まといの緊縛騒動から半日、望の説得にまといも縄を解き、
放課後になるころには2のへは平穏を取り戻していた。
しかし、望の心は平穏ではいられない。
原因は出席簿にあった。
出席簿には望の『特別授業』を希望する生徒たちの名が記されている。
「はぁ…」
資料を整頓しながら何度目かのため息。
とはいえ、もはや逃げ道はない。
特別授業を否定すれば、望は生徒を緊縛凌辱した淫行教師という事を認めることになる。
…と、千里に脅された。
「今日はもう帰ろう…」
誰に聞かせるわけでもなく呟く、
空には黒い雲が低く垂れ込めていた。
雨が降る前に、と望は荷物をまとめて校舎を出る。
見上げた空は暗く、今にも泣きだしそうだった。
―まるで、私の今の気持ちを代弁してくれているようですね…
空を見上げながら歩く望、その額にポツリと水滴が落ちる。
―雨
望がそう認識している間に雨足は急激に激しくなり、
望は校舎に戻ることを余儀なくされる。
―泣きたいのはこっちですよ…
少し濡れた服を軽く手で払いながら、
つい一分前まで共感していた空に、心の中で悪態を吐く。
天気の悪さも手伝って薄暗くなった夕方の廊下、
足は自然とある部屋に向かっていた。
いつのまにか雷まで鳴りだしてつい早足になった望が、
かつては空き教室で現在は霧が自宅として引き籠もっている…小森宅前に辿り着く。
望は一息つくと、軽くドアを叩く…が、返事はない。
「小森さん、入りますよ」
鍵がかかっていないことを確認するとドアを開ける、
まず望の目に飛び込んできたのは…
―ペンギン?
だった。
正確にはペンギンのバックプリントパンツ、その主は頭から毛布を被り震えていた。
「開けないでよ!」
パンツの主が毛布の中から叫ぶ。
それと同時に雷が鳴り、「ひゃぁっ!」と悲鳴を上げる。
「す、すいません!」
相手の声に我に返った望は、慌てて部屋を飛び出してドアを閉める。
「…誰?」
ドアの中から声、部屋の主…霧だ。
「い、糸色です。
雨で帰れなくなってしまったので少し休ませてもらおうと…」
「せ、先生っ?ちょっと待って!」
ドアの向こうから微かな物音、しばらくして再び室内から声がかかる。
「どうぞ」
「失礼します…」
ペンギンを見てしまったためか、やや緊張した面持ちで望が部屋に入る。
そんな望に、座って肩から毛布を被った霧が声をかける。
「えへ、せんせ…」
先程雷に怯えている姿を見られたためか、ばつの悪そうな苦笑い。
「…先生、見た?」
「な、何をですか?」
「私の…お尻」
望が言葉に詰まる、予想していた話題と同じだった。
「見てません」
「柄は、何だった?」
霧のあからさまな誘導尋問。
「その手には乗りませんよ、
言ったら本当は見たのがバレてしまうじゃないですか。
そして告訴されて、私は法廷画に…!
