「先生〜! 先生〜〜!!」  
 
 高校の廊下を、千里とまといを先頭にした得体の知れない集団が駆け抜けていく。  
気のせいか、法螺貝や進軍ラッパまで聞こえそうな勢いだ。  
その轟然とした足音を、望は男子便所の奥の個室の中で震えながら耳にしていた。  
追われて角を曲がってすぐのところにあった便所にひょいっと飛び込んだのだった。  
幸い、彼女たちは気づかずにドタドタと廊下を走り過ぎていった。  
 
 もうずいぶん足音が遠ざかった。耳を澄ませてようやく聞こえる程度にまでなっている。  
 
「ここまでは追ってこないでしょう」  
 
 望はほっと一息ついた。その途端、背後から白い手がすーっと伸び、肩をぽんぽんっと叩いた。  
 
「ひあぁっ!」  
 
 望は文字通り飛び上がった。おそるおそる振り返ると、思わぬ人物の姿があった。  
 
「あはっ☆」  
 
 半泣き顔の望が目にしたのは、霧の無邪気な笑顔だった。  
 
「あ……あ」  
 
 思わず外に飛び出ようとノブに手を掛けた。  
その途端、外からまたあの恐怖の軍団のドドドドという足音が地響きを立てて迫ってきた。  
 
「ひいっ!」  
「!」  
 
 望は恐怖のあまり我を忘れた。思わず霧にしがみつき、ぎゅうっと堅く抱きすくめてしまった。  
一方、霧は想い人の突然の行動にびっくりして目を大きく見開き、身を固くした。  
だが、望の息遣いと体温を間近に感じ、愛する人に身動き取れないほど抱きしめられる喜びで、いつしか力がすっと抜け、身を任せるかのように目を閉じていた。  
 
     ☆  
 
 どれくらいたったことだろう。もう外から音は伝わってこない。ふと、かすかな甘い匂いが望の鼻腔をくすぐった。  
 
――いい香りだ……  
 
 まるで女のコの香りだ、とぼんやりした頭で思った。  
 
 次に、自分が何かとても柔らかく今にも壊れそうな宝物をひしと抱きしめているという感触が全身に蘇ってきた。  
ここで、ようやく暗く狭い個室の中で、自分が女の子、それも心中リストに入れるほど美人の教え子を  
熱烈に抱きしめていることに気づいた。  
 
――うわっ、私はいったい何を……!  
 
 自然に絶棒がむくむくと大きくなった。望は慌てて離れようとした。  
 
 だが、霧はその動きを別の意味にとった。望が手を離すより先に、霧の方から抱き返してきたのだ。  
 
「だめっ」  
「!」  
「だめ、先生」  
 
 霧はなおもぎゅうっと望にしがみついてくる。必死の様子だ。  
 
「私を捨てないで。他に行くとこないの」  
 
「こ、小森さん!」  
 
 霧の思わぬ言葉に望は虚を突かれた。真意を確かめようと、霧の顔を覗きこもうとした。  
 
「私、先生のためなら、なんでもするよ」  
 
 望の視線を避けるように、毛布にくるまった彼女は望に体を押しつけながら絶棒に手を伸ばしてくる。望は慌てた。  
 
「い、いけません!」  
 
 霧はかまわず袴の紐を解き、あれよあれよという間に前をはだけさせた。  
そして、大きくなりかけている絶棒をためらわずに握った。  
 
「うっ……小森さん、だ、だめです。汚いから」  
 
 望は霧の小さな頭に手を置いた。だが、霧は強情だった。  
 
「先生のなら、汚くないよ」  
 
 すっかりたくましくなった絶棒を握りしめた後、しばらく白く細い指先で砲身や先をあちこちぎこちなく撫でていた。  
が、意を決したように可愛らしい唇を望の分身に寄せ、繰り返し挨拶し始めた。  
 
「せんせい、好き、好き、すき、………」  
──ちゅぷ…ちゅぱ…ちゅぷ……  
「う、うあぁ……」  
 
 望はもう霧を止めることができない。  
教え子のもたらす甘い快感に耐えながら、長く艶やかな髪を優しく撫でるのが精一杯である。  
絶棒が嬉しそうに、ぐいっと反り返り、エラを膨れさせる。  
 
