「文姫どの」
「ひゃあっ!?」

明日までに書き上げなければいけない書類を手に賈クが蔡文姫の元を尋ねると、
彼女が慌てて何かを隠すのが見えた。
「な、なーに?」
これで上手く取り繕ったつもりなのだろうか。賈クはため息をついて彼女の前に座った。
「いや、これに使えそうな資料を貸していただこうと思ったのだが…今何ぞ隠さなんだか?」
「え〜?何も隠してないよ〜?」
何を隠したかなんてどうでもいいことだと知りつつも、隠されると余計に気になってしまう。
「あぁ、そうか。ならば良いのだが…隙あり!」
「ひゃあ!」

気にしていないふりをして、彼女が気を緩めたその隙に賈クは彼女が隠した巻物を素早く奪い取った。
「やだー!エッチ!みないでよ〜!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てるのを尻目に賈クはするするとそれを広げ、そこに書き付けられたものを
読み始めた。
だが三行も読まないうちに彼は叫び声をあげながら手に持ったそれを投げ出してしまった。
「あ!ちょっと!乱暴に扱わないでよ〜」
床に跳ね返り部屋の隅まで飛んでいったそれを追いかけながら蔡文姫は何気ないふうに言う。
だが対して賈クは青ざめた顔をしていた。

「お、お前、なんだ?これは…」
「何って…読めばわかるでしょ〜」
そして平然とした顔で賈クに向き直ったのだった。
「こんな汚らわしいものをどこで手に入れたかと聞いているのだ!」
「こんなもの売ってるわけないじゃない〜。私が書いたんだよ〜」
賈クが三行読んだだけで青ざめたもの。それを彼女は、あたかも子供に聞かせるような優しい声で読み上げた。
「『ああっ…何をするのだ文和よ…』文官の細い腕が主の体を抱きしめた。困惑する彼に賈クは告げる。
『お許しください張繍殿。私はあなたを愛してしまっ』」
「読むなぁ!」
「何よ〜。これからが盛り上がるところなのに〜」
「これは…何という文才の無駄遣い…」

一応彼女の才は認めつつ、賈クは立ち上がり説教口調で言った。
「私に男色の気はない!こんなものを書かれていい迷惑だ!」
「だって書きたかったんだもん…。あ、大丈夫〜!甘皇后さんと麋夫人さんのお話も書いたんだから〜」
「何が大丈夫なんだかさっぱりわからん…」
がっくりとうなだれた賈クは、そのとき能天気に振舞う彼女の、何かを隠したようなもじもじとした仕草に気がついた。
「…ときに文姫どの?」
「なーに?」
賈クは挑むような顔つきで言った。




テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル