望は緊張していた。いくら教師とは言え、急に多数の聴衆の前に姿をさらすのは度胸がいるものである。  
 
 実は今朝、智恵先生から電話がかかってきた。いつになく慌てた様子だった。  
 
「朝早くすみません。先生、ちょっとお願いが」  
 
 何でも、終演時に舞台上の団員に花束を贈呈役の人が急に都合が悪くなったので、代わりにその役をしてほしい、とのことだった。  
 電話の様子から本当に困っていて切波詰まってる様子が伺えたので、望は下心無く快諾したのだった。  
 
        ☆  
 
 演奏会は順調に進行していた。両手に白い手袋をした女性たちがハンドベルを手にし、クリスマスにちなんだ曲を次々と演奏していた。  
 ハープや若干の打楽器まで入っている、かなりの規模の編成である。雰囲気も和やかであった。  
 
 ラストの曲も終わり、会場が拍手で包まれた。  
ここで望が花束を持って舞台中央へ向かった。  
 
 いつもの大正書生風の和服の上にサンタの衣装をまとい、サンタの帽子までかぶっている。いわば和風サンタである。  
 
 元々背が高くすらっとしているので、望の和風サンタが舞台袖から登場したとき、会場は軽いどよめきと共に一層の拍手に包まれた。  
 
 望は照れながら、演奏メンバーの中央にいた智恵先生に花束をゆっくり渡した。  
 二人で前を向き、揃って丁寧に一礼すると、会場は万雷の拍手となった。  
 
 その時、一歩奥に下がっていた周りの楽員が半数は二人に、別の半分は会場に向かってクラッカーを鳴らした。  
 
 突然の爆発音に吃驚する間もなく、望を除く皆が  
 
「メリークリスマス!」  
 
と口々に叫んでは会場に手を振り始めた。よく分からないまま、望もノリで手を振った。  
   
 嵐のような拍手が続く中、緞帳がゆっくりと降り、コンサートは無事幕を下ろした。  
 
        ☆  
 
 成り行きで会場の後片付けを手伝っていた望は、なし崩しに打ち上げに連行された。  
 打ち上げといっても居酒屋ではなく、おしゃれな喫茶店兼カフェバーでするのだ。主な客層が若い女性だと言うことが一目で分かる所である。  
 
「それでは、演奏会の無事成功を祝して、カンパーイ!」  
「カンパーイ!!」「カンパーイ!!」  
 
 乾杯の後、早速話の輪があちこちに拡がった。  
 望は改めて団員を見渡してみた。  
 全員女性である。女子大生や20代といった若い女性が中心だった。  
 それでいて、女子大でハンドベルをやっていた人たちがそのまま続けて演奏している、という年季の入ったプレイヤーが多かった。  
 日頃は各地の老人ホームや介護施設を慰問してミニコンサートをしているようで、なかなか活発な活動をしているようだった。  
 
        ☆  
 
 皆の話が弾むのを聞きながらケーキをほおばっていた望は、急にギターを手渡されて戸惑った。クラシックギターである。  
 
 何でも一人ずつ一芸を披露せよ、とのことらしい。望がギターを弾けるのを智恵が知っていたのだ。  
 
 当初、望は遠慮しようとした。  
 だが、誰も許してくれそうにないし、それにせっかくの良い雰囲気に水を差したくない。  
 とうとう一曲弾く羽目になった。もちろんメロディーにその場でコードを付けるだけのぶっつけ本番である。準備などしていないのだが…  
 
「えー…では、さきほど皆さんが演奏されていた曲で恐縮ですが、『清しこの夜』を」  
 
 短い拍手の後、望はゆっくり静かに弾き出した。  
 
──ソ  ラソ ミ……  
 
 思いがけず上手い。昔ずいぶん弾き込んでいたようだ。クラシックギターの透明で柔らかな音色が皆の心に沁みた。  
 やがて、最後の弱いCの和音のアルペジオもつつがなく終わった。  
 
 しばらく皆無言だった。ふと静かな拍手が起こり、それがだんだん大きくなった。  
 中には目に涙を浮かべている人もいる。メンバーの中で絶望先生の株が一気に上がった。  
 
「ちょっと智恵ちゃん、そんなイイ人隠してたなんてズルいわよ」  
「そうよー」  
「うちらの楽団で飼いましょ」  
「今からでも私、大丈夫かなー」  
 
 もちろん智恵はまともに答えずに微笑するばかりである。そこで、アタックの矛先は絶望先生に向かった。  
 
「よーし、さあ飲んで」  
「あたしのもお願いー」  
「私の杯、断りませんよね」  
 
 絶望先生は断りきれずに団員たちからシャンパンやらワインを注ぎ込まれ、たちまち昏倒した。  
 ただ、意識の無くなる直前、店の隅に肩の下までウェーブした黒髪を伸ばした青い目の少女が佇んでいたのが眼に入った。感じいいコだな、と思いながら望は意識を失っていった。  
 
