」  
 絶望先生は畳に横たわり、もうスヤスヤと寝入っていた。晴美は彼の眼鏡を外してちゃぶ台に置いた。かけたまま寝ると危ないのは彼女自身がよく知っていた。さすがに望の様子がおかしいと思ったのか、奈美が可符香に尋ねた。  
「ねえ、可符香ちゃん、これ、何のジュース?」  
「梅ドリンクだとおもったんですけど…」  
「ラベル見せて。…これ、梅ワインを吟醸酒で割ってるって書いてあるよ」  
「見せて見せて。…本当だ。どうする? 私たち、このまま飲んじゃっていいのかなあ?」  
「まあ、いいんじゃないっすか?」  
「それもそうですね」  
「じゃあ、改めてカンパーイ」  
「カンパーイ」「カンパーイ」  
 課題を終えた達成感と校内で飲酒している背徳感で気分が高揚した三人は、そのまま打ち上げに突入した。  
 
「それにしてもぉ〜、先生って本っ当にお酒弱かったのねえ」  
「甘い物は目がないんだけど、お酒は全然駄目なんですって。口にするとすぐ寝ちゃって、しばらく起きないって前自分から言ってましたよ」  
「そうなんだ。…あれ、可符香しゃん、じゃあひょっとして…」  
「うふふ。可符香屋、そちも悪よのう」  
「そういう晴美お代官様こそ。うふふ」  
「あーー、二人とも酔っぱらいなんだからぁ〜。ヒック」  
 
 可符香が持ってきた別の大きな袋に目がいった奈美が尋ねた。  
「ねえ、それ何が入ってるの?ヒック」  
「バイト先の制服ですよ。ほら、メイド喫茶で私が着てたあれ」  
「あ、あの時の」  
 可符香は、ひらひらの上品なフリルまみれのメイド服を袋から出して見せた。  
 ここで、晴美がとんでもないことを口にした。  
「可符香ちゃん…それ、先生に着せてみない?」  
「えっ!?」可符香の目が妖しく輝きだした。「そういえば、先生は女装が似合ってましたねえ」  
「え、何なに? 絶望先生、女装趣味があるの? いや〜〜ヒック」  
「絶命先生がね、絶望先生は小さい頃女の子みたいだったって教えてくれたんですよ。で、試しに何着か着せてみたら、これがもう似合うの似合わないの。あ、その時の写メありますよ」  
「見せて見せて…いや〜ん、似合ってる〜! 何これ〜ヒック 着せよう着せよう、着せちゃおう…ヒック」  
「じゃあ、着せちゃいますか」  
「おっけー」  
 