──ちゅ…くちゅっ…  
 
 霧は顔を前後させ、小さな口に含んだ望の絶棒を先から中ほどにかけて健気に愛撫する。  
長い黒髪が時折望の太腿をくすぐる。  
 
「ん……せんせぃ」  
 
 霧が望の顔を見上げてくる。  
いわゆるテクニックはないに等しいが、たどたどしくも熱心に絶棒をしゃぶってくれるのが逆に新鮮だ。  
奉仕してくれる様子を見下ろしているうちに、いつのまにか射精感が高ぶってくる。もう後戻りできない。  
 
──ぴちゃ…ぴちゅ…  
「くぅ……」  
 
 微かだが淫靡な音が耳に入る。それが望の性感を裏からじわじわ刺激し、溶かしていく。  
今、絶棒の先は絶えずぴりぴりとした電流で覆われている。  
それが下半身全体に伝わり、男の芯を溶かし尽くしていく。腰の奥が熱く痺れ始める。  
女生徒に自分の象徴を含ませる禁断の快感にしばし恍惚としている間に、絶流が根本にまでせり上がってきた。  
間もなく暴発しそうだ。  
絶棒が発射の予感でぴく、ぴくっと震え、霧の口内で身を再び反り返らせる。  
だが、まさか教え子に、それも学校の中で飲ませるわけにはいかない。望は霧に上ずった声をかけた。  
 
「小森さん、も、もういいです」  
「……」  
──ちうう。ちるる。ちるるぅ……  
 
 霧は耳に入らなかったかのように無言で吸い続ける。  
 
「うあああ……」  
 
 絶棒がほぼ限界まで膨れ上がり、カチカチに固くなる。濁流の先頭がもう根本を突破したことを自然に悟る。  
 
「もう、出ちゃいますから!」  
 
 望は奉仕に夢中な霧の頭に手を掛け、引き剥がそうとした。  
だが、霧は愛撫を止めない。それどころか、  
 
「先生なら、いいよ……」  
 
と呟くと、両手を望の腰に回してしっかり抱え、絶対逃げられないようにした。  
そうして絶棒を奥深くまでくわえ込むと、いよいよ情熱的に吸い上げていく。  
 
──ちゅうううううううっ!  
「あうっ!」  
 
 さらに、舌が絶棒に妖しく絡みつく。望は間もなく訪れる爆発を堪えきれずに声が上ずってしまう。  
 
「あう……小森さん、もう、もう出ま…あぁ」  
「いいよ、出して。先生ならいいよ。いっぱい出してぇ」  
 
 霧が望のエキスを甘くおねだりしてくる。  
舌捌きと吸いつきがさらに激しくなる。手や指の動きまで加わり、絶棒を追い込みにかかる。  
愛すべき教え子の舌のそよぎと口内の暖かさに我を忘れ、ついに望は霧の喉の奥深くに牡の印を勢いよく発射してしまった。  
 
「うぐぅ、すみませ……はうっ!」  
──どくぅっ! どくっ、どく、……  
 
 大量の白濁が後から後から分身を通り抜けていく。気持ちよさで腰が抜けそうだ。  
 
 霧は涙目になりながらも、とうとう望の毒液を全部飲み干してくれた。  
どこで覚えたのか、飲み干した後も絶棒に舌を這わせ、発射の名残を綺麗に舐め取っていく。  
やがてちゅぽんと音を立てて口を離すと、もふっと望の胸に顔を埋め、呟いた。  
 
「先生、ちゃんと出してくれてありがとう。嬉しい……」  
 
 これを耳にしたとたん、望の頭の中に真っ白な靄がさあっとかかった。  
頭の奥の方がジンジン痺れ、思考力が一気に麻痺してしまう。霧のことが愛おしくてならなくなる。  
 
 その後、望は頭が痺れたまま、半ば霧に手を引かれるようにして、霧が校内で籠もっている部屋に連れて行かれた。  
先の軍団には出会わなかった。もうあきらめて退散したらしい。  
 
     ☆  
 
 「小森」と書かれた札の下がっている入り口を霧に連れられて潜った。  
部屋の隅に畳が数枚重ねて敷いてある。いつの間に揃えたのか、霧が客用の夜具をさっと整え、その上に望を導いた。  
素直に横になった望の側で霧はちょこんと正座し、三つ指をつく。頬がほのかに上気している。  
 
「先生……あの……よろしくお願いします」  
「小森さん……」  
「わ、私……は、初めてなの。優しくしてね」  
 
 望には、霧の最後が消え入りそうな台詞が、どこか遠くから響いているように感じられた。  
半ば熱に浮かされたように現実感の伴わないまま、今度は望が霧を抱いた。  
 
     ☆  
 
 のろのろと霧の着衣を剥いでいく。やがて露わになった霧の裸身は、極上の白磁のように滑らかで美しい。  
自ら白く光り輝いているようだ。その霧に、望は痺れた頭のまま覆い被さっていく。  
 
