第一夜  
 
 こんな夢を見た。  
 
 手の切れるような冷たい水を洗面器に汲み、千里お姉ちゃんの枕元へ持っていく。タオルを浸してよく絞り、お姉ちゃんのおでこに載せる。  
 タオルはたちまち温くなり、見る間に乾いてしまう。もう一度洗面器に浸して絞る。そうしておでこに載せる。洗面器の水を替える。…  
 
 何度かこんなことを繰り返す。お姉ちゃんは熱が高く、ひどく寝汗をかいている。オレは乾いたタオルとパジャマを持ってくると、布団を取ってお姉ちゃんのパジャマを脱がせた。そして、体中に浮いてる汗を拭い始めた。  
 
 熱で蒸れるので、もともと下着はつけていない。首筋からおっぱいの谷間や下、白いお腹から足の付け根や太腿なんかの汗もきちんと拭いた。  
 病気の時なんだから、恥ずかしいなんて言ってられない。拭き残してお姉ちゃんが気持ち悪くならないよう、背中の方まで丁寧に拭いた。  
 
 着ていたパジャマは汗でぐっしょり湿っていたので、別のに着せかえた。  
 
 
 千里お姉ちゃんが目を覚ました。  
 
「交クン…ありがとう。」細く弱い声だ。見ると、力なく微笑んでいる。  
「いいってことよ。病気の時はお互い様じゃないか」  
 
 お姉ちゃんはしばらく目をつぶっていたが、ふと目を開くとオレを呼んだ。  
 
「交クン。」  
「何?」  
「…私は、もう、死にます。」  
 
 オレはまさか、という思いでお姉ちゃんを見た。  
「お姉ちゃん……な、何バカなこと言ってるんだよ。そんな訳ないじゃないか」  
 
 しかし千里お姉ちゃんは静かな声で、でもはっきり言った。  
「いいえ。私は、もう死ぬの。」  
 
 千里お姉ちゃんの顔色は、熱のせいで血が上り、ほっぺたなどはいつもより赤いくらいだ。死にそうになんか見えない。  
 
「そんなこと言うなよ」と言いながら、ふと、こういうほっぺたは前に見たことがあるのを思い出した。そうだ、母ちゃんの時と同じだ。母ちゃんはあの時……  
 
 オレはたまらなくなって千里お姉ちゃんの手を取った。  
「お姉ちゃん、死んじゃやだ! オレを一人にしないでくれよ。寂しいよぅ」思わず涙がこぼれた。  
「ごめんね…交クン、泣かないで。」声を出すのも辛そうだ。まさか、本当に死んでしまうのだろうか…  
 
 しばらくして、千里お姉ちゃんが言葉を継いだ。  
「死んだら、埋めてね。そして、お墓の側で待っていて。ご両親と一緒に迎えに来るわ。」  
 
 オレは、いつ来てくれるのと聞いた。  
「さやさやと、柔らかな風がそよいで、白い花が咲く頃に。交クン、待っていられるかしら。」  
 オレは黙ってうなずいた。お姉ちゃんはほとんど聞き取れないほど小さな声で、  
「それまで…ずうっと…待っていてね。」と途切れ途切れに言った。  
 
「ずうっと……ずうっと私の墓の側で…座って待っていて。きっと…きっと一緒に…迎えに…来る……わ。」  
 
 オレは涙を堪えて、  
「…うん。…待ってるよ」とだけ返事した。  
 
 すると、一瞬微笑んだ千里お姉ちゃんの瞳から、だんだん光がなくなってきた。涙がうるうるっと溢れ、……眼が静かに閉じた。目尻から涙が一筋、つうっっとこぼれた。――もう死んでいた。  
 
「千里お姉ちゃーーーん!」オレは初めて大声で泣いた。  
「やだよやだよ! オレ、またひとりぼっちになるの、やだよおおぉぉぉ! うっ…うっ…」  
 
 泣きくたびれたオレは家の外に出た。真っ黒な地面に穴を掘った。お姉ちゃんを穴の中にそおっと寝かせた。  
 星も出ていなかったけど、お姉ちゃんの死顔は女神様のように美しかった。  
 
 ざっ……ざっ……ざっ……  
 
 オレは柔らかい土を手で掬い、足の方からそおっとそおっと掛けていった。  
 最後に顔に土が掛かり、とうとうお姉ちゃんが見えなくなってしまうと、また涙があふれてきた。  
 
 オレは花瓶からありったけの花を持ってきて、お姉ちゃんの顔が埋まっている所に置いた。そしてその前に座って待った。  
 
 長い長い間、オレはじっと待っていた。ただただ待っていた。いつしかオレは腰から下が腐って土に還っていた。それでも、お姉ちゃんときっとまた会える、と思いながら待っていた。  
 
 お姉ちゃんの顔の上に置いた花はずっと枯れないままである。気が付くと、オレは一輪のスミレになっていた。  
 
 ふと目の前の花が、まとまってふるふるっと震えた。そして茎が絡まって一本になりながら、オレの前に伸びて来た。来る間に色とりどりの花が細長い一輪の蕾にまとまって、オレの前で首を傾げるように留まった。  
 
 と思うと、一度オレに頷きかけるように揺れた蕾がみるみる膨らみ、大きく花開いた。真白な百合がオレに挨拶をするように風にそよいだ。その度に懐かしい匂いがオレを包みこんだ。  
 
――この匂いは!……母ちゃんの匂いだ!!   
 スミレになったオレは、嬉しさのあまり花や葉や茎全体を細かく震わせた。  
 
 すると、花びらがそれに答えるかのようにむくむくっと広がり、オレを優しく包み込み始めた。  
 そして深い緑の葉が大きく横に広がったかと思うと、オレをしっかりと抱いてきた。この抱き方にも覚えがあった。――父ちゃんだ!  
 
 
 いつしか、オレは紫の小さな光となって、無数の星が煌めく銀河を進んでいた。オレの両脇に白く大きな星が二つあった。白く強い光が父ちゃん、やはり白くて暖かい光が母ちゃんだ。  
 
――父ちゃん! 母ちゃん! やっと会えたね……オレ、寂しかったんだよ! もう、ずっとずっと一緒だよ!  
 
 父ちゃんと母ちゃんは優しく瞬いた。輝きが強くなった。  
 
 気が付くと、オレたちの後ろから赤い星と青い星がしずしずと寄り添ってきた。  
 
 赤い星は千里お姉ちゃんだった。  
 
――千里お姉ちゃん! また会えたんだね! 父ちゃんと母ちゃんを連れてきてくれてありがとう!  
 
 赤い星が、ちかちかと瞬いた。隣の青い星は、……望おじさんだった。  
 
――そうかぁ…千里お姉ちゃん、望おじさんと一緒になったんだね! おめでとう!  
 
 千里姉ちゃんは、恥ずかしそうに小さく瞬いた。気のせいか、星の赤さがますます増したように思えた。青い星も、照れくさそうにぴかりと瞬いた。  
 
――二人とも、幸せにね!  
 
 オレは二人に呼びかけた。そうしてオレたちは一緒に、銀河の彼方へどこまでも流れるように進んでいった。  
 
      ☆  
 
「まあ、大きな流れ星!」千里お姉ちゃんが感嘆した。  
「……オレ、流れ星、あんまり好きじゃないな…」  
「今晩は流星群が来るの。晴れてるから、運が良ければ一晩中、流れ星が雨みたいに夜空を流れるのよ。」  
「………」オレは涙がこぼれそうになったのを堪えた。  
「……ん…次の流れ星にお祈りしようか。お父さんとお母さんに早く会えますようにって。」  
「……うん…」  
「……あ、ほら!………………お祈りした?」  
「…うん、したよ」  
「よーし。…じゃ、そろそろ帰ろうか。」  
「うん!」  
 
 
     第二夜  
 
 こんな夢を見た。  
 
 まといお姉ちゃんとお風呂に入っている。お姉ちゃんは美人だ。丸顔で眼がぱっちりしている。おっぱいもふっくらしていて、綺麗な形だ。  
 お姉ちゃんは湯船に浸かっているとき、手がおっぱいに触れても叱らない。――おっぱいは柔らかかった。  
 
 身体を洗ってもらってるとき、ぼーっとお姉ちゃんの顔やおっぱいを見つめていると、  
 
「交クン…ちゃんと剥いて洗ってる?」と聞いてきた。  
 
「むいて? なにを?」よくわからなかったので聞き返した。するとお姉ちゃんは、  
 
「ふふっ。ここよ」といってオレのおちんちんを掴んできた。  
 
「や、やめてよー」オレは恥ずかしかった。でもお姉ちゃんは構わずムきはじめ、とうとうずるっと全部ムいてしまった。  
 
「う、うわあああぁっ」  
 自分のおちんちんがむけるなんて正直思ってもみなかったのでびっくりした。それに、おちんちん全体がジンジンして、お腹や足が震えてくる。  
 
 ぴくぴくしているおちんちんを、まといお姉ちゃんは丁寧に洗い始めた。  
 
「うわああああぁ! お姉ちゃん、止めて! 止めて!」  
 
 痛くはないけれど、おちんちん全体に火がついたみたいで、熱くて熱くてたまらない。このままだと取れてしまいそうだ。でも、まといお姉ちゃんは丹念に洗い続ける。とうとう途中では止めてくれなかった。  
 
 ようやく洗い終えると、何度もお湯をかけ指できゅっきゅっと擦りながらシャボンの泡を洗い流した。  
 
「ううう…ひどいや、まとい姉ちゃん」  
「あらあら。でも、綺麗にしてないと、あとで痛痒くなって、腫れてきちゃうのよ」  
「…そうなの?」  
「うん。しまいには腐って取れちゃうの」  
「うわー…それはやだなぁ」  
「それに、交クンの将来の結婚相手が困るわ」  
「? どうして?」  
「ふふっ、そのうち分かるわ」まとい姉ちゃんは答えをはぐらかした。  
 
 
風呂から上がってパジャマを着ていると、まとい姉ちゃんが  
「さ、赤チン塗ってあげるから」と言ってきた。  
「どこに?」  
「さっき剥いたおちんちんよ。消毒しとかないと。ばい菌が入ったらいやでしょ」  
 
「えー、いいよー」オレは断った。もうおちんちんをイジられたくなかったからだ。  
 
 でもまとい姉ちゃんはしつこかった。しまいにはオレを追っかけてきた。もう少しで捕まりそうになったので、腕をふりほどいて逃げ出した。  
 
「待てぇ〜〜〜」まとい姉ちゃんが怖い顔をして追ってきた。  
 
 部屋を飛び出して家中を逃げ回ったが、ついに捕まってパジャマをずるっと下げられた。  
 
「うわあああん、いやだよぉ」  
 
 オレはじたばたしたが、とうとうまたまといお姉ちゃんにムかれて、赤チンを付けられてしまった。  
 
 
 今オレのおちんちんは頭が真っ赤に染まっている。光の加減で所々緑色が浮いて見えることもある。  
 
「さーてと。あとは…」まだ何か付ける気だ。  
「もういやだァーーーーーー」  
 
 これ以上何かつけられたら本当におちんちんが取れてしまう気がしたので、上はパジャマ、下はフリチンのまま外に飛び出した。  
 
 
 どのくらい走っただろう。風呂上がりでもあるし、とにかく喉が渇いて仕方がない。それにちょっとお腹も空いている。たまたまそこにあった駄菓子屋に飛び込んだ。  
 
 店のばあちゃんが親切で助かった。ヘンな格好で店に飛び込んできた訳を聞くと、ジュースやお菓子をたらふく飲み食いさせてくれたのだ。途中お腹が空くだろうと、胸ポケットがパンパンに膨らむほどお土産まで入れてくれた。  
 