 先生の無防備で幸せそうな寝顔をしばし鑑賞してから、三人娘は先生を仰向けにし、服を脱がせ始めた。皆で上半身を裸に剥き、晴美と可符香が腰を抱えて奈美が袴を取り去ると、先生の白い褌の中心部が隆起しているのが目に入った。  
「いや〜! 大きくなってる! フケツ〜〜!!」  
「…大きそう…」  
「…あらあらまあまあ…ヒック」  
 とりあえず、白くて細い足首を持ち上げ、スカートを穿かせてみる。再度晴美と可符香が腰を抱え、奈美がとうとうミニスカートを穿かせ終えた。縁に白いフリルのついた黒のミニスカートである。  
 先生の足は臑毛もほとんどなく、太股に余分な贅肉もついていなかったので、ミニスカートが皆の想像以上に似合った。しかも正面中央部が微妙に持ち上がって、時々揺れているのが何ともアンバランスで倒錯的な魅力があった。  
「絶望先生ったら…私より似合ってそうですねえ」  
「おぉ〜……これはこれで…」  
「…あらあらまあまあ…ヒック」  
 可符香が上半身を抱き起こした。晴美と奈美がブラウスに袖を通させる。ボタンを留め、最後まで着せ終え、型を整えると、先生を静かに横たえた。  
 服のサイズは可符香のままでよかったが、先生の方が背が高いので、形の良いお臍が見え隠れし、かえってセクシーに感じられる。  
 三人は先生の姿に一瞬見とれ、同時に爆笑した。  
「いやぁ、なんで先生こんなにメイド服が似合うのかしら? それにサイズがみな私と同じでいいなんて…何だか悔しいなあ」  
「スゴーい! まるで本物のメイドさんみたい」  
「…あらあらまあまあ…ヒック…こんな可愛いメイドさんなんか、ヒック、こうしてやるぅ〜」  
 さっきから絶えずグラスを口にして、一番酔っぱらっている奈美は、いきなりメイドさん…の格好をした先生のスカートを半ばめくり上げ、先生の胸のフリルに手を置き、ほっぺたにキスをする仕草をした。「んーー」  
「ちょっとぉ、奈美ちゃんったらぁ」可符香と晴美は笑い転げた。  
「ねね、写メ撮ってぇー写メ…ヒック」奈美がどちらにともなくねだった。  
「しょうがないですねえ。じゃあ、はい、チーズ」可符香が笑いながらケータイのシャッターを押した。  
これを機に、大撮影大会(?)が始まった。相変わらず寝入ったままの先生に様々なアヤしいポーズをさせたり、先生が誰かと絡んだシーンが、次々と撮影されていった。  
 途中で絶望先生のケータイが鳴ったが、単なるメールだったらしい。可符香が自分のケータイも出して手早く何か操作していたが、すぐに仕舞った。  
 ここで晴美が猫耳を持ち出してきて、さらに撮影が盛り上がった。課題と一緒に持ってきたらしい。  
 撮影が進むにつれ、徐々に先生のメイド服がはだけられ、三人娘はあからさまに先生の肌に触れたりするようになった。三人の顔は上気していたが、それは必ずしも酔いのせいだけではなかったであろう。  
 
 その時、先生が声を発した。  
「う…うーーーん…」  
三人は顔を見合わせた。  
「ど、どうする?」  
「起きちゃいますかねえ?」  
「私、最後までしたーい…ヒック」奈美である。「だってさぁ、最近、絶望先生ったら、ヒック…ちっともしてくれないんだもの…ヒック」  
「したいって、そっちの意味なの?」  
「なによぉ〜、晴美ちゃんも可符香ちゃんもさぁ、ヒック…先生のお手つきじゃないのぉ〜ヒック? 最近してもらってるのぉ?…ヒック」  
 二人は一瞬沈黙した。先に口を開いたのは可符香である。  
「確かに、最近は…」  
 晴美が続けた。「ご無沙汰ねえ…耳もつけさせてくれないし」  
「じゃあ、今日その分を一気に取り戻しますか」  
「そうしようーー…ヒック」  
「じゃあ、絶望先生が暴れるといけませんね」  
 可符香は袋の中からフリルの紐を二本取り出すと、晴美に一本手渡した。「これで先生の手をちゃぶ台の脚に縛ってもらえますか?」  
「了解!」晴美は嬉々として左手を縛り付け始めた。可符香も右手を縛り、哀れ先生は、ちょうど万歳をした格好で畳に仰向けに寝かされることとなった。  
 
 晴美は先生の左に陣取ると、首筋や耳の後ろをいじり始めた。時折胸元に手を差し入れ、不穏な動きをしつつ、先生の耳元で囁いた。  
「お前は勝負に負けた。たった今からお前は俺の奴隷となるのだ!…なーんてね」  
「晴美ちゃん、それなんのセリフ?」  
「何だっけ…去年の夏に買った本にあったせりふだよ」  
 一方、可符香は先生を見下ろしたかと思うと、ちゃぶ台に腰掛け、先生の両手を片足ずつ静かに踏んだ。  
 奈美は酔った勢いで、先生の腹に跨ってメイド服のブラウスのボタンをいくつかもどかしそうに外し、服を腹から胸にかけてガバッとはだけさせた。そしてミニスカートをまくり上げ、秘部を包んだ褌を露わにした。  
 