        ☆  
 
 目が覚めると、自分がベッドに寝かされているのに気づいた。見覚えのある部屋だな、と周りを見回していると  
「あ、絶望先生目が覚めたみたいです」という声がした。あびるである。  
 
「あ、先生、お目覚め? 気分悪くないですか?」  
「智恵先生…ええ、単に寝ちゃっただけみたいです。大丈夫ですよ。ははは。はは」  
「じゃあこっちに来て。私たちだけのクリスマス会しましょ。ちょっと早いけど」  
「はあ…」  
 
 やりとりをしているうちに思い出した。ここは智恵先生のマンションである。  
 
 リビングにはあびると智恵がいた。テーブルにはクリスマスらしいメニューが並んでいる。  
 
「ところで小節さん、あなた演奏会にはいつから…」  
「髪をほどいてたし、青のカラーコンタクトをしてたからわからなかったでしょう。ずっといましたよ」  
「え? そうだったんですか」  
「先生がギターを弾いてたのも、智恵先生に膝枕して貰って気持ちよさそうに寝てたのも」  
 
――あ。ひょっとして、あのコが…  
 
 だが、目の前のあびると記憶の片隅の女の子の姿とがどうも一致しない。  
「まあ、ギターはともかく、膝枕はした覚えがないんですが…」  
 
 智恵はにこにこしながら、写真を数枚取り出して望の目の前に並べた。  
 そこには、智恵の膝で気持ちよさそうに無防備な寝顔をさらけ出している望の姿があった。  
 
「こ、こここ、これは!?」  
「最近はデジカメで撮ったのをすぐプリントできるから便利になったわねぇ」望は脇に冷たい汗をかいた。  
 側であびるがにやにやしている。  
「まあ先生ったら、鼻の下伸ばしちゃって」望の膝を抓った。  
「アイタタ…」  
 
 あらかたテーブルの上のモノを片づけ終わってマッタリしていると、あびるが話しかけてきた。  
「ねえ、先生。これ、二人からのクリスマスプレゼントです」  
「開けてみて」  
「え!?」見ると小さいがしっかりした箱型のものが丁寧にラッピングされている。  
「そ、そんな、悪いですよ」  
「いいから。さ、どうぞ」  
 
 望が包みをガサゴソ開けてみると、小綺麗な箱が出てきた。箱の中から、銀色に輝く懐中時計が出てきた。  
 
「こ、こんな高そうなもの…」  
「和服に似合うのは懐中時計かなって。先生はよくケータイの画面を時計代わりに見てるから」  
「はは、これは参りました。じゃあ、ありがたく頂きます…と申し上げたいんですが」望の声が小さくなった。  
 
「私、油断してまだお二人にプレゼントを買ってないんです。スミマセ」最後の方、消え入りそうになる声を二人が遮った。  
 
「あら、気になさらないでいいのに」  
「そうそう、それに」ここであびるがいたずらっぽく付け加えた。  
「今から身体で貰う、という手もありますし」  
 
「へ!?」望は一瞬何のことか分からなかったが、二人に両腕を取られベッドルームに連行される段になってようやく悟った。  
 
「ちょ、ちょっと待って下さい。あの、あのですね。心の準備というものが…」  
 
 もちろん二人は耳を貸さなかった。望の腕をわざと自分の胸に押しつけ、哀れな子羊が真っ赤になって狼狽するのを楽しみながら、ベッドへ引き連れていった。  
 
        ☆  
 
 二人は手早く望の着衣をはぎ取ると、サンタの帽子と上着だけ着せて寝かせた。そして自分たちも下着だけになった。  
 
「さあ、今日はステキなサンタさんに感謝して」  
「いや、いいですから、あの」  
「…縛って欲しい?」  
「いや、それはそのぅ」  
「じゃあそのまま。動いちゃダメ。動いたらお仕置きよ」  
「とほほほ…」  
 
 望の動きを封じると、智恵はあびるに優しく指示した。  
「小節さんは右半分ね。私は左半分よ。二人で同じようにサンタさんを愛してあげましょ」  
「はい」  
 
 二人は代わる代わる望の唇にチュッチュッと接吻したかと思うと、左右に分かれて耳に取り付いた。  
 
 智恵が左耳をぺろっと舐めると、あびるも右耳をぺろっと舐める。  
 耳たぶをはむはむしたり、ふぅーっと息を吹きかけたり、舌先を立てて耳の穴の縁をなぞったり。正確な左右対称の動きであった。  
 