絶望した!偶然下着を見ただけで告訴される世間に絶望した!」
語るに落ちる望、そして沈黙。
「…す、すいません…」
うなだれての謝罪、何だか昨日からこんなのばっかりだと思う。
「良いよ。
先生だったら、見られても良いよ」
霧に前髪の隙間から見つめられた望が目を逸らす。
今の望には他の話題が欲しかった。
「ところで…」
いったん言葉を区切った望が霧の姿を見つめる。
「暑くないんですか?」
季節は春…夏服にはまだ日があるが、毛布を被って暮らすにはやや暖かすぎる。
「暑い…よ」
霧は不意に目を伏せ、毛布の中の体が僅かに動く。
「でも、無いと不安だから…お風呂の時とかは我慢するけど…」
霧は望の方を見ずに、途切れがちに喋る。
「そうだったんですか…」
望にはそれしか言えなかった、
教師のくせに生徒の事をわかっていない、それが少し悔しかった。
「もしも、改善したいと思うのなら言ってください、
私でよければ手伝いますよ。」
何気ない一言、それを受けて霧が顔を上げた。
「…せ、先生が、ぎゅってしてくれたら…毛布いらないかも…」
「は…?」
「まといちゃんには、したんだよね?」
「な、何を…ですか?」
「特別…授業」
霧の言葉に望は息苦しいほどの緊張に襲われる。
「なぜ…それを…?」
やっとの思いで言葉を絞りだす。
「可符香ちゃんから連絡があって、参加希望したから…」
霧の顔が少しづつ赤くなる、そして…望を見つめる…まっすぐに。
「わ、わかりました…」
特別授業の責務と霧に対する興味、
その二つの感情に後押しされるように、望は小さく頷いた。
耳まで赤くした霧が毛布を脱ぎ、下着姿になる。
「先生!は…早く…」
望の目に、細かく震える霧の姿が映る。
―そうか…恐いから…
覚悟を決めて湿った着物を脱ぐ、
そして霧の後ろに回ってそっと抱き締めた。
「せんせ…」
抱き締めた直後こそ体を強ばらせた霧だったが、すぐに望に体を預けるように寄り掛かる。
「えへ、きもちいい…」
霧は目を細め、安心しきった声を出す。
逆に望はまったく余裕のない状態だった。
霧の匂いや体温、柔らかさなどすべてが望の本能をくすぐり、理性を削り取っていく。
―こ、これ以上は…!
既に反応しはじめた肉棒に自身の危機を感じ取った望が、霧を抱き締める手を離そうとする。
しかし、霧は望の手を取り、自身の胸へと導いていった…
「先生…触っても、いいよ。
その代わり、勇気を…下さい…」
消え入りそうほど小さな霧の告白、それでも望の耳に、そして心にしっかりと届いていた。
「本当に、いいんですね?」
霧を布団に寝かせた望が問い掛ける、
本来越えてはならない一線、その覚悟があるかどうかを。
「うん、相手が先生なら…後悔しない」
霧が目を閉じ僅かに唇を望の方へ向ける、
同じく目を閉じた望が、霧の唇に自分の唇を重ねる。
「…初めてのキス…あげちゃった…」
―しまった。
嬉しそうに照れ笑いを浮かべた霧を見て、望ははっと我に返る。
誘われるようにキスしたものの、別にキスをする必要な無かったのだ。
霧に触れようとした手が止まる、心には迷い。
「先生…もっと、教えて…ね?」
霧のねだるような甘い声が望の迷いをかき消す。
―そうだ、彼女が望んでいるんです。
そしてこれは課外授業…迷う必要なんて…
望の手が霧の胸に触れる、霧はこらえるように声を洩らして望の愛撫を受け入れる。
「ん…はぁ、せんせ…」
「小森さんは、自分ではするんですか?」
「そ…そんなこと…」
「授業の一環です、答えてください」
あくまで現在の行為が授業であることを強調する望。
「たまに…するよ、先生のこと考えながら…」
「小森さん…」
―そこまで想われて、嬉しくないはずが無い…
望は迷いを振り切るように、
少しだけ乱暴に霧のブラを上にずらして、直接胸を揉み始める。
下から上へ、すくい上げるような愛撫。
「あ、あ…せんせい…」
乳房への愛撫で反応しはじめた突起…乳首を望が摘むと、霧の喘ぎ声が高くなる。
「ん…」
望が霧の乳首を口に含む。
やはり毛布は暑かったのだろうか、微かに汗の味を感じながら舌先で乳首を転がしていく。
「ふぁ…あっ…ん!」
望の舌技に翻弄された霧が喘ぎながら体を捩らせる。
最後に軽く吸った後に唇を離し、反対側の乳首へ。
今度は最初から吸い、甘噛みしながら、