「うーーん…」奈美が跨ったのがきっかけとなったのか、先生が目覚めた。  
 先生は、自分がなぜか万歳をしているのに気付き、手を下ろそうとしていたが、やがてほとんど身動きが取れないのに気付いた。  
「あれ!?みんな帰ったのかなって、いったいどうしたんでしょう…ん…んっ、…なんで動けないんですか?」頭を左右に振ると、可符香と晴美が望を見下ろしているのが見えた。  
「風浦さん、藤吉さん、いったいどうなってるんです?」もちろん二人はにこにこ笑っているだけだった。望は事情が飲み込めず混乱した。  
(一体何がどうしたんでしょう!?それに、お腹が苦しい…)首を持ち上げ、腹がどうなっているのか見極めようとしたが、眼鏡が外されているためよく見えない。  
「…お腹に乗っているのは誰…日塔さんですか? ど、どいて下さい。重いです…」  
「重いって言うなあ!…ヒック」奈美はいったん腰を浮かせ、勢いよく降ろした。  
 ドシッ! 「げふっ」先生は一瞬息が止まった。  
 
「今日は先生にお仕置きをします」可符香が微笑みながら宣言した。  
「お…お仕置き!?」  
「最近、先生は私たちにご無沙汰なのに、加賀さんには随分ご執心ですね。私の密使から報告が届いてます」  
「えー!? 加賀さんとぉ? ちょっと何それ」  
「先生ったらフケツ!…ヒック…えいっ」奈美は再び腰を浮かせると、弾みをつけてお尻を落とした。  
ドスッ!「うげふっ」  
「ですから、今日は三人ともこれまでお留守だった分をたっぷり可愛がってもらいますね」  
「な、何を言ってるんですかあなた、そんな…」絶望先生はしきりに暴れた。ちゃぶ台がーー可符香が座っているのでーー少しだけ音を立てた。(あっ!手が縛られてる!)ようやく、自分がかなりのピンチに陥っているらしいことに気付き、先生は愕然とした。  
「ほどいて下さい。ほどいてっ! 早くほど…」  
「うっるさいなあ。おおいを掛けたら静かになるかしら」  
「私は籠の小鳥ですかぁ〜!? インコですかぁ〜!? カナリヤですかぁ〜!? 白文チョ…モガッ!?」  
 急に先生の声がくぐもったものになった。可符香が立ち上がると、くるっと後ろを向き、先生の顔を跨いで徐々に腰を下ろしていき、スカートで先生の頭をすっぽり覆ったかと思うと、ちょうど先生の口と鼻のあたりに秘所をぐりっと押しつけたのだ。  
「きゃー可符香ちゃんエロ恰好いい!」晴美が囃す。  
「先生、今ご自分がどんな格好かご存知ですかぁ?」可符香はそう言うと、自分のケータイを取り出して先ほど撮影した画像を表示させ、スカートの中にそれを差し入れた。  
 
「今、先生はこんな格好してるんですよ。可愛いメイドさん」  
「もがーー!」  
「この写メ、クラスのみんなに同報メールで送っちゃおうかなぁー」  
「もがーー! もがっ、もがっ」先生は全身を揺すって暴れようとした。(そ、そんなものを見て知られたら、身の破滅です!)  
だが、両手が縛られている上に、顔に可符香、腹に奈美が乗っているのでどうすることもできない。  
「あっ、うふん…先生、感じる……可愛いからいいと思ったんだけどなぁ…じゃあ、暴れるのを止めたら、送らないであげます」  
「もがー……」先生の抵抗が止んだ。  
「くすっ…先生は、本当に正直ですねぇ」可符香は微笑んだ。  
「じゃあ、今日はたくさん可愛がって下さいね」  
 
 そう言うと、可符香は布切れ越しに再び秘所を先生の鼻と口に押しつけ始めた。「あん…あん」  
 先生は口先の感触と仄かな芳香に困惑しつつも、イケナイ気分が湧いてくるのは否定できなかった。  
 奈美は腹に乗ったまま、酔いに任せて先生の肌に手を這わせ、時折(望の)スカートの中の微妙な部分に触れてきた。  
 望は必死に我慢したが、徐々に絶棒に魂が注入されるのを自覚した。エネルギーが充填されると、もう制御することは困難である。望は焦った。  
(い、いけません、感じてはいけません…はあっ、そんなにさわさわされたら…色即是空忍空…隣の垣根によく柿食う特区許可局…ああぁ…助けて、後ろの百太郎!)  
 