「ところで、そのまといお姉ちゃんってのは、どんな顔だい?」  
「美人だよ。丸顔で」  
「へえぇ。そうかい。…で?」  
「目もぱっちりしてる。でも、キレると怖いかな」  
「ふーん……じゃあ」ここでばあちゃんが自分の顔を手でつるりと撫でた。  
 
「…じゃあ、こんな顔だったかい」  
 
 見ると、ばあちゃんの顔に鼻や口はついてなく、卵のようにつるっとしていた。ただ、まとい姉ちゃんの大きな目だけが二つ光っていた。しかも鬼のように怖い目をしている。  
 
「うわあああああっ!」  
 
 オレは駄菓子屋さんを飛び出し、やみくもに走った。どこをどう走ったかなんて二の次だった。とにかく遠くへ逃げたい一心でひたすら走り続けた。  
 
 
 気がつくと、原っぱにいた。息が切れたので一休みして胸ポケットのお菓子を食べようとした。  
 
 お菓子の箱を開けようとして、ハッとした。箱に目がついていて、オレを睨んでいるではないか。  
 
「うわーーんっ」オレはその箱を中身ごと投げ捨てた。  
 
 ポケットに入っていた他のお菓子にも全部目が付いていたたので、オレは泣きながら全部捨て、そこを逃げ出した。  
 
 
 もうどれくらい走ったかわからない。辺りはベタを塗ったように真っ暗で、どこにいるのかまるで見当が付かない。  
 
 ゼーゼー言いながら膝に手を突いて立ち止まった。休みながらふと前を見ると、空中の闇に不気味な目がぽつ、ぽつ、ぽつぽつぽつとみるみる浮き上がってきて、みなオレを睨んできた。  
 
 慌てて方向転換し、右へ逃げた。すると、はるか先に大きな灯りが二つ見える。車のヘッドライトだろう。  
「うわーん、助けてぇぇー」とその灯りに向かって手を振りながら一目散に走った。  
 
 ところが、それはヘッドライトの光などではなかった。拳ほども大きな目玉が二つ、ぴかぴか光ってはオレを睨みつけていたのだ。  
 
 悲鳴を上げて回れ右をしたが、もう遅かった。四方八方からありとあらゆる目という目がオレを取り囲み、睨み付けていた。もうどこにも逃げられない。  
 
 その場で頭を抱え込もうとして気がついたら、オレの掌にも目が付いていてオレを睨んでいる。  
 手を前に突きだし下を向いたら、おれのおちんちんの先までもが目玉になって、オレをじぃっと見つめていた。白目のところがひどく血走っていて、赤目と言っていいくらいだ。  
 
 もうだめだと思ったその時、足下が急に割れて大きな目が開いた。そしてオレはその真っ黒な瞳の中にすうっと吸い込まれていった。  
 
「うわああああああああああああぁぁぁぁ!」  
 
 オレをすっかり飲み込んでしまうと、その大きな目はパチリと閉じた。すぐに辺りは真っ暗になり、何も見えなくなった。  
 
      ☆  
 
「交。話すときはちゃんと人の目を見てお話しなさい」  
「い、いやだよう」  
「どうして?」  
「だって、目を見るの、怖いんだもの。目怖い!」  
「うーん…望お兄様に続いて交も伏目がちな人間になってしまうのか…思えば不憫な」  
 
 
     第三夜  
 
 こんな夢を見た。  
 
 夜道をお姉ちゃんに負ぶわれている。頭の形から、晴美姉ちゃんだとわかる。ただ、いつの間にか二人とも服を脱いでいて、裸である。裸の晴美お姉ちゃんが、やはり裸のオレを負ぶってとぼとぼ歩いているのだ。  
 
 山あいの道を歩いているらしく、木々やら岩肌やらの影が見える。空は星一つ出ていない。真っ暗闇である。  
 
 お姉ちゃんの背中にオレのおちんちんが当たっているが、お姉ちゃんは何も言わない。おちんちんから、お姉ちゃんの背中の温もりが伝わってくる。  
 
 晴美お姉ちゃんの足取りはゆっくりしている。  
   
「お姉ちゃん、重いかい?」  
「んー? 重くないわよー」  
「そう……何だか、ごめんね」  
「気にしない、気にしない」  
 
 また黙ってお姉ちゃんは歩き始めた。  
 
 負ぶわれているうちにウトウトしていたが、ふと目を覚ますと、いつの間にかお姉ちゃんの背が縮んでいる。  
 
「お姉ちゃん、背が低くなった?」  
「んー? そうかなあー」  
 
 そう返事をしたのが合図だったかのように、オレを負ぶったまま、お姉ちゃんの背がすうーーーっと縮んでいった。  
 いつの間にかオレと同じ背丈になってしまったかと思うと、歩く度にさらにずんずん縮んでいった。  
 
 
 ちょうど分かれ道に来た。  
「ちょっと休もうよ」  
「……そうね。……どうもありがとう」  
 
 見ると、晴美お姉ちゃんは、とうとう卵になってしまっていた。  
 卵にお姉ちゃんの顔が付いてて髪の毛が生えている。おまけに眼鏡をかけ、横と下からもやしみたいに細長い手足が伸びている。  
 
「どっち行こうか」お姉ちゃんが尋ねてきた。  
 
 右の方は、先に明かりがかすかに見えたが、峠を越えて行くようだ。左は先が真っ暗だけど緩やかな下り坂で、晴美お姉ちゃんには楽なように思えた。  
 
「うーん…左にしようかな」  
「ごめんねー。気を遣わせちゃって」お晴美姉ちゃんは済まなさそうに付け加えた。  
 
「申し訳ないんだけど、私、背が縮んだみたいなの。だから、交クンのおちんちんを担がせてね。そうしたら大丈夫だから」  
「いいよ、お姉ちゃん。オレ、歩くよ」さすがにオレは断った。  
 
 けれども晴美お姉ちゃんは、  
「気にしない、気にしない」  
と言ったかと思うと、ひょいっとオレのおちんちんを細長い手で担ぎ、また歩き出した。  
 
 卵になった晴美姉ちゃんがよちよちと歩く度に、軽い揺れがおちんちんに伝わってくる。初めは何も感じなかったが、自然に硬くなってきた。  
 硬くなったおちんちんをさらに揺らされると、何だかだんだん変な気持ちになってしまった。  
 
「交クン、ごめん」晴美姉ちゃんが困ったような声で言った。  
「あまり硬くしないで。お姉ちゃん、割れちゃいそう」  
 
 そんなの仕方ないだろ、とは言えなかった。  
 
「うん、ごめんね」と謝って、できるだけ硬くならないように硬くならないように、と心の底で繰り返した。  
 
 でも、お姉ちゃんが前よりもよたよたし始めたので、おちんちんを担がれたオレもガクンガクンと揺れた。  
 揺れる度に担がれているところがぐにっ、ぐにっと擦れた。擦れたところからじわーっとおちんちん全体にからムズムズした変な気持ちが伝わった。  
 さらにおちんちんからオレの腰や身体中に甘いジンジンした感じが伝わっていった。  
 
「ああ…お姉ちゃんごめんよ…あまり揺らさないで」このままでは大変なことになる気がしてお姉ちゃんに頼んでみた。  
 
「ごめんね交クン……できるだけ頑張る」  
 晴美姉ちゃんは、オレを叱るどころか、こう言ってくれた。  
 
 でも、お姉ちゃんの揺れはますます大きくなった。それにつれておちんちんもどんどん気持ちよくなり、釘のように硬くなっていった。  
 
 
「うっ…うぁ…ウフぅっ…はぁッ」  
いつの間にか晴美お姉ちゃんは、針のように細い足を踏みしめるたびに喘ぎ声を上げていた。  
 
 オレも揺れるたびにちんちんの中の芯が太く硬くなり、気持ちよさがじーんじーんと体中に広がった。思わずこんなことを言ってしまった。  
 
「お、お姉ちゃん…は…う…気持ち…いいよう……」  
 
 お姉ちゃんはもう潰れそうになりながら叫んだ。オレも周りが見えなくなった。ただただ必死にお姉ちゃんのと呼び続けた。  
 
「はあっ、交クン、硬い…ダ、ダメッ……あぁ…壊れる、壊れる、私、壊れちゃうぅうぅぅ」  
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃああん」  
 
──くちゃっ。  
 
 突然、イヤな音がして、晴美お姉ちゃんの声がぷつりと途絶えた。  
 
「……お姉ちゃん!?」急に不安になってちんちんの先の方を見て、背筋がゾッとした。  
 オレのちんちんが、さっきまで晴美お姉ちゃんだった卵に刺さってしまっていたのだ。  
 
「お姉ちゃん!! お姉ちゃん、しっかりしてよ、うわああああん!」  
 
 オレは泣きながら呼びかけたが、返事はない。  
 おちんちんを恐る恐る抜いてみた。卵の殻に大きなヒビが入り、その真ん中をオレのおちんちんの太さほどの穴が開いている。  
 灯りもない夜なのに、半透明の白身やら、形が崩れる直前の黄身やら、赤い血の筋なんかがはっきり見える。  
 
「うわああん! 晴美お姉ちゃあん! しっかりしてー!! 死んじゃやだよおぉーー!!」  
 
 オレは頭の中が真っ白になりながら、ちんちんに刺さっていた卵の殻のカケラを抜いては卵のヒビの縁にくっつけ、ちんちんにへばりついていた白身らしいヌルヌルを卵の中に戻そうと空しい努力をした。  
 
 けれども晴美お姉ちゃんは、いつまで経っても立ち上がることはなかった。  
 
      ☆  
 
「交、朝ご飯ですよ。起きなさい」  
「……うん…」  
「さあさあ」  
「……ヒィッ…た、卵!」  
「卵がどうかしたの?」  
「やだヤダやだ、卵やだ! 卵こわい! 倫姉ちゃんの意地悪! いやあああああああぁ!!」  
「あらあらこの子ったら…またどこかでトラウマ作ってきたのね」  
 
