天高く馬肥ゆる秋。  
2年へ組の生徒たちは、学校行事の飯ごう炊さんで渓谷に来ていた。  
皆が楽しく食事の用意にいそしむなか、久藤准は一人不機嫌だった。  
 
その原因は、彼の視線の先にいる担任教師。  
相変わらす女子生徒達に囲まれ、もみくちゃにされていた。  
 
―――杏ちゃんというものがいながら、他の女の子達にデレデレするなんて…。  
准は足元の石を川に向かって蹴り飛ばした。  
そして、このイライラは幼なじみの風浦可符香のためだ、と自分に言い聞かせた。  
 
と、生徒達の群れから離れ、一人ぽつんと佇んでいるクラスメートに気が付いた。  
糸色倫。  
最近転入してきた彼の担任教師の妹である。  
 
生来、独りぽっちの子を見ると、放っておけない性質だ。  
准は、訳の分からないイライラから逃れるためにも、倫に向かって声をかけた。  
「倫ちゃん、どうしたのさ、ぼーっとして。」  
 
倫はその声に顔を上げると、困ったような顔をした。  
「どうも、こういうことは勝手が分からなくてな…。」  
 
―――ああ、そうか、倫ちゃんはお嬢様だから料理なんかしたことないんだろうな。  
准は納得した。  
「米をとぐくらいだったら簡単だよ。一緒においでよ。」  
米が入った飯ごうを、倫に向かって持ち上げて見せた。  
自分としても、担任教師が視界に入るところにはいたくなかった。  
 
准は、きれいな流れを求め、皆から離れて上流に向かった。  
「ここら辺でいいかな。」  
准は、倫に飯ごうに水を入れて米をとぐ方法を教えると、  
「む。けっこう難しいな。」  
たどたどしい手つきで米をとぐ倫を、横からこっそり見つめた。  
 
―――やっぱり兄妹だな…先生に、そっくりだ…。  
 
ぼんやりと倫の横顔を眺めていると、倫がぶるっと震えて両手を抱えた。  
「手の先の感覚がなくなってきた…。」  
 
渓谷の奥深いここらの川の水は冷たい。  
倫の指先は、冷たさに真っ赤になっていた。  
 
「ああ、ごめんよ、女の子に辛い仕事やらせちゃって。」  
慌てて倫の手を取った。  
と、倫の指に目がいった。  
 
―――なんて、白くて細い指…先生よりも、白いし、細いや。  
 
倫の手をつかんだまま、その華奢な指に見とれていると、  
倫が准の手を振り払った。  
「女子供と思って馬鹿にするな。」  
驚いて倫を見返すと、倫は頬に血を上らせて怒っていた。  
 
それを見た准の中で、何か蠢いた。  
准は改めて倫の手を取ると、無言で倫を引っぱって立ち上がらせた。  
「何をする、離せ!」  
2人はだいぶ上流に来ていたため、林の奥に消えていく2人の姿を見た者はいなかった。  
 
林を少し行った、開けた場所で准は立ち止まった。  
倫の手はまだ握ったままだ。  
倫は、目を怒りに燃え上がらせて准をにらんだ。  
「こんなことをしてただで済むと思うのか、お前。」  
 
准は、全く倫の言葉を聞いていなかった。  
―――ああ、やっぱり。この兄妹は、怒ったときが一番きれいなんだな…。  
 
そのまま、倫の手を引くと、胸に抱き寄せ、草むらに押し倒した。  
「…!何をする!!」  
准は、抵抗する倫にかまわず、そのブラウスのボタンを外していった。  
倫の声に恐怖が混じる。  
「やっ…!な、んで…!?」  
 
その答えは、准にも分からなかった。  
ただ、頭の中にはさきほどの女生徒達に囲まれた担任教師の姿と倫の横顔が  
何度もオーバーラップして浮かんでいた。  
頭が熱く、痺れるようだった。  
自分でも気が付かないうちに、食いしばった歯の間から言葉が漏れていた。  
「………なのに…!」  
 
突然、倫の抵抗がやんだ。  
准は、力が余り、思わず倫の上に倒れかかった。  
倫は、准の顔を真っ直ぐに見上げていた。  
「…好きなのか?」  
「え…。」  
倫の問いに、自分は今何を口走ったんだ、と准の顔色が変わる。  
 