 熱い接吻を交わしながら、豊かな胸に手を伸ばす。ゆるゆると揉み始める。霧も静かに喘ぎ始めた。  
 
「ん……あん……」  
 
 肌が掌に吸いつく感じがたまらない。  
ぐっと揉むと、少女の胸特有の弾力で充実感を伝え返す。力を緩めると、ぷりんっと元の形に戻る。  
それが何とも男心をくすぐり、男女の交わりを覚えたての学生のように一心にこねまわし、揉みしだく。  
淡い色の乳首を指でじりじりいじってみる。不意に白い丘の桜色の頂点を吸う。霧の喘ぎがはっきりと声になる。  
 
「あ、あ、あん、あん」  
 
 片手を霧の胸に遊ばせたまま、もう片方の手をは霧の下半身に伸ばしてみる。  
そこだけが淡い黒の翳りを、指で撫でていく。  
しゃりしゃりとした繊毛の感覚を楽しんでから浅瀬に指を送り込み、ごく軽くスライドさせる。  
霧の喘ぎ声がさらに甘く鼻にかかったものになる。  
 
「はぅ……んう……イヤあぁ」  
 
 体を滑らせ、霧の脚を大きく開かせる。恥ずかしそうに俯いているが特に抵抗しない。  
霧の下の口に自分の口を被せ、ゆっくりと舌を動かし始める。  
綺麗な合わせ目に沿って数度這わせつつ、舌先を秘部に差し入れる。  
そうして柔襞をゆっくり丁寧になぞっていく。どんどんあふれてくる蜜を味わいつくす。  
 
 霧の声が急に高くなる。イヤイヤをして、両手で顔を覆ってしまう。そのうち、ぴくぴくっと可愛らしく痙攣する。  
 
「先生、せんせい……あぅ!」  
 
 頬を上気させぐったりした霧から身を起こし、望は再度教え子の上にのしかかっていき、優しく声をかけた。  
 
「いきますよ」  
「うん……」  
 
 霧も小声で答えた。  
望は絶棒を露でぬかるんでいる入り口にそっとあてがい、しばし頭に霧のものを馴染ませる。  
そうして徐々に腰を進めていく。しばらく何かに遮られたように先に進めないでいるが、不意に頭が霧の中に埋まる。  
 
「あぅ!」  
 
 霧は思わず仰け反った。  
一瞬目をきつく閉じ、眉をしかめる。  
だが、また目を開くと、涙目になって望をひしと見つめてくる。  
望は徐々に結合を深めていく。  
中は驚くほどきつく、絶棒が隘路をゆっくり通過していく間もぎりぎりと締め付けてくる。  
抵抗に耐え腰を進めていくうち、先端が奥に到達した感触を覚えた。  
 
「ああ、最後まで入りましたよ」  
 
 望がそう声をかけると、苦悶の表情を浮かべていた霧は無言で微笑んだ。  
 
「い、痛くないですか」  
「うん……ッ……先生とだから、大丈夫」  
「動きますよ」  
「うん、いいよ」  
 
 望は正常位のままそろそろと動き出した。霧はシーツをぎゅっと握りしめた。  
 
「あ、あ、あぅ、あ、あ」  
 
握る手に力を込める。望の動きに合わせ、無意識のうちに声が出てしまう。  
 
――そ、それにしても……  
 
 なんと霧の中は熱いんだろう! マグマに分身を沈めているようだ。  
しかも締め付けがきつい。  
ストロークを重ねる度、若い襞が初めて迎えた男根に自分を覚えてもらおうとするかのように、絶棒全体を締め上げる。  
 
――く、くぅぅ……  
 
 鰓の出っ張りが柔壁にこすれる度に、極彩色の火花が脳内や眼前へ飛び散る。  
めくるめく快感で、少しだけ残っていた理性も失われていく。  
 
 霧もやがて望の背中に手を回し、甘い声をあげ始めた。  
 
「あんあんあん…先生、せんせ、せん、ん、んぅ」  
 
 霧の可愛い喘ぎ声を耳にするうち、望はもういくらも余裕がなくなってきた。  
この高校へ赴任して初めて教え子とともに絶頂を迎える時が間近に迫っている。  
 
――も、もうそろそろですね……  
 
 望はせめて外で達しようと考え、霧の中から絶棒を抜こうとした。  
だが、その動きを察した霧が、初めておねだりをした。  
 
「だめ! 抜かないで。抜いちゃいや」  
 
 霧は望の背に回していた手に力を込める。  
 
「このまま…中に、中に出してください」  
「でも」  
「お願いだから中に出してください」  
 
 もうこれ以上の我慢は不可能である。望は覚悟を決めラストスパートに入った。  
激しくストロークをし、そろそろ終わりが近づくという時に、霧が無意識のうちに背中に爪を立てた。  
 
――ぐぅっ!  
 
