「目が覚めたかい?」
「………あら?」

意識が戻ると、そこは見覚えのある天井。そして受付にいた黒尽くめの男。
私は教室の隅で、机を並べて作ったベッドの上に寝かされていた。
「私は一体………あっ!」
慌ててかけられた毛布の中を見る。……制服に乱れは無いし、破かれた跡も無い。
ばれないようにそっとブラウスとスカートの中に手を入れる。…うん、下着もちゃんと着けてるし、粗相をした跡も無い。

「いかがだったかな?俺の幻術は」
「幻術…?」
「そう。分かりやすく言えば、意図的に夢を見させるものだ。特にその人間が恐れてる行為をな。まぁ、夢の中には半分くらい願望が混じっているとは言うがね」
「が、願望!?」

今日は大勢の人たちにあんな恥ずかしい姿を見られて、たまにお尻を触られたり衣装を引っ張られたりして、早くここから逃げ出したいと思ってた。
…でもちょっとだけ楽しかったのは事実だし、お客様が喜んでくれるのなら少しくらいサービスしたほうがいいのかな、とも考えたりもしたけど…。

「(う、嘘よ!私、そんな願望なんて…!)」
やめよう。これ以上考えるとよからぬ答えを出してしまいそうで怖い。

「あっ、そういえば尚香さんは?」
「お連れさんかい?こっちで寝てるぞ」

「あぁん、ダメよ玄徳ったらぁ…こんな所でぇ……」

どれ程うなされているのかと思いきや、当の本人は枕に抱きついてさも気持ちよさそうな声を上げていた。
「本来こんなことは無い筈なんだが…どうもこっちは願望がほとんどのようだな」
「一体…どんな夢を見てるんでしょう………」
「…覗いてみるか?」
「出来るんですかそんなこと?」
「額に手を置いてみろ」

言われたとおり、左手を孫尚香の額に当てる。
男は余った私の右手を手に取り、何やら念じ始めた。

「目を閉じてみな」
そっと目を閉じる。すると、頭の中に尚香さんの姿が――――

ぼんっ!

露骨な音を立てながら、顔中の血液が一瞬で沸点に達した。

「なっ、ななななんて夢を見てるんですか!?」
「………何が見えたんだ?」
「い、言えませんそんなこと!」

「尚香さんいけません!学校でそんな破廉恥な夢を見るなんて!」
「あぁん、玄徳ったらぁ激しすぎるぅ〜…」
「…いくら揺さぶっても、俺が術を解かない限りは起きないぞ」

――お父様、世の中には知らないことがまだまだ沢山あるみたいです。
私もほんの少しだけ…物の怪というものを信じてみようと思います。




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