しかし、倫の次の言葉は、准を困惑させた。  
「私のことが、好きなのか?」  
准は、答えに詰まった。  
今しがた、頭に浮かんだ相手は倫ではない。  
しかし、この状況でそれを否定できるだけの心臓もなかった。  
 
仕方なく、ゆっくりとうなずいてみせると、倫はむくりと起き上がった。  
「なら、よい。」  
「…は?」  
准はぽかんと口を開けた。  
「お母様から言われていた。こういうことは好きな人とするものだと。  
 だから、お前が、私のことを好きならばよい。」  
 
―――いや、どう考えても、良くないだろう…。  
世間ずれしているにも程がある。  
そもそも、自分が倫のことを好きだと仮定して、倫自身の気持ちはどうなるのか。  
 
頭の中では様々な疑問が渦巻いていたが、邪気のない顔でこちらを見る倫を見て、  
准は、余計なことを考えるのをやめた。  
「うん、僕は、倫ちゃんのことが好きだ。」  
そう言うと、准は倫の手を取った。  
 
さっきと異なり、そっと丁寧に倫の服を脱がせていく。  
同時に、自分も手早く身につけているものを脱いだ。  
 
秋の風が、素肌に少し肌寒い。  
准は、暖かさを求めるように、倫の体を抱きしめた。  
―――細いなぁ…それに、柔らかい。  
改めて、倫の体がいかに華奢かを感じる。  
倫を見下ろすと、倫は目をつぶって静かに息をしていた。  
少し緊張しているのか、まぶたがかすかに震えている。  
 
実は、准自身も女性経験はないのだが、倫を見て  
―――可愛いな…。  
思わずそのまぶたに口付けた。  
倫がぴくっと体をすくませる。  
准は、そのまま、倫の胸に、そっと手を伸ばした。  
 
―――う…っわ…!すごく、柔らかい…!  
初めて触る、女性の胸の感触に、准は感動した。  
真っ白なそれは、手の下で融けるかと思うような柔らかさで、しかし、  
適度な弾力をもって准の手を押し返す。  
 
准は、そのまましばらく、やわやわと倫の胸の感触を楽しんでいた。  
だんだん、倫の呼吸が早くなる。  
その白い双丘の先端についている小さな紅い蕾が立ち上がってきた。  
 
准は、そっと、蕾の先を指でつまんでみた。  
倫が、「…んっ!」と体をすくませると同時に目を開いた。  
准と倫の目が合う。  
倫は、真っ赤になった。  
 
―――倫ちゃん、可愛い…。  
准は、本能のおもむくまま、倫の紅い蕾を口に含んだ。  
「やっ、ぁあ!」  
倫が体をのけぞらせた。体験したことのない感覚なのだろう。  
それは、准も同じだった。  
 
准は、夢中で、倫の胸を舌で舐め、転がし、吸っているうちに、  
自分の下半身がどうしようもなく張り詰めていくのを感じていた。  
―――倫ちゃんの、あの細い指で、触って欲しい…。  
 
准は、倫の白い胸から顔を上げると、倫の小さな手をそっとつかみ、自身へと導いた。  
倫は息を切らしながら、准のなすがままになっていたが、  
手が准自身へと触れた瞬間、驚いたように手を引っ込めた。  
「…熱い。」  
小さく呟く。  
 
准はといえば、今、ほんの少し触れられただけで背筋を走った鋭い快感に震えていた。  
―――やばい。これ、ちゃんと触られたら、すぐイっちゃうかも…。  
自分を落ち着かせるために、深呼吸をする。  
と、倫が、今度は自ら手を伸ばしてきた。  
「!!!」  
「…熱くて、固いのだな…。」  
独り言を言いながら、撫でたり、軽く握ったりしてくる。  
 
倫の細い指先が、自身を撫でさする感覚に准は眩暈を感じた。  
―――やばいやばいやばい倫ちゃんそこだめだって…!!  
「あ…ふぅっ!」  
准はあえなく決壊した。  
 
「わっ。手に、何か…。」  
倫は、びっくりした顔で自分の手を引き上げる。  
准は慌てて倫の手をつかんだ。  
「ご、ごめん…。」  
謝りながら、ポケットからティッシュを取り出し、倫の手を拭いた。  
―――ああ、情けない。こんなあっという間に…。  
 
