「交くんのほうには私が連絡しておきますから、先生はここへ向かってください」  
そう言った千里から渡されたメモを頼りに、望は町の裏通りを歩いていた。  
もう10時になると言うのに裏通りは薄暗く、閑散とした空気が肌寒い。  
「……こんなところに、何があるというのでしょうか」  
呟いた声が、不気味に反響し、望の肌を粟立たせた。  
 
(メモが示しているのは……あの古びたビルですね)  
 
古びたビル……正しくは廃病院であったが、望がそんなことを知るはずもない。  
 
(一体、何が待ち受けているんでしょう)  
 
扉を開けるとそこには、浅黒い肌の少女がいました。  
 
「ヨウコソ、先生」  
「マ、マリアさん!どうしてこんなところ……に……」  
段々とフェードアウトする望の声。それもそのはずである。  
 
真っ暗なエントランス。その壁は塗装がはがれ、完全にコンクリートが露出している。  
受付らしき仕切りの奥にあるドアは、大破して開けっ放し。  
天井からは、時折何かがゴソゴソ動く音がし、ぱらぱらと砂が落ちてくる。  
 
ひとえに不気味。不気味すぎる。  
 
「ここ、マリアの秘密基地!」  
「秘密、基地?」  
「布団トカ色々あるし、生活するのに困らないんダ」  
嬉しそうに言うマリア。どうやら、本当にここに住み着いているらしい。  
 
(しかし木津さん、私を何故こんなところに?)  
マリアが跳ね回っているのを横目に望は首をかしげたが、考えていても答えは出ない。  
……というわけで、手っ取り早く質問することにした。  
 
「あの、マリアさん」  
「ン?」  
「マリアさんは、私がここに来るの、知ってたんですよね?」  
「ウン!緊急連絡網で回ってきたヨ!」  
「……あれ、携帯電話持ってましたっけ?」  
「アレにかかってきタ」  
にぱっと笑って受付の方を指差すマリア。その先には……  
「公衆電話!?通じるんですか、あれ!」  
「初めてかかってきたヨ」  
こんな廃病院の公衆電話が未だに通じるわけがない。  
というか、こんなところの公衆電話の番号なんて普通は把握していない。  
 
望は、木津千里という存在がますます不可思議なものに感じられた。  
 
「それで木津さんは、あなたに何を連絡したんですか?」  
背筋に何か冷たいものが走ったので、話を元に戻して誤魔化す。  
「先生のことダヨ」  
「……え?」  
「先生とセックスしてあげてって言われタ!」  
 
「はい?」  
「先生と……」  
「いやいやいや、聞こえなかったわけじゃありませんから!」  
既に三人の女子生徒と関係を持っている。  
その望でさえも、マリアの言葉には流石に面食らってしまった。  
 
何せマリアの容貌は、高校生はおろか中学生、むしろ小学生に見えるくらいである。  
確かに過酷な人生を送っているのかもしれないが、性知識などがまともにあるようには見えない。  
 
「失礼かもしれませんが、マリアさん……何をするかわかってますか?」  
「セックス、するんじゃないのカ?」  
「で、ですから具体的に……」  
「大丈夫ダヨ、マリア慣れてるカラ!」  
(慣れてる、ときましたか……)  
正直、望の意識には疑問の種がぱらぱらと振り蒔かれている。  
「先生、向こうの部屋にきれいなベッドあるヨ」  
だが、腕を引っ張るマリアに逆らう理由はない。  
 
あと七人。早いうち減るに越したことはないのだから。  
 
「……えーと、こ、ここで、ですか?」  
「そうダヨ?」  
案内された(元)病室は、エントランスと似たり寄ったりのボロボロ具合だった。  
一応、ベッドは整えられているとはいえ、シーツも掛け布団もところどころほつれて糸が出ている。  
「ま、まあベッドはベッドですからね」  
「サア、先生。服脱いで横になっテ」  
「はい。……え、私だけですか?」  
「?先生がまず寝てくれナイト難しいジャナイカ」  
 
なんだかひっかかるが、これまた特別逆らう理由もない。  
望は言われるがままに、全裸で古びたベッドに仰向けになる。かび臭い。  
 
「ジャ、先生。マリアも脱ぐヨ!」  
「は……速い!」  
『はい』と答えるつもりが、答える前に脱ぎ終わられてしまった。  
ほぼ起伏のない幼児体型が露になる。  
「早速、始めようカ」  
言うが早いが、マリアは望の腹に馬乗りになった。  
 
「……え!?」  
「先生、元気ないナ。早く、元気になってもらわないト」  
望の顔に背中を向け、マリアはじっくりと望の絶棒を観察し始める。  
そしておもむろに両手を伸ばすと、それをぎゅっ、と握った。  
「はわっ!?」  
「みんな、こうすると元気になるヨ」  
ゆっくりと手を上下させるマリア。温かい体温が伝わり、絶棒の成長を促進する。  
「は、あ……うわ、く!」  
「お、ほら見て先生!元気になっタ!」  
いい笑顔で振り向くマリアだが、そのマリア自身に隠れて、望が自分の絶棒を確認することは出来ない。  
無論、絶棒が膨張していることはよくわかるけれども。  
 
「……先生、なかなか大きいネ。ちょっと楽しみダヨ」  
「あ、あの、楽しみ……?」  
望の不安げな声は完全に無視し、マリアは身体の向きを180度回転させる。  
そして、一度望の腹から身を浮かせ……自分の秘部を、絶棒で一気に貫かせた。  
 