 
     第四夜  
 
 カエレお姉ちゃんとお風呂に入っている。抱かれて入るのは何だか甘えているみたいでイヤだから、向かい合って入っている。  
 
 でも今度は目のやり場に困った。お姉ちゃん達の中で一番おっぱいが大きいのがカエレ姉ちゃんだからだ。  
 
「あー、こらぁ! おっぱいばっか見てるんじゃないの。訴えるよ!」  
「ご、ゴメン」  
 
 慌てて目を逸らす。だが逸らしっ放しだと首が痛くなるので、仕方なく正面を向く。  
 正面を向くとおっぱいが眼に入るので、下を向いていた。  
 
「フフッ。交クンったら、ウブね」なんて言われると、ますます前を向けない。  
 
 背中を流してもらうときのことだ。いつもならスポンジやタオルでゴシゴシしてもらうんだけど、何だか様子がおかしい。  
 
 柔らかいゴムまりのよう物が二つ、石鹸でぬらぬらした背中を滑り回っているのだ。  
 まりに小さなぽっちがついているなーと感じたとき、カエレお姉ちゃんが  
 
「交クン、気持ちいい?」と聞いてきた。  
「うん」と答えると、  
「ウフフ…交クンったら、おマセさんねえ」  
「な…なんだよう」  
 
 でも、お姉ちゃんはクスクス笑ってこれに答えずに、  
「さ、前も洗うから、こっち向いて」と言ってきた。  
 
 素直に前を向いてすぐに、さっき背中を滑っていた物が何だったのかが分かった。  
 
 カエレ姉ちゃんが、自分の膝を跨がせたかと思うと、オレを抱き抱えるように背中に手を回し、シャボンのついたおっぱいをオレの胸に押しつけてきて上下にゆさゆさし始めた。お腹の方までおっぱいが触ってくる。  
 つまり、タオルの代わりに、おっぱいでオレの胸や腹を洗ってきたのだ。  
 
 オレはなんだか変な気持ちになった。気が付いたらおちんちんがすっかり硬くなっていた。  
 カエレ姉ちゃんはそれを目ざとく見つけて、  
 
「あー、勃ってる! えっちなこと考えてるんでしょ。訴えるよっ」とイタズラっぽく微笑んだ。恥ずかしくて返事に困っていると、  
 
「ま、いいわ。じゃあ、マットに横になってー」と言った。  
 
 素直に風呂場のタイルの上に敷いてあったマットに仰向けに寝た。おちんちんだけ、お子さまランチの旗のようにピンとたっていた。  
 
 するとカエレ姉ちゃんは、おっぱいだけでなく全身に石鹸の泡を塗りつけ、オレに覆い被さってくると、オレの上を滑り始めた。  
 ただ、重くはない。どうやら両腕で自分の体重を支え、オレが重くならないようにしてくれているらしい。  
 
 姉ちゃんのおっぱいやらお腹やらが、オレの首からおへそまで、とがったちんちんから膝まで、全身を滑り降りてはまた上っていった。  
 お姉ちゃんの体に触れているところから溶けてバターになりそうで、頭の中がほやほやーんとしてきた。  
 
 いつの間にか、オレの背中でまたおっぱいが遊び回っていた。  
 でもオレの上にはちゃんとカエレお姉ちゃんがいて、相変わらずぬるぬるっとオレの上を滑っている。時にはお姉ちゃんがオレのホッペにチュウしたりもする。  
 
 おっぱいの数が増えた。背中だけでなく、両手両足にもそれぞれおっぱいがするするっと楽しそうに滑っている。先っちょが時々当たるのが妙にくすぐったくて、当たったところからちゅーんと少し痺れていく。  
 
 いつのまにかカエレお姉ちゃんの顔が見えなくなっていた。その代わり、おっぱいの数はますます増え、オレの頭、顔、肩、手、胸、腹、足…全身を、ふるふるしながら滑り回っていた。  
 
 おちんちんにも小さめのおっぱいが取り付いて、きゅっきゅっと優しくこすり洗いしていた。恥ずかしくて、そしてくすぐったくて、オレのちんちんは鉄の棒のように硬くなっていた。  
 
 さらにおっぱいの数が増えた。あんまり増えすぎたので、おっぱいはもうオレの上を滑ることが出来ず、互いに押し合いっこしていた。オレもおっぱいにもみくちゃにされていた。  
 
──くちゅ、くちゅ、くちゅ。キュッ、キュッ、キュッ。  
 
 今やオレは数え切れないほどのおっぱいと押しくらまんじゅうをしている。おっぱいは、押し合いへしあいしながらその先っちょをオレに押しつけようとしていた。  
 
 オレのお尻の穴に先っちょが入り込もうとしたのには慌てた。  
 
「ダメだよ! そんなとこ、汚いから!」  
と思わず叫んだ。だが叫んだその瞬間、別のおっぱいで口を塞がれてしまった。  
 
「わぷっ!」オレの口を塞いだおっぱいは、先っちょをオレに含ませて、まるで吸ってちょうだいとでも言うように口元でぷるぷる震えた。  
 
──ちゅっ、ちゅっ、ちゅううぅ…  
 
 オレは赤ちゃんに戻ったみたいに一生懸命吸った。おっぱいもそれが嬉しかったみたいで、我先にとオレの全身に先っちょを押しつけてきた。  
 
 身体中を数えきれないおっぱいに包まれ、先っちょで突っつかれ、色々な所をきゅっきゅっともみくちゃにされているうちに、オレはおちんちんだけではなく、頭の天辺から爪先までが一本の木の棒になったように硬くなった。  
 
 硬くなったオレを、さらにおっぱいがくちゅくちゅぴちゅぴちゅと責め立てる。なんだかのぼせてきた。このままではいけないな、と思うのだが自分ではどうにもならない。  
 
 オレはたくさんのおっぱいに埋もれて意識が朦朧としてきた。目の前もおっぱいに塞がれていて、自分が今まだ風呂場にいるのかどうかさえ分からない。  
 
 そのうち、オレの身体の底で何かがグツグツ言い始めた。  
 見る間にそのグツグツがオレの中でたぎってきたかと思うと、背筋を一気に伝って頭に達した。しばらく頭にたまって外に出る機会を窺っていたそれは、とうとうオレの頭のてっぺんから勢いよく吹き出した。  
 
──ブシュウウウウウゥゥゥゥーーーーーー…  
 
 吹き出たのは白い泡だった。オレの頭がそこら中に泡を振りまいた。おっぱいにも泡がぼたん雪のようにかかった。  
 泡がかかると、おっぱいは一斉に小刻みに震え、口々に小さな叫び声を上げた。  
 
――アーーーーーーーーーーーン……  
  ――あはあああぁぁぁーーーーん……  
 ――AAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaahhh……  
 
 しばらくすると、叫び疲れたおっぱいから一つずつ弾けていった。ぷちん、ぷちんと弾けるたびに、おっぱいは  
 
――訴えるよっ  
とか  
――訴えるわよ!  
 
とか口々に一言残しては消えていった。  
 
 やがて「訴えるよ」のカワイイ合唱がそこら中に響きわたった。  
 
――訴えるよ! ――訴えるわよっ! ――うったえるよぉ!  
 ――訴えるぞぉ! ――訴えてやる!! ――ウッタエテヤルゥ!!  
 
 一方、頭のてっぺんから泡を吹き上げていたオレは、だんだん棒が――オレの身体が――細く短く柔らかくなっていくのを自覚した。  
 
 泡はオレの身体の中身だったのだ。  
 
 そう悟ったときにはもうどうすることもできなかった。  
 オレはますます小さくなり、とうとう皮だけになった。いや、その皮もぐんぐん縮んでいき、あっという間にオレはこの世からいなくなってしまった。いつしか泡も止まっていた。  
 
 カエレお姉ちゃんだったおっぱいもどんどん弾けていった。  
 
 あれだけオレを取り囲んでいたのが嘘のように、もう残り数えるほどになっていた。  
   
 それでもどんどんどんどん弾けては消え、消えるように弾け、ついに最後の一個がぷちんと弾けて消えた。  
 
――訴えるよっ…  
 
      ☆  
 
「交。そろそろ起きなさい」  
「…あ、倫ねえちゃん」オレは倫姉ちゃん(倫おばさんというとひどく怒る)に膝枕をしてもらっていた。うとうとしているうちに、つい寝入ってしまったらしい。  
 
「倫姉ちゃん、おっぱいちっちゃくて良かったなあ」  
「!」  
「弾けることなんかないし。オレ、大きいおっぱいキライだな」  
「…この子はまだ寝ぼけてるみたいねぇ。これで目を…お覚ましっ!」  
 倫姉ちゃんはオレの両足を抱え込み、電気アンマをし始めた。  
 
──グリグリグリグリグリ…………  
 
「うひゃあぁぁ! 姉ちゃんごめん、ごめん! ごめんなさい!! 倫姉ちゃんのおっぱいが小さいって言ってごめんなさ」  
「まーだ言うかあぁ! このこのこのぉ〜〜」  
「うわああぁぁん! ごめんなさーーーい…」  
 
 
     第五夜  
 
 こんな夢を見た。  
 
 何でも奈美お姉ちゃんと窓のない小さな部屋に閉じこめられている。部屋には布団が敷いてあるだけで、他には何もない。二人とも裸だ。  
 
 頭がくらっと来てオレは倒れた。何だかだるい。動けない。慌てて奈美お姉ちゃんがオレを布団に寝かせてくれた。  
 
 下半身もじんじん痺れてるし熱がある。奈美お姉ちゃんに目を遣ると、なぜか顔を赤らめてそっぽを向いている。  
 
 オレに裸を見られるのが恥ずかしいのだろうかと考えた。けれど、ふと自分のおちんちんを目にしてびっくりした。  
 
 おちんちんだけオレでなくなっている。大人ちんこになっているのだ。おまけに勃っていて、ぴくぴく震えている。ついでに何だかずきずき疼いている。  
 でも毛は生えてない。茹でたてのフランクフルトみたいだ。  
 
――んっふっふっふっふ…気分はどうかね、交クン?  
 
 突然天井から声がした。  
 
――ふっほほほ……キミのおちんちんに毒を注射してあげたよ。キミはあと十分ちょっとで死ぬのだ!  
 
「どうしてこんなことするのよ!」奈美姉ちゃんが怒った。  
 
――うほほほ……交クンは私たちにとって邪魔な存在…要らないコなのだよ。だが、ただ殺してはおもしろくないからな。じっくり楽しんでから、……なっ?  
 
「な…なんてヤツなの!」  
 
――んーー、どうだ、奈美クン。賭をしないかね。もし十分以内に毒を吸い出せたら、二人ともここからすぐに出してやろう。子供にだけ効く毒だから、吸った大人には害はないよ。  
 
「吸い出せたらって、まだ交クンは子供じゃないの!」奈美お姉ちゃんは顔を赤くして抗議した。  
 
――ムホッホッホホォ……その代わり、もし十分以内に毒を吸い出せなければ、その子は死ぬ。そして奈美クン…キミは私のお嫁さんになるのだ! どうかね? 賭けてみるかね?  
 
「や、やるわよっ!!」奈美お姉ちゃんは即答した。  
「その代わり、毒を吸い出したら必ず私たちを無傷で解放するのよ!」  
――いいとも。ではさっそく始めたまえ。ホレ!  
 