 これで最後の歯止めが外れ、望は一気に絶頂への階段を駆け上がっていく。  
霧の脚を抱え込むと、放出準備に入る。  
 
 絶頂に達する直前、最後に目に入ったのは、霧の色白の美貌と型の良い大きな美乳だった。  
先ほど自分が吸い上げた桜色の先が尖っている乳房を見たとたん、一切のコントロールが利かなくなる。  
霧を背が折れんばかりにきつく抱きしめ、ついに中に勢いよく発射してしまう。  
 
「う、うう……くぅっ!」  
「先生、先生、せんせ…い!」  
──どくぅっ! どくっ、どぷ、とぷ…………  
 
     ☆  
 
 
 全身をほのかな桃色に染め、満ち足りた表情でぐったりしている霧の後始末をしているうち、  
望は霧を拭った懐紙に深紅の乙女の証が付いているのを見つけた。  
 
――小森さん……すみません、ごめんなさい、ごめんなさい……  
 
 望は自分が教え子の純潔を奪ったことに胸が塞がる思いになった。  
一方、霧は、別の感慨を覚えたようだ。  
腕枕に霧の頭を乗せてしばらくじいっとしていると、霧は身体を望の方に寄せてきた。  
しばらく髪と背中をゆるゆると撫でていると、不意に霧が声をかけてきた。  
 
「ねえ、先生」  
「ん?」  
「私ね、初めてが先生で本当に良かった」  
 
 望は胸が一杯になった。何とも複雑な気持ちで霧を抱きしめ、熱く接吻した。  
霧がたまらなく愛しき存在に思え、次いで自分の罪深さに心の底が抜ける恐怖を味わった。  
 
     ☆  
 
 望は知らず知らず一種の熱病に冒されていたのかもしれない。  
どこをどのように帰宅したか覚えていない。  
気が付くと自宅で湯浴みをし、全身を痛いほど擦り上げていた。  
のぼせそうなほど長湯をした風呂から上がると、すぐに泥のように眠りこけた。  
 
     ☆  
 
 望は走っていた。  
完全な闇の中を、ただひたすら走っていた。  
何か怖いモノ達が自分を追いかけてくる。  
目をぴかぴか光らせ、どこまでもどこまでも追いかけてくる。  
一瞬、もう捕まって滅茶苦茶にされてみたい、凌辱されてもいいという考えが頭をよぎる。  
だが、今は捕まるわけにはいかない。  
なぜかは分からないが、逃げ通さねばならない。  
 
 遠くに光が見えた。  
闇の虚空にぽっかりと空間が口を開け、向こう側の世界を覗かせている。  
そのまばゆさに目をしばたかせながら目を凝らすと、確かに中に誰かがいる。  
逆光になっているので、髪留めをしている女性だという以外、誰なのかは分からない。  
分からないが、あそこまでたどり着けばきっと助かるに違いない。  
そう確信した望は息を切らせて走った。  
 
 だが、不意に行く手の闇の四方八方から手の群がにょきにょきっと生えてきた。  
 
――ひぃっ!  
 
 目の前の空間の上下左右から伸びている手は白、肌色、緑、褐色、黒……色とりどりだ。  
どれも柔らかで滑らかそうな、若い女の手だ。  
大小無数の女の手が、風に吹かれる草のようにざわざわとそよいですぐ目の前から遙か彼方まで、  
いずれもが望を今や遅しと待ち受け、たおやかにおいでおいでをしている。  
 
――こ、怖い……  
 
 望は前進するのを躊躇した。  
だが、ここで断念しては、自分は後ろから追ってくるあのモノ達に捕まって酷い目に遭わされてしまう。  
嫌でも応でも進まねばならない。  
望は意を決して、待ち受ける手の群の中を駆け抜けようとした。  
 
 しかし、望が手の茂みに分け入った途端、哀れな犠牲者の周りで手が一斉に意志を持って動き始めた。  
 
──ざわ……ざわ……  
     ざわ……ざわ……  
 
 遠くの光に向かって駆け出す望に、前後左右から手が絡みついてくる。  
足首や手首をはっしと掴んでくる。  
たまらず振り解く。思い切って蹴散らす。  
だが、振り解いても蹴散らしても、後から後から絡みついてくる。  
着衣の裾を握り、はぎ取っていこうとする手さえある。  
脱がされまいと悪戦苦闘している間に、目指すべき光の雲がどんどん遠ざかっていく。  
 
――い、いけない!  
 
