望が霧と体を重ねた翌日、朝の教室が普段と様子が違っていることに気付いたのは、望が教室に入ってすぐだった。  
 
「常月さん、そんな所でどうしたんですか?」  
 
普段は望の背後にいるかどこかに隠れるかして望を見つめ続けているまといが、  
今日は教卓の横に立っているのだ。  
 
「おはようございます、先生」  
 
挨拶を返すまといだが、その表情は冴えない。  
質問には答えないまといにそれ以上食い下がれない望。  
 
「これはいったい…?」  
 
偶然目が合った可符香に助け船を求める。  
 
「定員が一人だからですよ」  
 
「…意味がわかりませんが…?」  
 
仕方がないので望はそのまま教卓につく。  
 
―人影?  
 
間違いなく、教卓の下に誰かがいる。  
 
「せんせ…」  
 
覗き込んだ望を霧の笑顔が出迎える。  
どうやら霧がここに引き籠もっていたため、まといが入れなかったようだ。  
 
「先生が勇気をくれたから来れたんだよ」  
 
屈託のない笑顔を浮かべる霧。  
 
「そうですか…いつかは自分の机で授業を受けられるようにしてくださいね」  
 
頷く霧を見て望が立ち上がる。  
 
「授業を始めます!」  
 
わざといつもより大きな声で宣言する。  
あまり引っ張るとまといが何を言いだすかわからないからだ。  
 
 
参加メンバーが一人増えた以外はいつもと変わらない様子で授業が進む。  
 
ピロリパロピリロラ  
 
不意に望の携帯が鳴る。  
着信画面は芽留からとなっている。  
 
『仕事中だろ マナーモードにしろよカス』  
 
「す、すいません。  
ですがなるべく言葉遣いを…」  
 
メール画面を閉じてマナーモードにしながらぶつぶつ呟く望。  
直後、望の手の中に振動。  
また芽留からの着信だった。  
 
『何で生徒に手を出す犯罪者に気を使わないといけないんだハゲ』  
 
「人聞きの悪い事を言わないでください!」  
 
望が額に汗を浮かべて反論する。  
しかしその声に力はなく、図星を突かれていると解釈されても仕方のないものだった。  
 
「先生、脱線しないできちんと授業を進めてください!」  
 
その様子を見ていた千里ががたりと机を鳴らして立ち上がる。  
その眉間にはしわが刻まれ、視線は望をまっすぐ射ぬいている。  
 
「す、すいません…わかりました。授業を続けます」  
 
その後、この日は滞りなく授業は進んでいった。  
 
しかし、千里は終始不機嫌なままだった。  
 
〜〜〜〜  
 
「では、連絡事項は以上です」  
 
帰りのHRで望が一日の終わりを告げる。  
だが、望にはもう一つ言うべきことがあった。  
 
「今日の昼過ぎ、先生の携帯が湯呑みの中で水没しているのが発見されました…」  
 
望はそこまで言うとだんっと教卓を叩く。  
その音に驚いた霧が身を縮こまらせるが、構わず望は続ける。  
 
「これは紛れもないいじめです!  
絶望した!教師すら標的とされるいじめ社会に絶望したっ!」  
 
冷静さを欠いた望を生徒達が止めに入る。  
そんな中、芽留が一人表情を固くしていたが、それに気付くものはいなかった…。  
 
〜〜〜〜  
 
放課後。  
珍しく芽留に誘われて、望は新しい携帯を買い替えに行った。  
芽留の奨めた店は対応が早く、望はすぐに新しい携帯を手にすることができた。  
 
「助かりましたよ、音無さん。  
やはりこのご時世、携帯が無いと不便ですからね」  
 
『別に 先生のためじゃない』  
 
芽留は携帯の画面から目を離さないため、望は一人で喋っている気分になる。  
しかし他に生徒がいない以上、芽留が口を開かなければどうしようもなかった。  
 
「音無さん、たまには喋ったほうが…」  
 
『なあ先生 他に誰とヤッたんだ?』  
 
望の言葉を遮るように携帯の画面が鼻先に突き出される。  
 
「…してませんよ」  
 
目を逸らして答える。  
次の芽留の言葉はメールによって発せられた。  
 
『じゃあ オレが三人目かW』  
 
「お、音無さん!何を…」  
 
望は芽留の真意に気付いて驚愕の表情を浮かべ、メール画面と芽留の顔を交互に見比べる。  
芽留はもじもじと体を揺らし、俯いて頬を染めていた。  
それはいつもの癖なのかも知れないが、望の目には普段よりも顔が赤いように見えた。  
 