 奈美お姉ちゃんはしばらくじっとしていたが、オレに向かってこう言った。  
 
「交クン…きっと助けてあげるからね」  
「…うん。ありがとう。お姉ちゃん」  
「だから、ちょっと目をつぶってて。それから、おちんちんがヘンな感じになるかもしれないけれど、我慢してね」  
「うう…わかった」  
 
 オレはゴクリとつばを飲み込んだ。  
 
 すると、奈美お姉ちゃんがオレの大人ちんこを握ってきた。  
 
「うぅ…」  
「さ、吸い出すわよ」  
「うん…」オレは目を固くつぶった。  
 
 すると、なんだか湿ったモノがふわあっとちんこを包み込んできた。それが無性に気持ちいい。生まれて初めて感じる、何とも言えない感じがする。ちんこだけ気持ちいいお風呂に入っているようだ。  
 
 暖かいそれはちんこを十分湿らせると、少しずつちゅっ、ちゅっと吸ってきた。そして、一気に強く吸い上げた。  
 
──ちうううううううううぅぅぅぅぅぅぅっッ  
 
「ふわあああああああああっ」  
 おちんちんをムかれたときとは違った激しい感覚に、オレは思わず叫んでしまった。  
 
 すると、いったんソレがちんこから離れたかと思うと、奈美お姉ちゃんの声がした。  
 
「交クン、痛くない?」  
「うぅ…うん、平気だよ」  
「ごめんね。毒を吸い出すまで我慢して」  
 
 またぬめっとしたものが大人ちんこに被さってきた。もう分かった。奈美お姉ちゃんはオレのちんこを舐めてから吸ってくれていたのだ。  
 
 大人ちんこはパンパンに膨れ上がっている。何かが外に出たがってむずかっている。お姉ちゃんが吸う度に、外に出せ、一緒に連れていけ、とちんこの中で暴れ回る。  
 けれども肝心の出口にはやって来ない。ただ途中で泣き喚いているだけだ。  
 
――あと五分だ。どうかなぁ? 見たところ、毒は吸い出せそうにないねえ。ふほほほほ。  
 
 また天井から声が降ってきた。続けて奈美お姉ちゃんをからかうように、こう言った。  
 
――奈美クン、キミはそんなの舐め慣れてると思ったけどなぁ。あ、本当はその子なんかどうでもよくて、早く私のお嫁さんになりたいのかな?  
 
「う…うるさいっ!」お姉ちゃんは口を離すと天井に向かって怒った。そしてオレに向かってきっぱり言った。  
「交クン、きっと毒を出して助けてあげるからね」  
「うん」オレは苦しかったが、お姉ちゃんを信じた。  
(奈美お姉ちゃんならきっとオレを助けてくれる)  
 
 身体全体が熱を帯びている。大人ちんこがズッキンズッキン疼いてたまらない。  
 
「交クン…ちょっと我慢してね」お姉ちゃんはこう言うと、おっぱいでオレのちんこを挟んでぐにぐにっと擦り始めた。  
 
 奈美お姉ちゃんのおっぱいが柔らかいのは知っていたけれど、まさかおちんちんで柔らかさを味わうとは思ってもみなかった。  
 
「はうっ…うぅっ……」オレはつい呻いてしまった。  
 
 奈美お姉ちゃんは、大人ちんこをおっぱいで上下に擦り立てている。ちんこの中で暴れていたモノが、ますますいきり立った。  
 
「うぅ…毒よ……早く……出てッ」お姉ちゃんも焦っているようだ。おっぱいを動かしながら  
、ちんこの先っちょをぺろぺろっと舐め始めた  
のだ。  
 
「くっ…うぁぁ……」オレはあり得ない感覚に呻いた。  
(お姉ちゃん、ごめんよ…)  
 
 大人ちんこはひとりでにぴくぴくと動いている。何かが出そうで出ない。奈美お姉ちゃんには済まなく思うのだけれど、どうしても毒が出てくれない。  
 ちんこの先っぽの中で誰かが通せんぼをしているみたいに、ソレは頭の所で暴れているだけだ。オレは気が遠くなり始めていた。  
 
 また天井から声がした。  
 
――あと三分。…どうかな、奈美クン。もうあきらめて、私のお嫁さんにならないか? 私一人で不足なら、私たちみんなのお嫁さんでもいいが…  
 
「いやよ! 絶対にイヤ!!」お姉ちゃんは天井の声を打ち消すように首を激しく振った。そして、  
「交クン、ごめんっ!!」  
と一声叫ぶとオレに馬乗りになり、大人ちんこに跨ってきた。一呼吸置いてから、ぐむっ、ぐむっと動き始める。  
 
 吸われたときとはまた別の感覚がちんこから湧いてきた。ちんこ全体を暖かく滑ったモノが包んでずにゅりっ、ずにゅるっと動いている。  
オレの大人ちんこが今どんなことになっているのか、さっぱりわからない。二人とも、もうまともに会話できない。  
 
「ふぅッ…うっ…うッ…ね…姉ちゃん…!」  
「はぁ…交…クン、…あと…ちょっとよ…」  
 
 するとあれだけ中で暴れていたやんちゃ坊主が、ようやく出口に向かって並び始めた。そうして出たい、出たいと言うかのようにちんこをきつきつに膨らませた。  
 並んだところを不規則にきゅううっと締められたとき、ついに何かが先から飛び出した。  
 
「ううっ…うわああぁ…奈美お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃーーーーんッ!!!」  
「交クン、出して! 毒出して、出して! …出してーーーーーーーッ!!!」  
 
 やっと毒が出た。後から後からずぴずぴっとたくさん出た。ちんこの中にまだ残っていた毒を、奈美お姉ちゃんが念入りに扱き、搾り取ってくれた。  
 
――くっ…まさか直接まぐわってしまうとは!  
 天井からの声がくやしそうに呟いたかと思うと、いきなりぱっと部屋が消えた。  
 
 気が付くと、奈美お姉ちゃんとオレは広い原っぱのど真ん中にいた。風が穏やかに原っぱの上を吹きわたり、草がさわさわっと音を立てている。  
 
「……助かったの?」  
「そうみたいね」  
「ありがとう、おねえちゃん」オレは奈美お姉ちゃんに抱きついた。  
「交クンが助かって私も嬉しいわ。……あ」  
「どうしたの?」  
「交クン…子どもちんちんに戻ってる」  
 
 オレは自分のおちんちんを見た。あのでかいフランクフルトみたいだった大人ちんこが消え、昔なじみの子どもちんちんに戻っていた。初めてオレは助かったんだという実感がわいてきた。  
 
 遠くに星がたった一つ、オレたちを呼ぶかのように金色に明るく輝いている。  
 風が吹きわたる草原の中、オレたちは手を繋ぎ、星を目指してどこまでも歩いていった。  
 
      ☆  
 
「…きゅーじゅきゅう、ひゃーくっ」  
「よーし、じゃあ上がろうか」  
「うん。……あっ」  
「どうしたの?」  
「准お兄ちゃん、大人ちんこだあ。大きいね」  
「え!? そりゃあ、もう高校生だから」  
「……大人ちんこ、怖いなあ」  
「怖い? どうして?」ここでオレは夢の話をした。  
 
「へええええ! それは大変。…じゃあ…」  
「じゃあ?」  
「…大人ちんこが気持ちいいことを分かってもらわないとね」  
「? うん………あれ? 准兄ちゃん、なんでオレを押さえるの?」  
 准お兄ちゃんはオレをお風呂マットに寝かせると、肩を押さえてオレが動けないようにし、上から覆い被さってきた。  
 
「ちょっと、何するんだよ! 離してよ、いやだよお! いやだ、助けてええええぇぇぇぇ」  
 
 
     第六夜  
 
 目の前に可符香お姉ちゃんがいる。微笑んでる。裸だ。オレも裸だ。二人で風呂に入っている。湯船に長いこと浸かってて、もう暑い。  
 
 お姉ちゃんが聞いてきた。  
「もう温まった?」  
「うん」  
「そうなの…じゃあ、あと少し入ってようか」  
「もうのぼせちゃうよ」  
「だって、よーく温まって綺麗に洗わないとね。仕方ないわ」  
「そうかなぁ」  
 
 オレはもうフラフラだ。汗がだらだら出る。蟹のように茹だっている。可符香お姉ちゃんも真っ赤だ。  
 
 どうしてもまだ湯船に浸からないといけないのかと思った。それで、  
「まだ入ってるの?」  
と聞いた。可符香お姉ちゃんは  
「そうよ。まだまだ入っててね」と答えた。  
 
 しばらくしてお姉ちゃんが、  
「じゃあ、洗おうか」と言って湯から上がった。ヤレヤレ、やっとだ。オレも上がって洗い場に行った。  
 
 可符香お姉ちゃんがオレを洗ってくれた。  
 お姉ちゃんは洗い方がとても丁寧だ。なんだか母ちゃんに洗われてるみたいだな、と思っていると、お姉ちゃんの手がおちんちんに伸びてきた。  
「い、いいよぅ」オレは遠慮した。けれど可符香お姉ちゃんは、  
 
「遠慮しなくていいのよ。さ、ちゃんとこっち向いて〜」と相手にしてくれない。  
 
 恥ずかしかったけど、お姉ちゃんに恥ずかしいところまで全部洗ってもらった。柔らかいスポンジにシャボンをたっぷり付けて、優しく擦って洗ってくれた。ちょっとアソコがむずむずして硬くなった。  
 
 シャンプーもしてもらった。頭が泡だらけになっているとき、ふと後ろからとても怖い人がオレを見つめている気がした。思わず、  
 
「お姉ちゃん?」  
と怯えた声をあげると、  
 
「どうしたの?」と答えた。よかった! 可符香姉ちゃんの声だ。  
 
「ううん。何でもない」  
「うふふ……交クンったら」  
と何だかからかうように言うので、ちょっと照れくさかった。  
 
 お姉ちゃんが、  
「じゃあ次は私を洗ってね」  
と言うので、オレもお姉ちゃんを洗った。  
 
 おっぱいや太腿やお尻や、……毛の生えてる所もきちんと洗ってあげた。ちゃあんとここも洗ってねって頼まれたからだ。手で優しくねって言われたので、手に石鹸を塗ってくちゃくちゃっと泡を作り、その泡をアソコに塗って撫でてあげた。お姉ちゃんは嬉しそうだった。  
 
 お風呂から上がると、台所で天花粉を叩いてもらった。でも、いつもみたいにいい香りはしないし、なにより量が多い。  
 
「ねえ、なんか多くない?」  
「風呂上がりにきちんとしなければならないのよ」黙ってると、ベビーローションを塗ってきた。でも、やけににちゃにちゃしてるし、塗られた後も気持ち悪い。  
 
「ねえったら。なんか変だよぅ」  
 
 けれども可符香姉ちゃんは  
「湯冷めしないようにするのには一番なのよ」  
と言いながら、どんどん塗りたくっていった。とうとうオレは全身べちょべちょになってしまった。  
 