 なんとかここを抜け出そうと必死にもがくが、手の動きはますます情熱的になる。  
とうとう着衣をみな奪われてしまう。  
無論それだけでは済まない。  
幾多の指先が望の露わになった肌のあちこちに触れ回る。  
背骨に沿ってつうっと滑り降りる指もあれば、乳首を摘んでくりくりっと妖しい刺激を加える指もある。  
ついには絶棒を握り、優しくマッサージする手まで出てくる始末である。  
 
――はあぅ……っ!  
 
 女の指に触れられるだけで肌の奥に快い痺れが生じてしまうのに、男の象徴を握られ愛撫されては一溜まりもない。  
 
――くっ……  
 
 奥歯を噛みしめるが、いつしか絶棒は痛いほど勃起してしまっている。  
ぴとっ、ぴたっとまとわりついてくる手指を振り解き、もがきながら前進する度、望のシンボルはぷるんぷるんとみっともなく揺れてしまう。  
 
 目の前の光は全然近づいてこない。  
それどころか、どんどん遠ざかり、枠が狭まっていき、もうすぐ消え去りそうな様子である。  
 
――待って! 待ってください! たすけて……  
 
 そう念じた途端、周囲の手という手がかき消すように見えなくなった。  
代わりに、急に闇が濃くなり、自分の通るべき目の前の通路がぐぐっと狭まったのが感じられた。  
気がつくと、闇の中にさらなる闇のトンネルが眼前に現れている。  
そこを通るのは絶対に危険だ、通ってはいけないと直感がしきりに告げる。  
それでも自分は助かりたい一心で小さな暗闇のトンネルを進んでいく。  
目指すべき光はトンネルの出口の向こう側に、ごく小さく微かに瞬くばかりになっている。今にも消え失せそうである。  
 
 トンネルの高さが急に低くなり、幅がぐんと狭まった。  
もう立っては通れない。  
人一人がやっと通れるかどうかの空間を、四つん這いになってじりじりと進むほかなくなった。  
 
 進むうちに闇が熱気を帯びてくる。  
しっとりと湿っているが、不快ではない。  
徐々に柔らかい質感を伴って闇が実体化しはじめ、望を暖かく包み込んでくる。  
 
 いきなり口に何か柔らかい物が被さってきた。  
 
――わむぅ……  
 
 ぬめぬめとした柔らかな物が唇を割って入ってくる。  
そして歯茎を丁寧に丁寧になぞっていく。  
望が思わず舌を伸ばすと、嬉々として絡みついてくる。  
 
――唇だ!  
 
 望が悟ったのを合図に、身体のあちこちに柔らかい物が押しつけられてくる。  
無数の唇が肌を覆い、吸いつきはじめる。  
二の腕から内腿に至るまで、意志を持った舌先が望の柔肌の隅々までねっとり這い回る。  
手の指も一本一本丁寧にしゃぶられる。  
全身に与えられる触感で再度屹立していた絶棒を、ついに暖かく湿ったものが包み込んできた。  
 
――ああっ!  
 
 喘いだ途端、微かだが前に光っていた光の小さな円が完全に消滅してしまい、望は完全な闇の中に閉じこめられてしまう。  
だが、助かる一縷の望みも絶たれたというのに、絶棒を覆う圧倒的な感触に、  
いつの間にか下半身だけでなく全身が母の胎内で羊水に包み込まれているような漠然とした安堵感を覚える。  
 
――ひょっとして、助かったのか……助かったのか?  
 
 自問するうちに、さっきから吸い上げられ、くちゅくちゅと舐め回される絶棒が快靡な感触で高ぶっていく。  
さざ波が腰の奥から生じ、全身に波紋を広げていく。  
次々と生じる波紋がぶつかり合い、高波となる。  
亀頭直下のくびれを大胆に刺激する舌のうねりが大波をおこす。  
一方、望の口に甘い露を帯びた茂みらしきものが押し当てられ、望は本能的にその滴を舐めとっていく。  
後から後から滴る蜜を望は丁寧にすくい上げる。  
そのうち、快感が荒い波の連なりとなって堤防を越え、ついに津波となって絶棒を通り抜けようとする。  
 
――助かったのかああぁぁぁ!!  
 