 片方の耳だけでも刺激されるとたまらないのに。それがダブルでやって来るのだ。望は身体が何度もピクピクッと震えた。  
 
        ☆  
 
 次いで二人の舌が首筋を過ぎて胸へと下りてきた。  
 
 智恵が舌先で左胸の周りを一周すると、あびるもまったく同じように舌先を動かす。智恵が乳首をちゅうっと吸い上げるとあびるもそれに従う。  
 
「はああぁっ」胸が敏感な望は、早くも身体の芯に火が点いたのを自覚した。  
 
 ここで智恵はあびるに、手を遣うよう目配せした。あびるは黙ったまま、分かりましたというように頷いた。  
 
 二人掛かりで望の両乳首をクリクリしながら、智恵は絶棒へ左手を伸ばした。あびるも右手を伸ばした。  
 
 智恵は既に半勃ちだった絶棒の側面に掌をあてがった。あびるも同じようにし、ちょうど二人の掌で絶棒をサンドイッチする形になった。そしてやわやわと掌を前後しはじめた。  
 
「はああぁっ」自分で慰めるのとは全く異なった刺激に望は喘いだ。  
 
 続いて二人は黙ったまま舌先を胸から腹へ、腹から絶棒へと這わせたかと思うと、掌を離し、根本から絶棒を舐め上がった。  
 そして、逞しくなっているピンクの頭に優しく吸いついた。  
 
「ふわあぁ…」望が腰を捩った。だが二人は容赦なく、その後も絶棒に舌技を施した。智恵がある動きをすると、すぐにあびるも真似る。  
   
 まるで鏡の内外で美しい映像が繰り広げられるように、あびるは智恵の動きを模倣し、学んでいった。  
 
        ☆  
 
 望は身体全体を――そして何よりも絶棒を――左右両側から均等に愛撫されるという妖しい感覚に溺れた。  
 
 やがて腰の底から鈍い射精感が首をもたげてきた。  
 
 すると、智恵が  
「先生、そろそろでしょう」と見透かしたように尋ねてきた。  
 
「は、はい…」望は掠れる声で答えた。自分の身体の細かい動きまで全て智恵に察知されている、という被虐の喜びに震えた。  
 
「ふふっ。じゃあ、これでイケるかな」  
 
 こういうと、智恵は上も取ってしまい、胸で絶棒を挟んできた。ただ挟みようが浅い。するとすぐにあびるも挟んできた。  
 つまり、四つの優れたおっぱいが絶棒を優しく包みこむことになったのである。  
 
 やがて智恵とあびるは呼吸を合わせて乳房を上下させ始めた。  
 
──ずりゅっ、むにゅっ、ずりゅっ、むにゅっ…  
 
「う…うわあぁ…はうぅ」望は未知の技を掛けられ、甘美なラストスパートに向かって疾走していった。  
 
 一方、智恵とあびるも互いの乳首が触れ合ったりして生じる妖しい感覚に酔った。  
 それを恥じらって隠すかのように、かえって二人は胸の動きを速めていった。  
 
「はぁっ…ち、智恵お姉さま…へ、ヘンなの」  
「う…うぅっ……あびるちゃん…」  
 
        ☆  
 
「智恵先生、小節さん、も…もう、もう」  
さんざん我慢した望だが、もう余裕がなくなっていた。すると智恵は  
 
「あびるちゃん。最後よ。もっと力を入れて。ほら、こうよ」と言うやいなや、胸に添えた手に力を込めて熱烈に絶棒を扱き始めた。  
 
「はい、お姉さま」あびるもすぐに後を追い、同じく激しく絶棒を扱きたてた。  
 
「はあああっ! うぅ、出る、イく、もう」  
 二人の息の合った攻めにあっては、いくら望が我慢していても無駄である。一気に絶頂へ連れていかれた。  
 
「はぅあああああああぁぁぁぁぅぅぅっッ!!」  
 
 絶棒から吹き出した白濁汁が二人の胸や顔に降りかかった。だが、二人は構わずに乳房を動かし続けた。望の絶棒は未だ硬度を失っていないようだ。  
 
 望のセイ夜は今始まったばかりである。これから美しき二人のプレイヤーによって高らかにセイなる響きを奏でられるに違いない。  
 
──[完]──  
 

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