「ねえ、私良いこと思いついたんだけど」と、それまで先生の脇や乳首をイタズラしていた晴美は、再びとんでもないことを口にした。  
「先生が今日のことを忘れないよう、印を残しておかない?」  
「印って?」後ろを振り返った可符香は、晴美の視線がパレットと絵の具に向いているのを見て、  
「あ…何となく分かっちゃいました。うふふ、晴美屋、そちも悪よのう」  
「そういう可符香お代官様こそ。うふふっ」  
晴美は自分の荷物から黒の絵の具とパレットを持ってきた。そして、それをたっぷりとパレットにひねりだし、絵筆に含ませると、望のスカートの中を熱心にいじくり回している奈美に声を掛けた。  
「奈美ちゃん、ちょっと足の方に移ってくれるかな?」  
「んー、どうしたの?…ヒック」  
「先生が私たちから逃げ出せないように、証拠を作っておくの」  
可符香は、その通り、とでも言うように力強く頷いた。そして、今度は先生の体が見えるように向きを変え、丁度アヌスを先生の鼻に収めるような位置で、再び先生の顔に腰を下ろした。  
「証拠ぉ?」  
「うん。ちょっと見てて」  
 
 奈美が足の方へ移動すると、入れ替わりに晴美が下腹部に跨り、先生の胸から腹に掛けて一面に、次のような文章を書き始めた。乳首のあたりは避けて書くところは、何とも芸が細かい。  
「む、むもがー」くすぐったがって、先生は声を上げた。  
「はいはい、我慢して下さいねー。…よーし、書けた! 先生、可符香ちゃんのスカートの下にいて見えないでしょうから、読んであげますね。  
『私こと糸色望は、可符香女王様、奈美女王様、  
及び晴美女王様の共通の奴隷となり、  
誠心誠意ご奉仕することを誓います』  
どうですか?」  
「もがあああ!」  
「凄ーい、晴美ちゃん」  
「どこでこんな文覚えたのぉ? ヒック」  
「何だっけ…去年の冬に買った本にあったせりふだよ」  
晴美は絵筆を置くと、工作に使ったカッターが部屋の隅に放ってあるのを拾い上げ、白い褌に覆われている先生の秘部をカッターの背でツンツンと軽くノックした。  
「もひぃっ」危険な感触に、先生は恐怖した。  
構わず、晴美は褌のサイドの紐の部分に手を掛けた。  
「これ、奴隷にはいらないよね。だから、取っちゃいましょ」  
 
「もがーー!!」望は再び暴れ始めた。  
「暴れないの。さっきの、何の感触か分かりましたよね?暴れたら、大事なところが怪我しちゃうかもしれませんよー」  
「もほほほ……」望が抵抗を止めたのを確認して、晴美はカッターの刃を紐に当てた。まず右を、次に左をプツッと切断し、本来の役割を終え単なる布切れになってしまったものを取り去った。ついに白昼堂々、先生の絶棒が三人娘の前に開陳されたのである。  
「出た出た。棒っちゃんこんにちはー。一緒に遊びましょ…あー、ちょっと元気なくなってるー」  
「私に任せて」可符香が先生の上から離れると、添い寝をするような形で先生の右隣に横になった。  
「さあ、棒っちゃん、元気を出して下さいねぇ」  
と言うや、絶棒を左手で支え、先端に右の手の平の真ん中を当てて柔らかく包み込むように持ち、手首を左右にクリクリッと捻ったのだからたまらない。  
「うはあっ!」  
鋭い快感が絶棒の先端から全身に駆け抜けた。可符香の親指が裏筋や特に敏感なゾーンを往復するうち、たちまちにして絶棒は硬度を取り戻し、次の刺激を待ち望んでいるかのように、ぴくぴくと震えた。  
「さあ、元気になったわ。棒っちゃん、お久しぶりでちゅねー。ママでちゅよー」その様子が可笑しかったので、奈美や晴美も笑った。  
 可符香は左手で絶棒本体をいじり、右手で先生の乳首をイタズラしながら奈美達に声を掛けた。「じゃあ、お願い」  
 