 感情の高ぶりとともに、ついに絶棒はたぎったものを発射してしまう。  
 
──どくぅっ、どく……  
――はああぁぁぁ……!  
 
 絶棒は達成感に満ちて最後まで欲望の明かしを吐き出していく。  
最後の一滴が鈴口から伝い落ちた後も、絶棒はまだ暖かな口に包まれたままである。  
 
――守られている…そうか、助かったんだな……  
 
 安堵しているうちに、放出直後に局部に触れられているくすぐったさが消え、再び絶棒が硬度を取り戻してくる。  
 
     ☆  
 
 望はふと目が覚めた。  
全身に圧迫感を感じる。何かが自分の上にのしかかっているようだ。  
それに、下半身にぬめっとした暖かな感触がする。夢の中で味わったのと同じものだ。  
 
――ん?……誰かがいる!  
 
 慌てて起きようとしたが、その人物が自分の上に乗っていて、身動きができない。  
口も柔らかなものでぺたっと塞がれていて声も出せない。  
しきりに身動きしていると、不意に股間から感触が途絶え、柔らかな声がした。  
 
「気がつきました?」  
「だ、誰ですか」  
「わたしです」  
 
 まといの声である。  
 
「つ、常月さん? いったいいつから…」  
「ずうっと」  
 
 そう言うと、望の上でまといが体制を入れ替え、顔を望の顔に近づけてくる。  
身体を密着させているので、その乳房が望の肌に押しつけられ、つぶれたままの感触で近づいてくる。  
ぷにぷにした感触が下腹部からだんだん上半身へ移動してくるのがいやでも分かる。  
絶棒がまといの腹、下腹部から内腿へこすれていく感触もいやというほど分かる。  
おもわず生唾を飲んでしまう。  
 
 望の首を抱え込むと、まといは望の耳元に甘く囁く。  
 
「ふふっ……素敵な寝顔でしたよ」  
「だから、一体いつからいたんですかぁ!」  
 
 いくら疲れているとはいえ、玄関に鍵はかけたはずだ。  
この娘は、いつの間にか合い鍵を作っていたというのか。  
そもそも、住所さえ生徒には伝えていないはずなのに、と望は訝った。  
 
「それに、どうしてここが分かったんですか?」  
「わたし、先生のこと好きなんです」  
 
 まといはすうっと身を滑らせると、硬いままの絶棒を再びくわえる。  
起きる直前の下半身に加わっていたあの感覚が蘇る。  
 
「あぐぅ……答えになってません」  
「好きで好きで仕方ないんです」  
 
 咥え方、舐め、しゃぶり方に凄みと真剣さが加わる。望は思わず呻いた。  
 
「むぅ……」  
「だから、たかしにもあげなかった私の初めてを、先生に捧げます」  
 
 股間から生じる快感に我を忘れつつあった望は、まといが発した覚悟の言葉に慄然とした。  
 
「へ!? や、やめなさい、常月さん。それは、将来添い遂げる殿方へきちんと…」  
「私、先生といつまでもいっしょにいます。きっと添い遂げます! だから……」  
 
 ついに、まといは硬くそそり立つ絶棒に手を添えて跨った。  
先を入り口にあてがい、数度往復させてなじませる。  
ぬちゅ、くちゅ、という音が微かに響く。  
 
「う、うああ、止めなさい、止めて」  
 
 望はこれ以上生徒と肉の繋がりを持ちたくなかった。  
だが、そんな望の思いを知らないまといは、ゆっくりゆっくり腰を沈めてくる。  
 
「や、いやだあああ」  
「う、あぅ………」  
 
 まといが歯を食いしばり、涙を流しながら腰をずぶ、ずぶっと沈めてくる。  
絶棒が熱くぬらつく密壷に覆われていく。  
熱く滑らかなものに擦れ、覆われていく感触に、思わず声が出てしまう。  
 
「く……」  
 
 ついに根本までまといの胎内に収まった。  
まといはしばらく動けずにいる。  
激痛を堪えるかのように、両手を望の腹にそろそろとつく。  
そのまま上へ滑らせながら、上体を倒していく。  
手が首に達する。  
 