「じゃあ、ここに寝て〜」  
 お姉ちゃんに言われるままに、白いシーツの上に横になった。シーツはヒンヤリしていて、何だか湿っていた。  
 
 すると、お姉ちゃんは大きな包丁でオレをバラバラにし、トンントントントン……と細かく刻み始めた。あっという間にオレはミンチになってしまった。  
 
 お姉ちゃんは、刻んだタマネギやら白菜やらとオレをしっかりこね混ぜ、おまけに塩胡椒まで振った。  
 
「うわあぁ! 目に滲みるよぉ」  
 オレは叫んだが、可符香姉ちゃんは、  
 
「もうちょっとの辛抱だから我慢してね」と取り合ってくれない。  
 
 やがて、姉ちゃんはオレをちょっとずつ手に取ると、白くてぺとぺとした塊の中に押し込んだ。  
 なんだよいったい! 真っ暗じゃないか!  
と思っているうちに、また暑くなり始めた。おまけにムシムシする。  
 
「何だよお! お風呂はさっき入っただろ!」  
大声で叫んだが、姉ちゃんはオレを出してくれない。  
 
 あまりの蒸し暑さと狭苦しさに泣きわめいていたら、ようやく出してくれた。やれやれ、と思いながら周りを見回してビックリした。オレは皿に山盛りの肉まんになっていたのだ。  
 
「うわぁ、美味しそう」  
「冷えるときはこれよね〜」  
「可符香ちゃんスゴいなあ」  
 
 いつもオレの相手をしてくれるお姉ちゃんたちの声がする。どうやら、オレを食べるつもりらしい。  
 
「待ってくれよ! オレだよ! 交だよぉ!」  
何度も叫ぶが、姉ちゃんたちには聞こえないらしい。  
 
「さあ、どうぞ。たくさんあるからたーんと召し上がれ」可符香姉ちゃんの声もする。  
 
 いやだいやだと思っているうちに、オレの足だった肉まんを晴美姉ちゃんが食べてしまった。  
 
 千里姉ちゃんはオレの手を食べた。まとい姉ちゃんも奈美姉ちゃんも、霧姉ちゃんまでパクパクと、オレを美味しそうに食べてしまった。  
 
 最後に二つ残ったオレ。一つを可符香姉ちゃんが手にした。オレのおちんちんだった所だ。  
 
「じゃあ、私も食べよっかな」  
「止めろよぉ! オレのちんちんを食べるなよぉ! 女になっちゃうじゃないか!!」  
 
 必死にオレは叫んだ。けれど、可符香姉ちゃんはニコニコしながらオレにかぶりついた。白い歯がどんどんオレのおちんちんを噛み砕いていく。  
「止めろよお! やめ、止めてええええええ」  
 
 とうとうおれのちんちんは可符香姉ちゃんにすっかり食べられてしまった。残っているのはオレの頭だったところだけだ。  
 
「最後に一つ残ってるの、私が頂いちゃいます」  
 
 望おじさんの声がした。最後の一個になってしまったオレをひょいと掴むと、一気に口元に持っていった。  
 
「止めろぉ! オレだよぉ! オレ、死んじゃうよぉ!」  
 オレは自分が食べられてしまうのが初めて怖くなり、泣きわめいた。五歳の若さで死にたくなんかない。  
 けれど、アイツはオレをとうとう口にし始めた。オレは無造作に噛みちぎられ、赤黒い闇に飲み込まれていく…  
 
「うわああああああああああああああああ!!!」  
 
      ☆  
 
「ぶるる。風が冷たいですねえ。そうだ、肉まんでも食べながら帰りましょうか」  
「……オレ、いらない」  
「ん? 昨日も食べたばかりじゃないですか」  
「いらないったらいらない! オレ、肉まんなんか嫌いだ! 肉まん怖い!! うわああああん」  
「あ、交!交! ちょっと待ちなさい! ……もう、しょうがないですね、子供は。……とりあえず、あんまんとピザまん、それに辛子味噌まんでも買って帰りますか」  
 
 
     第七夜  
 
 何でも大きな船に乗っている。小さな船室で、あびるお姉ちゃんといっしょに布団に入っている。  
 
 あびるお姉ちゃんはいつもと同じだ。すらっとして背が高い。よく見たら美人だと思う。まるでお人形さんみたいだ。いつもあちこちに包帯をしているけど、今日はそんなに多くないな…  
 
 こんなことを思っていると、外でドタドタと騒がしい足音がした。姉ちゃんがぱっとオレにの頭から布団をかぶせた。  
 
「しっ! 絶対に黙ってるのよ」  
 オレは石のように身を固くした。  
 
 船室の外で男のガサツな声がした。  
 
「いたか!?」  
「いねぇ」  
「船の中にいるはずだ。絶対に探し出せ!」  
「おう!」  
「生かして捕らえりゃ、一生遊んで暮らせる金が手にはいるぜ!」  
「殺してしまっても、大金には違えねえ」  
「そういうこった。てめえら抜かるなよ!」  
「おうさ!!」  
 
 足音が駆け去っていき、急に静かになった。  
 オレは震える声であびるお姉ちゃんに聞いた。  
 
「アイツら、やっぱりオレを探してるの?」  
「うん」お姉ちゃんが低い声で答えた。  
「交クンに遺産を相続させたくない人がいるの。それでこんな荒っぽいことをしてるのよ」  
 
「お姉ちゃん…怖いよう」オレは震えた。  
「大丈夫。安心して。お姉ちゃんがずっと守ってあげるから」あびるお姉ちゃんが、やっぱり低い声で、でも安心させるように言ってくれた。  
たまらずオレはあびるお姉ちゃんにしがみついた。  
 
「お姉ちゃん!……お姉ちゃあん……オレ、もう怖いのや寂しいの、イヤだよう」  
 泣き声は出さないように我慢した分、涙が後から後から溢れてきた。  
 
 お姉ちゃんは何も言わずにオレの頭を撫でてくれた。やがて、  
 
「交クン…今のうちにご飯食べて」  
「え?」  
「お母さんのとは違うかもしれないけど、私のおっぱいを吸ってみて」  
「お姉ちゃん…でも」  
「さ、早く! さっきの奴らが来る前に。ね」  
「…うん」  
 
 オレは戸惑いながらもあびるお姉ちゃんの左のおっぱいに吸いついた。  
 
「うっ」お姉ちゃんが呻いた。オレはぱっと口を離した。  
「どうしたの? 大丈夫?」  
「大丈夫よ。さ、もっとしっかり吸ってみて」  
 
 オレはさっきより強く吸ってみた。  
 
──ちゅうううっっ……  
 
 しばらくすると、口の中に甘く温かい味が広がった。オレは夢中で吸った。おっぱいからはどんどんミルクが溢れてきた。せっかくあびるお姉ちゃんが出してくれたミルクなんだから、一滴もこぼさないようにしようと思った。  
 
 お姉ちゃんは何かをガマンしているように見えたけど、もう呻かなかった。  
 
 しばらく経つと、お姉ちゃんがこう言った。  
「右もお願い。右はゆっくりゆっくり揉みながら吸ってちょうだいね」  
「うん」  
 
 オレはお姉ちゃんに言われたとおり、右のおっぱいも吸い始めた。痛くないように、ゆっくりゆっくり揉むのも忘れなかった。  
 
 さっきと同じように、ずっと昔、オレが赤ちゃんだったときに味わったかもしれない味が再び口を満たした。  
 どこか懐かしい、泣きたくなるような味だった。オレは涙を堪えて一心に吸った。  
 
 
 また部屋の外が騒がしくなった。向こうの方で、  
「よーし、じゃあこの辺りの船室を根こそぎ探せ!」  
「中に誰かいやがったら、構わねえからぶち殺してしまえ」  
と声がしたかと思うと、乱暴にドアを開ける音、悲鳴、そして銃声が聞こえてきた。  
 
「いけないっ」  
 あびるお姉ちゃんは、素早くオレの身支度を整え、自分もぱっと着替えると、オレを抱き抱えて窓へ向かった。  
 
 丸形の窓は外へ開くようになっていた。お姉ちゃんもオレも楽々通り抜け、外に続いている非常通路をたどった。  
 
 大分長いこと逃げ回っていたが、奴らの数は無駄に多い。とうとう見つかってしまった。  
 
 じりじりとオレたちは追い詰められた。  
 
 とその時、あびるお姉ちゃんは急に左手の肘から上に巻いていた包帯をスルスルッと解くと、右手で左手を引っ張った。  
 
 すると、ポンッと音を立てて肘から先が抜けてしまった。お姉ちゃんはそれを奴らに向かって放り投げた。きっちり三秒後。  
 
──ドカーーーーーンッ!!  
 
それは大きな音を立てて爆発した。奴らは吹っ飛んだ。  
 
「さっ、今よ」あびるお姉ちゃんとオレは駆け出した。オレは走りながら尋ねた。  
「お姉ちゃん、手大丈夫? 痛くない?」  
「大丈夫よ。すぐまた生えてくるもの」  
「そうかぁー。お姉ちゃんってスゴいなあ」  
「えっへん! なんてね」  
 
 新たな追っ手が来た。お姉ちゃんは小声で、  
「交クン、お姉ちゃんとなら水怖くない?」と聞いてきた。オレはもちろん、  
「うん、へっちゃらだい」と答えた。  
「よかった。じゃあ、よく聞いてね」お姉ちゃんが作戦を教えてくれた。  
 
「もう一回ドカーンってするから、その間に海に飛び込みましょ」  
「大丈夫?」  
「大丈夫。それに」相手の声が近づいてきたなか、オレの耳に手を当てて言った。  
 
「お姉ちゃんのおっぱい、大きいって思うでしょ」  
「うん」  
「大きいおっぱいは、水に浮くのよ」  
「へええぇぇ! そうだったんだ」こんな時なのに、オレは素直に感心してしまった。  
 
 手すりがあるところまで来た。はるか下は海だ。船の周りは白い泡が立っている。水の色は黒いが、所々明るい緑の光が見えた。  
 
「じゃあ、いくわよ。お姉ちゃんにしっかりつかまっててね」  
「うん!」  
 
「うん!」  
 あびるお姉ちゃんは、左肩の包帯を解くと、残っていた肘から上を引っこ抜いた。さっきより大きな音がポオンッとした。  
 
「よーし。せえーのっ」  
 腕を放り投げた。ちょうど三つ数えた所で奴らに命中し、大爆発した。  
 
「じゃあ行くわよ。しっかりつかまっててね」  
オレはぎゅうっとあびるお姉ちゃんにしがみつき、おっぱいに顔を埋めた。  
 
「たあっ」  
 お姉ちゃんは右手でオレを抱きしめると、手すりからカッコ良く飛び込んだ。  
 
 落ちる途中で気がついたら、お姉ちゃんはオレを両手で抱きしめてくれていた。もう左手生えたんだ、よかったなあと心の底から思いながら、オレたちは暗い水の方へ静かに落ちていった。  
 
