「ぐすっ…ぐすん………?」
ようやく小水が収まった時、ふと私は異変に気付く。先程まで私を拘束していた腕達が見当たらない。
その代わりに遠くに何かが見える。暗闇の中でも、それは私がずっと捜し求めていた物だとはっきりと理解した。
「扉………出口だわ!」
私は無我夢中で見慣れた扉へと走り、引き戸に手をかけた。
「………あ」
扉を開けようとした瞬間、ふと自分の姿を見る。慌てて先程からずっと自己主張をしていた乳房を無理矢理ブラウスの中に押し込む。
丁度胸元を破かれてしまったので胸がほとんど隠れない。スカートもショーツも、自分の愛液と小水でびしょ濡れだ。
「(だ、だめよ!こんな格好とても人には見せられないわ!)」
「(何を言ってるの私!形振りなんて構っている暇じゃないでしょう!?)」
頭の中で二つの答えが一騎打ちを繰り広げる。
まさかこの歳にもなって物の怪小屋でお漏らししたなんて口が裂けても言えない。けど早く出ないと今度は何をされるか分からない。
扉に手をかけたまま考え込む。思考が幾度と無く打ち合い、そして
「そ、そうよ!中から誰かを呼べばいいんだわ!」
一騎打ちの結果は互角となった。
扉を開け、頭だけをそっと出す。
「―――っ!」
眩しい。ずっと暗闇の中に居たから周りが見えない。うっすらと目を開けると、手元に何かが見えた。
それは白くて綺麗な手。見るからに女性の手だ。私は夢中でその手を取った。
「す、すみません、宜しければ何か着替えるものを―――」
その瞬間、ようやく目が慣れてきたのか、視界が広がっていく。
私にとってその美しい手はまさに助け舟だった。
しかし、扉の向こうにはその助け舟は何百、何千という数で私を手招いていた。
「……………」
助け舟達に囲まれながら、私は意識を失った。