「う……う……」  
 
 痛みを堪えかねているのか、無意識に首を絞めてきた。  
 
――ぐぅっ……く、苦し…い……  
 
 絞める手に力がこもる。  
望の意識が遠のく直前、まといの両手の力がふとゆるむ。  
その手が望の頭を力一杯かき抱いた。  
 
 まといは自分の身体を望の身体に密着させていた。  
また乳房が望の胸の上で潰れている。  
望の手は夜具に大きく広げられたままである。  
 
 不意に、まといが感極まった様子で言った。  
 
「私、嬉しい、嬉しい……」  
「常月さん……」  
「先生と一つになれて、嬉しい」  
 
 まだぽろぽろ涙を流しながら、それでも泣き言など一言も漏らさずに喜びを伝えてくる。  
痛みのあまり、自分からは動けないでいるのだろう。  
彼女の健気さと、自分に向けられた一途な愛情が感じられる。  
望もまといをひしと抱きしめた。  
 
 抱き合ったまま、望は静かにまといを横倒しにしていった。  
そうしてしばらくの間、身じろぎもせずただ抱きしめていた。  
 
     ☆  
 
 まといの中が時折きゅっ…きゅっ…と絶棒を締め付けてくる。  
ひくひくっ、ぴくぴくっと妖しく蠢く。  
望の分身を柔らかな生き物が包み込み、表面を何かが這いずり回る。  
特に敏感な部分を軽く優しく突っついてくる。  
望はただ絶棒をまといの中に沈めているだけなのに、分身に加えられる多彩な感覚の競演に驚嘆し、そのまま高ぶっていく。  
望の本能がさらなる強い快楽を求め、思わずまといを組み敷き、腰が動いてしまう。  
 
「うぅっ……」  
 
 まといが呻いた。望は気遣った。  
 
「大丈夫ですか?」  
「はい。先生、どうか動いて……私で気持ちよくなって下さい」  
 
 切なそうに望にしがみつき、懇願した。  
 
 望は静かに動き始めた。  
まといは顔を真っ赤にして堪えている。望と視線が合うと、幸せそうににっこりと微笑む。  
 
――つ、常月さん……私は最低の人間です……  
 
 自嘲にかられながら腰の動きを早める。  
気遣いながらも、自然とストロークが大きくなる。  
いくらも動かないうちに、望の体内にクライマックスの予感が芽生えた。  
まといの天性のものとも言える中の具合の良さに、望は急速に高ぶっていく。  
刻一刻と絶頂への急坂を駆け上っていく。  
脳からは、とうに発射して楽になるべし、との指令がでている。  
 
「も、もう……」  
 
 今度こそ外に出そう、と抜きかけたのを、まといも素早く察知した。  
 
「だめっ!」  
 
 力なく広げていた足を望の腰にがっちり絡みつけた。  
焦った望は懸命に抜こうとする。  
だが、まといの絡まった足は解れない。  
 
「常月さん、もう、もう出ちゃいますから」  
「私なら大丈夫です。だから、このまま、このまま……お願いします」  
 
 言いながら望の胸に顔を埋めた。背を抱く手に力が入った。  
 
 望は混乱したままラストスパートに入った。  
もうまといが初めてだとかは念頭から消え去っていた。  
ただただめくるめく快感に溺れ、早く達したいという思いで心がいっぱいだった。  
望の激しい動きに安心したのか、まといの手が背中を伝って肩へゆっくり滑りあがっていく。  
その途中、無意識のうちに望の背中に爪をさくりと立てた。  
 
――あうっ!  
 
 背に響く鋭い一撃で、望の心の底につっかえていた最後の歯止めが外れた。  
 
「つ、常月さん!う、う、……うぅっ!」  
「先生、先生、せんせい!」  
 
 まといの思い詰めた声を耳にしながら、望はまたも教え子の奥深くに絶望の証を注ぎ込んでいく。  
 
──どっく、とく、つぷ……  
 
 鈍い快感が後から後から絶棒を駆け抜けていく。  
最後の一滴を注ぎ込んだ後も、望はまといをきつく抱きしめたままでいた。  
 
     ☆  
 
――ああ、また教え子と交わってしまった……私は最低の男です……絶望した! 私自身に絶望した!  
 