しかし、頭の中は、たった今の快感にまだ痺れているようだった。  
―――こうなったら、倫ちゃんも、きちんとイカせてあげなくちゃ!  
准は、妙な使命感に燃え立った。  
 
「倫ちゃん…。」  
倫が、准の呼びかけに顔を上げる。  
准は、倫の紅い唇に口付けた。  
「んっ…!」  
ゆっくりと舌を差し込み、倫の口の中をさぐる。  
同時に、手を胸に伸ばした。  
 
先ほどより丁寧に、胸の先を弄る。  
准の指が胸の先端をこすり上げるたびに、倫の、合わせた口の隙間から吐息が漏れた。  
―――もっと…もっと、気持ちよくなって、倫ちゃん…。  
 
准は、倫から唇を離すと、顔を下にずらした。  
先ほどと同じように胸の蕾を口に含むと、倫が小さな声を上げて体をそらす。  
しばらく、蕾を口の中で転がしてから、さらに顔を下に移動させると、  
倫の白くて平らな腹の中心のくぼみに舌を沿わせた。  
 
「あぁっ!」  
倫の体が跳ねる。  
「…倫ちゃんは、おへそも可愛いんだね…。」  
准は囁きながら、りんのへそに舌を入れ、周りをなめた。  
「や、やめ…。」  
弱々しい声で抗議するが、倫の体は、准が舌をくぼみに差し入れるたびに跳ね上がる。  
「気持ち、いいんだ?」  
准は、そのまま、手を倫の下半身に伸ばした。  
 
倫のそこは、既に十分に潤っていた。  
准は少し嬉しくなりながら、その潤いの源泉に指を差し込んだ。  
「や、あぁっ…!」  
しばらく、指をこね回していると、倫の息遣いが荒くなってきた。  
それらしき突起を優しくこすると、倫が再びびくんと体を跳ね上がらせた。  
「倫ちゃん、ここ、気持ちいい?」  
尋ねるが、倫はすでに答えるどころではないらしい。  
 
―――ここが、いいのかな。  
准が、そのまま無心に指を動かし続けていると、  
ついに、倫は声を上げて大きく体をしならせると、ぐったりとなった。  
 
 
―――倫ちゃん、イってくれたかな…。  
気がつくと、准の下半身は再びすっかり力を取り戻していた。  
 
「倫ちゃん、いい…?」  
倫は、息を切らして准を見上げた。  
准の言っている意味は分かっているようだ。  
倫は、無言で頷いた。  
 
准は、心臓を高鳴らせながら、自身を倫にあてがった。  
ところが、倫の中は、きつく、なかなか前に進めない。  
「くっ、う…。」  
倫の中にいる先端部分から快感が流れ込んできて、早く全てを収めたいと気持ちがはやる。  
しかし、ふと倫を見ると、倫は、必死の表情で歯を食いしばっていた。  
それを見て、准は、力を緩めた。  
 
「り、倫ちゃん、大丈夫?」  
「だ、だいじょう…。」  
最後の方は声にならないようだ。  
准は、倫に口付けると、  
「ごめんね、ゆっくり、そっと入れるから…。」  
はやる気持ちを抑え、慎重に、少しずつ自身を進めた。  
 
やっと全てがおさまった。  
―――ああ、すごい、さっきなんかと全然違う…!  
准は、あらゆる方向から絡み付いてくる倫の中の感覚に必死に耐えていた。  
―――さっき1回イっておいて良かった…。  
 
見下ろすと、倫の固く瞑った目の端に涙が滲んでいた。  
それを見て、准の中に罪悪感が湧いてきた。  
「倫ちゃん、ごめん、ごめんね、痛い?大丈夫?」  
准が心配そうに尋ねると、倫は目を開け、潤んだ瞳で准を見上げた。  
「謝るな…馬鹿者。」  
倫はそう言うと、そっと准の背中に手を回した。  
―――倫ちゃん…!  
どうしようもなく倫への愛しさがこみ上げて来て、准は倫に激しく口付けた。  
 