手でさっきまで攻めていた乳首を指で押して刺激する。
望の愛撫はまだ終わらない。
体のバランスを取りながら空いた手を下へ、ゆっくりと這わせていく。
「あっ…は……え…?」
目を閉じ、望にその身を任せていた霧が驚いたような声を上げる。
望の手が、いつしか自分の太ももの内側を撫でていたことに気付いたからだ。
「せんせ…あっう!」
何か言おうとした霧の言葉は、
望による下着越しに秘所を撫で上げる動きに遮られてしまう。
「小森さん…脱がしますから、腰を少し上げてください」
「うん…」
霧の協力を得た望が彼女の下着に手を掛け、そのまま抜き取る。
露になった秘所に、望の顔が近付いていく。
「あんまり見な…やぁっ!」
霧の言葉が再び嬌声にかき消される。
見るどころではなかった、望が舌を這わせたのだ。
「やだっ…開けない…で」
秘裂を開いて内側を舐められる羞恥に、霧は腕で顔を覆う。
既に濡れ始めていた中を覗き込んだ望の目には、彼女が処女である証が確認できた。
―だとしたら、しっかりと慣らさないと…
望はさらに愛撫を続ける。
入り口を舌で舐めながら、愛液でぬめらせた指で淫核をこする。
「せ、せんせ…ダメ、もうダメ…!」
追い詰められた霧が抗議の声を上げて望の頭を押し返そうとする。
しかし、望は止まらない。結局、霧はその姿勢のまま、絶頂に全身を震わせることになった。
「さっきも聞きましたが、本当に…良いんですね…?」
霧が息を整えている間に服を脱いだ望が最後の確認をする。
「うん、先生なら…いいよ」
これから自分の純潔を奪う男の顔をまっすぐ見つめる霧。
「いきますよ…」
「う……く、んっ…」
望の肉棒が霧の秘所へと沈んでいく。
その痛みに歯を食い縛った霧の口から声が漏れる。
やがて望の先端が、霧の純潔を守る最後の抵抗を破った…。
〜〜〜〜〜
行為が終わり、二人並んで布団の上に座る。
シーツには、霧が大人の階段を上った証となる赤い染み。
服を着た望だったが上に着ている着物は無く、霧が毛布の代わりに羽織っていた。
霧は望に寄り添い、安心しきった笑みを浮かべながら、望の腕を寄り掛かるように抱き締めている。
「まさか、中で出しちゃうなんて」
「すいません…」
「いいよ、先生のなら」
「小森さん…」
望は本当は外に出すつもりだった。
しかし、直前に鳴った雷に驚いた霧に抱き締められてタイミングを逃したのだ。
―常月さんに続いて小森さんまで…しかも彼女は初めての…
「せんせ…今、他の娘のこと考えてなかった?」
「そそ、そんなことはありません!」
望が慌てて左右に首を振る。
霧はそんな望を無言で見つめ、しばらくして口を開く。
「せんせ、私…明日から授業に出るよ。先生にもっと見てほしいから」
「小森…さん…。動機はともかく、それは良いことです」
望は目を閉じる。
―こうして彼女の引きこもりが治れば、抱いた意味があることになりますね…
「あの、せんせ」
霧が何か言おうとした瞬間、まるで計ったようなタイミングで扉が勢い良く開いた。
そのドアの向こうには袴姿の少女…まといがいた。
「常月さん…!」
望は驚愕に目を見開き、突然現れた人物の名を口にする。
まといはドアを開けたものの入るわけでもなく、ただ俯き肩を震わせていた。
その様子に望の体が震える。
―絶望した!修羅場死亡エンドに絶望した!
声にならない叫び…しかし、まといが取った行動は望予想とは違うものだった。
望を中心に霧の反対側に座ったまといが望の腕にしがみつく。
「常月さん?」
望が問い掛けるように名前を呼ぶが、まといは無言のままで望の体を引き寄せる。
「!」
その動きに表情を固くした霧もまた、無言で望の体を引き寄せた。
まるで、『この人は私のものだ』と主張するように…
右へ左へ、引き寄せられた望の体が交互に揺れる。
そのうちに二人ともエキサイトしてきたらしく、
だんだんと望の腕にかかる力が強くなり、その間隔も狭くなっていく。
そして…
「ぐわっ!」
強く、そして左右同時に引っ張られた望が苦痛に呻く。
「せんせ…!ごめん…」
「すいません…先生」
ほぼ同時に謝る霧とまとい。
しかし二人とも望を離す気はないらしく、再び望の体が左右に揺られる。
結局…左右に振られ続けた望が体の不調を訴えるまで、無言の綱引きは続いていた…。