 まといを抱きしめ、教え子の体温と荒い息遣いを感じたまま、望は漆黒の絶望感に苛まれて目を閉じた。  
目尻から涙が一筋こぼれ落ちた。  
 
 だが、まといはそれを嬉し涙と解釈したようだ。  
望の頬に伝う滴を舌先で掬い取り、静かに、そして意志を込めて言った。  
 
「先生、私も深く繋がって嬉しいです。  
 いつまでも、ずうっと一緒にいます。  
 先生のいらっしゃるところなら、どこまでもお供します」  
 
 無言のまま、望はまといを抱きしめる腕にいっそう力を込めた。  
 
     ☆  
 
 霧とまといが望の背に爪を立てたのは、奇しくも同じ箇所だった。  
二人はスタイルが異なるとはいえ、同じように真剣に望を愛し、望の身近な所にいて、望を独占したがっているのは間違いない。  
そして、出来ることなら望の子を身籠もりたいと思っているのも間違いない。  
 
 いつか、望と自己のの全存在をかけて二人が激突する時が来るかもしれない。  
いや、来るに違いない。  
その決定的瞬間を望はどう迎えるのであろうか。  
他の女生徒や智恵といった波乱の萌芽を巻き込みつつ、望を取り巻く女性模様は今後とも予断を許さない。  
 
 
     ☆     ☆  
 
 
 ここは千里の部屋である。  
小綺麗に整えられた部屋はきっちり片付き、塵一つ落ちていない。  
机の上には、自分側の署名を既に済ませ、望の署名を待つばかりの婚姻届を入れたクリアファイルがある。  
ベッドサイドには小さな写真立てがある。中に入っているのは担任である望の写真だ。  
 
――明日こそ!  
 
 結局、千里は望を捕まえ損ねたまま帰宅したのだった。  
もう就寝すべき時間だが、目が冴えたままでとうてい眠れそうにない。  
就寝を諦めた千里は、ラックから雑誌を取り出しベッドに持ち込んだ。  
 
 パジャマ姿のままベッドにうつ伏せになって結婚準備情報誌や新婚夫婦向け雑誌をゆっくりめくりながら、  
千里は自分の将来を脳裏に描き始めた。  
 
     ☆  
 
 ――初夏の明るい陽光の下、海の見える丘に建つ白い小さな教会で、私たちは晴れて結婚式を挙げる。  
クラスメートや智恵先生も列席して祝福してくれている。時折吹き抜けていく風も爽やかだ。  
 
 ぱりっとした黒のタキシード姿の望さん(夫を先生と呼ぶのはきっちりしないから)は凛々しくて素敵だ。  
背が高くすらっとしているので、和装だけでなく洋装も実によく似合う。  
つい見とれてぼおっとしていると、視線に気づいた望さんが私の肩に優しく手を置いてくれる。  
純白の清楚なウェディングドレスに身を包み、ブーケを手にした私は幸せにうち震え、頬を染めて俯く。  
 
 
 ――いつしか式もクライマックスだ。厳かな雰囲気の中、神父さんが私たちに慈父のように優しく問いかける。  
 
「汝この女子を娶り、神の定めに従いて夫婦とならんとす。  
 汝は、幸いなる時も禍なる時も、富める時も貧しき時も、健やかなる時も病める時も、これを愛し、これを慰め、  
これを助け、その命の限り、固く節操を守らんことを誓いますか」  
「誓います」  
 
 望さんははっきり誓ってくれた。涙が出るほど嬉しい。私もきっちり誓わねばならない。  
 
「汝この男子に嫁ぎ、神の定めに従いて夫婦とならんとす。  
 汝は、幸いなる時も禍なる時も、富める時も貧しき時も、健やかなる時も病める時も、これを愛し、これを慰め、  
これを助け、その命の限り、固く節操を守らんことを誓いますか」  
「はい、誓います。」  
「では、指輪の交換を。……誓いの口づけを」  
 
 列席者の祝福の中、望さんの唇が私の唇に重なる……  
 
 
 ――その晩、私は望さんと一つになる。望さんは年下の私を優しくリードしてくれるから全てを任せておけばいい。  
でも、夫婦は何事もきっちり助け合わなければならない。  
だから、せめて望さんの邪魔にならないよう、きっちり愛撫には、反応する女に……なって……おく練習を……あぁん!  
 
     ☆  
 
 いつしか千里はそろそろと指を秘部に這わせていた。  
 
――いやっ、私ったら、はしたない!  
 
 だが、指の動きは止まらない。  
   
――でも、望さんのためなら……あん……私、淫らになっても、い……いいっ! んうぅ……  
 
「ん……ぁん……せ…望さん、愛してま…す……」  
 
 千里は望との初夜を夢見ながら、秘部に白く細い指を泳がせる。  
指の動きが滑らかになるにつれ、たおやかな腰を悩ましくくねらせていった。  
 
     ☆  
 窓の外では三日月が微かな光を穏やかに放っている。千里が寝入るのはしばらく先のことになりそうである。  
 
 
――[完]――  
 
 

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