 奈美がケータイを構え、シャッターに手を添えて望に声を掛けた。  
「はい、先生、笑ってーー…ヒック」  
「わ、笑える訳な…」  
「写メ送っちゃおうかなぁ」可符香が横からわざとらしく呟く。  
「くっ…わ、わかりました。笑いますよ。笑えばいいんでしょう」  
 猫耳を付けてメイド服がはだけた望がひきつった笑みを浮かべるその隣で、可符香が満面の笑みを浮かべているツーショットを、まず奈美が、次いで晴美が思い思いに写した。もちろん、望と可符香の顔、それに絶棒と「奴隷契約書」の四点が同時に写っているのである。  
 続いて奈美、最後に晴美も先生の隣に収まり、同様のポーズで写真を撮り合った。  
「じゃあ、先生…じゃなかった、奴隷さん、」  
「これから私たちがたーっぷり可愛がってあげるから、」  
「しっかりご奉仕するんですよーー…ヒック」  
「とほほほ…」  
 
 まずは奈美が望を攻めることになった。  
 奈美はにっこり笑って望を見つめると、おもむろに接吻した。一度離すとトロンとした目つきで望の目に見入り、今度は情熱的に望の唇を奪った。  
「む…」拘束されているとは言え、女子高生、それも教え子との接吻は蜜の味である。まして奈美はしこたま甘いものを摂取しているので吐息は甘い。望は二重に甘い感覚に酔った。  
 やがて、するっと奈美の舌が望の唇を割って入ってきて、歯茎を舐めた。望も遠慮がちに応え、舌と舌がトロトロと絡み合った。セーラー服のリボンが胸をさわさわとくすぐるのが心地よい。  
 接吻を続けたまま、奈美の手が胸に下ってきた。乳首を撫で、指先で擦ったり摘んだりした。望は妖しい感覚に身を捩った。  
 奈美はようやく唇を離すと、望の胸を一瞥して恥ずかしい変化を目敏く見つけた。  
 
「あら、男のくせに乳首が勃ってるなんて、ヒック、この奴隷は変態さんね」  
「ああ…言わないで下さい」  
望が恥ずかしさで顔を真っ赤にしているのを見下ろしながら、奈美はセーラー服を脱いでいった。上下ともピンクのお揃いの下着が現れた。  
「あっ、奈美ちゃん可愛い」「素敵ですねえ」と二人が口にした。  
「うっふふ…ありがとー。ヒック」奈美は笑顔で答えると、絶棒に手を伸ばし、あちこちを指先で撫でさすった。  
「あたしよりも細そうな体でメイドさんにぴったりなのに、ヒック、…ココに付いてるこの変なモノはなに?」  
「…」望は絶棒をさすられている快感に気を取られ、答えられなかった。と、  
「奴隷は質問に答えなさいよぉ!」と、奈美が絶棒をぎゅっと握った。  
「あひゃあ!」  
「よーし、答えないんだったら、ヒック、懲らしめてやるぅ」  
 