「んっ、ふ…!」  
准が唇を離すと、倫は頬を紅潮させて准を見つめていた。  
准はそんな倫を熱い目で見つめると、囁いた。  
「動くよ…倫ちゃん。」  
 
動き始めたとたん、准は、全身から汗が吹き出るような快感を味わった。  
―――ああ、どうしよう、すごく気持ちいい…!  
倫を、まさに、体中で感じていた。  
少しでも長くこの感覚を味わいたいと思うが、同時に、早く昇りつめたいという衝動を  
押さえることができない。  
―――だめだ、落ち着け、落ち着け…!  
准は必死で、自分に言い聞かせた。  
 
一方倫は、辛そうに眉間に皺を寄せていた。  
准は、少しでも倫の苦痛を和らげたくて、倫にゆっくりと口付けた。  
「んっ…。」  
舌を絡めているうちに、倫の眉間の皺が、だんだんと解けていく。  
それに応じて、その表情が艶を増していった。  
准は、それを見て、倫の胸に手を伸ばした。  
「んん…っ!」  
倫の頬に血が上り、同時に倫の中が妖しく蠢いた。  
 
「く…っ!」  
准は、そろそろ、限界にきていた。  
「も…だめ、かも…!」  
そう言いながら倫に深く押し入ると、倫が小さく叫んで反り返った。  
倫の中が一気に収縮する。  
―――わ、やばっ!  
准は、危ないところで自身を倫から引き抜くと、草むらに快感を解き放った。  
 
「っ、ふぅ…。」  
全てを放ち終わると、准は、ぐったりと倫の上に覆いかぶさった。  
2人とも、荒い息をついたまま、しばらく動けなかった。  
 
 
「…重い。」  
しばらくして、倫がぽつりと言った。  
「あ、ごめん。」  
准があたふたと体を離すと、倫が、すり、と准に体を摺り寄せてきた。  
「倫ちゃん…。」  
准は、倫の肩に手を回しながら、心の中が温かい感情で満たされていくのを感じた。  
 
―――…こんなに細い肩で、華奢な体で、でも、僕を精一杯受け止めてくれた…。  
「倫ちゃん…。」  
「…ん。」  
倫が、まだ半分夢の中にいるような声で応じる。  
「倫ちゃん、好きだよ。」  
「…さっきも聞いたぞ。」  
 
准は首を振った。  
―――さっきのとは、全然違うんだよ。  
 
「倫ちゃん、本当に、大好きだ!」  
そう言うと、准は倫を強く抱きしめた。  
倫が、痛い!と小さく叫び、准は慌てて腕を緩める。  
と、倫が准を見上げてにっこりと笑った。  
 
「私も、お前のことが好きだぞ。」  
「―――!!」  
准は、倫の笑顔を見つめると、今度は倫が痛がるのもかまわず、  
力の限り抱きしめた。  
 
―――ああ、倫ちゃん、僕は、本当に本当に、君のことが大好きです。  
―――そして、君のことを好きになって、僕は心から幸せです…!  
 
 
 
その頃、川原では、放り出された飯ごうを前に、  
「仕事を途中で放り出して、あまつさえ人の妹を連れ出して雲隠れとは  
 いい度胸してるじゃないですか、久藤君…。」  
担任教師が怒りマークを3つほど貼り付けた笑顔で准を待ち構えていた。  
 
 
 
 
 おまけ小ネタ 
 
 
「は…?倫、すいません、もう一度言っていただけますか?」   
「お兄様、もうお耳が遠くなられました?  
 私、久藤君とお付き合いすることになったと、そう申し上げたんです。」  
「…。」  
「何ですの、その反応。お兄様、よもや反対なされるんじゃないでしょうね?」  
「し、しかし…(久藤君は、可符香のことが好きだったんじゃ…!?)。」  
「そうそう、そう言えば、お兄様、風浦さんとお付き合いされているとか。」  
「!!!!」  
「水臭いですわ、妹にも隠してらしたなんて。」  
(久藤君、あのおしゃべり…次の授業では覚悟しておいて下さいね…。)  
「それにしても、もし、お兄様と風浦さんが結ばれて、私と久藤君が結ばれたら、  
 私たち皆、兄弟姉妹になるんですわね。うふふ、なんだかおかしい。」  
「なっ―――!!!  
 許しませんよ、倫!あなたと久藤君の付き合いは断じて認めません!  
 久藤君が可符香の義弟になるだなんて、そんなこと…!」  
「…可符香の義弟って………お兄様。そちらは、もう前提ですか…。」  
 

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