―まさか、音無さんは本気…?いや、彼女に限ってそんなことは…  
 
「ははは、冗談はやめてください。」  
 
『なんだ 怖いのか?』  
 
『もしかして包茎か?なんならオレが剥いてやろうか?』  
 
立て続けに芽留から挑発メールが送られる。  
望の手が震える、昼間に携帯を壊された時の怒りが再燃する。  
 
「ひっ…!」  
 
芽留が小さく悲鳴を上げる。  
望の手が、芽留の携帯を持つ手を強く掴んでいた…。  
 
 
望が芽留の手を強く引き、路地裏へと連れ込む。  
芽留の両手首を掴み、バンザイをさせる格好で壁に押しつける。  
 
芽留は目を伏せてその体を細かく震わせているが、抵抗する素振りはなかった。  
 
「これから特別授業をしますから」  
 
望は短くそう告げると芽留の手を頭上の中央に寄せ、右手でひとまとめに押さえる。  
左手で携帯を奪い取ると芽留が目を見開いて望の方を見上げた。  
 
「ちゃんと自分の口で返せと言えたらお返ししますよ」  
 
芽留は答えない。  
ここまでは望の予想通り。  
 
―携帯…そうだ!  
 
望の頭のなかに一つの趣向が浮かぶ。  
 
「言えるようになるまでは、こうしておきましょうか」  
 
望は取り上げた携帯をいじってマナーモードにすると、芽留のスカートの中へと潜り込ませる。  
 
「…!」  
 
それでも喋らない芽留を無視して手探りで股間へと押しつけた。  
 
「携帯は、もともと口にあてて使うものですから」  
 
下の口…という望なりの悪ふざけだったが、もちろん突っ込む者はいない。  
 
携帯から手を離すと同時に膝を割り込ませ、太ももで携帯を押さえる。  
別に、冗談を言うためにこんなことをしたわけではない。  
趣向は、これからである。  
望は自分の携帯を取り出すと芽留へと電話をかける。  
ヴィィィィ…と、くぐもった振動音が路地裏に響く。望の太ももに袴の布ごしの振動…携帯を隔てて反対側にいる芽留もまた、同じ振動を感じていた。  
 
「っひ!……ぁ……ぅ!」  
突然下腹部を襲う振動に、芽留は堪えるように声を上げる。  
 
そのまま何度も、何度も。  
 
奇しくも望が今している行為は、芽留が昼間に望の携帯を拝借して行い携帯を壊す要因になった悪戯と同じものだったが、  
望にはそれを知る由もない。  
 
「ふ…ぁ……んっ」  
 
刺激を送られるたびにこぼれていた芽留の声が少しづつ熱を帯び、その小さな体がびくん…と震える。  
芽留の手はいつの間にか解放され、スカートの端を強く握り締めていた。  
 
―た、楽しい…!  
 
一方…望は、携帯で少女の体を責め立てることに夢中になってしまっていた。  
手を触れず(芽留の下半身に太ももを押しつけているが、それは別にして)に、  
幼い体に快楽の波を打ち付ける…まるで少女の操縦桿を握ってしまったかのような感覚。  
 
―常月さんの時といい、私はサディストなのかもしれない…  
 
そんな不安を感じつつも攻め手を止めることはできなかった。  
 
不意に、望の着物の胸元が掴まれる。芽留が望にすがりつくようにしながら首を激しく横に振っているのが見えた。  
 
「イキそう…なんですか?」  
 
望の言葉にツインテールの頭が縦に振られる。  
芽留の限界が近い、しかし、もう一つの限界が先に来てしまっていた。  
 
「あ…」  
 
望の携帯のディスプレイが電池切れを知らせ、すぐに画面がブラックアウトする。  
あまりに中途半端、だがここでやめては白けてしまう。  
 
「お、音無さん。続きをしたいならちゃんと自分の口で言ってください」  
 
とっさに機転を利かせた望を芽留がはっとした表情で見上げる。その目には涙を溜め、顔は耳まで赤くなっていた。  
 
「さいご…まで」  
 
しばらく間を置いての芽留の返事。おそらく町中の喧騒の中では聞き取れないほど小さく、弱々しい声。  
 
「よく、言えましたね」  
 
 
先の行為で湿った下着を脱がせて片足だけ引っ掛けておく、さすがに外に置くわけにはいかないからだ。  
 
続いて自分の準備も済ませた望が、芽留の太ももを抱え上げて自らの肉棒の照準を合わせる。  
 
「行きます」と一声かけて芽留の腰をゆっくりと下げていく。  
先端が触れた瞬間、少女が小さく声を上げるが、肉棒が秘所へ埋まり始めるとすぐにその声は悲鳴へと変わった。  
 
「ひぎっ…うー!あぁっ!」  
 
固く閉じた芽留の目から大粒の涙がこぼれ、抱えられた足がばたばたと暴れる。  
望が体を支えているものの、芽留の体重で自然と肉棒は沈んでいき、処女を奪って膣奥まで蹂躙する。  
望の肉棒はそれほど大きい方ではない、だがそれ以上に芽留の秘所は狭すぎた。  
 
