「・・・んー・・・これは・・・、いや、でも私には・・・」
王異はしばし考えた後、それを棚に戻す。
目の前には色とりどりの花、いや下着が並べられている。
話題のブランドの直営店だけあって、ディスプレイされている商品の量も多い。
「お客さまなら、こちらでもあちらでもどれでもお似合いになると思いますよ」
20分も棚の前で唸っている王異に痺れをきらしたのか、店員が声をかけてくる。
「い、いえ、こ、これは参考に・・・わ、私はまだ学生ですから・・・」
王異は焦りながら隣の棚に逃げる。
そう、王異はこのような下着専門店は初体験なのである。
「あらあら、そんなことございませんよ。お客さまならこちらなんかでも大変お似合いななると思いますわ」
店員は構わず左上のブラを差し出す。
「い、いや、こんなの・・・透けて・・・」
カップの半分ほどがレースで透けている紫紺のブラを恐る恐る広げる。
「でも、いやらしくはございませんでしょう?」
店員の問いは確かだ。
レース以外はシンプルで、生地も光沢のあるようなものではない。
「ま、まぁ・・・ただお値段が・・・」
「そうですか・・・」
店員は本当に残念そうだ。
「あの、お会計を・・・」
奥から呼ばれ、店員は渋々離れていった。
「はぁ・・・」
安堵と自分の不甲斐なさを混ぜた溜息を漏らすと、王異は無難に白のブラを手に取る。
そもそも王異がこの「CHO-SEN」に来たのは、いつもの「スーパー蜀」の下着売場では
王異のサイズに合うものが少なくなってきたためである。
それに王異も年頃の女の子であり、流行の下着専門店に興味を持つのも当然である。
手に取った白のブラはシンプルなカップであるが、少し赤の刺繍が施されており、
シンプルながら学生には丁度よい可愛いさもある。
「これなら・・・」
やっと気にいったものがみつかったようだ。
1時間も経ったのだが。