      ☆  
 
「あれ? 交、この人形いらないんです?」  
「プラモデルだろ」  
「……い・ら・な・い・ん・で・す・か?」  
「いらないよ。オレ、もうプラモや人形じゃ遊ばないことにしたんだ」  
「ほぉ。いったいそりゃまた、どうして?」  
「どうしてもっ」  
「ふぅーーーーん……」  
 
 
     第八夜  
 
 
 風呂から上がり、頭を乾かし終わって落ち着いていると、いつもはケータイばかりいじっている芽留お姉ちゃんが、突然オレの手を握ってきた。  
 
 日頃無口な芽留お姉ちゃんが何を、とびっくりして顔を見ると、なぜか悪戯っぽく微笑んでいる。相変わらず口はきかない。  
 
 ふと頭の中に、  
 
『おい、オレの言うことがわかるか』  
という声が響いた。  
 
 オレはびっくりして辺りをキョロキョロ見回していると、  
 
『どこ見てんだよ。オレだよオレ』という声が響いた。オレという割には女の声だ。  
 
 オレの側には女は一人しかいない。芽留お姉ちゃんを見ると、ますますニンマリしている。  
 
『そーだよ。オマエの目の前にいる美人のネーチャンだよ』  
と聞こえてきた。  
   
 芽留お姉ちゃん、いったいどうして、と言おうとしたら、  
 
『どうしてかって? オレはこうやって人に触ってる間は、そいつに思ってることを直に頭の中に伝えられるし、そいつの考えてることもぜーんぶ分かるんだ』  
「へええ、凄いなあ」オレは素直に感心した。  
 
『だからよ、オメー変な事考えるなよ。オレの裸とか。すぐ分かるんだからな』  
 
 それまで考えたことがなかったのに、裸と聞いたとたん、さっきお風呂でみた芽留お姉ちゃんの裸が思い出された。  
 
 つるんっとしたお尻、つるつるっとした背中、ピンクの先っちょがついたおっぱいから真っ白のお腹にかわいいオヘソ、そしてやっばり生えてたアソコ…  
 
 オレの想像は頭に響く鋭い声でかき消された。  
 
『あっ! テメー言った端からソーゾーしやがって! 大体“やっぱり生えてた”の“やっぱり”ってなんだよ? オレをなめてんのか? このエロマセガキが!』  
「ごめん。芽留お姉ちゃん、ごめんなさ」  
『いーや許さん。オメーみたいなやつはお仕置きでヒーヒー言わせてやる』  
「そんなあ」  
『うるせー! さあ、来い!』  
 
 オレは裸で芽留お姉ちゃんに手首を掴まれたまま、お姉ちゃんの部屋に連れて行かれた。  
 
 
 芽留お姉ちゃんの部屋で、オレはベッドに押し倒された。すぐに芽留お姉ちゃんが馬乗りになってきた。  
 
『さーて、どんなオシオキをしてやろーか』  
 
という声がおぼろげに聞こえたかと思うと、姉ちゃんの顔が近づいてきた。顔がぶつかる、と思ったら、おでことおでこをひっつけてきた。  
 
『どーだ。これならオレの声がもっとよく響くだろう』  
 
 黙って頷いた。突然、頭の中に、オレが芽留お姉ちゃんにお尻をペンペンされている様子が浮かんだ。芽留お姉ちゃんの手がオレのお尻をぶつたび、お尻に真っ赤な手の跡がついて腫れ上がっていく。  
 
「止めて! ぶたないで! ごめんなさい、ごめんなさーい!!」オレはぶたれるのがイヤで、必死で謝った。  
 
 芽留お姉ちゃんは額をつけたままオレをじいーぃっと見つめていたが、  
 
『しゃーねーな。じゃあ、今度だけだぞ』  
と、やっと許してくれた。芽留お姉ちゃんは、おでこをひっつけると、考えている動きまで相手に伝えることが出来るようだ。  
 
 額を離してすぐにまたオレの手首を握っていた芽留お姉ちゃんは急に、  
 
『おい。オメー、“女”を知ってるか』  
と尋ねてきた。目は好奇心でいっぱいというふうにくりくりっとしている。  
 
 オレは、何を当たり前のことを、と不思議に思いながら答えた。  
 
「ん? そりゃあ知ってるよ。だいいち芽留お姉ちゃんだって女じゃねーか。それに千里お姉ちゃん、晴美お姉ちゃん、霧お姉ちゃん…」  
 
 お姉ちゃんたちの名前を挙げていると、芽留お姉ちゃんは笑いだした。  
 
「うふふふふふ……」  
 
 オレは芽留お姉ちゃんの笑い声を初めて聞いた。しばらくするとまた頭に声が響いた。  
 
『ククククッ、大笑いだぜ。やっぱオメーはネンネだな。よーくわかった。それなら』手首を握る力が強くなった。  
 
『オレが“女”を教えてやる。全部はダメだぞ。オレがいいって所までだ』  
 
オレはよくわからず当惑していた。  
(おんなを教えるって、当たり前のことをいったいどうするんだろう?)  
 
 すると、芽留お姉ちゃんはオレを抱え起こすと、さっきとは逆に、お姉ちゃんが横になり、オレをお姉ちゃんの上にまたがらせた。そしてお姉ちゃんはパジャマの上のボタンを全部外してぽすっとはだけた。お姉ちゃんの胸が露わになった。  
 
 お姉ちゃんたちの中では背が低いし、おっぱいも小さい方だが、それでもちゃんと膨らんでいる。絶妙のバランスで、触ったら壊れそうだ。  
 
 それに、先っちょの色がとっても綺麗だ。ずっと前、海に行ったときに拾った桜貝みたいな色だな……  
 
 思わずおっぱいに見とれていると、  
 
『よーし、じゃあまず胸からだ』姉ちゃんが指図してきた。  
 
 オレの手首を掴んで、両手を芽留お姉ちゃんのおっぱいの上に置かせた。  
 
『よーし、じゃあゆっくり揉んでみろ。いいか、ゆっくりとだぞ』  
 
オレは言われたとおり、両方のおっぱいをゆっくり揉んでみた。むにゅっ。…もにゅっ。  
 
 おっぱいの形がオレの手の動きで変わる。ちょっと力を緩めるとすぐに元に戻る。おっぱいってこんなになってるのか…オレは夢中になって、でも優しく優しくずーっと飽きもせずに揉んだ。  
 
「う…うぅ…ん…んッ」気が付くと、芽留お姉ちゃんが声を出していた。これも初めて聞く声だ。  
 
『よーしよし。じゃあ、次は舐めてみ…といってもこれは難しいな。』なんて独り言を言っていたが、  
『吸ってみろ。いいか、赤ちゃんみたいにきつく吸うんじゃねーぞ。優しく、そーっとだ』  
 
 よくわからなかったが、そっと一回だけ、ちゅっと吸ってみた。  
 
『うん。そうだ。何回かそうしてみろ』  
 
──ちゅっ…ちゅっ…ちゅっ…ちゅっ…  
 
「あ…あぅ…はぅぅ…はんッ」芽留お姉ちゃんの声が少し大きくなった。気が付くと、白かったおっぱいに血の気が差して赤みが付いている。  
 
『よ、よーし…胸はこのくらいでいいだろう』 気のせいか、息が荒くなっている。  
 
『次は下を触れ…と言いたいが』お姉ちゃんはおれの手首をまた掴んで指を見た。  
 
『ちょっと爪が伸びてるな。…いーか、女と付き合うときは、爪はいつでも切っとけ』  
「…うん」  
『しょーがない。じゃあ、舐めろ』  
「?」  
 よくわからないのでぽかんとしていると、芽留お姉ちゃんは再びオレを仰向けに寝かせ、上から被さってきた。  
 
 ただ、体の向きが上下反対だ。お姉ちゃんのお尻がこっちに来る、と思っていたら、姉ちゃんはオレのちんちんを掴んだかと思うと、ぱくっと咥えてきた。  
 
 びっくりしていると、またオレの頭に声が響いた。  
 
『よーし。じゃあ、これからオレの言うとおりにしろ。いいか、絶対に失敗するな』  
「わ、わかったよ」  
 
 芽留お姉ちゃんのお尻がオレの顔に近づいてきた。不思議なことに、オレの口の辺りには筋があって、なぜかびちょびちょしている。  
 
『その上から舐めろ。いいか、ゆっくりだぞ』  
 
 よくわからないまま、筋のあたりをなぞって舐めてみた。  
   
──ぷしゃあああぁぁぁ……  
 
 いきなり何か出てきた。おしっこ…ではない。においが違う。甘酸っぱい、りんごみたいな香りの汁だ。顔一面にかかったが、汚いとは思わなかった。  
 それでオレは舐め続けた。頭の中に芽留お姉ちゃんの言いつけがどんどん出てくるので、その通りにしようとだけ思い、失敗しないように舐めていく。芽留お姉ちゃんにおちんちんを舐められているとつい間違えそうになるので必死だった。  
 
 舐める度に汁がこんこんと湧いてくる。オレの頭はだんだん水たまりに浸かっているようになった。  
 
 気が付くと、いつの間にかオレたちは海の中にいた。顔も頭も全部海に浸かっている。そしてお互いに舐め合っている。  
 
 オレが頭を動かす度、水が動いて波が出来る。  
芽留お姉ちゃんが頭を動かす時も同じだ。芽留姉ちゃんとオレは、まるで波を作り合いっこしているみたいに、いつまでもずうっと舐め続けた。  
 
 やがて波が激しくなった。  
「あっ…あん…あンッ…あぁっ」  
『うう、ガキにイかされるなんて…』姉ちゃんの本当の声も、頭に響く声も、両方とも大きくなった。  
『はああ…でも、気持ちいい…チクショーオメエ上手だよ…』  
 
 オレが頭を動かす度、水が動いて波が出来る。  
芽留お姉ちゃんが頭を動かす時も同じだ。芽留姉ちゃんとオレは、まるで波を作り合いっこしているみたいに、いつまでもずうっと舐め続けた。  
 
 やがて波が激しくなった。  
「あっ…あん…あンッ…あぁっ」  
『うう、ガキにイかされるなんて…』姉ちゃんの本当の声も、頭に響く声も、両方とも大きくなった。  
『はああ…でも、気持ちいい…チクショーオメエ上手だよ…』  
 
 大波が続けてきた。さらわれないように、必死に芽留お姉ちゃんにしがみついて舐め続けた。  
 
「ふあっ…はあん…あうンッ…いあぁぁッ!」  
『はあああああああああああああああぁっ!!』  
 
 とうとう、オレたちの背丈の何倍も高い大波がきた。オレはちんちんを掴まれていて逃げられず、みるまに大波に飲み込まれた。  
 
ズズズズザザザッパアアアアアァァァ……  
「うわあああああああああああぁぁぁぁっっ」  
 
      ☆  
 
「なあ、交」  
「なあに、倫姉ちゃん」  
「正月はいろいろ煩わしいことが多いので、お兄さまたちとグアムあたりに逃げようと思う。お前も来るか? 連れてってやるぞ」  
「ぐあむって、何があるの?」  
「グアムといえば、海に決まっておる。寒い日本を離れ、灼熱の日差しの下で海水浴。たまに和服がいやになるときもあるが、日本では人目もあるしの。いいぞー、綺麗な海…」  
「海!? オレやだよ」  
「? どうした?」  
「やだ…やだやだやだ! 海なんかやだ! 絶対にイヤだ! わーーーーーーーーーーーん」  
「あっ、交!………どうしたのじゃ、一体!?」  
 