「すぐ…終わらせますから…」  
 
芽留の様子に彼女の危険を感じた望はなるべく早く終わらせようと抽送を始める。  
とはいえ体位の都合上、ひたすら芽留の未発達な体を揺すって肉棒を膣内に擦り付けるくらいしかできなかった。  
 
「ぁ…ぅ……」  
 
体内に熱く堅い杭を打ち込まれたような感覚に、芽留が目を見開き声にならない悲鳴を上げる。  
しかし、幸か不幸かその状況は長くは続かなかった。  
「もう…出ます…!」  
 
今までに経験したことの無い締め付けに望が限界を告げると、  
意識的にか無意識なのか芽留の首が縦に一度だけ揺れた。  
 
「く…!」  
 
望は中で達したいという本能的な欲求に歯を食い縛って逆らう。  
芽留の体を壁に押しつけ、腰を下げて爆発寸前の昂ぶりを引き抜く。  
支えを失い崩れるように倒れこむ芽留、  
望はその体を抱き締めながら、白濁を解き放つ。  
自身の先端に触れるセーラー服の布地を感じながら…。  
 
 
行為が終わっても芽留は目を覚まさず、結局望が背負ってあげることになった。  
彼女の制服の胸元は望の精液で汚れているため、無理に起こして歩かせるよりも好都合だったからだ。  
 
「…目を覚ましましたか…?」  
 
背中の少女が身じろぎしたことに気付いて声をかける。視界を塞ぐように現われる携帯の画面。  
芽留の携帯は愛液で湿りはしたが壊れはしなかった。  
 
―おそらく下着越しだったからでしょうけど  
 
『痛かったぞヘタクソ』  
 
「第一声がそれですか…」  
 
『ヘタクソヘタクソヘタクソ』  
 
「すいません…」  
 
画面を埋め尽くす非難と俯いた望の謝罪。  
処女を奪ったことと、痛くしてしまったこと。  
今更したことの重大さを思い知らされる。  
 
『オレの中は良かったか?』  
 
望の目の前で芽留の指が高速で動く。  
 
「ええ、良かったですよ。音無さんも可愛かったで」  
 
途中まで喋ったところで後頭部に鈍痛、芽留の肘だった。  
 
「痛っ!ま、待ってください!」  
 
『忘れろ』  
 
「…無理ですよ」  
 
『氏ね ロリコン教師』  
 
返事とは裏腹に背中にぎゅっとしがみつく芽留、やがて彼女の呼吸が安らかな寝息に変わる。  
そんな重さとぬくもりを感じながら、望は夕闇の中を歩いていった。  
 
 
〜〜〜〜〜  
 
翌日。  
朝、職員室に向かう望の袖が誰かに引っ張られる。  
振り向いた先には、ツインテールの少女…芽留だった。  
 
「おはようございます」  
 
望の挨拶にただもじもじする芽留、しかし…  
 
「…………!」  
 
芽留の唇が微かに動く。  
 
―おはよう…?  
 
そう言っているかのようだった。  
勘違いかもしれない、それでも少し満足そうな笑みを浮かべて芽留を眺める。  
 
「ところで体の調子は…って、ジャージ…ですか?」  
 
芽留の体を気遣おうと視線を下げたが、彼女は制服ではなくジャージを着ていた。  
そして下は制服のスカート、何ともアンバランスな格好だ。  
 
『 大量に精液を出 すから制服が きられなくなった』  
 
…と、芽留からのメール。  
 
「す、すいません…」  
 
望が芽留から視線を外して携帯をみている隙に芽留は走り去る。  
 
「音無さ…」  
 
後を追おうとした望の手から携帯が抜き取られる。  
手の主は背後…振り向いた望は絶句してしまう。  
 
「ち…智恵先生」  
 
望が見たのは自身の携帯を凝視する智恵の姿だった。  
 
「あの、これはですね…」  
 
必死に言い訳を考える望。しかしこの状況を打破できる言い訳などあるわけが無い。  
 
「このメール、スペースの後の文字を拾うと『大すき』になりますね」  
 
携帯を見たまま智恵が言う、そのまま閉じてポケットへ。  
 
「後でSC室まで来てください、そこで携帯をお返しします」  
 
「待ってくださ…」  
 
智恵は望に背を向け、遠ざかっていった。  
 
望の顔が青ざめる、息が苦しい。  
 
―私は取り返しのつかないことを…  
 
罪の意識が胸を締め付ける。  
しかし、絶対にこの件で警察の世話になりたくはなかった。  
 
「とにかく行かないと…いざとなったら…」  
 
続く言葉を飲み込み、奥歯を噛み締めて歩きだした。  
智恵の待つ、SC室へ…。  
 
 

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