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「フィーネ。おい、フィーネ!」
アーバインは薪を拾いに行ったまま、なかなか帰ってこないフィーネを探して森を歩い
ていた。
バンとムンベイも同じように森の中を探している。
「ったく。これだからお子様は嫌なんだ」
シールドライガーに乗るバンと、オーガノイドのジーク。腕もゾイドの性能も並以上だ
が、子供特有の「面白ければ後はどうでもいい」という考え方が根本にあるせいか、二人
はよく問題を起こす。
そのたびに苦労するのは、大人役であるアーバインとムンベイの二人なのだ。
「おい、フィーネ! どこだー!」
随分と森の奥まで入り込んだ。鬱蒼とした森。頭上は木々の張り出した枝と葉におおわ
れ、太陽も見えない。湿った足場に枯れ葉が落ちている。
「こんな所に薪になるような枝なんかねえっつーの」
毒づくアーバインは、水音を耳にした。
川の音とも違う。何か、水の跳ねるような音だ。
「……なんだ?」
足が自然とそちらへと向かう。旅をする者として、どんな場合でも水場の確保が重要だ
と理解している人間ならではの行動だった。
ガサガサと枝をかきわけ、顔を出す。
「……へぇ!」
知らず、感嘆の声が漏れた。鬱蒼としていた森が突如切れ、空には太陽がある。岩場の
中に水が湧いているのだろう。岸に降りて手を水に入れてみる。
冷たく澄んだ水だ。軽く舐めてみるが、清水だという事は見ただけで分かった。
「濾過する必要もないのか。すごいな……!」
ここまでゾイドで入ってくるのは難しいだろうが、湧水のある水場を発見した事が嬉し
かった。
――と、ここに来た理由である水音が、再び耳を打つ。
アーバインは素早く身を躍らせ、岩場の陰に飛び込んだ。これだけ綺麗な水場なら近隣
の獣が寄って来る可能性は高い。そこには無害な者もいるだろうが、危険な獣だっている
はずだ。
腰のハンドガンを手に取り、セイフティロックを外す。
「どこだ……」
眼帯のスコープのモードを切り替え、索敵モードで眺めていると、見つけた。
白と金の何かが、水面を泳いでいる。
「……フィーネ!?」
それは、フィーネだった。
少女は身に着けていた服を全て脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿で水の中を進んでいる。濡れ
た金色の髪が身体に張り付くのを気にせず、彼女は楽しげに泳いでいた。
「あのバカ……こんな所で無防備な真似しやがって……」
子供とはいえ、女だ。そして女には色々な商用価値がある。人身売買は法では規制され
ている。それは共和国も帝国も同じだ。
だが、どんなに法で規制されても、それを求める人間がいれば、それを供給する人間も
いる。
非合法の世界では女や子供は『商品』だった。自身も非合法の世界に身を置いた事もあ
るアーバインは、そんな光景を幾度も見てきた。着飾った女子供。だが、その首には隷属
の証である首輪をつけられて、そして、目には光が無いのだ。
――もはや、人としての生活を送る事が許されないと、彼女達は理解していたのだろう。
そしてフィーネは、そんな嗜好を持つ者達にとっては、特級の存在だろう。美しい金色
の髪も、まだ未発達な肢体も。その趣向を持つ人間ならば垂涎の的だ。
「っあのバカ、本当になにも着てないのかっ」
スコープの中で、フィーネの股間の筋を直視してしまい、思わず噴出してしまう。
無邪気さは時として残酷だ。フィーネは特に、常識を知らない所がある。最近はムンベ
イの教育の成果もあって大人しくなったが、以前は水浴びの後も素っ裸でウロウロしてい
たのだ。その度に、バンが真っ赤になって怒鳴るから、煩い事この上なかった。
あの頃から比べれば、少しは成長したのだろうか。少しは胸も膨らんでいたような気が
する。
「……っ!」
ガタンと音を立てて立ち上がると、水辺に歩いていく。いや、もう走っていたかも知れ
ない。
「? アーバイン?」
「こっちに来い、フィーネ!」
不機嫌そうな声のアーバインを訝しく思ったのか、そもそも、急にこの場に現れたアー
バインを不審に思っているのか、フィーネは不思議そうな顔で近づいてくる。
その際も、身体を隠すようなことはしない。幼い胸も、少しぷっくりと膨らんだお腹も、
何も生えていず、シンプルな筋も。何もだ。
「お前なぁっ! 少しは恥じらいってもんを覚えろと、ムンベイから言われてるだろうがっ!」
「恥じらい?」
キョトンとしたフィーネに、アーバインは頭を抱えた。
「どうしたの、アーバイン。頭でも痛いの?」
「お前、本当に売り飛ばされるぞ、そのままじゃ」
アーバインは顔をあげると、フィーネの唇を奪った。
濡れた体を抱き上げる。服が濡れるのもかまわずに、抱きしめた。
「あーばいん……?」
酸欠にでもなったのか、ぼんやりとした瞳で頬を真っ赤にして、フィーネは名を呟く。
「少し教えてやる。無防備な女ってのは、こうされる可能性があるんだ」
宙にアーバインの腕で固定されたフィーネは、イヤイヤと身体をくねらせる。だが、
アーバインはそれを許さない。
薄い胸に舌を這わせると、フィーネの身体がビクビクっと震えた。
「や……ぁ」
小さく漏れた声は、子供というには艶がありすぎた。
「すげえな、フィーネ。本当になにも知らないのか」
反応の良さと、その媚態にアーバインは呻く。
腹を舐め、身体を持ち上げる。
フィーネの下腹部が目の前に来る。本当に、なにも無い。ただシンプルな性器を見つめ、
アーバインはそこに恭しく唇を這わせた。
「やっ……きゃうっ!」
フィーネの叫びと同時に、身体がよじられた。その抵抗を両腕でおさえつけ、アーバイ
ンはさらに舌で丹念に割れ目を広げていく。
「だ、だめぇっ……そんな……トコ……っ」
「気持ちいいだろ?」
「やぁんっ」
フィーネの喘ぎ声に、アーバインは楽しげに笑う。
「ほら、ここはどうだ?」
「だめっ、そこはぁっ」
舌の先端が、埋まる。
「やあああああああっ!」
叫ぶのと同時に、ちょろちょろと、金色の雫が零れ落ちてきた。
フィーネの髪と同じ色の、水。まるで彼女の中そのもののような。
「……っく……ヒック」
泣き出していた。性的な羞恥心はなくても、お漏らしに対する羞恥心はあったらしい。
「泣くなよ。可愛かったぞ」
「だ、だって……」
「こんな真似をしたがる奴が、世の中にはゴマンといるんだ。だから、お前はもう少し警
戒心ってもんを持つべきなんだよ」
「アーバインにも……?」
「俺はもう二度としねえよ。もともと、子供は趣味じゃねえ」
地面に降ろすと、ポンポンと頭を撫でてやる。
「ほら、あんまり濡れたままだと風邪引くぞ。さっさと服着ろ」
「う……うん」
モソモソと服を着始めるフィーネ。ただし、目の前で。
「……さっぱり、わかってねえ」
アーバインはもう一度呻くと、頭を抱えたのだった。