 
     第九夜  
 
 風呂から上がってマリアお姉ちゃんと話していたら、今、両親と会えないのがお互いに同じだね、という話になった。  
 
「交クン、寂しくないカ」  
「うーん…お姉ちゃんには本当のこと言うけど、やっぱり寂しいよ」オレは慌てて付け加えた。  
 
「あ、もちろん、マリアお姉ちゃんと一緒にいるときは寂しくなんかないよ。それに他のおお姉ちゃんもよくしてくれるし、アイツもまあ養ってくれてるし」  
 
 マリアお姉ちゃんはしばらく考え込んでいたが、やがてこんなことを聞いてきた。  
 
「夢でもいいからパパママに会いたいカ?」  
「そりゃあ、もちろん会いたいよ」  
「マリア、もしかしたら交クンをパパとママの所に連れていけるかもしれナイ」  
 
「え〜〜!? ホント?」  
「ウン。じゃあ、ちょっとマッテネ」  
 
 マリアお姉ちゃんは後ろを向いて何やらごそごそしていたが、やがてゆっくりとこちらを向いた。  
 
 お姉ちゃんを見てビックリした。パンツをはいていなかったのだ。  
 
「マリアお姉ちゃん! パ、パンツ!」  
 オレは両手で目を覆った。言っておくが、決して指の隙間から覗いたりしてはいない。  
 
「さ、ここさわってミナ」  
 お姉ちゃんは自分の股を指差した。目のやり場に困りながらも恐る恐る触ってみた。  
 
 想像してたのとは違って、何だかこりこりっとした感触だった。他の姉ちゃんたちみたいに、あまり毛が生えていないのだ。縦筋が一本、すうっと入っているだけだ。男とはずいぶん違うなあ…  
 
「もっとキチンと触るヨ」マリアお姉ちゃんが言った。  
 きちんと触るには場所が正しくなければならない。そこで、オレは男として重大決心をして姉ちゃんの指先をきちんと見た。  
 
 指先は、筋の上の切れ端辺りを指していた。  
 
オレはそこに人差し指を伸ばした。ちょうど筋が入り始めたところに指を置いてみた。なんだかぴったり収まった。  
 
「いいよ。その調子ダヨ。ユックリこすってチョーダイ」  
 
 言われたとおり、そろそろとこすり始めた。  
 
──すり…すり…すり…  
 
 すると、こすっていた所から梅仁丹みたいなものが顔を覗かせてきた。  
 
「よーしヨシ。ソコ、周りをなでてみて。優しくナ」  
 マリアお姉ちゃんが言ったとおり、優しく撫でてみた。  
 
──なで…なで…なで…  
 
 だんだん透明な汁がじわじわっと湧いてきた。仁丹が膨らんできてプチトマトみたいになった。真っ赤な綺麗な珠がつやつやと輝いている。  
 
 気のせいか筋も大きくなり、筋というよりは割れ目みたいになっていてプチトマトの下の方までかすかに見えそうな気がする。  
「いいヨ交クン、なかなか上手ネ。そのタマ、ソーッと磨いてみて」  
 
 オレは言われたとおり、プチトマトを指で優しく磨き始めた。  
 
──するり、するり。きゅっ、きゅっ。  
 
 赤いビー玉みたいなものが、ますます赤みを増して膨らんできた。  
 
 筋はすっかり割れ目になっている。割れ目はだんだん大きくなり、中が見え隠れしていた。中は白味がかったピンク色をしているのがはっきり見える。  
 
「オオッ…」マリア姉ちゃんが呟いた。「交クン、いいゾ。もっと、モット」  
 
 今や珠は甘酸っぱいスモモ位に膨らんでいた。  
オレはさらに優しくさすってあげた。珠はオレがさする度にプルプルと嬉しそうに震えた。  
 
 やがて珠の下に洞穴が見えてきた。入り口はマリア姉ちゃんの肌の色だが、中の壁はピンクだ。肉色と言ってもいいかもしれない。  
 
 さらに擦っていると、やがて珠が真っ赤なリンゴのように膨らんだ。  
 オレはそのリンゴをキュッキュッと磨いた。丁寧に丁寧に磨いた。リンゴ磨きなら任せてほしい。オレの得意技だ。  
 
「オオオオオオオオォォォォォォォォ…」  
 
 マリア姉ちゃんが叫ぶと、割れ目が大きく広がった。洞窟が入り口を開けた。  
 
「今だヨ。サア交クン、中に潜って」  
 オレは頭からマリアお姉ちゃんのあそこに潜っていった。  
 
 入り口こそ潜らねばならなかったが、中は意外と大きく広がっていて、オレは立って歩くことが出来た。  
 辺りはピンクの皺というか襞に覆われている。所々に珠がついて電球のように辺りを照らしている。赤、ピンク、黄色、赤紫。色とりどりだ。  
 
 ここでマリアお姉ちゃんの声がした。  
 
「珠に全部触って。灯りになるヨ」  
 
 なるほど、珠に触るごとに灯りが点った。その光が襞に反射してテカテカに光る。  
 
 しばらく行くと、ちょっとした広場があった。そこから白い半分透明の階段が緩いカーブを描きながら空の遙か彼方へ続いていた。  
 
 どうしようか迷っていると、  
 
「後から行くヨ。先に行ってナ」とマリアお姉ちゃんの声がした。オレはその階段を上っていくことにした。  
 
 どこまでもどこまでも、オレは上っていく。ふと下を見た。底がどこか分からないほど高いところを自分は上っているのだと分かったが、怖いとは思わなかった。  
 
 やがて、階段の果てる遙かな上に明るい星が二つ見えた。  
   
――父ちゃんと母ちゃんだ!   
 
 なぜかそのとき、ぱっと直感した。  
 
 そのとたん足下の階段がふっと消え、踏みしめている感覚がなくなった。  
 
 だがオレは下に落ちなかった。いつの間にか宙に浮いていたのだ。しかも、そのことが当然だと思えた。  
 
 気がつくとオレは小さな星になっていた。  
 
そして、父星と母星を求めてどこまでも空高く上っていった。  
 
 ただ、いつまで経ってもマリアお姉ちゃんはやって来ない。オレは何度も何度も振り返ったが、ついにマリアお姉ちゃんは来なかった。  
 
      ☆  
 
「交…サラダの中のプチトマト、なぜ残すのです」  
「……オレ、もうお腹いっぱいだから」  
「果物も食べなさい。ブドウ」  
「いいよ。お腹いっぱいなんだよう」  
「そう、でも食べないと大きくなれませんよ」  
「……もう、やだやだ、欲しくないって言ってるだろ! わーーーーーーーーーーーーんッ」  
「あ、こら、交! まだご飯の途中でしょう! 待ちなさい! 交!」  
 
 
     第十夜  
 
 霧お姉ちゃんとお風呂に入っている。  
 
 オレの世話をしてくれるお姉ちゃんたちはみんな美人だったり可愛いかったりするが、中でも霧お姉ちゃんは一番きれいだと思う。  
 色白で美人だし、声も話し方も可愛い。それに作ってくれるご飯も美味しい。  
 手足はお人形さんみたいにホッソリして長いのに、…おっぱいは大きい。なんとなく、オレの母ちゃんって霧姉ちゃんみたいな人だったんじゃないかなって思う。  
   
 こんなことを思いながら、湯船に浸かってお姉ちゃんにだっこされ、膝に乗っている。お姉ちゃんの顔とおっぱいを代わる代わる見ながら百まで数えた。  
 
 もちろん洗ってくれるのも優しく丁寧だった。オレはシャンプーは大嫌いだが、霧お姉ちゃんの時は素直に洗ってもらうようにしている。  
 
 
 風呂から上がって体を拭いてもらった。  
 
「お姉ちゃん、ちょっと髪の毛を乾かすね」霧お姉ちゃんはこう言ってから、いたずらっぽく付け加えた。  
 
「交クン。いい子だから、お姉ちゃんがいる部屋、絶対に開けちゃだめよー」  
「あ…開けないよ!」オレはちょっとドギマギした。  
「うふふ…じゃあ、ちょっと待っててね」襖が閉まった。  
 
――絶対とは言ったけど、言い方が優しかった。だから、ちょっとくらいフザケて覗く真似をして開けてもそんなに怒られないだろう。  
 それに、いい子だからなんていって、オレを子ども扱いした。オシオキしてやらねばならない。  
 
 そんな軽い気持ちから、オレは霧お姉ちゃんがいる部屋の襖をそーっと開け、片目で覗けるだけの隙間を作った。  
 隙間に目を付け、ワクワクしながら覗いたオレは一瞬、あれ? と思った。  
 
 霧お姉ちゃんが、どこにもいないのだ。  
 
 代わりに、部屋の中にはオレよりも背が高い大きなこけしが立っている。顔はこちらを向き、目をつぶっている。  
 
「お姉ちゃん!?」  
 
 思わず襖を全部開け中に入ろうとすると、突然そのこけしが目を見開いた。見る見る鬼のような顔になってオレを睨み付けたかと思うと恐ろしい声で、  
 
「開けるなあああぁぁぁァァァ!!!」  
 
と叫びながらオレに小さなこけしを投げつけてきた。  
 
「ひぃっ!」オレは慌てて襖を閉めた。とたんにオレの顔があったところを目がけて投げられたこけしが襖を突き破ってきた。  
 偶然それは襖を突き抜けないで途中で止まった。もしあれが当たっていたら、タダでは済まなかっただろう。オレは必死で逃げた。  
 
 だが、奥の部屋に逃げ込んでほっと一息つく間もなく、押入れがいきなりスパーンとひとりでに開くと、  
 
「開けるなあァ!」の声と共にまた大きなこけしが小さなこけしを投げてきた。オレは半泣きになりながら急いで襖を閉めた。小さいこけしがオレの目の前の襖を突き破りかけて止まった。  
 
「うわああああああん」  
 
 またもこけしに襲われたオレは泣き出した。  
 この部屋から早く逃げねば、と思って入り口に走った。だが、たどり着く寸前に、  
 
「開けるなあァ!」の声と共に入り口の襖が開き、さっきの大きなこけしが小さなこけしを投げてきた。同じように急いで襖を閉めた。小さいこけしがオレの目の前の襖を突き破りかけて止まった。  
 これでオレはこの部屋から出られなくなった。  
 