 奈美は望に見せつけるかのようにブラを外すと、豊かで形の良い胸で絶棒を挟み込んだ。  
「出た、奈美ちゃんの得意技!」  
「羨ましいなあ」  
 2のへの女子でまともなパイズリができるほど胸が大きいのは、カエレ(楓)、あびる、霧、そして奈美の4人だけなのである。奈美はここで惜しげもなく得意技を使うことにした。  
 まずは絶棒を軽く挟み位置を整え、胸の外側から手で揺さぶった。これだけのことだが、絶棒に対しては強力な刺激となった。  
「うう、あうう…」望は思わずうめき声を上げた。  
「気持ちいい?」  
「は、はい、気持ちいいです」  
「もっとしてほしい?」  
「も…もっとして下さいませ」  
「よーしよし。大分素直になってきたわね。ヒック」望の応答に満足した様子の奈美は、  
「じゃあ、もっと気持ちよくしてあげる」  
と言うと、今度はむにゅっむにゅっと音を立てるかのように胸で絶棒を揉み込み始めた。そして、胸の先から顔を出している亀頭を舌先でチロチロッと刺激した。  
「ああ…うああっ」首を振りつつ快感に耐えていた望だったが、流石に限界が近づいてきた。  
「日、日塔さ…」  
「奈美女王様でしょ。…ヒック」  
「な、奈美女王様、もうでで、出そうですぅ」  
(私一人ならこのまま出してもらってもいいんだけど、今日はそれじゃまずいわね。それにあたしもそろそろ欲しいし)  
 奈美はこう考えると、下もするりと脱ぎ去り、そのまま挿入しようとした。ここで可符香が声を掛けた。  
「奈美ちゃん、アレしなくていいの?私持ってるよ」  
「あ、今大丈夫だから。ありがとう…ヒック」と答えると、奈美はぴくつく絶棒を手で握り、奈美自身にあてがうとそのまま腰を下ろし、ゆっくり挿入してきた。  
 
「はあうっ!(日塔さんの中、とても暖かいです!)」望は暴発しそうになる絶棒を必死でなだめようとした。  
「ああ、久しぶり」奈美は絶棒の感触を楽しむように、最初はゆっくりと動いた。なじんでくるとだんだんとスピードアップしていった。最初は上下に動いていたが、やがて望の胸に手を置くと、前後への動きにシフトした。  
(ああっ、その角度は良すぎます!あぁっ、うぅ…)  
 望はそれまで散々刺激されていたせいもあり、あっけなく臨界点に追い込まれた。  
 
「奈、奈美女王様、もうだめです」望は弱音を吐いた。  
「今絶対に大丈夫だから、中で出して」  
「うう、あ、安全日なんですね。ああ、もう。もう」望が禁断の快感に負け放出の意思を固めた途端、奈美が恐ろしい事を口にした。  
「うっ、あっ…今なら絶対に赤ちゃん出来るの。ヒック…出来ても大丈夫。妊娠して、あんな家なんか出てやるんだからぁ」  
 望は驚愕した。  
「へ!? ちょっと待って下さいよ。それはいやです。せ、生徒をハラませたなんて世間に知れたら…! お願い、抜いて!抜いて下さい」  
「ダメ。このままよ。…ヒック…ああ、私も、もう」  
「お願いです。外に、外に出させて下さい。外に出させて」望は狂おしい快感と迫り来る破滅の予感にすすり泣いた。「ううっ…すんすん…」  
「奴隷のクセに文句言わないのっ…あぁっ」  
 奈美の中がきゅうっと収縮し、奥から入り口にかけて絶棒を絞り上げた。奈美の動きも激しさを増した。  
「それそれそれえ。ヒック…ああ、いいっ。あ、イ、イっちゃうぅっ」久しぶりの絶望先生とのえっちに高ぶった奈美は、やがて大きくのけぞって絶頂に達した。  
 一方、目を瞑り肛門を引き締めて懸命に堪える望だったが、こちらももう限界だった。  
「あああ。あぁ。あぁ」ふと目を開くと、奈美の大きく揺れる胸が視界に飛び込んできた。奈美がのけぞって胸の動きが止むと同時に絶棒も臨界に達し、メルトダウンした。  
「はうぅっ! はぅっ、はっ、…ハァハァハァ…や、やってしまった…あああ、もう…もうだめぽ」大量に絶棒を駆け抜けていくものを感じながら、望は絶望感に苛まれた。  
 
 のけぞったままだった奈美は、脱力した様子でぱふっと望に体を預けてきた。まだ息は荒かったが、やがて満足した様子で囁いた。  
「ハァハァ……パパ、宜しくー…うふふ。ヒック」  
「今したばかりでしょう!あああ、どうしよう」望は、欲望に負けてしまった自分と将来に対する絶望のあまり、再びすすり泣き始めた。「ううっ…すんすん…」   
「うっふっふ、よかったわよー…ヒック」奈美は絶望先生の頬を両手で挟むと、こぼれかけていた涙を舌先で舐めとり、熱く接吻した。  
 
 
 

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