「っ!?」  
「ン、やっぱり大きいヨ」  
一瞬、絶棒に軽い痛みが走ったが、すぐさまそれは快感へと姿を変えた。  
マリアの秘部は絶棒を異常なほどに締め付ける。  
「ジャア先生、動くヨ。準備はいいカ?」  
そう口にしながら、既にマリアの身体は上下運動を開始していた。  
聞くだけ聞いて、答えを待たないのはなんともマリアらしい。  
「ふっ!うあっ!くっ!はあ!」  
その運動に合わせてベッドが軋み、望の口からは息と共に意味のない声が絞り出される。  
「先生、キモチイ?」  
「くあっ……!は、はい!」  
思わず威勢よく答えてしまう。  
自分の上の少女は余裕の表情なのに、大人の男たる自分が完全にテンパっているとは、なんたる屈辱か。  
 
望は、マリアの境遇を甘く見ていた。  
難民としてこの国にやってきた身寄りのない少女が、どうやって日々の生計を立てているのか。  
ちょっと考えればすぐにわかることであったろうに。  
 
「マリアさっ!は?」  
「ン、マリアも、ちょっとキモチイヨ」  
"ちょっと"。望にとっては十分すぎる快感だが、マリアにはまだまだ物足りないらしい。  
「うっく、は、あ、あああああああっ!」  
強烈な締め付けと、リズミカルな振動。望の絶棒はあっさりと白濁液を放出させられてしまう。  
 
「アレ?先生、早いすぎるヨ。マリア、まだ全然動いてないノニ」  
あろうことか、マリアは不満げな顔で望を見下ろしている。  
「は、はぁ…はぁ…は、あ!?」  
「ちゃんと、マリアも気持ちよくしてくれなきゃ、楽しめナイジャナイカ」  
早々と絶棒から身を引いたマリアは、今度は望の顔の上に跨った。  
「あ、あの……マリアさ、うぷ」  
「ホラ、先生が働く番ダヨ!」  
 
望の目の前には、無毛の秘部。  
果たしてマリアがどんな顔で自分に跨っているのかはわからないが、声から察するに、笑顔であろう。  
望の男としてのプライドが、突如として沸々と燃え上がってくる。  
 
「わかり、ました。い、いきますよ……」  
 
マリアが何を望んでいるかはすぐにわかった。顔の前に宛がわれた秘部に、望はそっと舌を伸ばす。  
そのまま、割れ目をなぞるように舌を這わせ、何度も何度も、往復させていく。  
 
ある一点を舌が通過した際、マリアの全身が小刻みに震えたのがわかった。  
望は一度行為を止め、言葉を投げかける。  
 
「マリアさん、今のところは?」  
「ン、キモチイ」  
どうやら望の舌は、見事マリアの性感を探り当てたらしい。  
再び舌を這わせ出した望は、重点的に先ほど反応のあった場所を責め立てる。  
 
「ン……あ、ひゃう!ソコ!キモチイ……!」  
顔の両脇にある脚が、望の顔をきゅっと締め付ける。構わず舐め続ける望。  
「は!先生、うう、なんかマリア、変な感、じダヨ」  
先ほど自分が注ぎ込んだ精液とマリアの愛液が混じった奇妙な液体が、少しずつ溢れ出してくる。  
 
が、調子に乗って舐め続け、間を置かなかったのが失敗だったのだろうか。  
「ンン……!あう、ひゃ……はぁっ!」  
「ぐがっ!?」  
ある瞬間、跳ねたマリアの膝が、望のコメカミに抉りこんだ。  
「ふあ、先生?ドーシタ?」  
「お、おふ……」  
 
マリアの秘部を眼前にしたまま、意識がブラックアウトしていく……  
薄れいく意識の中、望は思う。  
 
(なんでしょう、このデジャヴは……)  
 
 
目を覚ますと、そこは一面の……砂浜?  
 
「あ、起きたカ先生。ホラ、続き!続き!」  
「は……?って、な、何してるんですか、マリアさん!」  
 
望の前には、マリアの秘部が。マリアの口元には、望の絶棒が。世に言う、シックスナインポジション。  
 
「何って、続きダヨ!」  
「つ、続き?」  
「先生がいきなり寝ちゃったカラ、マリア、不完全ねんしょーなんダヨ」  
「え?……はぁう!?」  
マリアは絶棒を銜え込み、望の抗議を聞き入れない体勢を整えた。  
 
「ふぇんふぇいも、マイアのあひょこ、ひゃんとなめへ」  
「ちょ、ま、マリアさん!無理です、こんな短期間じゃ、また勃つわけがはああっ!?」  
「らいじょぶ。ふぇんふぇ、またへんひになってるひゃら」  
「お願いですから!銜えたまま喋らない、で、いやああああああああああ!」  
 
まるで搾り取るかのように望の精を吸い取るマリアの口。それは文字通り……"枯れるまで"絶棒を離さなかった。何せ、  
(このままではタイムリミットまで精力が戻らない、なんてことに!)  
そんな危機感を覚えた望の訴えを聞き入れ、マリアが行為の終了に同意したのは……  
 
マリアが三回、望が実にその倍の六回絶頂に達した後だったという。  
 
……人は見かけによらぬもの。望は、過去の偉人が残した格言の意味を、ひしひしと思い知らされたのであった。  
 

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