 ふと気が付くと、この部屋は四方の壁どころか、天井から床に至るまで、大小無数の襖に覆われている。  
 
 そして、いずれかの襖が不規則にすぱっと開いては、  
 
「開けるなぁ!」の大音声と共にこけしが飛んでくる。オレは慌てて閉める。これが何度も何度も繰り返された。  
 
 不思議なことに、開いた襖に触れさえすればその襖は勝手に閉まるし、小さいこけしは勝手にこちらに突き抜けてこない。  
 
 だが、あまりにたくさんの襖を閉めようとして四方八方に目を配り身体を捩ったので、オレはもうへとへとになった。  
 身体が、口の中で溶け始めたボンタン飴みたいにへにょへにょになり、もうどうにも手足が動かなくなったところで、オレの正面の襖が開いて小さいこけしが迫ってきた。  
 
 身も心も疲れはてていたオレはどうしても避けきれず、とうとうこけしがオレの右腕に命中てしまった。  
 
 骨が砕けたーーと思いきや、不思議なことにこけしが当たってもぜんぜん痛くない。痛くないどころか、当たったという感覚さえない。  
 
 やれやれと思いながら左腕でこけしを取ろうとして、あれ、と思った。皮膚にぴったり張り付いて、こけしが取れないのだ。  
 
 懸命に引っ張っていると、今度は後ろの襖が開いてこけしが投げられた。やはり避けきれないで、オレのお尻にひっついた。これも、まるで元から生えていたようにびくともしない。  
 
 さらに悪いことに、オレに取り付いた二本のこけしがだんだん重くなってくる。右腕を上げていることが辛くなる。お尻が重くて立ちずらくなる。  
 
 そうこうするうちに、次々と襖が開いてはオレにこけしが投げつけられてくる。  
 全部が全部オレの鼻、左足、右脇腹、喉、……と、次々とオレにひっついては、すぐ鉛が入っているように重くなる。  
 
 オレはとうとう全身からこけしをはやしたこけし人間のようになり、身動きが出来なくなった。  
 
 突然オレの足元の床だった襖が開いた。オレはまっ暗な穴ををまっさかさまに落ちていった。  
 
「うわあああああああああああああああぁぁ」  
 
      ☆  
 
「交クン。交クン。大丈夫?」  
 オレはハッと飛び起きた。霧お姉ちゃんがオレの顔を覗きこんでいた。  
 
「霧お姉ちゃん…なんだ、夢かぁ」  
「うなされてたわよー。どんな夢見てたの?」  
 
 説明しようとした。だがすぐに、正直に説明すると、お姉ちゃんを覗こうとしたのを白状することになると気付いた。そうしたらお姉ちゃんに嫌われてしまう。  
 
「ううん…何でもない」  
「そう?…ならいいけど」  
 
 ふとお姉ちゃんを見てびっくりした。パジャマがスケスケで、女の人らしい体の線どころかおっぱいやアソコまで見えてしまっているのだ。  
 オレは真っ赤になって俯いた。おちんちんまで硬くなってしまった。  
 
「うふふ…そっか……交クンも、やっぱり男のコなんだね」  
 
 姉ちゃんが近づいてきた。プリンのような甘くていい香りがする。オレの肩に手を置いた。顔が重なってきた。唇が触れる。  
 
――チュウだ!   
 
 オレは動けずにいた。カァーッと頭に血が上った。  
 
 いつの間にか唇が離れていた。お姉ちゃんは優しくオレを見つめていたが、やがて尋ねてきた。  
 
「交クン、キスは初めて?」  
 
(チュウのこと、「きす」って言うんだ…)  
「よくわかんない。覚えてない」  
 
「そっか…」お姉ちゃんは黙ってしまった。たぶん父ちゃんや母ちゃんとはしたのかも、と言おうとして、オレの今の様子を思い出して言葉を飲み込んだんだなと思った。  
 だから姉ちゃんを心配させないように急いで付け足した。  
 
「あ、でも、子どもの頃は覚えてないから。大きくなってからはお姉ちゃんが初めてだよ」  
 
「そう、よかった。…じゃあ、お姉ちゃんが『初めて』なのね」  
 
「? うん、そうだよ」  
 オレがそう明るく言うと、霧お姉ちゃんは「ゴメンネ」と呟きながらオレのほっぺたに優しく手を添え、また「きす」をしてきた。  
 
 唇がくっついているだけなのに、何だかとても暖かくて、懐かしくて……気持ちいい。心がふんわかして、それに切なくなる。  
 
 どれくらい経っただろう。お姉ちゃんはふっと唇を離した。またオレを優しく見つめると、ぽふっと抱きしめた。柔らかいおっぱいに顔が埋もれた。  
 
「柔っこい…」オレは思わず呟いた。  
「柔らかいの、キライ?」  
「ううん、そんなことないよ。……す、好きだよ」  
「そう?…よかった」お姉ちゃんはオレを抱く手に力を込めた。そして囁くように聞いてきた。  
 
「ねえ、交クン…お姉ちゃん、交クンの『初めての女(ひと)』になっていい?」  
「? 『きす』はもうさっきしたよ」  
「……お姉ちゃんのこと、キライかなあ…?」  
「そ、そんなことないよ! ……オレ、お姉ちゃんのこと、……好きだよ」  
「……」お姉ちゃんは黙っている。嫌われたくないので、一生懸命考えながら言った。  
 
「だから、……だから、お姉ちゃんさえよければ、オレの『はじめてのひと』になってください」  
「……そう? 交クン、優しいのね」お姉ちゃんはオレの頭を撫で、ぎゅうっと抱きしめてきた。  
 
 頭を撫でていた手が下りてきて、肩を抱いていた手と合わさり、オレの背中を抱いた。  
 
 そしてその手がだんだん背中から腰に下りてきた。片手はお尻を下から支え、もう片方がおれのおちんちんを握ってきた。  
 
「…あー、硬くなってるね。こけしみたい」  
「!」こけし、といわれてオレはピクッと震えた。  
 それを別の意味に考えたのか、霧お姉ちゃんは、  
「…そのままで、楽にしていてね」と優しく囁き掛けた。  
 
 お姉ちゃんはもぞもぞ動いていたが、そのうち、おちんちんの先がなんだか湿っているところに触れた。  
 
「!」ちんちんの先に電気が来た。  
 
 お姉ちゃんはオレのちんちんを軽く上下に動かした。その度にちゅくちゅくっと小さな音がする気がした。濡れた毛のようなものも感じられた。  
 
 しばらくそうされていた。お姉ちゃんは黙っていたが、息が乱れている。お姉ちゃんが身体をちょっとオレの方に寄せてきたかと思うと、おちんちんが不意に暖かいもので包まれた。  
 
「お姉ちゃん!」オレは思わずおっぱいにしがみついた。いつの間にか霧お姉ちゃんもオレも裸だった。  
 
「怖くないよ。いい子だから、そのまま…」  
 霧お姉ちゃんはオレを宥めるように囁くと、しばらくじいっとしていた。  
 
 じいっとしているだけなのに、ちんちんが暖かくてじんじんとしびれる。なんとも気持ちいい。  
 
 やがて霧お姉ちゃんがオレを抱きしめたまま、静かに動き始めた。  
 
「んっ…んっ…う…」  
 お姉ちゃんは微妙に動きを変えている。苦しいのかなと思ったが、お姉ちゃんはゆっくり動くのを止めない。心配になって、  
 
「お姉ちゃん、大丈夫?」聞いてみた。  
 
「…うん…うっ…だい、大丈…夫…よ」切れ切れにお姉ちゃんは答えた。  
 
「あっ…あっ…交クンの…硬い…」  
「硬いのダメ?」  
「あうっ…んうっ…っ…丁度いい…ところに…あ…当たって…」また切れ切れに答えた。お姉ちゃんはまだ動いている。  
 
 オレも黙った。おちんちんが熱くて溶けそうになってきたのだ。  
 
 初めはお漏らしをしちゃうのかと思ったが、そうではない。チョコレートなら溶けてどろどろになりそうなのに、オレのちんちんはますます硬くなっていった。  
 
 声をあげたらお姉ちゃんに心配をかけると思ったので、代わりに右のおっぱいに吸いついた。  
 
「ひゃうっ……うっ…はうっ」  
 吸いついた瞬間に小さく叫び声をあげたが、姉ちゃんはオレを止めさせなかった。かえって自分も激しく動き出した。  
 
 今頃になってようやくオレのおちんちんがお姉ちゃんのアソコに出入りしているのが分かった。  
 だがオレはおちんちんが火を噴くように熱いのに戸惑い、自分から動くことなど全くできなかった。ただただお姉ちゃんの動きを邪魔しないようにするので精一杯だった。  
 
 首が疲れたので、左のおっぱいにも吸いついた。いつの間にか両手をおっぱいに添えて掴んでいた。  
 
「うン…あン…うぅン……あぅっ…あァッ」  
 
 お姉ちゃんの声が早くなった。オレの頭や腰や尻の下のいろんな所に手を回しては力を込めて抱いてきた。  
 
 オレもおちんちんだけでなく、身体中が燃えていた。おっぱいを吸っていたのか、ただしがみついていたのかさえわからない。ぐにぐにと揉んでいたのかもしれない。  
 
「あん…あう…あぁん…はぁっ…あぁっ」  
 
 お姉ちゃんの声が大きくなった。オレも体中チョコが溶けたみたいに甘々のとろとろになっている。  
 おちんちんだけが太い釘のように硬くとがっている。しかも煮えたぎったお湯の中で動いているみたいだ。  
 
 背中の奥からむずむずしたものが湧いてきた。むずむずが、ゆっくりおちんちんへやって来たかと思うと、しばらく先っぽで行き止まりになったように溜まってじんじん痺れた。  
 痺れた先っぽがさらに熱くなる。じんじんの塊が溢れて腰から身体全体に広がる。もうすぐ何かが出る。おしっこじゃない何かが出る。出したくて出したくてたまらない。  
 
 とうとう我慢しきれなくなった。オレの下腹から何かがおちんちんを通り抜けて外へ出ていく気がした。  
 そのとき目の前が真っ白になり、オレは燃え尽きた。思いっきり声を出してしまっていた。  
 
「お姉ちゃん! 霧お姉ちゃん! お姉ちゃーーーん!」  
「はぁん…交…まじ……交クーーーン!!……」  
 
 オレは頭が真っ白になった後、何も分からなくなっていた。  
 
      ☆  
 
 気が付くと、オレは霧お姉ちゃんに抱かれて布団に入っていた。いつの間にかパジャマがきちんと着せられていた。  
 
 これまで写真の本に載っているお姉ちゃんを見てドキドキした気持ちになったことがある。  
 でも、霧お姉ちゃんや他のお姉ちゃんたちにはドキドキしたことがなかった。  
 
 でも、今オレはとてもドキドキしている。してるんだけど、それでいてとても安心して心が穏やかになっている気がする。  
 
 ずっとお姉ちゃんと一緒にいたい。お姉ちゃんのためなら何でもしたい。  
 
――母ちゃんと一緒って、こんな感じなのかなぁ。……あ! そうか! お姉ちゃんが「はじめてのひと」になったっていうのが、こーゆうことなのかなぁ……  
 
 そんなことを思いながら、霧お姉ちゃんにそっと身体をすり寄せ、オレはまた眠りに落ちていった。今日はぐっすり眠れそうだ。  
 
 
──[完]──  
 
 

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